Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

114 / 116
今作は展開の都合上、前作より少し多めに加筆修正が入っています。その辺りも楽しんでいただけると幸いです。


00:86(序)/「G」olden farce

ガヤガヤ……ザワザワ……

 

ハジメの新国王就任から5日経った王都は、普段に増して喧騒に満ちていた。

あの宣言によって、人々の胸に去来した驚愕感や興奮は、僅かな衰えもなく心に刺激を与えていた。

ハジメの齎した神の如き癒しは、それ程までに衝撃なのだ。

 

そんな興奮の喧騒に包まれる王都のメインストリートを歩くのは、途中の露店で大人買いしたホットドッグ擬き*1を片腕一杯の天こ盛りに抱えながら、器用に塞がっていない方の手でそのうちの一つを持ち、忙しなく口を動かしながらモグモグと食べる、話題の新国王本人――"魔王"ハジメだ。

傍らには、ユエと雫だけがおり、現在彼等はミュウ冒険者ギルドの王都本部へと向かっていた。

 

何故、雫が同行しているのかと言うと、ギルドに向かった後は、予備の大結界の設置に行くので、その予備の結界用アーティファクトの設置候補地への案内を、雫が買って出たからだ。

因みに、他の面々は王城にてお留守番だ。

 

たとえ自分達を襲ったのは魔人族で、彼等も同じ人間であるのに、その戦争の原因を作ったのがエヒトだと分かっていても、今の王都で他種族が堂々と歩いてしまったら、"人間族ではない"というだけで心無い八つ当たりの対象にされ、無駄な騒動になりかねない。

それが現在の王都の状況なのだ。

 

なので、無意味に人々を刺激しないよう、シアやレミアは残ったという訳だ。

尚、ミュウが寂しそうにしていたので、どうにか連れていけないかと、親バカなハジメや可愛いミュウが大好きなお姉ちゃんズは、最後まで粘っていたが……お察しの通りである。

 

因みに、聖教教会のお膝元である王都に於いては奴隷の亜人族すら忌避される位で、元々人間族以外は殆どいないので、自発的にお留守番は妥当な判断と言えるだろう。

勿論ハジメは奴隷制度に関しても、新しく刷新するつもりだ。

 

具体的に言うと、借金などの犯罪以外の理由で奴隷落ちする者と、犯罪を起こして奴隷落ちする者の2種類におおまかに分ける、奴隷の生活環境の保証制度の義務付け、種族に関係なくそれらを適用する等々……兎に角、これまでにないことになるのは間違いないだろう。

 

今や、香織も使徒の身体なので、見た目からして人間離れしており、愛子達は忙しいリリアーナのお手伝い、ティオは連続して竜化を使ったこともあり、魔力充填の為に睡眠中である。

幸利も恵里の療養に付き添っており、トネリコは演説時にユエと同じく、再生魔法を使い続けていたので、それによる消耗の回復中である。

尚、徒歩で向かっているのは、情勢視察という名の暇潰しである。

 


 

雫「そういえば……ギルド本部へ行って、何をしにいくの?」

ハジメ「あぁ、依頼完了の報告だよ。フューレンからミュウをエリセンまで護送する依頼の、ね。

直接でも良かったんだけど、折角だから王都のギルドも見てみたくて……

一応、フューレンにはまた余裕が出来たら顔を出すつもりだけどね。」

ホットドッグ擬きのチーズ風味を、もきゅもきゅと頬張りながら尋ねる雫にそう答える。

実はわざわざ行くのがめんどいのもあるが……別にいっか!

 

ハジメ「後、エリセンには先に寄って2人も一緒について行く趣旨を伝えたんだけど……そこからが大変だった。」

雫「そこからって?」

ハジメ「一斉に町がお通夜ムードになったかと思えば、未だに諦めきれない男共が襲い掛かってくるわ、ミュウに言い寄ろうとする輩が大勢出てくるわ……一番大変だったのは、ご婦人方にレミアとの夜について根掘り葉掘り聞かれそうになったことだな。」

雫「よ、夜って……もしかして、香織とも?」///

 

そう問いかける雫は、親友が知らぬ間に大人の階段を上った可能性に、頬を引き攣らせながらも、顔を赤くしていた。

強ち間違ってはいないんだが……そもそも、初キスの事を知っていた時点でお察しだろう。

 

ハジメ「香織とレミア処か、ユエ達にも襲われたよ。まぁ、全員足腰立てなくなるまで相手したけどな。」

ユエ「……ハジメが反則級過ぎる、5人同時でも一斉に撃破されてダメだった。」

雫「ご、5人同時!?ハジメ君、貴方って人は……!」///

そりゃあオメェ、ユエ達程の別嬪さんに迫られたら……こちらも抱かねば無作法というもの、だろ?

