Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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これで漸く出発準備は完了です。
因みに、今話のみ衝動の思うがままに書き進めましたので、拙い部分があるかも知れませんが温かく見守っていただけると幸いです。


00:85A(after)/ブレイブ・グロウイング

光輝「……何をやっているんだろうな、俺は。」

深夜、ふと目が覚めた光輝は、自分の部屋のベッドから起き上がり、食堂に水を飲みに行こうとしていた。

その道中、疲れ果てて眠ってしまう前にあった出来事を思い返し、複雑な心境を抱いていた。

 

ハジメの圧倒的な強さへの嫉妬、揺らぐことなき覚悟への羨望、暴政とも言うべき方針への反発、自分の正義を鼻で笑われた憤り、そして……突き付けられた己の弱さに対する惨めさ、打ちのめされた自分の浅はかさ、殺されるかもしれないという恐怖。

それら全てが、適当に具材を混ぜ込んだ料理の様に、光輝の頭の中でごちゃ混ぜになっていた。

 

もうすぐ夜明けだ。日が昇れば、ハジメに命令された罪人達の処刑が待っている。

しかし、今まで拒否し続けてきた分のツケだろうか。

頭ではやらなくてはならないと分かっているのに、身体はそれをずっと拒否しており、一向に足が進まない。

 

もし躊躇えば自分達も殺すとハジメは言っていたが、きっとなんだかんだで許してくれるだろうと、以前の光輝ならそう楽観視していただろう。

だが、身動きもできない状態で死にそうな位殴られ続け、自分の心の中にあった子供の部分を厳しく指摘されたうえ、それを無様な姿と共に晒してしまったことで、既に光輝のプライドはズタボロだった。

 

あの時、自分にもっと力があれば、やり直せた筈。そんな考えが頭に浮かんだが、直ぐに消えた。

きっとそれでも、ハジメに勝つどころか真面に相手にされないだろう。

召喚されたこの世界で、光輝がハジメに勝てる事等、戦争に参加する前から一つもなかったのだから。

 

最初のステータスプレートの確認の時から、自分がハジメよりも弱い事はわかっていた。

だからこそ、光輝は必死に訓練に臨んだ。その成果もあり、ステータスも200まで上がっていた。

その上、メルドから皆の指揮を執ることを任された。これでハジメよりは強くなれただろう。そう思っていた。

 

しかし、ハジメのステータスは既に光輝を軽く上回っており、差は依然として縮まらず、寧ろ開く一方だった。

それどころか、指揮においても自分より早く正確なものを出しており、最初のホルアド攻略でも助けられてばかりで、ハジメのいない間に90層まで攻略した自分達を圧倒した魔人族すらも、帰ってきたハジメは軽く倒してしまった。

 

そして、昨日と一昨日も見せつけられた、ハジメとその仲間達の圧倒的な力。

死者を生き返らせたり、魔人族の軍勢を一掃したり、魂を入れ替えたりと、自分達には出来ない事をハジメは平然とやってのけて見せたのだ。

 

最初はそれに嫉妬し、その力を自分達やこの世界の為に使わないことに憤りを感じていた。

だが、ハジメはその意見を下らない矜持だと一蹴し、逆に光輝自身の意志の弱さを突き付けられた。

その上、受け続けたら死ぬ威力の拳を何発も食らっては、目を背けていた自分の子供っぽさを嫌という程指摘され、プライドも全て粉々に粉砕された。

 

結局、光輝が主張していたことは、無意識に描いていたご都合主義全開の絵空事に過ぎず、異世界という環境と無情な現実の前では何一つ、まかり通る筈の無いことだったのだ。

強い意志も覚悟もない光輝では、自分の妄想や夢を現実にすることなど不可能だった。

その事実に、光輝はただ打ちのめされ、呆然としていた。――自分は誰一人として救えないのだと。

 

光輝「……?灯りが、ついてる?」

その時、廊下の先にあった一部屋に灯りがついているのが見えた。

ふと、誰かがこんな時間に起きているのかと気になった光輝は、扉に寄り添い、耳を澄ませてみた。

 

???「何しに来た、光輝。」

光輝「うわぁっ!?」

すると、後ろから声が聞こえ、思わず飛び上がる光輝。咄嗟に後ろを振り向くが、誰もいない。

 

