Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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題名通りです。因みに、何故3人称かと言うと、上手く一人称にし辛かったからです。
正直、この辺りは何故か3人称の方がしっくりときました。……原作に寄せてあるからでしょうか?


00:87/宙翔ぶ舟

眼下の八雲が、流れる様に消えていく。

重なる雲の更に下に見える草原や雑木林、時折小さな村が見えるが、やはりあっと言う間に遥か後方へと置き去りにされてしまう。

相当なスピードの筈なのに、何らかの結界が張ってあるのか風は驚く程心地良い微風だ。

 

雫「……手を伸ばせば、届きそう……。」

そんな気持ちの良い微風にトレードマークのポニーテールを泳がせながら眼下の景色を眺めていた雫は、視線を転じて頭上に燦々と輝く太陽を仰ぎ見た。

 

雲上から見る恵みの光は、今にも手が届きそうに錯覚させる程近くに感じる。

雫は、手で日差しを遮りながら手すりに背中を預け、どこか達観した様な、或いは考えるのに疲れた様な微妙な表情でポツリと呟いた。

 

雫「……まさか、飛空艇なんてものまで建造しているなんて……前からわかってはいたけど、もう何でもありね。」

そう、雫が現在いる場所は、ハジメが作り出した飛空艇"ノア・エルーナ"の後部甲板の上なのである。

この"ノア・エルーナ"は、重力石*1と感応石を主材料に、その他諸々の機能を搭載して建造された新たな移動手段だ。

今まで使わなかったのは、ハジメ曰く「私の趣味だ、カッコいいだろう?」らしい。

 

冗談はさておき、実はハジメさんも飛空艇の建造には取り掛かっていたのだ。

しかし、搭載する機能を追求するあまり、開発は途中で断念してしまったものの、神代魔法が増えていくにつれて、必要な機能に関する課題も解消されていき、旅の途中で改修を重ね、エリセンの滞在中に漸く完成させることに成功した、というわけだ。

 

が、ハジメ達だけならブリーゼで事足りており、使う機会は無かった。

そこへ、途中で帝国に向かう為にリリアーナとその侍女、護衛の近衛騎士数十名、そして神代魔法獲得の為についてきた光輝達に、レミアとミュウも加わる事となり、折角なので観光がてら空の旅でも楽しもうという事となり、こうして初披露となった、という訳だ。

 

ハジメ「終盤で空から移動するのも、風情があって良いだろう?」

王都から出発する際、何も用意せず王都近郊の草原に集合させたハジメを訝しむ皆の前で、オーロラカーテンより"ノア・エルーナ"を呼び出し、目の前に着陸させてお披露目したハジメは頬を吊り上げながら、自慢げにそう言った。

 

子供っぽさを感じさせる得意げなその顔は、先日容赦なく旧教会支持派の教会支部を消し飛ばした冷酷さはなく、ただ純粋に自分の作った作品を自慢したがる無邪気な笑みが浮かんでいた。

当然、生暖かい表情が一斉にハジメに向けられたのは言うまでもない。

 

因みに、愛子達居残り組も送迎の為に同席しており、少しの間だけ"ノア・エルーナ"内の機能紹介の為の探索ツアーも開かれた。

勿論、終始自慢げに説明するハジメさんと、その肩に乗ってドヤッとなるミュウであった。

 

この"ノア・エルーナ"は、全長150mの戦艦のような形をしており、前面高所にあるブリッジと中央にあるリビングのような広間の他、キッチン・バス・トイレ付きの居住区まである。

その上、目的地である【ハルツィナ樹海】まで馬車で2ヶ月の道のりを、たった10数時間で走破してしまうどころか、その間にある帝国まで半日もかからない速度を誇るので、装備の有無を差し置いても、乗り物としては間違いなくこの世界最大にして最速であろう。

 

雫「……まるで夢みたい。」

雲上を飛ぶ。周囲は見渡す限りの絶景。ほぅ、と吐息を漏らしながら呟いた雫の心情は、果たしてどの様なものか。

旅の始まりがいきなり空の上で、しかも目的地まで1日もかからないとくれば、遠い目もしたくなるだろう。

現に、今後の人間族側の方針等の協議を行う為に同行しているリリアーナなど、白目を剥くという王族にあるまじき表情で驚愕を露わにしていた。

 

それと、雫は知る由もない事だが、重力石と感応石を併用する場合、莫大な魔力と相当の熟練度が必要である。

魔力量に関しては元より化け物クラスのハジメであるので、前者はとっくの昔にクリアしている。

後者も、魂魄魔法を手に入れてから相応の修練を積んでおり、当初は2日半はかかる距離を1日足らずにまで縮めてみせている。

 

光輝「雫……ここにいたのか。」

雫「光輝……。」

空はこんなに青いのに……と、雫が半ば現実逃避していると、不意に声がかけられ、そちらに視線を向ければ、丁度ハッチを開いて光輝が顔を覗かせているところだった。

光輝はそのまま雫の隣に来て、手摺に両腕を乗せると遠くの雲を眺め、ポツリと呟いた。

 

光輝「これ……凄いよな。」

雫「そうね。……もう一々驚くのも疲れたわ。」

呆れた様に言いながらも、依然として雫の眼は遠いままなことに、横から見ていた光輝は思わず苦笑いする。

 