 

ハジメ「まぁ、そっちの話は一旦置いといて、だ。

ミュウもエリセンの友達にお別れを言いに行ってたが……我が愛娘ながら、本当に強い子だよ。

お土産を一杯持って帰るって、自信満々な表情で宣言していたんだから。」

雫「それは……でも、大丈夫なの?」

言いたいことは分かる、それでも……俺はやるのだ。

 

ハジメ「なんか行ける気がする、だって俺は――魔王でヒーローな、ミュウのパパだから。」

そう自慢げに語る俺は、何時もの決めポーズ(腕だけバージョン)をとる。何でって?これが無いと始まらないだろ?タイトル的にも。*2

 

雫「魔王でヒーローなパパ……ふふっ、ミュウちゃんをとっても大事にしているのね。」

ハジメ「当然だろ。ミュウとレミアは勿論、ユエもシアも、ティオもトネリコも、そして香織も、俺にとって大事な家族だからな。

ま、何はともあれ両世界とも自由に行き来できるようにしてみせるさ。」

なんて、将来の事を思い浮かべながら、ユエの頭を撫でる俺であった。

撫でられたユエも、口元を緩めて仄か笑みを浮かべながら、そっと俺の服の裾を掴んでいた。

 

雫「それはそうと、ハジメ君。光輝の事、本当にありがとうね。」

ハジメ「?何のことだ?」

はて、俺はこれと言って特に何もしていないのだが……。

 

雫「あの時、ハジメ君なりに光輝の事を考えて言ってくれたんでしょ?このままじゃダメなんだって。

光輝もハジメ君の言葉がよっぽど効いたみたいだから、きっと……。」

ハジメ「いや、全く以て違うが。」

雫「えっ?」

何だ、そういう事か……ならば教えよう、あの時の俺の心情。

 

ハジメ「俺は何もやっとらんよ。

ただ……元重鎮共をわからせる際に溜まった鬱憤を、八つ当たり気味に拳と一緒にぶつけただけだ。

だから、あの時のアイツは、勝手に自力で目覚めただけであって、礼を言われる覚えなどない。」

雫「や、八つ当たりって……。」

いや、そんな顔されても、本当にそうだったし……。

 

ハジメ「まぁ、あの後、光輝の顔の惨状を見て、少し反省したのものあるが……

どのみち、ああすることを決意したのは光輝自身だ。だから、どうせならあいつのことを褒めてやりな。

姉弟子に褒められたら、ますます気合が入るだろうし。」

雫「……そうね。そういうことにしておくわ。」

そういうことって……事実なんだが?だから、その温かい眼差しと微笑みを止めい。

 

ユエ「……ハジメ、照れてる?」

ハジメ「いや、信じて貰えないことに諦めを感じてる。」

なんて、苦笑いしながらも、光輝の成長が喜ばしかったのもまた事実なので、否定はしなかった俺であった。

 

ユエ「……後、愛子も危ない。ハジメ、気をつけて。」

ハジメ「ほぼ毎日襲い掛かってきた君達が言うかね……それに、きっと先生は先生でい続けるだろうし、流石に無いって。」

ユエの鋭い視線に対し、ジト目で反論すると、今度は雫が鋭い視線で問い詰めてきた。

 

雫「何だか、自覚ありそうな口ぶりね?で?ハジメ君、愛ちゃんに何をしたの?」

ハジメ「なんで俺に非がある前提なのさ……俺だって、先生が思い悩むであろうことは想像できるんだけど。」

雫「そうね。愛ちゃんが王都に帰って来た日には既におかしかったのよ。

……ハジメ君のこと頬を染めて話していたわ。……とても大群を退けただけとは思えない反応だった。

ウルの町で何かしたんでしょ?さぁ、キリキリ吐きなさい!香織のライバルが増えるかどうかという重大事よ!」

ハジメ「ライバルって……そんな大袈裟な。」

 

