Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
A.香織の成長が出来なくなったり、アンカジでハジメさんだけが目立ってしまうのでダメです。
後、前作みたいになんでもポンポンやったら、苦労も何もありませんから。
ミュウとレミアと別れて数時間。
漸く陸地に着いた俺達は、転移でアンカジの入場門近くに来ていた。
香織の再生魔法の修練がてら、アンカジのオアシスを元に戻し、名物のフルーツを味わう為だ。
そして現在、漸く入場門が見え始めた所なのだが、何やら前回来た時と違って随分と行列が出来ていた。
大きな荷馬車が数多く並んでおり、雰囲気からしてどうも商人の行列の様だ。
ハジメ「随分と大規模な隊商だなぁ……。」
ユエ「……ん、時間かかりそう。」
香織「多分、物資を運び込んでいるんじゃないかな?」
香織の推測通り、長蛇の列を作っているのは【アンカジ公国】が【ハイリヒ王国】に救援依頼をし、要請に応えてやって来た救援物資運搬部隊に便乗した商人達だったらしい。
王国側の救援部隊は当然の如く先に通されており、今見えている隊商も余程アコギな商売でもしない限り、アンカジ側は全て受け入れている様だ。
何せ水源がやられてしまったので、既に収穫して備蓄していたもの以外作物類も安全の為廃棄処分にする必要があり、水以外に食料も大量に必要としているのだ。
相手を選んでいる余裕は無さそうだ。
が、流石にこんな数を待つのは面倒なので、クローズドラゴンを飛ばして、入場門の前で滞空・旋回させた。
突然、自分達の頭上を通り抜けていく青い物体に、隊商の人達がギョッとした様に身を竦めた。
「すわっ、魔物か!?」等と内心で叫んでいる事だろう。
それは門番も同じ様で、入場門の上空で旋回しているクローズドラゴンに武器を構え、警戒心と恐怖を織り交ぜた険しい視線を向けている。
しかし、俄かに騒がしくなった門前を訝しんで奥の詰所から現れた他の兵士がクローズドラゴンを目にした途端、何かに気がついた様にハッと目を見開き、誰何と警告を発する同僚を諌めて、武器も持たずに出迎えに進み出てきた。
更に他の兵士に指示して、伝令に走らせた様である。
兵士「ああ、やはり使徒様方でしたか!戻って来られたのですね!」
やってきた兵士は香織の姿を見ると、ホッと胸をなで下ろした。
以前、治療の際に飛び回っていたクローズドラゴンを見かけたことがあるのだろう。
そしてそれが、"神の使徒"の一人としてアンカジで知れ渡っている香織の従魔であると認識されているらしい。
まぁ、恋人の俺が作ったもの
そして、知名度は香織が一番なので、代表して前に出てもらった。
香織「はい。実は、オアシスを再生できるかもしれない術を手に入れたので試しに来ました。
領主様に話を通しておきたいのですが……。」
門番「オアシスを!?それは本当ですかっ!?」
香織「は、はい。あくまで可能性が高いというだけですが……。」
門番「いえ、流石は使徒様です。と、こんな所で失礼しました。既に領主様には伝令を送りました。
入れ違いになってもいけませんから、待合室にご案内します。
使徒様の来訪が伝われば、領主様も直ぐにやって来られるでしょう。」
やはり、国を救ってもらったという認識なのか兵士の俺達を見る目には多大な敬意の色が見て取れる。
VIPに対する待遇だ。
俺達は好奇の視線を向けてくる商人達を尻目に、門番の案内を受けて再び【アンカジ公国】に足を踏み入れた。
ランズィ「久しい……という程でもないか。息災な様で何よりだ、ハジメ殿。
先日の静因石の件は、誠に助かった。」
領主であるランズィ公が息せき切ってやって来たのは、俺達が待合室にやって来て15分程だった。
随分と早い到着だ。それだけランズィ公達にとって俺達の存在は重要なのだろう。
ハジメ「国の一大事ですから。それよりも、漸く王国も動き出したようですね。」
ランズィ「ああ。備蓄した食料と、ハジメ殿達が作ってくれた貯水池のおかげで十分に時間を稼げた。
王国から援助の他、商人達のおかげで何とか民を飢えさせずに済んでいる。」
そう言って、少し頬がこけたランズィ公は穏やかに笑った。アンカジを救う為連日東奔西走していたのだろう。
疲労が滲み出ているが、その分成果は出ている様で表情を見る限りアンカジは十分に回せていけている様だ。
香織「領主様。オアシスの浄化は……。」
ランズィ「使徒殿……いや、香織殿。オアシスは相変わらずだ。