雫「コホン……そういえば、皆は?」

その視線に気づいた雫は気を取り直すと、話題を変えた。

ここにいない他の面々は、戦えない生徒達を放っておけない愛子と、彼女のお手伝いとして優花や永山等を始めとした動ける生徒達だ。*2

尤も、フリードが残した長距離転移の仕掛けをオマージュして改良したアーティファクトもある上、ハジメ自身瞬間移動やオーロラカーテンがあるので、いざという時には直ぐに戻ってこられる。

通信用の"念話石"も、既に全員に配布済みだ。尚、ゴチゾウは盗難防止の為、全員回収してある。

 

光輝「龍太郎と近衛の人達はシアさんが作った料理食べてる。鈴は恵里と話していて、清水は反対側で偵察中だ。

ハジメは、運転しながらリリィと協議内容について話しているよ。ユエさん達に囲まれながらね。」

そう言いながら、光輝は再び眼下に映る光景を見つめていた。

しかし、雫には隠しきれていなかった――その瞳の中にあった、険しい視線を。

 

雫「……衝撃的だったわよね、ハジメ君達とエヒトの因縁の理由。」

光輝「あぁ、ユエさんやティオさん達の想いも背負っているからこそ、確実にエヒトを殺すつもりなんだろうな。

なんだかんだ言って、あいつもエヒトが許せないんだな。」

 

実は王都を発つ前、香織からハジメ達の旅の詳細を聞かされていた光輝達。

その中で、ユエがエヒトの依代に選ばれ、彼女の叔父ディンリードがその身を犠牲にして彼女を守り抜いたことや、ティオ達竜人族の神に靡かぬ勇姿は、改めて異界の邪悪討伐の重さを実感させるものとなった。

 

そして、未熟な時は厳しくありつつも、裏では専用のアーティファクト作成や育成計画の見直しを何度も行い、自分達に心も体も強くあれと、東奔西走していたハジメの優しさを、その背中の大きさを光輝達は知ることとなったのだ。

 

光輝「あいつは、俺達が思ってた以上に多くを背負い続けていた。それは地球でも同じ筈だったんだ。

それなのに、俺はそんなあいつのことが、羨ましくて、嫉妬して、いつの間にか八つ当たりして……。」

雫「もう過ぎた事を言っても仕方がないでしょう?ハジメ君だって、光輝はもう大丈夫だって言ってたし。」

光輝「……そうか、そうだな。何時までもくよくよしてたって仕方がない。

今はまず、神代魔法を手に入れて、俺にも出来る事を増やさないと!」

そう言って強く拳を握る光輝。雫もそんな弟弟子の様子を見て、何処か嬉しく感じた。と、その時。

 

ゴォォォッ

 

光輝「!進路が変わった……何かあったのか?」

雫「みたいね……取り敢えず、中に戻りましょうか。」

不意に、今まで真っ直ぐ飛行していた"ノア・エルーナ"が急に進路を逸らし始めた。

遮る物の無い空の旅だ、帝国までは真っ直ぐ飛べばいいだけの筈であるから、何事かと顔を見合わせる光輝と雫。

2人は一拍おいて頷き合うと、急いで艦内へと戻っていった。

 


 

雫「何があったの?」

香織「あっ、雫ちゃん。うん、どうも帝国兵に追われている人がいるみたいなの。」

雫と光輝がブリッジに入った時には、既に全員が集まっており、中央に置かれている水晶のようなものを囲みながら、そこからSFよろしく出ている空中ディスプレイに映し出される光景を見ていた。

事態を尋ねられた香織が指差した空中ディスプレイには、峡谷の合間を走る数人の兎人族と、その後ろから迫る帝国兵のリアル鬼ごっこが映っていた。

 

この空中ディスプレイ機能付き水晶も、ハジメ謹製のアーティファクトだ。

望遠機能の"遠見石"と、同質の魔力を流せば片方の鉱石が映す情景を、もう片方の鉱石にも映し出せる"遠透石"を生成魔法で付与したもの。外部ブリッジに設置されている水晶を通じて、空中に映像を映すことができる優れものだ。*3

 

雫がディスプレイを覗き込めば、確かに水の流れていない狭い谷間を兎人族の女性が2人、後ろから迫る帝国兵を気にしながら逃げている様だった。

だがその足はふらついて遅く、馬に乗る帝国兵達の速度とは比べ物にならない。

追いつかれるのは時間の問題に見える。加えて、その帝国兵のずっと後ろには大型の輸送馬車も数台確認出来た。

 

リリアーナ「あれは……帝国兵が奴隷を輸送するのに使う大型馬車です!」

その光景を見たリリアーナが、深刻そうな表情で叫ぶ。

状況から察するに、最初から追って来たというより逃がしたのか、或いは偶然見つけた兎人族を捕まえようとしている様に見える。

 

雫「そういう事、だから進路を……。」

納得した様に、雫は呟く。

本来なら無視して通り過ぎるのだろうが、シアの同族という事で放置するのも気が引けた為のか接近したのだろうと推測する。

そこで、光輝が血相を変えて咆えた。

 

光輝「不味いじゃないか!直ぐに助けに行かないと!」

ここは空の上だというのに今にも飛び出していきそうな勢いで言い募る光輝。

しかし、ハジメは冷静にその光景を見ていた。

 

ハジメ「……む?なぁ、シア。アイツ等って、まさか……。」

シア「へ?……あれっ?この2人って!」

すると、何かに気が付いたハジメはシアに声をかけ、画像を更にズームする。

2人の兎人族の顔がよく見えるようにすると、シアも気がついた様だ。ウサミミをみょんっ!とさせる。

 