この特級フラグ建築士ぃ!と言いたげな表情で、ヒートアップしてきた雫を抑えながら、先生とのやり取りを思い出す。

励ましたり、護身用のアクセサリー渡したり、寄りかかられたり……これと言って特に、フラグが立つような覚えのない事ばかりなんだが。

 

ユエ「……全部が原因。」

雫「ギルティね。」

ハジメ「なんでさ!?」

全く以て解せぬ……。

 

雫「まぁ、全体的に意図していなかったというのは分かったけれど……本当は何となく察しているんじゃないかしら?

何時から、愛ちゃんの気持ちに気づいていたの?」

ハジメ「そうさな……ウルの街で護身用のブローチを渡そうとした時かな?何となく視線に熱を感じてたし。

まさかとは思っていたが……話の流れからして、やっぱりそういうことだよなぁ。」

ユエ「……そういうこと。」

雫「そういうことね。」

むぅ……それに対しての答えはまだ先延ばしにするとして、だ。

 

ハジメ「一先ず、今は気づいてないふりをしておこう。」

雫「……まぁ、愛子ちゃんが行動を起こすとは思えないしね。

下手なことするよりはその方がいいのでしょうけど……。」

ハジメ「それもあるが……多分、今はそれどころじゃなさそうだから……。」

雫「!そういえば、そうだったわね……。」

 

……自分で言っておいてなんだが、微妙な空気になってしまったな。

と、そんな他愛もない会話をしながらも、ホットドッグモドキを完食した俺達は、冒険者ギルド王都本部に辿り着いた。

 

フューレン支部ですら到底及ばない規模の歴史を感じさせる建築物だ。

その入口はオープンになっており、数多くの冒険者達が忙しそうに出入りしている。

王都侵攻に伴って依頼も爆発的に増えているのだろう。

 

俺達は、ギルド内に入ると10列以上ある巨大なカウンターへと赴いた。

冒険者でごった返していたが、流石は本部の受付というべきか、素晴らしい手際で手続きをこなしていくので回転率が凄まじい。

とはいえ、毎日こうでは流石に疲労がデカいだろう。リリィと協議して、働き方改革も進めねばな。

 

そして、受付が全員とても美人だった。ホルアドでの受付嬢よりは美人だが……俺の嫁達には敵わんなぁ!(声デカ)

この世界の基準で、とても可愛い子がいたとしても、だ。うちの娘や嫁達の方が、魅力的なのだから!!!

なんて思いつつ、受付に辿り着いた俺達は、ステータスプレートを出しながら、ミュウをエリセンに送り届けた事を証明する書類も取り出して提出した。

 

ハジメ「すまない。

依頼の完了報告なんだが……フューレン支部のイルワ支部長からの指名依頼について、本部から伝えてもらうことは可能だろうか?」

受付嬢「はい?……指名依頼……でございますか?すいません、少々お待ち下さい……。」

 

その言葉に、受付嬢が少し困惑したように首を傾げる。

ギルド支部長からの指名依頼など、一介の冒険者にあることではないので当然の反応だ。

現に、俺の両隣りで手続きをしていた冒険者達がギョッとしたようにこちらを見ている。

 

受付嬢は、俺のステータスプレートを受け取り内容を見ると、澄まし顔を崩して冒険者達と同じようにギョッとした顔になった。

それもそうか、だって今の俺、国王だし。

 

とはいえ、この後も予定が控えているので、お忍びだからと言う意も込めて、口に人差し指を当てて受付嬢に微笑みかける。

すると、何度もステータスプレートと俺の顔を見比べていた受付嬢も、その意図を察したのか落ち着いて対応してきた。

 

受付嬢「誠に申し訳ありませんが、応接室までお越しいただけますか?