新鮮な地下水のおかげで、少しずつ自然浄化は出来ている様だが……中々進まん。
このペースだと完全に浄化されるまで少なくとも半年、土壌に染み込んだ分の浄化も考えると1年は掛かると計算されておる。」
少し憂鬱そうにそう語るランズィ公に、香織が今すぐ浄化できる可能性があると伝える。
それを聞いたランズィ公の反応は劇的だった。
掴みかからんばかりの勢いで「マジで!?」と口調すら崩して唾を飛ばして確認するランズィ公に、香織は完全にドン引きしながらコクコクと頷く。
俺の影に隠れる香織を見て、取り乱したと咳払いしつつ居住まいを正したランズィ公は、早速浄化を頼んできた。
元よりそのつもりで来たので直ぐに頷き、俺達一行はランズィ公に先導され農地地帯へと向かった。
オアシスには、全くと言っていい程人気が無い。普段は作物の収穫で賑わっているのだが……
その事を思い出し、ランズィ公が無表情ながらも何処か寂しそうな雰囲気を漂わせている。
だが、そんな状況もすぐに変わる。オアシスの端に立って再生魔法を行使するのは香織だ。
再生魔法の適性が一番高かったのは香織で、次がティオとトネリコ、その次がユエだった。
ユエの場合、相変わらず自前の固有魔法"自動再生"があるせいか、任意で行使する回復作用のある魔法は苦手な様だ。
反対に、"治癒師"である香織は回復と"再生"に通じるものがある様で一際高い適性を持っており、より広範囲に効率的に行使出来る様だ。
トネリコも回復魔法は勿論、疑似的なタイムスリップが出来る魔術を使えるらしいが、回復は香織ほど上手ではないようで、適正は香織より少し低めのようだ。
因みにシアの場合、まともに発動できなくてもオートリジェネのような自動回復効果があるらしく、また、意識すれば傷や魔力、体力や精神力の回復も段違いに早くなるらしい。
どんどん超人化していくシア。
身体強化のレベルや体重操作の熟練度も上がっているようなので、自動回復装置付きの重戦車のようになって来ている。
トシも闇魔法と組み合わせて、状態異常解除前の状態に戻して、解除ループに至らせるというやばい戦法を思いついているので、適正云々というよりも使い方次第だろう。
尚、元から使える俺に関してはノーコメントで。だって、魔王だし。
そして、そうこうしているうちに香織の再生魔法が発動する。
香織「──"絶象"!」
瞑目したままアーティファクトの白杖を突き出し呟かれた魔法名。
次の瞬間、前方に蛍火の様な白菫の淡い光が発生し、スッと流れる様にオアシスの中央へと落ちた。
するとオアシス全体が輝きだし、淡い光の粒子が湧き上がって天へと登っていく。
それは、まるでこの世の悪いものが浄化され天へと召されていく様な神秘的で心に迫る光景だった。
誰もがその光景に息をするのも忘れて見蕩れる。
術の効果が終わり、オアシスを覆った神秘の輝きが空に溶ける様に消えた後も、ランズィ公達は暫く余韻に浸る様に言葉も無く佇んでいた。
少し疲れた様子で額を拭う香織を労いつつ、俺はランズィ公を促す。
ハッと我を取り戻したランズィ公は、部下の人に命じて水質の調査をさせた。
部下の男性が慌てて検知の魔法を使いオアシスをくまなく調べる。
固唾を呑んで見守るランズィ公達に、検知を終えた男は信じられないといった表情でゆっくりと振り返り、ポロリと溢す様に結果を報告した。
検知官「……戻っています。」
ランズィ「……もう一度言ってくれ。」
再確認の言葉に部下の男は、息を吸って今度ははっきりと告げた。
検知官「オアシスに異常なし!元のオアシスです!完全に浄化されています!」
その瞬間、ランズィ公の部下達が一斉に歓声を上げた。
手に持った書類やら荷物やらを宙に放り出して互いに抱き合ったり肩を叩きあって喜びを露わにしている。
ランズィ公も深く息を吐きながら、感じ入った様に目を瞑り天を仰いでいた。
ハジメ「後は、土壌の再生だな……ランズィ公、作物は全て廃棄したのですか?」
ランズィ「……いや、一箇所にまとめてあるだけだ。廃棄処理に回す人手も時間も惜しかったのでな……
まさか……それも?」
ハジメ「ユエ、ティオ、トネリコ。お願いできる?」
ユエ「……ん、問題無い。」
ティオ「うむ。折角丹精込めて作ったのじゃ、全て捨てるのは不憫じゃしの。任せるが良い。」
トネリコ「頑張ります!香織さんも頑張りましたし、次は私たちの番です!」