光輝「2人共、何をそんなにのんびりしているんだ!シアさんは同じ種族だろ!何とも思わないのか!」

シア「静かにしてください、ぶっ飛ばしますよ?」

ハジメ「止めろ2人とも。しかし、何故樹海の外に?ここもここで、奇襲がやりやすいのだが……。」

光輝は自分の主張をシアにばっさりと切り捨てられたどころか、うるさいと切り捨てられ、思わず口を噤む。

一方ハジメは、樹海の外に兎人族がいることに何やら思案していた。

 

因みに、光輝がシアを"さん"付けで呼んでいるのは、爽やかな笑顔で自己紹介と共に呼び捨てにしたところ、『呼び捨てはやめろ』とにこやかに寸止めで拳を向けられたからである。

光輝は、笑顔の迫力と明確な拒絶を初めて実感し、ハジメにやられた時のトラウマが再発した。

 

シア「ハジメさん、間違いないです。ラナさんとミナさんですよ!」

ハジメ「やはりか……となると、樹海で何かあったようだな。いずれにしろ、情報が欲しいな。

それにしても、この動き、表情……ふむ。」

何やら納得した様な呟きを溢すと、ハジメは腕を組んで静観し始めた。

 

そうこうしている内に、逃げていた兎人族の女性2人──シアが言うところの、ラナとミナがフラフラと倒れ込む様にして足を止めてしまった。

谷間の中でも少し開けている場所だ。

それを見て、ハッと正気に戻った光輝がブリッジを出て前部の甲板に出て行こうとする。

距離はまだあるが、取り敢えず魔法でも撃って帝国兵の注意を引くつもりなのだ。

 

ハジメ「まぁ、待て。心配は無用だ。」

光輝「なっ、何を言っているんだ!か弱い女性が今にも襲われそうなんだぞ!」

どうして助けに行かないんだと、ハジメをキッ!と睨む光輝。

そんな光輝にハジメは、ニヤリと笑い、面白そうな様子で呟いた。

 

ハジメ「か弱い?まさか。アイツ等は"ハウリア"――俺の部下でもあるんだぜ?」

何を言っているんだ?と光輝が訝しげな表情をした直後、「あっ!」と誰かが驚愕の声を上げた。

光輝が、何事かと空中ディスプレイに視線を向けると、そこには……

――首を落とされ、或いは頭部を矢で正確に射貫かれて絶命する帝国兵の死体の山が映っていた。

 

『……え?』

光輝だけでなく、その場の全員が目を点にする。香織達地球組は凄惨な殺戮現場を目の当たりにしたが故に。

リリアーナ達王国組は、この世界の常識が崩れる瞬間を目撃したが故に。

 

絶句が齎す静寂の中、映像が次の事態を映し出す。

兎人族を追った部隊が戻ってこない事を訝しんだ輸送部隊の指揮官らしき者が、数人を斥候に出したのだ。

程なくして、その斥候部隊が味方の死体の山を見つける。

 

次いで、その中央で肩を寄せ合って震えている兎人族の女2人を見つけると、血相を変えて詰め寄った。

映像越しでも分かる程、酷く動揺しながら怒声を上げている。

何があったのかと恫喝混じりに問い詰めているのだろう。

 

彼等も普段ならもっと慎重な行動を心がけたのかもしれないが、いきなり味方の惨殺死体の山を目撃した挙句、目の前にいるのは戦闘力皆無の愛玩奴隷。

動揺する精神そのままに無警戒に詰め寄るのも仕方ない事だろう。その代償は、高くつく事になったが。

 

斥候の1人が兎人族の女──ラナのウサミミを掴もうとした瞬間、どこからか飛来した矢がその男の背後にいた別の斥候の頭部に突き刺さった。

一瞬の痙攣の後、横倒しになった男の倒れる音に気がついて振り返る斥候。

 

その瞬間、恐怖に震えていた筈のラナが音もなく飛び上がり、いつの間にか手に持っていた小太刀を振るって斥候の首をあっさり落としてしまった。

そしてもう1人の兎人族──ミナも、地を這う様な低姿勢で一気に首を飛ばされ倒れる男の脇を駆け抜け、突然の事態に呆然としている最後の斥候の首をこれまたあっさり刈り取ってしまった。

 

まるで玩具の様にポンポンと飛ぶ首に、光輝達が「うっ!?」と顔を青褪めさせて口元を押さえる。

鈴など半分白目を剥いて倒れそうになり、龍太郎に支えられている有様。

リリアーナや近衛騎士達は、兎人族が帝国兵を瞬殺するという有り得ない光景に、思わずシアを凝視する。

「特殊なのはお前だけじゃなかったのか!?」と、その目は驚愕に見開かれていた。

 

シア「いや、紛れもなく特殊なのは私だけですからね?私みたいなのがそう何人もいる訳ないじゃないですか。

彼等のあれは訓練の賜物ですよ。

……ハジメさんが施した地獄というのも生温い、魔改造ともいうべき訓練……とも言い難い調教によって、あんな感じになったんです。」

『……。』

全員の視線が一斉にハジメに向けられる。その目は何より雄弁に物語っていた。即ち、「またお前かッ!?」と。

 

ハジメ「失礼な。俺がやったのは扇動と教育と実践訓練位で、気が付いたら本能覚醒してああなってただけだ。

……狙いは良いが、矢の貫通性が低いな。ナイフも切れ味が鈍いし……砥石が足りなかったか?