お客様がギルドに訪れた際は、奥に通すようにと通達されておりまして……

直ぐにギルドマスターを呼んでまいります。」

ハジメ「そうか、では頼んだ。それと、そこまで焦らなくてもいい。」

受付嬢「は、はいっ!直ぐにギルドマスターを呼んでまいりますから、少々お待ち下さい!」ピュー……

 

それだけ言い残すと受付嬢は、俺のステータスプレートと依頼完了の証明書を持ったまま、凄い勢いでカウンターの奥へと消えていってしまった。

別にそこまで焦らんでもいいと言った筈なんだが……まぁ、元気そうでよい事だ。

 

そうして暫く待っていると、顎鬚をたっぷり生やした細目の老人が、先程の受付嬢と共に現れた。

どうやら、異様な覇気を纏った彼がギルマスの様だ。

……なんだか、「ふんぬぅあ!」と雄叫びを上げて上半身の服を筋肉で弾き飛ばす、シルバーマッチョっぽいが。

 

ギルマスが登場した瞬間、案の定ギルド内が俄かに騒めき出した。

そして、ギルマスが俺に声をかけた時点で、騒ぎはギルド全体に広がった。

彼の名はバルス・ラプタというらしい。……どっかの空中帝国が一瞬浮かんだが、多分関係ないだろう。

 

尚、これといった面倒事はなく、イルワ支部長から俺の事で連絡が来ていたので一目会っておきたかっただけらしい。

最近どこかの町に行く度に、何らかの事件に遭遇しているので、今回は大丈夫そうかな?だったか……

なんてフラグを立ててしまったせいか、そうは問屋が卸さないようだ。

 

???「バルス殿、彼等を紹介してくれないか?

ギルドマスターが目を掛ける相手なら、是非、僕もお近づきになりたいしね?

特に、そちらの可憐なお嬢さん達には紳士として挨拶しておかないとね?」

 

そんな如何にもキザったらしいセリフと共に、俺達の傍に寄って来たのは金髪のチャラ男だった。

自慢げに後ろに美女を4人も侍らしており、それをこれ見よがしに見せつけている。

性格悪そうだな、と思っていると、周囲の冒険者が彼を見てヒソヒソと囁きだした。

曰く、"金"ランクの冒険者で、"閃刃"のアベルというらしい。……言うほど強くはなさそうだが。

 

すると、バルスが俺の事も"金"ランクの冒険者であると紹介し、周囲の騒めきが一気に酷くなった。

やはりというか、面倒な事態になり始めたので、2人を連れてさっさとギルドを出ようとした。

が、チャラ男の興味は確実にユエ達女性陣に向いており、簡単に行かせるつもりはないようで、こちらに話しかけてきた。

というか、雫が勇者パーティーの一人だとか、俺が現国王だとか知らないのか?

 

アベル「ふ~ん、君が"金"ねぇ~。かなり若いみたいだけど……一体、どんな手を使ったんだい?

まともな方法じゃないんだろ?あぁ、まともじゃないんだから、こんなところで言えないか……

配慮が足りなくてすまないね?」

何だコイツ……見た目爽やかそうに笑っておきながら、失礼な奴だな。

最早相手をする価値もないなと思い、無視して通り過ぎようとした。

が、向こうもしつこいようで、進路に立ち塞がってきた。……だる。

 

アベル「まぁ、待ちなよ。

僕が本物の"金"だからって逃げなくてもいいじゃないか。別にとって食いやしないよ?

まぁ、君は居た堪れないかもしれないから行ってもいいけど、女の子達は食事でも一緒にどうかな?

本物の"金"というものを教えて上げるよ?」

ハジメ「ブッ!」

いかんいかん、思わず吹き出してしまった……。

 

アベル「……何が可笑しいんだい?」

ハジメ「なに、金ランクとはその程度の品性で成り上がれる物だったとは思わなくてな。

それも、ただ女を口説く為にわざわざ出しゃばってくるのだから……まるで発情期の猿の様だなと、つい。」

『ブフッ!』

 

その発言に、今度はギルドのあちこちで噴き出す声が上がった。

どうやら目の前のチャラ男は、周りの冒険者に対しても威張り散らしていたようだ。

これは冒険者ランクの審査制度も、刷新する必要が出て来たな……。

 