ハジメ「……処刑は早朝だ、寝不足で剣筋がズレたら困るだろうが。」キィ

かと思えば扉が明けられ、部屋の中にいた人物――先程、自分の回想の中で何度も立ちはだかった男、南雲ハジメが出てきた。

 

光輝「……ハジメか。」

ハジメ「おうよ、どしたこんな時間に?厠なら向こうだぞ。」

そう言って廊下の突き当たりを指すハジメ。どうやら寝ぼけてここまで来たと思われているようだ。

 

光輝「あ、あぁ、そうだな……それじゃあ――」

ハジメ「まだ、怖がっているのか?」

光輝「ッ!」

その核心を突く言葉は、光輝の心を鋭く抉った。

人は死ぬという現実への恐怖――それは、自分にも、周りの人間にも当てはまることだった。

 

ハジメ「別に最初っから慣れろなんて鬼畜なことは言わん。

戦争に参加する奴は、大抵その恐怖に直面しているし、別段恥ずかしがる事ぁねぇだろ。」

光輝「いや、別に怖くなんて「俺だって怖い時位はある。」……え?」

ハジメの意外な一言に、思わずポカンとなる光輝。

 

ハジメ「怖い物が無いという奴なぞ一人もいない。

あって当たり前だったものが失われる、それに恐怖しない奴ぁ自信過剰か失敗を知らん坊ちゃん位だ。

俺だってそれが怖くて、後悔したくないから強くなるしかない、それしか道が無いって思った。

じゃないと、守りたいもんも守れなくて死ぬほど後悔する。それが嫌だから、強くなるしかないんだ。」

光輝「!」

 

その言葉に、光輝は驚愕していた。

失う事への恐怖、形は違えどハジメもそれを抱えていたのだ。だからこそ、守りたいものの為に強くなる。

その為なら人殺しも厭わないという強い意志が、それを貫き通す覚悟があった。

 

ハジメ「光輝、世界を救うというお前の願いや、その思想を否定するつもりはない。

だがな、それを成すには相応の覚悟と強い意志が必要だ。」

光輝「覚悟と、意志……。」

ハジメ「そうだ。この先何があろうとも揺ぐことなき固い意志と、どんな状況下でもそれを貫き通す覚悟。

この2つがあれば、お前も、雫達も、もっと強くなれる。」

 

そう語りかけるハジメの眼には、食堂の時に向けていた厳しさはなく、何処か安らぐような優しさが籠っていた。

何もハジメは、ただ光輝を処刑人にさせて罪悪感を植え付けたいわけではない。

確かに、民衆の支持を得たり、疑念と不安を払拭したりする為という理由もあるが、光輝達に命を奪う覚悟を覚えさせることで、精神的にも成長してほしいという願いがあったのも事実なのだ。

 

光輝「どうして……お前は俺の事が嫌いなんじゃ……?」

ハジメ「?親友(ダチ)に手を貸さない理由なんてどこにもないだろ?

まぁ、これだけ言っても道理から外れた時は、容赦なくボコボコにして引きずり戻すけどな。」

不思議そうにする光輝に、あっけらかんとした様子で返すハジメ。

その顔には「何言ってんだコイツ?」と浮かんでおり、当たり前のことを聞かれたように見えた。

 

同時に、光輝の中で、ストンと何かが落ちた。

負の感情をあれだけぶつけられても気にしてないどころか、目の前の男は自分に「強くなれよ」と、親友として言葉をかけてきた。

今まで自分は何に拘っていたのか。なんだか、急に小さなことのように思えて、情けなく思えて、涙が溢れ出てきた。

 

光輝「うっ……グスッ……ヒッグ……。」

ハジメ「おいおい、泣くのはエンディングだけにしとけ。折角のイケメン面が台無しだぞ?」

光輝「ズズッ……余計なお世話だ、台無しにした奴に言われたくない……。」

ハジメ「ハッハッハッ!それもそうか!」

快活そうに笑うハジメに指摘され、涙を拭う光輝。しかしその瞳には、かかっていた影が薄れているように見えた。

 

ハジメ「まぁ、なんだ……それくらい言い返せるなら、お前は大丈夫だよ。」

光輝「!ハジメ……。」

優しく笑みを浮かべながらそう言うハジメの顔には、何処か安堵しているような感情が見えた。

それもその筈、実はハジメも内心で心配だったのだ。

光輝が闇堕ちしていないか、心が完全に折れていないか、はたまた自分への憎悪一色で良からぬことを考えていないかを。

 