後で補充しておこう。序に空間魔法を付与したレンズと、再生魔法を付与した回復薬もつけておくか。」

幸利「おぃぃぃぃ!?何が気が付いたら、だ!十中八九原因お前の教育だろぉ!」

光輝「武器の提供してる時点で思いっきり関与しているじゃないかぁぁぁ!?」

 

幸利と光輝のツッコミに、全員が頷く。しかしハジメは、「はて?何のことやら。」とすっとぼけていた。

その間にも事態は最終局面を迎える。後続の輸送馬車と残りの帝国兵達が殺戮現場に辿り着いたのだ。

道を塞ぐ様にして散らばる味方の変わり果てた姿に、思わず足が止まる帝国兵達。

まさか何事もなかった様に死体を踏みつけて先へ進む訳にはいかないし、何より動揺が激しい様で騒めいている。

 

その致命的な隙を、ハウリアはその隙を逃さなかった。否、全てはその隙を作る為の作戦だったのだろう。

相手の帝国兵は残り13名。対して両サイドの崖から飛び出したハウリア族は3名。

いつの間にか姿を消していたラナとミナの2人、先程から矢を放っている狙撃手を入れても6名。

戦力的には倍の差がある。

 

しかし帝国兵が飛び出してきたハウリアに対して明確な戦闘態勢をとったのは、4人の首が飛び、1人の眉間が矢で撃ち抜かれた後だった。

ハウリアの猛攻は止まらない。流れる水の様に、或いは群体生物の様に帝国兵に襲いかかる。

 

一人が正面から小太刀を振るい帝国兵が剣で受け止めた瞬間には、脇から飛び出した別のハウリア族があっと言う間に首を刈る。

初撃とは比べ物にならない程遅く山なりに飛んできた正面から飛来する矢を、見え透いているとばかりに帝国兵が切り払った瞬間、その帝国兵の矢を追う視線を読んでいた様に別の兎人族が死角から滑り込んで首を刈る。

 

雄叫びを上げて迫る帝国兵に、刈り取った兵士の頭部を蹴りつける。

怒り心頭といった様子でその不埒なハウリアに視線が固定された瞬間、背後から突如現れた別のハウリアに首を刈られる。

右と思えば左から、後ろと思えば正面から。縦横無尽、変幻自在の攻撃に終始翻弄される帝国兵達。

彼等の首が余さず飛ぶまで……そう時間はかからなかった。

 

「こ、これが兎人族だというのか……」

「マジかよ……」

「うさぎコワイ……」

"ノア・エルーナ"のブリッジに、そんな戦慄を感じさせる呟きが響く。

 

ハジメ「ふむ……中々仕上がっては来たな。……まだ、詰めが甘いが。」

唖然呆然とする光輝達と、涙目で震えながら抱き合っている女性陣(主にリリアーナと鈴)を放って、ハジメは操縦席の近くにあったダクトの一つにドンナーを差し込み、引き金を引いた。

 

その瞬間、空から降り注いだ一条の閃光が、丁度馬車から飛び出て発動寸前の魔法を放つべくハウリアに手を向けかけていた帝国兵の頭部を爆ぜさせた。

内臓が飛び散り、良い子に見せたらトラウマ確定な光景が広がった。

 

ハジメ「……うん、やっぱり操縦席で撃つのも偶には良い。次はシュラーゲンでも試してみるか。

あぁ、でも対戦車ライフルも捨てがたいな……素材が余ってたら、今度やってみよっと♪」

そんな中でも平然と感想を口にするハジメ。言ってることは完全に戦闘狂……というより、トリガーハッピーだ。

当然、全員(ユエ達含む)ドン引きしていた。唯一、ミュウのみが「パパ、カッコいいの!」と大興奮していたが。

 

空中ディスプレイに、驚いた様な表情で凄惨な首なし伏兵を見ているハウリア族が映っていた。

彼等は直ぐ様ウサミミを揺らして、空高くを飛ぶ"ノア・エルーナ"に気が付く。

普通なら正体不明の飛行物体に警戒心を露わにするものだろうが……次の瞬間には彼等の表情は喜色に彩られていた。

 

岩陰から飛び出てきたクロスボウを担ぐ少年などは何やら不敵な笑みを浮かべながらビシッ!とワイルドな敬礼を決めている。

彼等は閃光を放った者が誰なのか気がついたようだ。それも、当然といえば当然である。

紅と黄金の閃光は、彼等が敬愛する魔王陛下の代名詞のようなものなのだから……

 

少年にならって惚れ惚れするような敬礼を決めるハウリア族達。

空中ディスプレイにデカデカと映ったその姿に、再びその場の全員がハジメに視線を向けた。

今度は、多分に呆れを含んだジト目で。

何をしたら温厚の代名詞のような兎人族があんなことになるのだと、光輝達の目が無言の疑問を投げかけていた。

 

シア「ハジメさん、ハジメさん。早く、降りましょうよ。

樹海の外で、こんな事をしているなんて……もしかしたらまた暴走しているんじゃ……。」

光輝達のジト目をスルーしてシアがハジメを急かす

ハウリア族は明らかに作戦を練って帝国兵の輸送部隊を狙っていた為、どうやら樹海の外まで出張って帝国兵を殺す程また戦いに酔いしれて暴走しているのではないかと心配な様だ。

 