俺達の言葉に本当に土壌も復活するのだと実感したのか、ランズィ公は胸に手を当てると人目も憚らず深々と頭を下げた。
本来、領主がする事では無いが、そうせずにはいられない程ランズィ公の感謝の念は深かったのだろう。
公国への深い愛情が、そのまま感謝の念に転化した様なものだ。
その礼を受けながら、早速農地地帯の方へ移動しようとした。その時だった。
ハジメ「……折角良い雰囲気だというのに、無粋な輩が来たようだな。」
不意に感じた不穏な気配に、俺の呆れた様な言葉で皆がその歩を止められる。
視線を巡らせば、遠目に何やら殺気立った集団が肩で風を切りながら迫ってくる様子が見えた。
【アンカジ公国】の兵士とは異なる装いの兵士が隊列を組んで一直線に向かってくる。
どうやらこの町の聖教教会関係者と神殿騎士の集団の様だった。
俺達の傍までやって来た奴等は、直ぐ様俺達を半円状に包囲した。
そして神殿騎士達の合間から、白い豪奢な法衣を来た初老の男が進み出てきた。
物騒な雰囲気に、ランズィ公が咄嗟に男と俺達の間に割って入る。
???「ゼンゲン公……こちらへ。彼等は危険だ。」
ランズィ「フォルビン司教、これは一体何事か。彼等が危険?二度に渡り、我が公国を救った英雄ですぞ?
彼等への無礼は、アンカジの領主として見逃せませんな。」
フォルビン司教と呼ばれたジジイは、馬鹿にする様にランズィ公の言葉を鼻で笑った。
ジジイ「ふん、英雄?言葉を慎みたまえ。
彼等は既に異端者認定を受けている、不用意な言葉は貴公自身の首を絞める事になりますぞ。」
ランズィ「異端者認定……だと?馬鹿な、私は何も聞いていない。」
俺に対する"異端者認定"という言葉に、ランズィ公が息を呑んだ。ランズィ公とて、聖教教会の信者だ。
その意味の重さは重々承知しているだろう。それ故に、何かの間違いでは?と信じられない思いでジジイに返した。
ジジイ「当然でしょうな。今朝方、届いたばかりの知らせだ。
このタイミングで異端者の方からやって来るとは……クク、何とも絶妙なタイミングだと思わんかね?
きっと、神が私に告げておられるのだ。神敵を滅ぼせとな……これで私も中央に……。」
神の意思などなくとも、宗教関係者で欲に溺れる阿呆はいるものだな。聞こえた呟きに呆れる俺であった。
どうやら俺が異端者認定を受けた事は本当らしいと理解し、思わず背後の俺を振り返るランズィ公。
別に異端者認定など気にも留めないが……アンカジの民に迷惑をかけるわけにはいかないしなぁ。
取り敢えず視線で「どうします?」とランズィ公に問いかけてみる。
その視線を受けて眉間に皺を寄せるランズィ公に、如何にも調子に乗った様子のジジイがニヤニヤと嗤いながら口を開いた。
ジジイ「さぁ、私は、これから神敵を討伐せねばならん。
相当凶悪な男だという話だが、果たして神殿騎士100人を相手に、どこまで抗えるものか見ものですな。
……さぁさぁ、ゼンゲン公よ、そこを退くのだ。よもや我ら教会と事を構える気ではないだろう?」
ランズィ公は瞑目する。
その様子だと、俺が異端者認定を受けた理由を察したようだ。
俺が持つ力やその性格、その他あらゆる情報から、自らが管理できない巨大な力を教会は許さなかったのだろうと。
しかし、たった100人程度で勝てると思われているとは……なんとも甘く見られたものだ。
その程度なら、人質がいようとも即座に奪い返して返り討ちにできよう。
にしても、中央上層部は相当頭が悪いようだなぁ。
ただでさえ魔人族との戦争中なのに、ここで俺たちと戦争とは……やはり王都の様子がキナ臭いな。
まぁ、万が一戦闘になったとしても、転移でアンカジの外でやればいいだけだしな。
後はランズィ公、貴方の決断だけだ。すると、ランズィ公は目を見開き、口元に笑みを浮かべた。
そして黙り込んだランズィ公にイライラした様子のジジイに領主たる威厳をもって、その鋭い眼光を真っ向からぶつけ、アンカジ公国領主の答えを叩きつけた。
ランズィ「断る。」
ジジイ「……今、何といった?」
全く予想外の言葉に、ジジイの表情が面白い程間抜け顔になる。
そんなジジイの様子に、内心聖教教会の決定に逆らうなど有り得ない事なのだから当然だろうなと苦笑いしながら、ランズィ公は揺るがぬ決意で言葉を繰り返した。
ランズィ「断ると言った。彼等は救国の英雄。例え、聖教教会であろうと彼等に仇なす事は私が許さん。」
老害「なっ、なっ、き、貴様!正気か!教会に逆らう事がどういう事か分からん訳では無いだろう!