勿論、その時は切り捨てるしかないと考えてはいたが、香織達の為にも出来るだけそちらを取りたくは無かったのだ。

ハジメ自身、身内には結構大甘なところがあり、檜山を敢えて処刑対象にしなかったのも、愛子の為だからだった。

但し、死刑ではなく私刑で済ませたことは内緒だ。

 

それを見て光輝は漸く理解した。何故、香織がハジメを好きになったのかを。

誰かに優しくできる強さと、その為に踏み出す勇気、守るべきものの為に戦う覚悟に、どんな理不尽があろうと揺らがぬ意志、それら全てをハジメは日本にいた頃から持っていた。

だからこそ、ハジメはここまで強くいられるのだ。きっとそれが、香織がハジメを好きになった理由なのだと。

ならば、自分も負けていられないなと、光輝はパンッ!と両頬を叩き、気合を入れた。

 

光輝「……ハジメ、俺はやるぞ!たとえ教会の人達から、憎まれ続けることになっても!」

ハジメ「!……全く、漸くその気になったか。」

決意を込めた光輝の眼差しを見たハジメは、やれやれと言いながらも少し嬉しそうな顔になった。

今ここに、勇者と魔王の道は、漸く交わったのだ。

 

ハジメ「それじゃあ光輝、俺が食堂で言ったことは覚えているか?」

光輝「え?あ~……なんだったか?」

ハジメ「……聞いてなかったのか?」

光輝「ち、違うぞ!ただ、あの時は色々あっただけで……。」

折角の雰囲気が台無しになり、ハジメにジト目を向けられたことで慌てる光輝。

 

ハジメ「フフッ……。」

光輝「な、なんだよ?」

ハジメ「いや、久しぶりにこうして他愛もない会話が出来たなって思うと、つい……。」

光輝「……それもそうだな。」

言い終えると、互いに笑い合う2人。それは正しく、教室での懐かしきやり取りに似ていた。

 

ハジメ「さて、俺があの時言いたかったのは3つ。相手が自分ならどう動くかを考える事。

勇気とは恐怖を克服し、我がものとして支配する事。そして、北風が勇者バイキングを作る。」

光輝「えっと……最後のだけ、良く分からないんだが……?」

ハジメ「……少し長くなるから入れ、座りながら茶でも飲んで話そう。」

光輝「お、おう……。」

そう言って光輝を部屋に入れ、何処からか持ってきたお茶入りコップを光輝に渡すと、椅子に座りながらハジメは続けた。

 


 

少し長くなるが……まぁ、聞いて行ってくれ。

今から話すのは、厳しい北風が吹きすさぶ、ノルウェーの北極海にいた男の話だ。

その漁師の住む海には、村人達を何人も殺し、恐怖のどん底に突き落としていた体長10m近くある人食いサメが潜んでいた。

 

ある日、男が漁に出かけた時、サメが男の小さな船を襲った。

幸いにも、その地点から岸までは近かったが、ここで緊急事態が発生する。

なんと、バラバラになりかけた船体に男は足を挟まれてしまった。

当然、船の重さで男は船ごと海中に沈んでしまった。

 

このままでは、岸に着く前にサメに食べられてしまう。かといって動かなければ窒息して溺れ死んでしまう。

正に絶体絶命の状況。だがしかし、男は最後まで諦めなかった。それどころか、生き残る為の策を思いついたのだ!

 

その策とは、挟まった自分の足を銛の刃で切断することだった!

ド根性で足を切り離したことで、男は溺れ死ぬことを回避し、岸に逃げ込めるようになった。

だが、その後の男の行動はもっと凄まじかった!

 

なんと、男は逃げるどころか傷口を海中に浸し、血でサメをおびき寄せようとした!

当然、サメはそれに釣られてやってきた。目の前に迫る人食いサメ、その瞬間、男は動いた。

眼前に迫っていたサメの脳天、そこへ銛を突き立て、脳みそを破壊して見事サメを倒した!