ハジメ「……その心配はなさそうだ、寧ろ帝国の状況が気になってきたぞ。

……場合によっては、同盟国が1つ減るかもしれんが。

リリアーナ「ハジメさん!?何か今、物騒なことを口にしてませんでしたか!?」

彼等の様子から自己陶酔はないにしても、やはり樹海で何かがあったと察したハジメは、シアが憂い顔であったこともあり、リリアーナの質問を聞き流しながら、"ノア・エルーナ"を操って谷間に着陸させた。

 


 

谷間に着陸した”ノア・エルーナ”から降り立ったハジメ達を迎えたのは、整然且つキリッとした顔で並ぶハウリア族6名と、戦々恐々といった様子でハジメ達を注視する数多くの亜人族だった。

100人近くの大所帯だ。

兎人族以外にも狐人族や犬人族、猫人族、森人族の女子供が大勢いて、手足と首には金属製の枷が付けられていた。

やはり、リリアーナの見立て通り輸送馬車は亜人奴隷を運ぶ為の物だったらしい。

 

鈴「ね、ねぇカオリン、エリエリ、シズシズ。鈴、あの亜人さん達みたいな顔、見た事あるよ。

あれだよ、ほら、映画とかで宇宙人が宇宙船から降りてきた時の地球人の顔だよ。」

香織「え?……鈴ちゃん、それって私達が宇宙人っていう事?」

恵里「まぁ、初めての場面に遭遇したらそうなるよね。」

雫「……正に、未知との遭遇という訳ね。」

 

鈴のなんとも言えない表情での言葉に、香織が目をパチクリさせ、恵里は苦笑いした。

雫は内心、「この中で一番宇宙人っぽいのは香織よね」と思ったが口にはしなかった。

現実離れした美貌という点ではユエも同じだが、加えて銀髪というのは如何にもそれっぽい。

見るからに騎士と分かる近衛達や、兎人族のシアがいなければ、亜人族の視線は香織に集中していた事だろう。

そんな驚愕8割、警戒2割で絶賛混乱中の亜人族達の中からクロスボウを担いだ少年が颯爽と駆け寄り、ハジメの手前でビシッ!と背筋を伸ばすと、惚れ惚れするような敬礼をしてみせた。

 

???「お久しぶりです、魔王陛下!再びお会いできる日を心待ちにしておりました!

まさか、この様な物に乗って登場するとは……この必滅のバルトフェルド、改めて感服致しましたっ!

それと先程のご助力、感謝致しますっ!」

ハジメ「久しいな。まぁ、先程の戦闘は及第点スレスレだがな。前にも言ったであろう、最後まで油断はするな。

やるなら確実に息の根を止めろ、それが一流の殺しの基本だ、と。

……とはいえ、たった6人であれだけ出来た点は褒めてやろう。"よくやったな、我が精鋭達よ。"」

 

ハジメが先程の戦闘での問題点を指摘しつつも、ニヤリと口元に笑みを浮かべてそう言うと、ウサミミ少年──

必滅のバルトフェルドを自称するパル君(10歳)と同じく駆け寄ってきたラナとミナ、そして女の子と男2人が敬礼を決めつつ、感無量といった感じで瞳をうるうると滲ませ始めた。

かと思えば、一斉に踵を鳴らして足を揃え直し、見事にハモりながら声を張り上げた。

 

「「「「「「恐縮でありますっ、Sir!!一層精進致しますっ、My load!!」」」」」」

 

谷間に木霊する感動で打ち震えたハウリア達の声。

敬愛する魔王陛下に、直々に指導されたことと成長を褒められたことに喜び涙ぐむが、決して涙は流さない。

だって自分達、陛下の精鋭部隊だもん!と言わんばかり。

 

全員、空を仰ぎ見ながら目にクワッ!と力を込めて流れ落ちそうになる涙を堪えている。

若干力を入れすぎて目が血走り始めているのが、見様によっては滑稽だったり、非常に怖かったりする。

当時を知る3人と、何故かミュウは平然としているが、他の面々はドン引きである。

 

シア「えっと……皆、久しぶりです!元気そうで何よりです。ところで、父様達は何処ですか?

パル君達だけですか?あと、どうしてこんな所で帝国兵なんて相手に……」

パル「落ち着いてくだせぇ、シアの姉御。一度に聞かれても答えられませんぜ?

取り敢えず、今、ここにいるのは俺達6人だけでさぁ。

色々事情が込み入ってやして、詳しい話は落ち着ける場所に行ってからにしやしょう。

……それと、姉御。パル君ではなく"必滅のバルトフェルド"です。お間違いの無い様お願いしやすぜ?」

シア「……え?今、そこをツッコミます?っていうかまたそんな名前を……ラナさん達も注意して下さいよぉ。」

 

相変わらずのパル君に、シアは頭痛を堪える様にこめかみをぐりぐりしながらツッコミを入れる。

とはいえ、場所を移すべきだという意見は尤もなので、取り敢えずそれ以上の追及はせず、シアはラナやミナといったお姉さん的立場の2人にパルの厨二全開の改名を止めさせるよう注意を促した。

だが、現実というのは常に予想の斜め上をいくものなのだ。

 

ラナ「シア。ラナじゃないわ……"疾影のラナインフェリナ"よ」

シア「!?ラナさん!?何を言って……」

ハウリア族の中でも、しっかりもののお姉さんだったラナからの、まさかの返しにシアは表情を引き攣らせる。

しかし、ハウリア族の猛攻は止まらない。連携による怒涛の攻撃こそが彼等の強みなのだ!