異端者の烙印を押されたいのか!」
ランズィ公の言葉に、驚愕の余り言葉を詰まらせながら怒声をあげるジジイ。
周囲の神殿騎士達も困惑した様に顔を見合わせている。
ランズィ「フォルビン司教。中央は、彼等の偉業を知らないのではないか?
彼は、この猛毒に襲われ滅亡の危機に瀕した公国を救ったのだぞ?
報告によれば、勇者一行もウルの町も彼に救われているというではないか……そんな相手に異端者認定?
その決定の方が正気とは思えんよ。
故に、ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、この異端者認定に異議とアンカジを救ったという新たな事実を加味しての再考を申し立てる。」
ジジイ「だ、黙れ!決定事項だ!これは神のご意志だ!逆らう事は許されん!
公よ、これ以上その異端者を庇うのであれば貴様も、いやアンカジそのものを異端認定する事になるぞ!
それでもよいのかっ!」
どこか狂的な光を瞳に宿しながら、ジジイはとても聖職者とは思えない……どこぞのチンピラプリーストよりも下品な雰囲気で喚きたてた。
それを冷めた目で見つめるランズィ公。ちょっと心配になって問いかけた。
ハジメ「……本当にいいんですか?王国と教会の両方と事を構える事になりますよ?
領主として、その判断はどうかと思んですが……。」
ランズィ公は俺の言葉には答えず、事の成り行きを見守っていた部下達に視線を向けた。
俺も誘われる様に彼等へ視線を向けると、2人の視線に気がついた部下達は一瞬瞑目した後、覚悟を決めた様に決然とした表情を見せた。
瞳はギラリと輝いている。明らかに「殺るなら殺ったるでぇ!」という表情だ。
その意志をジジイも読み取った様で、更に激高し顔を真っ赤にして最後の警告を突きつけた。
ジジイ「いいのだな?公よ、貴様はここで終わる事になるぞ。
いや貴様だけではない、貴様の部下も、それに与する者も全員終わる。神罰を受け尽く滅びるのだ!」
ランズィ「このアンカジに、自らを救ってくれた英雄を売る様な恥知らずはいない。神罰?
私が信仰する神は、そんな恥知らずをこそ裁くお方だと思っていたのだが?
司教殿の信仰する神とは異なるのかね?」
ランズィ公の言葉に怒りを通り越してしまったのか無表情になったジジイは、片手を上げて神殿騎士達に攻撃の合図を送ろうとした。
ヒュ……!カン……!
と、その時。何かが飛来し、一人の神殿騎士のヘルメットにぶつかった。
足元を見れば、そこにあるのは小石だった。
神殿騎士には何のダメージも無いが、なぜこんなものが?と首を捻る。
──カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!