その後、奴は気骨ある強かなバイキング(村の英雄)となり、幸せな人生を送ったという……。

 

お伽噺は終わりさ……俺達の物語は、始まったばかりなんだ……。*1

 


 

ハジメ「この話の根幹は、ピンチを逆に勝機と見なし、知恵と機転を活かすことで、チャンスを掴んだ、という事だ。

つまり、厳しい環境は自分の持つものをどう活かすかでチャンスにもなりうるという事だ。」

光輝「な、成程……?」

分かったような分からないような顔になる光輝。勿論、ハジメさんはそれを咎めない。

だって、回りくどい言い方だったので。ノルウェーの下りも言ってみたかっただけなので、仕方がない。

 

ハジメ「そして先程出てきた男が、何故そんな行動に出ることが出来たか、分かるか?」

光輝「え?……ハッ!足を失う覚悟と、サメを倒すという意志があったからか!?」

ハジメ「惜しい、でも覚悟と意志はあっている。

答えは四肢を失おうとも戦い続ける覚悟と、サメも倒して自分も生きるという意志だ。」

光輝「意志は兎も角、覚悟決まりすぎじゃないか!?」

ご尤もである。どちらかというと、ハジメさんが野生のルールに若干染まりかけているのだ。

 

ハジメ「ま、取り敢えず心の片隅には置いといてくれ。きっと、今後この教訓が役に立つはずだ。」

光輝「……分かったよ。というか、何でさっきから俺の聖剣をチラチラ見ているんだ?」

ハジメ「あぁ、神山の試練でわかったんだが、実を言うと聖剣には女神様が宿っているらしくてな。」

光輝「はぁッ!?なんだよそれ、どういうことだ!?」

ハジメ「色々あってな。詳しくはまた今度話すよ、そろそろ朝になるからな……。」

そう言ってハジメが窓の外を見れば、空がうっすらと明るみを帯び始めていた。

 

光輝「!いつの間に……。」

ハジメ「さぁ、仮眠を取ったらすぐに行くぞ。泣き虫で強がりな勇者様を、皆が待ってるぜ?」

光輝「!……そうだな、理不尽で身内には甘い魔王様の指示だしな。」

ハジメ「カカッ、言うようになったじゃあないか!」

そうして2人は部屋を出て、バルコニーへと歩き出した。

――かつて、道場で共に肩を並べあった、あの日の様に。

 


 

――翌日

 

イシュタル「おのれ、背信者共めが!きっと神の天罰が下ろうぞ!!」

聴衆から蔑視と罵倒に包まれても尚、処刑台にてエヒトへの忠誠を叫び続けるイシュタル。

その首には枷が嵌められており、頭上には太陽に照らされて輝くギロチンが上がっていた。

ギロチンの刃は限界まで引き絞られており、その縄を切れば刃が降りて首を断つ仕組みになっている。

 

愛子「……。」

その縄の近くにいたのは、"豊穣の女神"愛子だ。

震えながらもイシュタルをキッと睨む彼女の手には、縄を断ち切る為の鋏が握られていた。

 

実は、既に当初の目的であった光輝のテコ入れが済んだ以上、愛子に無理にやらせるつもりはないハジメであったが、「生徒にやらせておきながら自分だけ安全圏なんて、そんなの自分が許せない」と言われてしまい、ハジメが折れて止む無く立候補を許してしまい、今に至る。

 

イシュタル「この阿婆擦れめが!神に召喚されておきながら、女神と呼ばれた上に謀反とは!なんと愚かな!」

愛子「ッ!」

そんな彼女にも、イシュタルは八つ当たりの様に憎悪の視線を向ける。

しかし愛子はそれに怯まず、言い放った。

 

愛子「……貴方こそ、私の生徒を、人の命を何だと思っているのです!」

イシュタル「……。」

広場に響いた声。それが聞こえた民衆は一旦罵倒を止め、愛子の言葉を聞き届けた。

 

愛子「勝手に召喚して、勝手に戦争に巻き込んで、勝手に押し付けて、挙句の果てには犯罪者扱い……

ふざけないでください!私の生徒は、この世界の人達は、エヒトの玩具なんかじゃありません!

そんなことの為に呼ばれて、戦ってきたんじゃありません!皆、必死に生き残る為に戦ってきたんです!

自分自身の意志で立ち上がって、今日まで走り抜いて来たんです!

それなのに……何が神の意思ですか!何が天罰ですか!何が異端者ですか!

