Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
『注:当然、嘘です。』
追記:白河上皇さん、誤字報告ありがとうございます!
雑多。【ヘルシャー帝国】の首都はどんなところ?と聞かれて答えるなら、その一言だろう。
徹底的に実用性を突き詰めた様な飾り気の無い建物が並んでいる一方で、後から継ぎ足し続けた様な奇怪な建物の並ぶ場所もある。
ストリートは「区画整理?なにそれおいしいの?」と言わんばかりに大小入り乱れ、あちこちに裏路地へと続く入口がある。
雰囲気も、【宿場町ホルアド】の【オルクス大迷宮】に挑む者達が醸し出すどこか張り詰めた様な緊張感があり、露店を出している店主達ですら"お客様"という考えからは程遠い、荒々しい接客ぶりだ。
だが、決して暗く淀んでいる訳でも荒んでいる訳でもなく、誰もが、其々やりたい事をやりたい様にやっているのだという自由さが溢れている様な、そんな賑やかさがあった。
"何があっても自己責任、その限りで自由にやれ!"という意気が帝都民の信条なのかもしれない。
なんか、日本であった"楽市楽座"みたいだな。
【ヘルシャー帝国】は数百年前の大戦で活躍した傭兵団が設立した新興の国で、実力至上主義を掲げる軍事国家だ。
帝都民の多くも戦いを生業としており、よく言えば豪気、悪く言えば粗野な気質だ。
都内には大陸最大規模の闘技場等もあって、年に何度も種類の違う催しがなされ大いに盛り上がっている。
荒くれ者「おい、おまえ『ドガッ!!』ぐぺっ!?」
そんな帝都に入った俺達だが、美女・美少女を引き連れている状態で目立たない訳もなく、頻りにちょっかいを掛けられては問答無用かつ物理的に沈めて金的という事を既に何度も繰り返していた。
今も、ニヤつきながら武装して寄って来た男を、アッパーでかちあげて地面に激突したところへ金的してやった。
しかし、周囲はそんな暴力沙汰を特にどうとも思っていない様で、ごく普通にスルーしている。
この程度の"喧嘩"は、日常茶飯事なのだろう。
……若干、男は軒並み内股になっている様な気もするが気のせいだろう。
う~ん……なんというか、江戸時代にファンタジーを足して治安が最悪になったようなもんだな。
何てことを思いながら、"威圧"で強引に道を開けさせた。
シア「うぅ、話には聞いていましたが……帝国はやっぱり嫌なところですぅ。」
香織「うん、私もあんまり肌に合わないかな。……ある意味、召喚された場所が王都でよかったよ。」
ティオ「まぁ、軍事国家じゃからなぁ。軍備が充実しているどころか、住民でさえ、その多くが戦闘者なんじゃ。
この程度の粗野な雰囲気は当たり前と言えば当たり前じゃろ。妾も住みたいとは全く思わんがの。」
トネリコ「同感です。富国強兵は良い事ですが、治安が悪くては意味がありませんし。」
ミュウ「みゅ?パパがいれば安全だと思うの。」
レミア「あらあら、ミュウったら。パパの通った後が、死屍累々なのだけど……。」
恵里「来る度に片っ端から拳一閃で薙ぎ払っているからね……確かにああいうのを避けるにはピッタリだけど。」
鈴「いやいや、避けるというか撃退じゃないかな!?」
どうやら、女性陣は帝都がお気に召さなかったようである。
無言ではあるが、ユエも同意するように頷いており、やはり女性には余り好かれない国なのかもしれない。
一方、男性陣はそれ程嫌いな雰囲気ではなさそうだが、好んでいる訳ではなく、日本人に於いては刺激の強過ぎる特異な有様に頻りに表情を歪めていることから、やはり満場一致で"嫌われている"ようだ。
王国ではまず見られなかった光景、特にシアの心を抉る──奴隷達。
ハジメ「シア、余り見るな。……見ても今は仕方ないだろう?」
シア「……はい、そうですね。」
どうしても目に入ってしまう同族達の有様。値札付きの檻に入れられた亜人族の子供の姿は見るに堪えない。