しかしそんな疑問も束の間、石は次々と飛来し、神殿騎士達の甲冑に音を立ててぶつかっていった。
何事かと石が飛来して来る方を見てみれば、いつの間にかアンカジの住民達が大勢集まり神殿騎士達を包囲していた。
彼等はオアシスから発生した神秘的な光と、慌ただしく駆けていく神殿騎士達を見て何事かと野次馬根性で追いかけて来た人々のようだ。
彼等は神殿騎士が自分達を献身的に治療してくれた"神の使徒"たる香織や、特効薬である静因石を大迷宮に挑んでまで採ってきてくれた俺達を取り囲み、それを敬愛する領主が庇っている姿を見て、「教会の奴等乱心でもしたのか!」と憤慨し、敵意も露わに少しでも力になろうと投石を始めたらしい。
ジジイ「やめよ!アンカジの民よ!奴等は異端者認定を受けた神敵である!奴等の討伐は神の意志である!」
すると、ジジイが殺気立つ住民達の誤解を解こうと大声で叫ぶ。
彼等はまだ、俺達が異端者認定を受けている事を知らないだけで、司教たる自分が教えてやれば直ぐに静まるだろうとでも思っているのだろう。
実際、聖教教会司教の言葉に住民達は困惑を露わにして顔を見合わせ、投石の手を止めた。
そこへ、今度はランズィ公の言葉が、威厳と共に放たれる。
ランズィ「我が愛すべき公国民達よ。聞け!彼等はたった今、我等のオアシスを浄化してくれた!
我等のオアシスが彼等の尽力で戻ってきたのだ!そして、汚染された土地も!作物も!全て浄化してくれるという!
彼等は、我等のアンカジを取り戻してくれたのだ!この場で多くは語れん。故に、己の心で判断せよ!
救国の英雄を、このまま殺させるか、守るか。……私は、守る事にした!」
ジジイは「そんな言葉で、教会の威光に逆らう訳がない。」と嘲笑混じりの笑みをランズィ公に向けようとした。
──カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!
ジジイ「なっ、なっ……!?」
が、次の瞬間、住民達の意思が投石という形をもって示され、ジジイはその表情を凍てつかせた。
再び言葉を詰まらせたジジイに住民達の言葉が叩きつけられた。
「ふざけるな!俺達の恩人を殺らせるかよ!」
「教会は何もしてくれなかったじゃない!なのに、助けてくれた使徒様を害そうなんて正気じゃないわ!」
「何が異端者だ!お前らの方が余程異端者だろうが!」
「きっと、異端者認定なんて何かの間違いよ!」
「香織様を守れ!」
「領主様に続け!」
「香織様、貴女にこの身を捧げますぅ!」
「冒険者さん!今の内に逃げて下さい!」
「おい、誰かビィズ会長を呼べ!"香織様にご奉仕し隊"を出してもらうんだ!」
どうやら住民達は、ランズィと香織、そして静因石を採ってきた俺達に深い感謝と敬愛の念を持っているらしい。
信仰心を押しのけて、目の前のランズィと香織一行を守ろうと気勢を上げた。
否、きっと信仰心自体は変わらないのだろう。
ただ自分達の信仰する神が、自分達を救ってくれた"神の使徒"である香織を害す筈が無いと信じている様だ。
要するに、"信仰心"がジジイ共教会への信頼を上回ったという事だろう。
尤も、元々信頼があったのかは分からないが……いや、聞くまい。
とはいえ、最後の団体についてはちょっと相談が必要だが、その気持ちはとても伝わった。
そういえば、ミレディ達の時代にも、ラインハルトのように解放者じゃないとはいえ、教会を非難する信者もいたしな。
どこの世界にも正しい価値観と勇気を持った、素晴らしい民衆は現れるものだ。
そう感慨に耽っていると、事態を知った住民達が、続々と集まってきた。
彼等一人一人の力は当然の如く神殿騎士には全く及ばないが、際限なく湧き上がる怒りと敵意にジジイや生臭坊主、へっぽこ神殿騎士共はたじろいだ様に後退った。
ランズィ「司教殿、これがアンカジの意思だ。先程の申し立て……聞いてはもらえませんかな?」
ジジイ「ぬっ、ぐぅ……ただで済むとは思わない事だっ!」
歯軋りしながら最後に俺達を煮え滾った眼で睨みつけると、ジジイは踵を返した。
その後を、神殿騎士達が慌てて付いていく。
ジジイは激情を少しでも発散しようとしているかの様に、大きな足音を立てながら教会の方へと消えていった。
ハジメ「ハハハ、随分と思い切ったものですね?」
当事者でありながら、最後まで蚊帳の外に置かれていた俺が笑いながらランズィ公に問いかける。
一方香織達は、自分達のせいでアンカジが今度は王国や教会からの危機に晒されるのではと心配顔だ。
だがそんな俺達に、ランズィ公は何でもない様に涼しい表情で答えた。
ランズィ「なに、これは"アンカジの意思"だ。この公国に住む者で貴殿等に感謝していない者などおらん。
