異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~   作:犬型大

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入団テスト2

「はははっ! 思っていたよりもガキだな!」

 

 女性はイースラたちを見て大笑いする。

 子供とは聞いていた。

 

 ただ想像していたものよりも一回り小さかった。

 剣すらまともに持てるのか怪しいぐらいの子供であって笑ってしまったのである。

 

 この豪快な女性こそルーダイであった。

 

「不合格。帰りな」

 

「ちょ……」

 

「そんなのありかよ!」

 

「ふん、なんと言われようと……」

 

 ルーダイはイースラたちの何も見ることもなくきびすを返して立ち去ろうとした。

 しかしその瞬間何かを感じ取って、振り返った。

 

「今やったのは……お前か?」

 

 ルーダイは笑顔を消し、少し怒りすら感じさせる顔でイースラの前に立った。

 イースラは涼しい表情をしているがクラインとサシャはなんだか上から押さえつけられるような息苦しさを感じている。

 

「不合格なんでしょ? そのまま行けばよかったじゃないですか」

 

「クソガキ……お前わざとやってんな?」

 

「オバさんが人の話聞かないからだよ」

 

「オバ……このガキ……!」

 

「じゃあなんて呼べば? 来て早々名乗りもせずにガキだ、不合格だなんて言ったのはそっちだよ」

 

 第一候補にこんな態度でいいのか!?

 そんなことをクラインとサシャは思うのだけどイースラはむしろ不愉快そうな顔をしているぐらいだった。

 

「やめろルーダイ。先に礼を失したのはお前の方だ」

 

「むっ……余計な口挟むな、ハルメード」

 

 階段の途中からずっと様子を眺めていた長髪の男性ハルメードが降りてきた。

 子供と睨み合いの喧嘩なんて情けないとため息をつく。

 

「君を指名した物好きがいるというから見ていたんだ。まともに一度も目を合わせないで不合格だなんて言い放ったのは君の方だ。チャンスの一度も与えないのは失礼というものだろう」

 

「全員にチャンスなんて与えてたら今頃ギルド前には行列ができるだろ」

 

「そこまで人は殺到しないさ。たった一度チャンスをあげるだけではね。それになぜ君は怒っているんだ? 不合格にしたのならさっさと立ち去ればよかっただろう」

 

 ハルメードには一度立ち去りかけたのにわざわざルーダイが戻ってきた理由が分からない。

 

「このガキ、私に魔力の殺気を飛ばしやがった」

 

「なに?」

 

「鋭くて……背筋の凍るやつだ。んなことされて黙ってられるか!」

 

「確かに……それは黙っていられませんね」

 

「だろ? だから……」

 

「そんな才能を逃しかけているなんであなたはなんと愚かなんですか?」

 

「はぁ?」

 

 同意してくれたと思ったのに急に愚かなどと言われてルーダイは顔をしかめた。

 

「急ぎ兵士師団長を呼んできます。あなたは大人しくしていてください」

 

 ハルメードは早足でその場を去っていった。

 ルーダイは呆けたような顔をしてハルメードが立ち去った方を見ている。

 

「……ちょっと失敗だったな」

 

 ルーダイを呼んだのは失敗だったなとイースラは思う。

 イースラが今頼りにしている記憶はスダッティランギルドが崩壊した後のものになる。

 

 そこまではスダッティランギルドでうだつの上がらない生活をしていたのだから仕方ない。

 だからどうしても先のことを今の時間軸に直すとズレが生じてしまう。

 

 これは一つ考えねばならないことであるなと思った。

 未来の知識を先借りするには今どんな状態であるのかも念頭に置かねばうまく活用できないこともあるのだ。

 

「お待たせいたしました。こちらが兵士師団長のムベアゾ団長です」

 

「急いで来いというから来てみれば……なんだこの状況は? 魔法使いの問題娘と見たこともない子供たち……子供の喧嘩の仲裁に俺を呼んだのか?」

 

 かなり体つきのいい威圧感のある男性がハルメードに連れられてやってきた。

 元は茶色なのだろうが髪はすでに白髪の方が多く、目元と眉間には深いシワが刻まれている。

 

 年齢だけでいうのならもうすでに引退すべき年を通り越しているぐらいだろうが、ムベアゾの威圧感をみればまだまだ現役である。

 

「わざわざ喧嘩の仲裁で団長殿を呼んだりはいたしません。あの子、もしかしたら逸材かもしれません」

 

「なんだと?」

 

「魔法の殺気を使ったらしいのです」

 

「ほぅ?」

 

 ムベアゾが驚いたようにイースラを見た。

 

「あっ、こいつ……」

 

 イースラはいつの間にか不貞腐れたような態度をやめていかにもやる気あります風な目をして真っ直ぐに立っていた。

 さっきまでとは大違いでルーダイは思わず舌打ちしそうになった。

 

「それは本当か?」

 

「んー、入団テスト受けさせてくれたらお答えします」

 

「入団テスト?」

 

「あの人には不合格だって言われたんですけど、何もしないで言われたから不満なんです」

 

 ムベアゾに視線を向けられてルーダイは気まずそうに目を逸らす。

 

「本当のことです。実力を確かめることも、チャンスを与えることもなく不合格だと」

 

「だ、だってこんな子供……」

 

「あとで魔法師団長には言っておこう」

 

「うっ……」

 

 ルーダイは諦めたようにガックリとうなだれる。

 大人しく入団テストぐらい受けさせてくれればよかったものをとイースラは思う。

 

「入団テストだ。実力を見てやろう。こちらにこい」

 

「二人ともいくぞ」

 

 ルーダイから感じていた動けないような圧力はハルメードが介入したあたりから感じなくなっていた。

 イースラの後を追ってクラインとサシャも慌ててついていく。

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