アベル「……随分な口を利くじゃないか。

それなら君はどうやって金ランクになったのか、ここで教えて貰おうじゃないか。

どうせ真面な手段じゃないのだろう?」

なんて考えていると、チャラ男が鬼のような形相で言いだした。侍る女達も険しい眼でこちらを睨みつけている。

というか……それ聞いちゃう?まぁ、別に良いけど。

 

ハジメ「なに、支部長の依頼で北の山脈まで人探しに行き、その序にウルの街に攻めてきた6万の魔物を殲滅して、報告帰りのフューレンでショッピング中に絡んできた裏組織を、ライバル共々壊滅させてきた位だ。

……いや、アンカジで毒の治療やオアシスの浄化もやったか?領主の依頼で、大火山に静因石も取りに行ったな。

あぁ、オルクス大迷宮で遭遇した魔人族も、返り討ちにしてやった事もあった。」

すると、詳細について聞いたことがあるのか、周囲の冒険者が一斉に声を挙げだした。

 

冒険者A「ちょっと待て!ウルの街に攻め入ったって……あの"真竜王"陛下じゃねぇか!?」

冒険者B「俺も聞いたことあるぞ!ブルックの町の男共を軒並み蹴散らした"戦神富豪"と同一人物って話だろ!?」

冒険者C「そういえば……【樹海事変】と【終末予言】の原因かもしれない"無敵の覇王"も同時期だったか?」

冒険者D「フューレンの裏組織壊滅ってことは……支部長お抱えの"金"!?」

冒険者E「そういえば、アンカジにやってきた謎の冒険者が、死者すら生き返らせたって噂を聞いたな……。」

冒険者F「ちょっと待て!それって先日、あの魔王陛下がやったやつじゃね!?」

冒険者G「間違いねぇ、金髪紅眼の少女を連れた、黒いコートに謎のアーティファクトが何よりの証拠だ……!」

 

『こここ、国王陛下……!?』

ハジメ「おや、バレてしまっては仕方が無いな。一応お忍びで来ていたんだが……。」

そう言って気恥ずかしそうに頭を掻くと、雫から呆れた視線が送られてきた。

 

雫「貴方達、一体どんな冒険をしてきたのよ……

というか、空の一部がひび割れたのって、やっぱりハジメ君が原因だったのね。」

ハジメ「俺の女に汚い視線を向けてきたからな、多分あの時の一撃で眼球も消し飛んでんじゃね?」

ユエ「……ハジメ、人前なのに熱烈。」///

当時の出来事について軽く明かすと、ユエは嬉し恥ずかしそうに俺の腕を抱きしめた。

 

アベル「う、嘘だ!ただ顔をそっくりにしただけだ!そうなんだろ!?どうせそれで"金"ランクになったに違いない!

ほら、なんとか言ったらどうなんだ!」

しかし、そんな俺の偉業を聞いた金ランク(笑)のアべルは、それを認めたくないのか、好き勝手暴言を言い出した。

何というか……とても哀れすぎて、何も言えないな。そう思っていた時だった。

 

???「あらぁ~ん、そこにいるのはハジメきゅんとぉ……ユエお姉様じゃないのぉ?」

不意に野太いのに乙女チックな声が、俺達にかけられた。ふと気になって、その方向へと視線を向けた。

すると――

 

アベル「な、なんだ、この化け物は!?」

???「だぁ~れがぁ、SAN値直葬間違いなしの名状し難い直視するのも忌避すべき化け物ですってぇ!?」

思わず叫んだアベルにカッ!と見開いた眼を向ける、筋肉モリモリの漢女だった。

それにしても酷い奴だな、レディ(?)に化け物呼ばわりとは……どうやら、女性(?)を見る目は青未満みたいだな。

 

因みに、彼女(?)の特徴としては、劇画のような濃ゆい顔に2m近くある身長と全身を覆う筋肉の鎧、赤毛をツインテールにしていて可愛らしいリボンで纏めており、フリルがたくさんついてとってもヒラヒラしている浴衣ドレスを着ていること上に、極太の足が見事に露出している位だ。

そういえば、ブルックのクリスタベルさん達は元気にしているかな?

今度時間があったら、子供服についても相談したいんだが……。

 

アベル「ひっ、よ、寄るな!僕を誰だと思っている!"金"ランクの冒険者"閃刃"のアベルだぞ!