そんな相手を、一方的な理由で殺させたとあっては……それこそ、私の方が"アンカジの意思"に殺されてしまうだろう。
愛すべき国でクーデターなど考えたくもないぞ。」
ハジメ「成程。別にあの程度の連中程度返り討ちに出来ますが……
どうやら貴公は、確りと民の声を聴いているようですね。素晴らしい国だと改めて思いましたよ。」
ランズィ公の言葉に、機嫌がよさそうに俺がそう言うと、ランズィは我が意を得たりと笑った。
ランズィ「そうだろうな。つまり君達は、教会よりも怖い存在という事だ。
救国の英雄だからというのもあるがね、半分は君達を敵に回さない為だ。
信じられない様な魔法を幾つも使い、未知の化け物をいとも簡単に屠り、大迷宮すらたった数日で攻略して戻ってくる。
教会の威光を微風の様に受け流し、100人の神殿騎士を歯牙にもかけない。
万群を正面から叩き潰し、勇者すら追い詰めた魔物を瞬殺したという報告も入っている……いや、実に恐ろしい。
父から領主を継いで結構な年月が経つが、その中でも一、二を争う英断だったと自負しているよ。」
俺としては、ランズィ公が自分達を教会に引き渡したとしてもどうこうするつもりは無かったのだが、ランズィ公は万一の可能性も考えて教会と俺達を天秤にかけ後者を取ったのだろう。
確かに国の為とは言え、教会の威光に逆らう行為なのだ。英断と言っても過言ではないだろう。
ハジメ「……では、その勇気ある決断には、こちらも返礼をしなければいけませんね。」
そういって俺はアームドアローを取り出すと、教会の方を向いた。
ランズィ「ハジメ殿?」
突然、弓を取り出した俺に、ランズィ公は疑問を浮かべて問いかける。
ハジメ「俺は貴方を、このアンカジを気に入った。
そして、先程の言葉と民達の勇気に応えて、対価を払いましょう。」
俺はそれだけ告げて、アームドアローの矢に複数の魔法を付与すると、勢いよく弓を引き絞る。
ハジメ「"
その言葉と共に、俺は矢を放った。放たれた紅い矢は、教会に向けて弓なりに飛んで行く。
やがて、その残光も見えなくなった頃……
チュドォォォォォン!!!
黒き大嵐が教会を飲み込んだかと思えば、一瞬でそれが止んだ。まるで蝋燭の火を吹き消すかのように。
目の前でその光景を見ていたユエ達やランズィ公、いつの間にか合流していたビィズですら理解出来なかった様で、漸く理解した時には既に教会は底の見えない大穴に変わっていた。
ハジメ「罰だの裁きだのとほざくのなら、この程度の攻撃位弾いてからものを言え。」
教会のあった場所に向けて、それだけ言って踵を返す。
未だに皆、口をあんぐりとさせている様だが……この後のこともあるから、早く立ち直ってくれ。
幸利「……今、何の魔法を重ね掛けした!?」
ハジメ「え?"壊劫"を付与して、空間魔法と魂魄魔法で範囲と対象を指定して「わかった、もういい!早く次にいこうぜ!」お、おう……?」
そして、ランズィ公達を促し、早速次の準備に取り掛かるのであった。
ランズィ「取り敢えず死者達と民衆はここに集めているが……どうするつもりだ?」
数分後。
ランズィ親子によってアンカジの民衆はオアシス周辺に留められ、今回の一件で亡くなった死者達の遺体も全てその近くに周辺に移送された。
人々はその中に家族や友人を見つけ、その胸に悲しみと寂寥感を思い出す。
その姿に心を痛めながら、ランズィは私の意図が読めず疑問符を浮かべている。ユエ達も同様だ。
私はオーマジオウに変身しながら、その問いに答えず、数歩前に踏み出す。すると案の定、人々の注目は私に集まる。
ハジメ「今から少し皆を驚かせるが、害の無い事は約束しよう。故に、静かに見ていてくれ。」
私はそう前置き、両の掌をゆっくりと合わせる。
その中に、少しずつ光が集まり、一つの輝きを放っていく。それはまるで、旭のような温かさが込められていた。
ハジメ「――"創世・招魂回生"。」
そして、その掌が少しずつ開かれた途端。その中にあった光が解き放たれ、粒子となって飛んで行った。
ふよふよと浮いていた粒子は、近くにあった遺体に吸い込まれていき、やがて全ての遺体に粒子が吸い込まれた。
そして、その場を眩くも温かな光が包み込み、直ぐにそれは収まった。
が、先程とは何も変わっていないように見えるその光景に誰もが困惑の声を上げ……次の瞬間には驚愕に固まった。
「……んぅ、あれ? 俺は……?」
「私、何で……?」
「おかあさん……?」
何と遺体が、先程まで遺体だった筈の人々が次々に目を開けた。声を上げた。体を起こした。
ある程度の時間差はありつつも皆、まるでただ眠っていただけの様に起き上がった。
その姿からは、病に侵された弱った様子は一切無い。オアシスが汚染される以前の、健常な姿だった。
奇跡のようなその光景を見た人々は数瞬の沈黙の後……
――ワァァァァァ!!!