貴方達の勝手な思想に、私の生徒を巻き込まないでください!私の生徒は、腐ったミカンじゃありません!」

 

それは、生徒を想う教師としての怒り。豊穣の女神としてではなく、生徒達の先生としての言葉だった。

自分にとって大事な生徒達を、大人の身勝手な事情で巻き込んだことへの憤りを乗せた叱責は、こんなに感情を露わにして怒った愛子を見たことが無い聴衆は勿論の事、生徒であるハジメや雫達ですら驚いていた。

……尚、最後のセリフに関しては、愛子が本気で怒ったことへの衝撃で、誰もツッコめなかった。

 

イシュタル「……それが何だというのだ?」

愛子「へ……?」

しかし、そんな状況下でさえ、イシュタルは依然として狂信者の顔をしていた。

 

イシュタル「神の御意思こそが至上であろうが!一身に祈りを捧げ、神に尽くし、神の為に生き、神の為に死ぬ!

我等が神に従属する事こそが、我等人間族の最大の幸福にして存在理由!何故それが分からん!

神への信仰を示すことこそが成すべき事であるというのに、それに逆らう貴様等の方が愚か者であろう!

剰え神敵なぞに靡きおって!この愚民共がぁ!今からでも遅くはない!エヒト様に全てを捧げよ!

さすれば人間族は永遠の繁栄を享受するのだ!ああ、エヒト様万歳!!!」

 

その叫びは正しく、エヒトを信仰する勢力の断末魔というには相応しく、悍ましいまでの執念だった。

あまりの狂気に聴衆の肌が粟立ち、近くで聞こえていた愛子が気圧されて、持っていた鋏を取り落としてしまった。

それほどまでの狂気が、場の空気を満たす中――それを断ち切らんとする者が現れた。

 

光輝「先生、俺にもやらせてください。」

落ちてしまった鋏を、慌てて拾おうとした愛子の代わりに拾い上げたのは、我等が勇者こと天之河光輝であった。

その姿勢には、以前にも増してカリスマが宿っており、狂気をものともせずに立っていた。

 

愛子「!天之河君……。」

光輝「この戦争に参加すると言い出したのは俺です。そのせいで、皆を巻き込んでしまった!

だから、自分の責任は自分で取りたいんです!これからエヒトを討つ、門出として!」

子供から大人への一歩を踏み出し、成長した光輝。

その頼もしい姿に、正気を乱されそうになっていた民衆達は落ち着き、新しい時代の勇者へ期待を寄せ始めた。

 

愛子「……わかりました、では同時にお願いします。」

光輝「!はいっ!」

そんな光輝の姿に励まされた愛子も、光輝から鋏を受けとると、片側の取ってを自分が持ち、もう片方を光輝に持たせた。

 

愛子「せーのっ!」

そして、愛子の掛け声と共に、鋏が縄を断ち切り、イシュタルの首を斬り落とした。

同時に民衆から、愛子と光輝に向けて歓声が上げられた。

その後も引き続き、教会上層部の罪状公開と処刑が執行され、光輝を始めとした執行者に歓声が送られ続けたのであった。

 


 

光輝「ハァッ……ハァッ……ウプッ……!」

そうして処刑が終わった後、光輝はいの一番に厠に駆け込み、胃の中のものを吐き出し始めた。

夕食は寝ている内に消化されており、朝食もまだなので吐けるものがなく、一層苦しそうに嘔吐いている。

あれだけ自信満々にやると言ったものの、初めての人殺し――それも連続で50人も自分の手で殺めたという事実は、光輝の心にずっしりとのしかかり、胃を圧迫してしまったのだろう。

因みに、愛子や雫達も同様に吐き気を感じており……その後は言わずもがなである。

 

???「……よく頑張ったな、光輝。」サスサス……

光輝「!」

そんな光輝の背中を、そっと誰かが背後から優しく摩り、労いの言葉をかけた。

振り返らずとも、その声を聞いただけで、光輝は気づいた。

 

メルド「私が教えられなかったことを、見事に乗り越えられたな。」

光輝「……はい。」

その人物は、皆の兄貴分にして父親の様な存在でもあった――王国騎士団"前"団長メルド・ロギンスだった。

 