使えるものは何でも使う主義の帝国は奴隷売買が非常に盛んのようで、見ない様にしようとしてもそこかしこに奴隷商がおり、引き連れている者も多くいる。
ユエ「……シア、大丈夫?」
ミュウ「シアお姉ちゃん、大丈夫?」
すると、ユエとミュウが心配そうにシアの手を握る。勿論、俺もシアのウサミミを優しく撫でる。
その暖かさが伝わったのか、シアのウサミミが嬉しそうにパタパタと動いた。
光輝「……許せないな。同じ人なのに……奴隷なんて。」
と、そんな時。光輝が、ギリッと歯噛みした。
かつての【ハイリヒ王国】は聖教教会の威光が強く、亜人への差別意識も高かった。
その分、亜人を奴隷として傍に置くという考え自体が忌避されがちな風習なので、光輝達も王都で奴隷の亜人を見る機会は無かった。
だから余計に心に来るものがあるのだろう。とはいえ、だ。
ハジメ「光輝、今は抑えろ。期を誤れば、余計面倒な事態になって助けづらくなる。」
光輝「……分かっている。」
今ここで行動を起こされても困るので、一応釘は刺すと、光輝も難しそうな表情で渋々といった様子で頷いた。
すると、そんな微妙な雰囲気を変えようとしたのか、香織が王国であった珍事を口にする。
香織「そう言えば、私と雫ちゃんが皇帝陛下にプロポーズされたこともあったかな。」
雫「……そう言えば、そんな事もあったわね。」
ハジメ「あぁ、おっさん趣味じゃないから振られたんだっけか。」
思い出したくなかった事を掘り起こされて、顔を顰めると同時にジト目を香織に向ける雫。
何故、その話題を出したのかと言いたげだ。俺も当時聞いた情報を口にしたら、何故か微妙な視線を向けられたが。
すると、ユエ達女性陣が「ほぉ~」とどこかニヤついた表情で2人を見て、光輝が渋い表情になった。
一般的な視点からすれば、一種のシンデレラストーリーと言えなくもないのだが、女性として嬉しいという気持ちは皆無のようだ。
どうやら国だけでなく、皇帝ガハルド自身も嫌われてしまっているようだ。
雫「そういえば、ハジメ君。具体的に何処に向かっているの?」
今にも詳細を聞いてきそうな女性陣を躱す為、雫はこちらに話を振ってきた。
……そういやぁ具体的な方針は言ってなかったな。
ハジメ「取り敢えずは、冒険者ギルドだな。"金"ランクと大金さえあれば大抵の情報は聞き出せそうだしな。」
雫「……ハジメ君は、彼等が捕まっていると考えているの?」
ハジメ「なんとなくだがな。奴隷堕ちか牢屋行きか……或いは、潜伏中かもしれん。
ざっと見た限りだが、現在の警戒態勢は高い。入ったはいいが出られない可能性もあるしな。」
俺が言った通り、現在帝都の警備レベルは高い。
入場門では1人1人身体検査までされた上、外壁の上には帝国兵が巡回ではなく常駐して常に目を光らせていた。
都内でも、最低
恐らく、魔物の襲撃があった事が原因で、未だ高レベルの警戒態勢を敷いているのだろう。
そんな現状の帝都であるから、パル達も侵入には苦労していて未だ隙を窺っている状態だ。
奴隷でもない兎人族が帝都に入れる訳もなく、俺の奴隷のフリをするのも限度がある。
その為、俺が運んできた増援部隊も、今は目立たない様に帝都から離れた岩石地帯に潜伏中だ。
寧ろ、カム達はこのような状況でどうやって侵入したのかが不思議だ。
まぁ、口では分からないとは言ったものの、十中八九捕まっているのは間違いない。
ハウリア達兎人族は気配操作に関しては亜人族随一な上に、カム達はそれを磨き続けてきたのだ。
人の出入りは厳しくとも、何らかの方法で外に伝言を送る位は出来るだろう。
にもかかわらず、それすら出来なかったという事は、捕まっていて身動きがとれないと考えるのが自然だ。
勿論、ギルドにそのまま情報があるとは思ってはいない。だが、それに関する情報位ならあるだろう。