歓声に包まれた。皆、もう会えぬと思っていた大事な存在を抱き締め、涙を流している。
先程まで死んでいた者達もまた、自分達は死んだ筈という記憶と目の前の光景が嚙み合わず、何が何やら分からないながらも笑顔を浮かべて抱き返す。
ランズィ「こんな……こんな奇跡が!」
目の前で繰り広げられた有り得ない奇跡に、ランズィ達は驚愕で声を大に涙を流す。
これは夢ではない、夢の様な現実だ。神の所行とは、正しくこの様な事を言うのだ。
尤も、私は通りすがっただけの魔王だが。
私が神に遣わされた救世主ではなく、正にアンカジを救う為に地上に立った神なのだと本気で思ったのか、民も、兵も、医者も、皆再会の喜びと共に私への感謝を口にする。
神だと崇めだす者も現れ始めたが、流石に勘弁してもらおうとしたその時。
ハジメ「ッ……少し、張り切りすぎたか……。」
急激に力が抜けていく感覚に思わず膝をつき、私は変身を解除して両手でどうにか倒れそうになる体を支えた。
ぶっつけ本番なせいか、少しリソース配分を誤ってしまったようだ……。
ユエ「ハジメっ!!」
シア「ハジメさん!!」
ティオ「ご主人様っ!」
香織「ハジメくんっ!」
トネリコ「ハジメさんっ!!」
幸利「ハジメっ!!」
そこへ、咄嗟に飛び出たユエ達が俺の下へ駆け寄り、俺の体を支えてくれたおかげで、どうにか両足で立ち上がることはできた。
すると、突然倒れかけた俺に、ランズィ公やアンカジの人々も心配そうな表情で駆け寄る。
ランズィ「ハジメ殿っ!大丈夫か!?」
ハジメ「ご、ご心配には、及びません……少し、疲れただけです……。」
どうにか大丈夫だと伝えようとするが、息が上がってしまい、声も途切れ途切れになってしまう。
肩に力も入らない……流石に無茶が過ぎたか。
ティオ「ご主人様、一体何をしたのじゃ!?」
ハジメ「"創世・招魂回生"……世界を作り変える、創世の力による、死者蘇生だ……。
魂魄魔法は、死後数分間しか、効力がないが……創世の力を重ね掛けすれば、多少の無茶は、通せる……。」
トネリコ「そんな凄い力が……でも、その消耗は……。」
ハジメ「あぁ、代償に、大量のリソースを、食いやがる……。それも、馬鹿にならない量だ……。
今回は幸いにも、魔力欠乏症と、空腹が限界に近い、程度で済んだ……。」
グルルルルルルルゥゥゥゥゥ・・・・・・
そう言い終わると同時に、腹の底から獣の鳴き声かと聞き間違うほどの大きな音が鳴った。
本来なら途方もないリソース、それも命を削るような量と引き換えに発動すると聞き、周囲は驚愕の声を上げる。
それと同時に、そんな力を使って尚ふらつきながらも翳りの見えない俺の迫力と、自分達の為に躊躇い無く使ってくれたという事実に、最早感謝の念しか浮かばないようで、皆一様に感涙を目に浮かべていた。
ハジメ「ランズィ公……暫く、休みます。それと、台所を少し、お借りします……
空腹さえ満たせれば、回復するので……。」
ランズィ「それで済むなら、幾らでも使ってくれ!」
その快諾を受け、俺はシア達の肩を借りながら歓声を背に歩き出したのであった……。
騒動から3日。
農作地帯と作物の汚染を浄化した俺達は、輝きを取り戻したオアシスを少し高台にある場所から眺めていた。
視線の先、キラキラと輝く湖面の周りには、笑顔と活気を取り戻した多くの人々が集っている。
湖畔の草地に寝そべり、水際ではしゃぐ子供を見守る夫婦、桟橋から釣り糸を垂らす少年達、湖面に浮かべたボートで愛を語らい合う恋人達。
訪れている人達は様々だが、皆一様に笑顔で満ち満ちていた。
ハジメ「平和だな……。」
俺はその光景を見ながら、心地よさそうに呟いた。
あの後、"宝物庫"にあった浄化済魔物肉を食い、そのエネルギーを食没によって限界まで取り込むことですっかり回復した俺は、その後も名産の果物を味わい、収束錬成で砂金を集めて金塊を鋳造したり、兵士全員の武器に魔法や技能を付与したり、ランズィ公にも特製解毒用アーティファクトをあげたりと色々サービスをして過ごしていた。
そして今日、俺達はアンカジを発つ。
アンカジにおける俺達への歓迎ぶりは凄まじく、放っておけば出発時に見送りパレードまでしそうな勢いだったので、ランズィ公に頼んで何とか抑えてもらった程だ。
見送りは領主館で終わらせてもらい、俺達は自分達だけで門近くまで来て最後にオアシスを眺めているのだ。
ハジメ「さて、そろそろ出発しようか。」
幸利「だな。ところで……あの格好で行くわけじゃないよな?。」
ハジメ「まだ着替えてないのか……皆、もう出発するよ。上に何か羽織るくらいはして。」
そろそろ門に向かおうと、ユエ達を促す。
ユエ「……ん?飽きた?」
香織「え?そうなの?ハジメ君。」
ティオ「いや、ユエ、香織よ。ご主人様の目はそう言っておらん。単に目立たぬ様にという事じゃろう。」