彼もまた、ハジメに蘇生してもらい、こうしてここに立っていた。

当然、神の真実についても説明されており、彼自身神の使徒に殺されたこともあって、受けた衝撃は比較的低かった。

そして、混乱していた部下達を叱咤し、前団長として最後の使命――新たなる王のハジメに忠誠を誓ったのだ。

 

無論、その朗報は生徒達と騎士達に多大な歓喜を招いており、それに伴って"現"団長であるクゼリーが騎士団長の座を返還しようとしたが、それはメルド本人によって止められた。

ハジメとて本当はお咎め無しを望んでいたが、それでは民に示しがつかないので、葛藤と議論の末に、『【ホルアド】で不定期の警備、その後一兵卒からやり直し、功績次第では直ぐに昇級』となった。

 

メルド「ハジメから聞いたよ、自分の意志で覚悟を決めたと。」

光輝「えっ、いや……。」

ハジメのおかげだと、訂正しようとする光輝。

 

ハジメ「ね?言ったでしょ?光輝はもう一人でも大丈夫だって。」

光輝「!ハジメ……。」

が、それはメルドの後ろで隠れていたハジメが遮る。

光輝はその行動に困惑するが、ハジメから目線で「そういうことにしとけ。」と伝えられ、静かに頷いた。

 

ハジメ「ほら、メルドさん。他の皆の事も褒めてやってくださいよ~。」

メルド「お、おぉ?なんだかさっきより機嫌がよさそうだが……?」

そうしてメルドが雫達を労いに行った後、その場にハジメと光輝だけが残った。

 

光輝「……ハジメ。俺、やるよ。」

ハジメ「んあ?」

光輝「あの夜、お前は、勇気とは怖さを克服することだって言ってたよな?」

ハジメ「おうよ、それがどうした?」

その問いに対して、光輝は力強く返した。

 

光輝「俺は……罪もない人達が、恐怖に怯えないように、自分の勇気で怖さを乗り越えられるようにしたい!

その為に俺が、その希望の土台になる!皆が、これ以上誰かの意思で振り回されない、自由に生きられる世界にするために!」

ハジメ「……そうか。」

その誓いはただの理想ではなく、確固とした信念が宿っていた宣言だった。

光輝のその誓いに、ハジメはただ短く返すだけだったが、その声色には何処か嬉しさが滲んでいた。

 

光輝「だからハジメ!約束通り、俺達も連れて行ってもらうぞ!

どんな試練が待ち受けていようとも、俺は…俺達は乗り越えてみせる!」

ハジメ「嫌だと言っても無理やり連れて行くわい。生半可な精神力では、奴の洗脳からは逃れられん。

何より、それだけ大層なことを言った以上、有言実行してもらわねばな。」

そう言ってハジメは、光輝の頭を撫でながら、「うっはっはっはっはっはー♪」と上機嫌な高笑いをあげた。

 

ハジメ「確かに、器はなった!だが、ここからが本番だ!気合い入れろよ、ポンコツ勇者!」

光輝「!あぁ、スパルタだろうとドンと来い、ドS魔王!」

互いにそう言い合い、拳を合わせる2人。こうして、彼等の間には、固い信頼関係が築かれていった。

 


 

こうして、光輝達によってイシュタル含む教会上層部の司教等が処刑された。

その後、冒険者達によって捕縛されたその血族達と、お触れに違反して彼等を匿っていた者達も、踏み絵と信仰破棄の宣誓・署名を行った後に選別・隔離され、出来なかった者と犯罪歴のある者達は全員が晒し首となった。

 

尚、残った死体はハジメがブラックホールで分解・リソースにしたので、再生も不可能となっており、犯罪歴もなく信仰の意思がないと判断され、処刑されなかった者達は隔離されている。

そして、その中から新しく建てる教会の司教を選別するに当たって、次期教皇として候補が上がったのは、シモン・L・G・リベラ―ル――"解放者"ナイズ・グリューエンの子孫にあたる人物である。

 

そして、リリアーナを含めた、残るハイリヒ王族の処遇については……結果から言えば、"王族"から"特務公爵"への降格と、これから多忙となるハジメの代理として、ハイリヒ王国の統治が命じられた。

謂わば現状維持のお咎め無しである。

 

この案が出される前、ルルアリアはてっきり、自分達が平民や奴隷に落とされたり、処断されるのではと考えており、その場合は自分の持ちうる全て(文字通り何もかも)を差し出してでも、せめて自らが腹を痛めて生んだ、大切な子供達の助命だけでもどうにか願おうと心に決めていた。