 

ミナ「私は、"空裂のミナステリア"!」

シア「!?」

ネア「私は、"外殺のネアシュタットルム"!」

シア「!?」

ヤオ「俺は、"幻武のヤオゼリアス"!」

シア「!?」

ヨル「僕は、"這斬のヨルガンダル"!」

シア「!?」

 

全員が凄まじいドヤ顔で、それぞれ某星の一族的な香ばしいポーズを取りながら、二つ名を名乗った。

シアの表情が絶望に染まる。口から「うぼぁ……。」と奇怪な呻き声が漏れ出した。

どうやら、ハウリアの中では二つ名厨二ブームが来ているらしい。

 

この分だと、一族全員が二つ名を持っている可能性が高い。因みに、彼等の正式名は、頭の二文字だけだ。

久しぶりに再会した家族が、ドヤ顔でポーズを決めながら二つ名を名乗ってきましたという状況に、口からエクトプラズムを吐き出しているシアの姿は実に哀れだった。

 

ハジメ「お前等、ダサいからそれ止めろ。」

「「「「「「!?」」」」」」

そんなシアの苦悶を知ってか知らずか、ハジメは呆れ顔で一刀両断した。

 

ハジメ「プロの暗殺者なら、コードネームは短く纏めろ。"撃墜"や"刃影"位にしておけ。

そして、呼び合うのは作戦決行前後にしろ。敵に名前を知られることも、痕跡を残すことも許すな。」

幸利「指摘するのはそこかよ。」

ハジメ「後、俺は地球では闇颯(やみかぜ)と呼ばれていた。」

恵里「兄さん?大丈夫?疲れてない?」

ユエ達からも心配そうな視線を向けられるハジメ。が、ハジメさんは至って大真面目である。

 

ハジメ「因みに、俺をそう呼んでいたのは裏道場の一門――つまり師範達だ。」

光輝「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ!裏一門ってどういうことだ!?」

ハジメ「あぁ、光輝は知らなかったんだな。雫の実家は忍者の一族でもあるんだ。」

香織「えっ!?そうなの、雫ちゃん!?」

まさかの衝撃情報に香織が尋ねると、雫は気まずそうに頷いた。

 

ハジメ「そういや、伊賀だの甲賀だのとドンパチしたこともあったな……あ、雑賀や風魔もいたか。」

雫「待ってハジメ君、その話は初耳なんだけど!?」

ハジメ「安心しろ、雫の代わりに全員絞めてきたから。」

『違う、そこじゃない!』

香織達日本組からの総ツッコミが入るも、気にせずしみじみと続けるハジメさん。*4

 

パル「成程……流石は陛下!こちらの世界に来る前から、既に最強であらせられたのですね!」

ハジメ「いや、まぁ……うん。そうだね、俺最強だから。」

???「それでいいのかよ……。」

そしてなんか違う方向に勘違いしだすハウリア。ハジメも訂正が面倒になったのか、投げやりに肯定していた。

 

ラナ「あの~、陛下?」

ハジメ「そういえば、俺以外にもいたよな。地球産ファンタジーの暗殺者。」

???「おい、誰が幽霊だ。自動ドアだって3回に1回は反応するぞ。」

そう言いながら、ハジメはここにいない戦友を思い出す。幾度となく、的確なアシストを出してくれたあの男を。

 

ラナ「陛下、その~……。」

幸利「そういや……確かにアイツはファンタジーだよな。」

雫「あいつ?」

ハジメ「ほら、うちのクラスにいるじゃねぇか。ぬらりひょんみたいに存在感を消せる奴が。」

『……あぁ。』

???「悪かったな、存在感無くて!てか、いい加減気づけよ!」

その言葉で、ユエ達も漸くその存在を思い浮かべる。

 

ラナ「えっと……陛下?」

ハジメ「この際、他の神代魔法も習得させたかったんだが……あいつは王都に残っちまったしな。

非常に残念でならないものだ、俺を殺せる可能性がある程の才能なのに。」

???「……高く評価して貰えるのは嬉しいんだけどさ。ここにいるからね?しまいには泣くよ?」

ハジメさん、その人物の才能を非常に買っていた模様。しかし、生憎当の本人は、仲間の護衛の為に王都にいる。

 

ラナ「陛下、陛下。」

ハジメ「ん?あぁ、すまんな。前に話した暗殺者のことを――」

ラナ「その方って……先程から、そちらに座り込んでいる黒づくめの人、でしょうか?」

『……え?』

唐突のラナの指摘に、ハジメは勿論、ユエ達もハウリアも、亜人族達も一斉にその方向を見つめる。

 

浩介「……え?」

ハジメ「……え?」

『い、何時の間に!?』

そこにいたのは、先程話題に上がっていた人物――遠藤浩介その人だった。

 

浩介「俺の事、分かるんですか……!?」

ハジメ「……ラナ、何時から気づいていた?」

何時まで経っても気づいてもらえないと思っていたら、まさか初対面の女性に気づいてもらえるとは思わず、浩介は驚愕していた。

ハジメも震える声で、浩介の事を何時感知していたのかをラナに訊ねる。その結果、

 

ラナ「え?割と最初から、ですが……。」

ハジメ「……マジで?」

ラナ「……はい。」

ハジメ「Oh……。」

意外過ぎる回答にハジメも頭を抱える。だって、自分でも5分の確率で気づかないんだもの。

 