シア「まぁ、門を通るのにこの格好はないですからね~。」
トネリコ「あはは……なんだか新鮮で、つい。」
シアがその場でクルリと華麗にターンを決めながら"この格好"と言ったのは、所謂ベリーダンスで着る様な衣装だった。
チョリ・トップスを着てへそ出し、下はハーレムパンツやヤードスカートだ。
非常に扇情的で、小さなお臍が眩しい。この衣装を着て踊られたりしたら目が釘付けになる事請け合いだろう。
なんでも、アンカジにおけるドレス衣装らしく、領主の奥方からプレゼントされたそうだ。
ユエ達がこれを着て披露しにきた時、俺は目が一瞬点になった。
勿論魅力的ではあったし、夜の時もある意味燃えたが……だからって1日中それは勘弁してほしい。
お腹が冷えちゃうといけないだろう。うれしくないのかって?そりゃお前……最高に決まってんだろ!
そんなこんなで、アンカジから出発したハジメ達。
ブリーゼを走らせ、そろそろホルアドに通じる街道に差し掛かる頃、ハジメ達は賊らしき連中に襲われている隊商と遭遇した。
そこでハジメ達は、意外すぎる人物達と再会する事を、まだ誰も知らなかった……。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今作で魂魄魔法を先に修得した理由は、この時のためでもあります。
何故なら、創世の力を使う上でその奇跡に関連する神代魔法があったほうが、その分消費が少なくできそうだからです。
後、食義と食没を覚えたのもこのためですw
一応、食べ合わせに関しても、この世界で似たような食材から栄養素を予想し、それに合致した食べ方をしましたので、回復はあっという間に済みました。
さていよいよ次回、第5章終了です!
もしもfateとのトリプルをやるとして、どんな女性サーヴァントと組ませたい?(モルガン・トネリコは本編で準レギュラーなので除く))
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アルトリア(青王)
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モードレッド
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玉藻の前
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スカサハ
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レディ・アヴァロン
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宮本武蔵
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沖田総司(オルタ含む)
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伊吹童子
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ティアマト
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ミスクレーン
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魔王信長
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ククルカン
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ジャンヌ(オルタ・メタ含む)
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ネロ
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アルテラ
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源氏鯖(頼光・義経・巴)
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河上彦斎
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いっそのことカルデア入り
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その他(活動報告欄で入力)
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それって、貴方の癖ですよね?