ハイリヒ王家自体、教会信仰に関わっており、そのせいであまり良いイメージを持たれていないことも要因だった。

 

そして前日の宣言前の会議にて。

いざ覚悟して彼女達がその場に赴いてみれば、ハジメに告げられたことは、"特務公爵"としての立場、それも女性初の公爵としてルルアリアを頭首として認め、これから神代魔法やエヒト討伐で忙しくなる自分の代わりに、それら全てが終わるまでの統治*2・自分の出した改革を進めてほしいという勅命のみ。

 

助かったにもかかわらず、余りにも自分達に利がありすぎる結果に、ルルアリアは唖然としていた。

但し、前国王エリヒドは一切表舞台に出ることを禁じられ、離宮での蟄居が命じられたが。

ハジメも彼女の考えを読んでいたのか、後日、ルルアリアにこう答えた。

 

ハジメ「別に俺は、王国を自分のものにしたいわけじゃあない。

教会上層部の始末は、神権政治との決別と、支持率の回復の手段でしかありません。

なのに、貴女方まで処断してしまったら、一体民達は誰に指示を仰げばいいんです?

俺はこれから忙しい身なので、地位だけ貰ったらさっさとアレをぶっ殺して、直ぐに王位はお返ししますので、そのつもりでお願いします。」

何とも簡単な返事であり、清々しいまでに正直な意見だったと、ルルアリアは後に語ったとか。

 

……実は、ハイリヒ王家の家系が、オスカーとラウスに関係のある人物*3の子孫であることも、理由の一つであるのだが、彼女達はそれを知らない。

後は、リリアーナの為と言うハジメ個人……というより、リリアーナと親しい者総員の意思であった。

 

そんな、愛されまくっている王女リリアーナの立場はというと、表向きはハジメと婚約することを発表されてはいるが、実際には王族としての地位を確立する為の契約結婚であり、何らかの事態が起こった場合はハジメの有責破棄となり、リリアーナは白い婚約を結んだ悲劇の姫として振舞う……ということになっている。

尤も、リリアーナ自身はハジメと本当に結婚してもいいと望んでいるのだが……ハジメがそれを分かっているかは彼のみぞ知る。

 

それに、これにより親王族派を懐柔し取り込めるだけでなく、元々リリアーナ自身の人気が高い事も相まって、その人気をハジメに持ってくる事で、国民達に更なる安心と安寧をもたらすことが可能なのだ。

また、彼女等の身に何かあろうものなら、ハジメが神すらも凌駕する暴威を振るい、その障害をあっという間に駆逐して見せるだろう。

 

以上の事柄を以て、南雲ハジメはハイリヒ王国を統治するに至った。

*1
レーシングラグーン風

*2
終わり次第、王権はルルアリアに返還するとのこと

*3
コリン(オスカーの義妹)×シャルム(ラウスの息子)




勇者、漸く成長出来ました。苦節1年。
来週も3連続で行きますのでお楽しみに!

次回

ハジメ「おっす、おらハジメ。
ようやっと光輝も勇者らしくなって、俺の治世も軌道に乗り出し始めたものだ。
だけどやっぱ人同士のいざこざは何処でもあるようで、非常に頭が痛いよ。
まだ胃痛薬は必要なさそうだけどさ……。さて次回は、

●ぎるどのきん
●みまわりぶるーす
●せんせいといっしょ

の3本です。
来週も見てくれるかな?ジャン拳【ピー】!」

ハジメさんがライダー以外の能力を手に入れるとしたら?

  • 全スーパー戦隊の力
  • 全ウルトラマンの力
  • その他全特撮ヒーローの力
  • 全サーヴァントを召喚、使役する能力
  • 全てのスタンドを扱える力
  • 全ての魔術・魔法を扱える力
  • 全ジャンプ作品の力を扱える
  • 全サンデー作品の力を扱える
  • 全コロコロ作品の力を扱える
  • 全マガジン作品の力を扱える
  • 全てのラノベ作品の力を扱える
  • 別の世界に能力そのままで転生できる能力
  • 一億年ボタン
  • 全てのロボットを操縦できる能力
  • 無限残基
  • 女難に巻き込まれなくなる
  • 倒した敵の全能力を得る能力
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