ハジメ「まさかここに来ていたとは思わなかったが……紹介しよう。

こいつこそが、"気配遮断"の達人にして、俺の知る限り最強の暗殺者。遠藤浩介だ。」

浩介「えっと……どうも?」

戸惑いながらも返事を返す浩介。その紹介に、ハウリアは驚愕する。

なにせ、自分達の敬愛する魔王陛下を殺せる可能性を持つ男なのだ。注目せずにはいられない。

 

ハジメ「てか、浩介。お前、何で付いて来ているんだよ。王都に残るんじゃなかったのか?」

浩介「俺だってそうするつもりだったよ。ただ……。」

ハジメ「ただ?」

浩介「今朝、俺だけ朝食が無かったから、テーブルに残ってる賄いっぽい料理を食べたら、それで腹を下して……。」

ハジメ「お前……メルドさんと王都であった時と同じパターンじゃねぇか。」

浩介「それで飛空艇のトイレで格闘してたら……何時の間にか離陸してた。

後、昼飯食べていないから、腹減った……。」グルルゥゥゥ……

ハジメ「なんかもう……ホント、強く生きてくれ。」

 

切実な表情で浩介にかけられたハジメの言葉に、浩介以外の全員が強く頷いた。

実力は自他共に認められ、信頼も厚いというのに、どうして……

そんな視線を集めた浩介は「いいんだ、もう慣れているから。」と、死んだ目で返し、更に同情の視線を集めた。

 

???「あの……宜しいでしょうか?」

と、そんな微妙な空間に、しっとりした声音が響いた。

ハウリア達の間を避けながらそう声をかけてきたのは、一人の亜人族の女性だった。

 

足元まである長く美しい金髪を波打たせた、翡翠の瞳を持つスレンダーな美少女だ。

耳がスッと長く尖っているので森人族(エルフ)という事が分かる。

ハジメは、どこかフェアベルゲンの長老の一人であるアルフレリックの面影があるな、と感じつつ視線で先を促した。

 

???「もしや貴方は、南雲ハジメ殿で間違いありませんか?」

ハジメ「あぁ、如何にも。」

その問いにハジメが頷くと、森人族の少女はホッとした様子で胸を撫で下ろした。

細い腕に嵌められた金属の枷がジャラリと音を鳴らす。なんとも痛々しい有様だ。

特に、足首に付けられた枷は歩く度に擦れるのだろう。彼女の白く滑らかな肌が赤く腫れてしまっている。

 

???「では、私達を捕らえて奴隷にするという事は無いと思って宜しいですか?

祖父から、貴方の種族に対する価値観は良くも悪くも平等だと聞いています。

亜人族を弄ぶ様な方ではないと……。」

ハジメ「祖父……アルフレリックか。」

???「はい。

申し遅れましたが、私はフェアベルゲン長老衆の一人アルフレリックの孫娘、アルテナ・ハイピストと申します。」

ハジメ「長老の孫娘が捕まるとは……どうやら帝国もリニューアルさせねばならんやもしれんな。」

リリアーナ「ハジメさん!?」

 

長老の孫娘と言えば紛れもなく森人族の姫という事であり、当然その警護やいざという時の逃走経路・方法もしっかり確立してある筈だ。

それらを使用する事も無く、或いは使用しても捕まってしまったと言うなら、それだけ逼迫した事態に晒されたという事だろう。

 

これは流石に看過できないと、帝国を将来的に解体する可能性も視野に入れつつ、ハジメはパル達から詳しい話を聞く必要があるなと視線を鋭くした。

その様子をジッと見ていたアルテナの視線を制して、ハジメはパル達に声をかける。

 

ハジメ「パル、亜人達を先導しろ。事情説明序に樹海まで送る。」

パル「Yes,Your highness!あっ、申し訳ないんですが、陛下。

帝都近郊に潜んでいる仲間に連絡がしたいんで、途中で離脱させて頂いてもよろしいですか?」

 

現在、ハジメ達がいるのは帝都のかなり手前の位置だ。

そんな場所に亜人奴隷の輸送馬車がいたという事は、この輸送は"樹海から帝都へ行く"ものではなく、"帝都から他の場所へ向かう途中"だったという事だ。

つまり、パル達は帝都に何らかの情報収集をしに行って輸送の話を知り追いかけてきた、という事だろう。

 

ハジメ「その程度なら別に構わん。こっちも帝都に用がある故、帝都から少し離れた場所で一緒に降ろそう。」

パル「有難うございますっ!おいアンタ達、我等が魔王陛下が直々に樹海まで送って下さるそうだ!

死ぬ程感謝しろ!さぁさぁ、付いて来い!家に帰りたいなら、迷わず進め!」

 

事情を察したハジメから了承の意を得たパルは、声を張り上げた。

10歳のウサミミ少年の張り上げた声に、大の大人も含めて亜人族達はビクッとなった。

とはいえ、家に帰れると言われれば不安と恐怖はあれど期待してしまうもの。

亜人達は、パル達の先導に従っておずおずと歩き始めた。それを見て、ハジメ達も"ノア・エルーナ"に戻る。

 

アルテナ「きゃ!」

するとその時、ハジメの近くで可愛らしい悲鳴が上がった。アルテナが、足枷の鎖のせいで躓いた様だ。

その結果、わたわたと両手が宙をかき、咄嗟に近くにあったもの──即ちハジメの背中にしがみついた。

 