それ以上寄ったら、この場で切り捨てるぞ!」

???「まぁ、酷いわねん!初対面でいきなり化け物だの殺すだの……

同じ"金"でも店長やハジメきゅんとは随分と違うわぁ~。でも……顔は好みよん♡」

 

と、懐かしい顔を思い出している間にも、いつの間にか追い詰められているアベルくんw

彼女?はそこにいるだけなのだが、向こうは見ているだけでSAN値がガリガリと削られているらしい。

思わず悲鳴を上げるアベルに呆れた表情を向ける彼女?だったが、そのルックスについては好みだったようで、獣のように眼をギラギラ光らせ、ペロリと舌舐りまでしながらジリジリと近づいて行く。

って、同じ"金"?店長?……はて?

 

アベル「来るなと言っているだろう!この化け物がぁ!」

そして、アベルは得体の知れない恐怖に堪え切れず、遂に剣を抜いた。

仮、というかランクだけなら"金"の冒険者の攻撃なので、漢女の命は風前の灯かと誰もが思っていた。

……ま、俺からすれば、"未来予知"を使わなくとも結果は分かり切っていたが。

 

残像すら発生させるスピードでアベルとの距離を一瞬で詰めた漢女は、片手でアベルの剣を弾き、そのまま組み付いたのだ。

所謂サバ折り体勢だ。昔やった格ゲーの力士を彷彿とさせる。

因みに、俺は格闘家とロシアの紅い竜巻をよく使ってた。待ちガイル相手にハメ技で圧勝したっけなぁ……。

 

ミシッ……メキッ……

 

おや、そうこうしているうちに、アベルの体から何やら割れたような音が響いているな。

聞こえている分には手加減されているようで、精々軽い捻挫で済みそうだし、大丈夫か。

アベルは必死に逃れようとしているものの、悲しい事に地力は向こうに利がある。

そうして、筋肉の拘束を抜け出せずに無謀にもジタバタと藻掻いているアベル。

だが残念なことに……時間切れの様だ。

 

???「ぬふふ、おイタをする子にはお仕置きよん♡」

アベル「よせぇ!やめっ――むぐぅう!?」ビクンッ……ビクンッ……

そうして熱い抱擁と接吻を受け、アベルは痙攣しながら干からびていった。

暫くすると、その手から剣がカランと音を立てて床に落ちた。その様はまるで、一つの花が手折られたようだった(笑)。

 

因みに、侍っていた女達は、一斉に顔を青ざめさせて一目散にギルドから逃げようとしていたので、バインドで拘束しておいた。

リーダーの暴走を見ているのに止めなかったのだから、連帯責任は確定だろう?

 

そして、後には静寂に包まれるギルドと、漸く解放されて床に崩折れるアベルの姿があった。

見ようによっては、暴漢にあった被害者に見えるが……そもそも攻撃をした時点で、自業自得だろう。

すると、"金"ランクを名乗っているだけはあるのか、アベルは残り僅かな意思を総動員し、キッと漢女を睨む……のは一瞬だけで、近寄る漢女に直ぐに萎えたのか、その視線を俺に向けた。

 

アベル「お、おい、お前!同じ"金"だろう!なら僕を助けろ!どうせ、不正か何かで手に入れたんだろ!?

僕が口添えしてやる!お前如きがこの"閃刃"の役に立てるんだ!栄誉だろう!

ほら、さっさとこの化け物をなんとかしろよ!このグズが!」

……とても残念過ぎて、掛ける言葉も見つからない。

 

ハジメ「なぁ、バルスよ。国王に暴言を吐いた上に、ギルド内での私闘を行った場合、処罰としてはどのくらいが妥当だ?」

バルス「そうですな……少なくとも、ランクの降格は必須でしょう。

今後、同じような輩が現れないとも限りませんからなぁ。」

だ、そうだ。

 

アベル「な、何を言ってるんだ!?僕が、降格だと……!?」

ハジメ「当然の結果だろう。素行の悪いチンピラをそのまま金ランクにしては、冒険者の品格が疑われる。

それも国王に愚図などとほざく愚か者であれば、尚更だ。女共も止めなかった以上、同罪である。」

未だに現実を受け入れきれないアベルに対し、俺は容赦なく言い放つ。

近くで聞いていた女共も、青を通り越して顔を白くさせているが、どうでもいいので無視する。

 

ハジメ「そもそも、だ。これからの時代は、ただ力やコネだけで成り上がれる程甘くはない。

同業者や依頼主への態度、生還率、教養の有無、その他諸々も重要となる。この程度、猿でもわかるぞ?

