異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~   作:犬型大

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入団テスト3

「訓練一時中断! 休憩だ!」

 

 建物の裏には広い訓練場がある。

 訓練をしている人たちがいてムベアゾが声をかけると訓練をやめて壁際のベンチ近くに置いてあるタオルで汗を拭いたり水を飲んだり思い思いに休憩する。

 

「ネムジン」

 

「はいっ!」

 

 ムベアゾは休憩しているギルド員を見て一人の男性を呼んだ。

 若い人で特徴的なこともない普通の男性である。

 

 ただ細く見えても体はしっかりと鍛えられている。

 

「こいつと戦ってもらう。勝てなくとも力を見せれば入団を認める」

 

「もし勝ったら?」

 

「勝てたら最下級ではなくいくらか上から始めさせてやろう」

 

「んじゃこいつから始めてもいいですか?」

 

 イースラはニヤッと笑ってクラインの肩に腕を回す。

 

「……まあいいだろう」

 

 イースラの実力を見たかったところではあるが、チャンスを与えることにした以上クラインにも同じくチャンスを与えるべきだ。

 

「ネムジン、この子と戦え。治療の費用は俺が持つからそれなりに相手してやれ」

 

「はっ! 分かりました!」

 

 ネムジンとクラインは木剣を手に訓練場の真ん中で向かい合う。

 

「いいか、クライン。今回は最初から全力だ」

 

「いいのか?」

 

「もちろん。お前の力見せてやれ」

 

「よっしゃー! やってやる!」

 

 全力を出していいと言われてクラインはやる気を見せる。

 

「クライン、忘れてないよな?」

 

「忘れてないさ!」

 

 イースラの言葉にクラインは親指を立てて笑う。

 

「負けんなよー!」

 

「ガキに怪我させんじゃないぞ!」

 

 周りのギルド員たちも面白い見せ物だとヤジを飛ばす。

 誰一人としてクラインが勝つなどと思いもしてない。

 

「それでは……始め!」

 

 ムベアゾが上げた手をまっすぐに振り下ろした。

 

「はっ!」

 

 次の瞬間クラインがイナズマのように動いた。

 黄色いオーラを解放して一気にネムジンに迫った。

 

 斜めに振り上げられた剣にはしっかりとオーラが込められている。

 

「グッ!」

 

 不意をついた一撃をネムジンは受け止めきれなかった。

 木剣が半ばから切られ、ネムジンは距離を取ろうと飛び退いた。

 

「逃すか!」

 

 けれどクラインは隙を見逃さず食らいついて剣を振り下ろす。

 やられる。

 

 そう思ったネムジンが衝撃に備えて目をギュッと閉じた。

 

「そこまでだ」

 

「うえっ!?」

 

 振り下ろされたクラインの剣をムベアゾが掴んでいた。

 少し離れたところに突っ立っていたはずなのにいつの間に目の前に現れたのだとクラインが驚いた。

 

「オ、オーラだ……」

 

「しかもネムジンがやられてしまったな……」

 

「不意打ちに近かったけれども良い動きだった。油断したあいつも悪いな」

 

 周りはクラインがオーラを見せてネムジンを圧倒したことに驚いている。

 始まった瞬間にオーラを使って一気に攻め立てたのはほとんど不意打ちである。

 

 しかし余裕だろうと油断していたネムジンもしっかりと悪いのである。

 

「オーラはどうやって発現した?」

 

「師匠に教えてもらって」

 

「師匠だと? 剣も師匠に習ったのか?」

 

「うん」

 

「その師匠はどこにいる?」

 

「そこにいるよ」

 

 クラインはイースラのことを見る。

 どうやってオーラを最初に発現させたのか細かいやり方について教えちゃダメだと言ったが、イースラが教えたことであるというところまでは言っていいとクラインに伝えてある。

 

「だからあいつ、俺よりも強いですよ?」

 

「…………」

 

 ムベアゾはイースラに視線を向けた。

 正直ネムジンは危なかった。

 

 ムベアゾが止めなきゃオーラの込められた剣で頭をかち割られていたことだろう。

 目を閉じて攻撃を受けるなど後で叱責ものだがそうでなくともかなり危険な一撃なのは間違いない。

 

 それをイースラが教えたのだとすればクラインよりも強いというのは嘘じゃないだろう。

 

「次はこの子、いいですか?」

 

「わ、私?」

 

「なんだ? 最後がいいか?」

 

「あ、やだ。先に行く」

 

 このまま勢いに乗ってサシャにも頑張ってもらう。

 トリを務めるのは流石にはばかられるのでサシャも大人しくクラインと交代で前に出る。

 

「ユリシャス」

 

「は、はい!」

 

 次に名前を呼ばれたのはサシャに合わせて女性であった。

 暗い赤毛を一つに束ねていてネムジンよりも年上に見えた。

 

「油断するなよ」

 

「わ、分かりました!」

 

 ムベアゾに険しい目を向けられてユリシャスは背筋を伸ばした。

 

「サシャ、そんなに固くなるな」

 

「わ、分かった」

 

 クラインと違ってサシャは緊張で固くなっている。

 ユリシャスも緊張しているようだったが戦いが始まってみれば冷静だった。

 

 クラインのように先手必勝で攻撃を仕掛けたが、ネムジンの二の舞にならないようにと警戒していたユリシャスには通じなかった。

 最初こそサシャが優勢に進めていたけれど、戦いが進んでサシャがまだまだ未熟だとバレてしまうとあっという間にサシャは技術で追い詰められて負けることになった。

 

「うえん……」

 

 クラインは勝てたのにとサシャは落ち込んでいる。

 

「そう落ち込むな。クラインは相手も油断してたし運が良かった。サシャもよくやったよ。だいぶ強くなったな」

 

「ほ、本当? ならよかった」

 

 クラインのように相手が油断していればチャンスがあったかもしれない。

 しかしクラインのことがあって相手の油断がなかった。

 

 さらにムベアゾはネムジンよりも強い相手をサシャにぶつけてきた。

 勝つのは難しい戦いだったのである。

 

 それでも諦めずよく戦った方だ。

 イースラが頭を撫でて労いの言葉をかけてやるとサシャは頬を赤らめてフニャリと顔を緩める。

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