亜人族達が一瞬で青褪めて硬直する。

帝国兵が相手だったなら、支え代わりにした瞬間、平手でも飛んでくるところだ。

「なに許可なく触ってんだ、薄汚い獣風情がっ!」とか何とか怒鳴りながら。

なのでアルテナもそうされるのではないかと、殴られる姿を幻視したのだろう。

 

ハジメ「あぁ、すまんな。忘れていた。」

が、ハジメがそんな低俗な事をする筈もなく、肩越しにビクッと身を竦ませたアルテナに振り返ると、彼女の手と足の枷を見て、「そりゃ歩きにくいわな。」と納得しつつ、スッとアルテナの前に跪いた。

 

「そ、そんな!?ボスが手を差し伸べた!?俺達だってされたことないのに!?」

「おのれっ、アルテナめぇっ!!」

ハジメ「黙っとれ、痛ウサギ共。」

その事に、亜人達がざわっと動揺した様に騒めき、ハウリア族からは怨嗟の声が上がった。

勿論、ハジメさんは後者に呆れた様子でツッコミを入れるのであった。

 

アルテナ「あ、あの……。」

ハジメ「いいからジッとしていろ。」

いきなり跪かれて動揺するアルテナだったが、次ぐハジメの行為に更に動揺が激しくなった。

というのも、ハジメがアルテナの足に触れたからだ。正確には足枷だが、ビクンッと震えるアルテナ。

動揺のあまり硬直しつつも目が泳ぎまくっている。

 

人間の男に跪かれたことなどないのは当然。

それどころか、同族であっても身内以外の異性には触れられたことすらない箱入り娘同然だった彼女には無理もないだろう。

何をされるのかと動揺するアルテナだったが、直後には驚きで目が丸くなった。

紅と黄金の魔力光が迸ったと思ったら、音もなく足枷が外れたからだ。

 

ハジメ「……ふん、魔力の無い亜人族用の枷ならこの程度か。用途に反して、無駄に頑丈にしたものだ。

この程度では防具の素材にすらならん。いいとこ、投石の玉位だろう。」グググ……

分析しつつ、外した枷を握り潰したかと思えば、器用にも丸めて球状にしたハジメに、アルテナや他の亜人族はびっくり仰天してしまった。

そんな彼等の様子も気に留めず、ハジメは立ち上がり、今度はアルテナの両手を持った。

 

アルテナ「綺麗……。」

その時点で、ハジメが何をしているのか理解したアルテナは少し落ち着きを取り戻し、再び迸った紅と黄金の輝きに目を奪われながら、音になるかならないかというほど小さな声で呟いた。

 

そして粉々になった手枷を放り捨てたハジメは、最後にアルテナの首筋に触れる。

奴隷用の首輪が着けられているからだ。

真剣な眼差しで、自分の首筋に手を這わせるハジメに、何故かアルテナの頬が熱を持った様に紅く染まった。

あっさり首輪を外したハジメは、それを錬成で幾つもの鍵に加工し直し、出来上がった鍵束をパルに投げ渡した。

 

ハジメ「後はお前達が外してやれ。どうせ陳腐な造りだからな、鍵穴も同じだろう。」

パル「Yes,My load!お心遣い、感謝致します!」ビシッ!

敬礼するパルに頷くと、ハジメは踵を返し、ミュウの下へと向かったのであった。

その様子を、亜人族達は不思議な者を見るような目で、パル達ハウリアは誇らしげに、光輝達は苦笑し、そしてユエ達女性陣は微笑みながら見つめていた。

*1
重量魔法を生成魔法で付与した鉱石。質量が大きくなればなる程、重力干渉の力も大きくなる性質を持ち、原作におけるクロスビット1つ=成人男性1人分と考えても良い。

*2
「あの~……俺、ここに乗ったままなんだけど?」

*3
簡単に言ってしまえば、トランスフォームしそうな地球外生命体がよく使う、通信用モニターのようなもので、普通に望遠鏡としても、ア〇アンマンや〇走中に出てくる、3DCGホログラムモニターとしても使える。そして、これらの機能を応用したものが各箇所に搭載されており、空中ディスプレイを操作することで、搭載された機能を簡単に扱えることが出来、より快適かつ柔軟な旅路を行くことが可能だ。そして、これら全てはハジメさんがロマンを詰め込んだ結果である。現に、元ネタを知っている男子は全員興奮していた。

*4
因みに、飛び加藤や絡繰妖術師、果ては八岐大蛇の分霊退治まで行った模様。




ハウリアェ……
因みに、船の元ネタは『ノア(匣舟)・エ(エンキ)・(フェルニル)ル・(ヴィマーナ)-ナ』です。

ハジメさんがライダー以外の能力を手に入れるとしたら?

  • 全スーパー戦隊の力
  • 全ウルトラマンの力
  • その他全特撮ヒーローの力
  • 全サーヴァントを召喚、使役する能力
  • 全てのスタンドを扱える力
  • 全ての魔術・魔法を扱える力
  • 全ジャンプ作品の力を扱える
  • 全サンデー作品の力を扱える
  • 全コロコロ作品の力を扱える
  • 全マガジン作品の力を扱える
  • 全てのラノベ作品の力を扱える
  • 別の世界に能力そのままで転生できる能力
  • 一億年ボタン
  • 全てのロボットを操縦できる能力
  • 無限残基
  • 女難に巻き込まれなくなる
  • 倒した敵の全能力を得る能力
  • 全スマブラキャラの力
  • その他全ゲームキャラの力
  • その他(活動報告でリクエスト)
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