それなのに貴様等ときたら……目上の者に威張り散らした上に、癇癪まで起こして、恥ずかしいとは思わんのか?」

その言葉に、周りから失笑が聞こえる。あんな性格なので、余程嫌われていたのだろう。

 

俺としても、富国強兵の為にはこのような輩を出さないように、規律をしっかり定める必要があると考えていたしな。

出発前に、冒険者ランク制度の新案も出しておこうか。と、俺が今後の方針を考えていると、何故かユエが進み出た。

それに勘違いしたのか、アベルが何やらほざきだした。

 

アベル「ああ、助けてくれる気かい?なら、今夜は君のために時間を……。」

ユエ「……口を開くな。」

……あれ?もしかしてユエさん、お怒りですか?

その予想は当たっていた様で、ユエは仰向けた右手の掌に黒く渦巻く球体を出現させた。

……おいおい、まさかとは思うが。

 

ユエ「……生まれ直してこい、"ピー"野郎。」

アベル「えっ?ちょっ!?やめっ、あ、あ、アッ――――――――!!!」

こうして、この世界からまた1人男が消え去り、漢女が産声を上げた、とさ。

 

満足気な表情で、男の象徴を圧殺してきたユエが俺の傍らに戻る。

周囲を見れば、男性冒険者が軒並み両手で股間を守りながら前屈みになって震えていた。

中には涙目になっている者もいる。見ているだけでダメージが入ったようだ。

と、その時、静寂に包まれていたギルド内でヒソヒソ声が聞こえ始める。

 

冒険者H「お、おい、金髪紅眼の女の子と白髪黒コートの少年って……!?」

冒険者I「えっ?ま、まさか"股間スマッシャー"かっ!?」

冒険者J「マジかよ……それじゃあやっぱり、あの2人は"黄金覇道"の"ツインスマッシャー"なのか……。」

冒険者K「え?なんだよ、その恐ろしい二つ名。」

ホントだよ、俺達だってそんな不名誉な名前で呼ばれた覚えはないぞ。

 

冒険者L「お前、知らないのか?数ヶ月前に彗星の如く現れた冒険者だよ。

"金髪紅眼の少女は薔薇の如く。その美貌に惑わされ、深みにはまれば待っているのは新世界。彼女は美の女神にして息子殺しの魔王様"。

"傍らには白髪黒コートの少年。理不尽と恐怖の権化。されど、時に慈悲深く財を振舞い、時に冷酷に息子を潰す。

故に、奴に逆らってはいけない。決して機嫌を損ねるな。まだ生きていたいなら。"って、ブルックから流れてきた吟遊詩人が伝えたんだよ。

実際、フューレンやブルック、ホルアドでも息子を殺された奴や再起不能になるまでボコられた奴らが大勢いるらしいぜ?」

冒険者M「なにそれコワイ。」

 

よし、後でブルックにいる吟遊詩人はスマッシュ確定な☆というか、誰が"ツインスマッシャー"じゃボケ。

なんつー不名誉な呼び名を考えてくれたんだ。誰かは知らんが、長時間金的をプレゼントしたろか?

そう考えていたら、周囲の冒険者達が俺達を見て戦慄の表情を浮かべるのと共に、目を合わせたら殺られるぅ!と言わんばかりに股間を隠しながらジリジリと距離を取り始めた。

 

雫「貴方達……本当に何していたのよ。」

ハジメ「騒動からやって来たのであって、俺達は何も悪くないぞ。後、スマッシュに関しては後悔も反省もない。」

雫の呆れた視線に、正論で返す。ユエもどこ吹く風といった様子だ。すると、そこへ先程の漢女が声をかけてきた。

 

???「久しぶりねん?二人共、変わらないようで嬉しいわん。」

ハジメ「えっと……もしかして、クリスタベルさんの知り合い?」

ウインクする漢女を見て、もしやと思い、尋ねてみる。ユエも頭に?を浮かべており、記憶に無い様だ。

因みに、改めて近くでその異様を目の当たりにした雫は、普段の社交性は何処に行ったのか、思わず頬を引き攣らせながら、さりげなく俺達を盾にするような位置に下がっている。

 

???「あら、私としたことが挨拶もせずに……この姿じゃわからないわよねん?

以前、ユエお姉様に告白して、文字通り玉砕した男なのだけど……覚えているかしらん?」

ユエ「……あ。ホントに?」

どうやらユエには心当たりがあるらしく、驚いた表情で巨大な漢女を仰ぎ見た。

ユエが思い出したことに、漢女は嬉しそうに笑う。

 

自己紹介によれば、ブルックの町でユエに告白したがあっさり振られ、強硬手段に出たところで俺とユエに玉を一つずつ、見せしめとしてスマッシュされた元冒険者の男らしく、今は、クリスタベルさんの元で漢女の何たるかを学んでいるそうだ。

言われてみれば……そんなこともあったか?因みに、名前はマリアベル*3らしい。

 

マリアベル「あの時は、本当に愚かだったわん。ごめんなさいね?ハジメきゅん、ユエお姉様……。」

ハジメ「もう過去の事だし今更別に気にしてない。それより、クリスタベルさんは元気か?」

ユエ「……ん、立派になった。新しい人生、謳歌するといい。」

俺は店長について訊ね、ユエが彼女(?)のこれからに期待するような言葉を贈ると、マリアベルは嬉しそうに答えた。

 

マリアベル「うふふ、2人ならそう言ってくれると思っていたわん。

それと、店長は今も元気よ。最近、続々と弟子入りを望む子達がやって来てるのよ。

確か、元"黒"ランクの冒険者や何とかっていう裏組織の子達に、ホルアドを拠点にしていた元傭兵の子達とか……あ!教会の司祭だったっていう子もいたわ!

それもあって、店長が店舗拡大を考えているのよねん。今日は、その下見に来たのよん。」

 

中々に面子が濃いな……取り敢えず旧教会の連中は放置で。

そういえば、フューレンで潰した裏組織の奴等も、あの店に送り込んだんだったな……すっかり忘れてた。

尚、後で聞いた話だが、マリアベルは元々平均的な中肉中背の男だったらしく、僅か数ヶ月でこの急成長を遂げたらしい。

 

というか、さっき店長も"金"って言ってたから、多分クリスタベルさんも元"金"ランクの実力を活かして、彼女達(?)のビルドアップにも一役買っているのだろう。

名ばかり金ランクよりも頼れる戦力にはなりそうだな……味方のSAN値チェックが必要になるが、それは尊い犠牲で済まそう。

 

そう考えていると、何故かマリアベルに気に入られたのか、雫が盛大にハグを受けて顔を青ざめさせていた。

勿論慌てて助けに入ったが、気持ちが落ち着くまで介抱してたら、雫との関係を揶揄するような噂が広まりかけたので、慌てて弁明したのは言うまでもない。

*1
ソーセージではない何かが挟まっている

*2
メメタァ!

*3
クリスタベル命名




スマッシャーの渾名は後付けです。まぁ、最悪の場合、スマッシュ道の開祖が2人に増えるかもしれませんが。

ハジメさんがライダー以外の能力を手に入れるとしたら?

  • 全スーパー戦隊の力
  • 全ウルトラマンの力
  • その他全特撮ヒーローの力
  • 全サーヴァントを召喚、使役する能力
  • 全てのスタンドを扱える力
  • 全ての魔術・魔法を扱える力
  • 全ジャンプ作品の力を扱える
  • 全サンデー作品の力を扱える
  • 全コロコロ作品の力を扱える
  • 全マガジン作品の力を扱える
  • 全てのラノベ作品の力を扱える
  • 別の世界に能力そのままで転生できる能力
  • 一億年ボタン
  • 全てのロボットを操縦できる能力
  • 無限残基
  • 女難に巻き込まれなくなる
  • 倒した敵の全能力を得る能力
  • 全スマブラキャラの力
  • その他全ゲームキャラの力
  • その他(活動報告でリクエスト)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。