すると、傍らで不安そうな表情をするシアが目に入ったので、手を伸ばして頭を撫でる。
そして俺は、嬉しそうにしながらも若干不安さを残すシアに、冗談めかしていう。
ハジメ「なに、たとえ捕まっていようとも特異な連中をそう簡単に処断はせんだろう。その内、サクッと見つかるさ。
それに捕まっているなら取り返せばいいだけだしな。安心しろ、いざとなれば国ごと消し飛ばすから。」
ユエ「……任せて、シア。塵も残さない。」
シア「ハジメさん、ユエさん……!」
奈落から出て4か月は共に過ごした仲なのだ。その絆はとても固く……
雫「いやいやいや、消し飛ばしちゃダメでしょう!?塵も残らなかったら、カムさんも死んでるんじゃ……
目が笑っていないのだけど、冗談よね!?そうなのよね!?お願いだから冗談だと言って!?」
ハジメ「えぇ~?これから来る決戦で和を乱す阿呆を野放しにしたら、最悪内ゲバになりかねないじゃん。
悪い可能性は早く潰すに限るし。」
雫「判断が早すぎないかしら!?」
そこへ苦労性の面が顔を覗かせたのか、雫が顔を青褪めさせてツッコミを入れてきた。
というか、帝国も彼等の国に火を放ったのだ。それくらいの覚悟はあるだろう。
無ければ無いで火の海に沈めてやるだけだがな。と、そんな雫の肩に、そっと香織が手を置いた。
そして、沈痛そのものの表情で頭を振ると……
香織「雫ちゃん、帝都はもう……。」
雫「諦めてる!?香織、貴女"治癒師"でしょ!
"放っておけない!"ってフェアベルゲンの人達を癒して回ったばかりでしょ!なんで諦めちゃったの!?」
トネリコ「祈りましょう、雫さん。帝都が少しでも原形を留めていることを。」
雫「トネリコさんまで!?そして、恐ろしい事を言わないでください!」
幸利「八重樫さん、もうこの際そっち方向に割り切った方が早いぞ。だって、なぁ……。」
光輝「そうだな……いっそ序に奴隷制度も廃止させられるし、その方が良いか。」
雫「光輝!?貴方まで物騒な思考しないでくれるかしら!?」
そんなに帝都が気に食わないのか……時折見せる自分の親友が壊れかけている状況に、雫は頭を抱えていた。
とまぁ、そんなあまり冗談に聞こえない冗談を交わしながら、冒険者ギルドに向かってメインストリートを歩いている事暫し。
不意に、前方の街の様子が変わり始めた。
あちこちの建物が崩壊していたり、その瓦礫が散乱していたりしていた。
そういえば、道中で耳に入ってきた話だが、コロシアムで決闘用に管理されていた魔物が突然変異し、見た事も無い強力かつ巨大な魔物となって暴れだしたらしい。
恐らくフリードの変成魔法を仕込んだ魔物を、荷物か何かに紛れ込ませたのだろう。
都市の中心部に突如出現した巨大な魔物*1に対して後手に回った帝国は、いい様に蹂躙された様だ。
挙句、魔人族がその機に乗じて一気に皇帝に迫ったらしい。
が、一応、"皇帝=帝国最強"なだけはあるのか、魔人族達は結局、皇帝を討つ事は叶わず、逆に返り討ちに遭った様だ。
魔物の方も、皇帝自ら出陣して陣頭指揮を執り、討伐に成功した様だが……
コロシアムを起点に数百m単位で放射状に崩壊した街並みを見る限り、被害は大きかった様だ。
そんな瓦礫の山となっている場所では、復興作業の為に大勢の亜人奴隷達が駆り出されていた。
冒険者ギルドは、その崩壊が激しい場所の更に向こう側にあるので、否応なく通らなければならない。
自然、彼等の姿を視界に入れる事になる。
武装した帝国兵の厳しい監視と罵倒の中、暗く沈みきった表情で瓦礫を運ぶ様は悲惨の一言だった。
帝都に齎された人的・物的被害の皺寄せは、誰よりも亜人族に来ているようだ。
こうして復興に酷使してしまっては、いくら肉体的ポテンシャルの高い亜人族と言えど倒れる者は続出するだろう。
樹海への襲撃は、倒れた彼等を回復させるよりも新調した方がいいという、正に亜人を人と認めない価値観の表れか。
或いは、単に"弱い者"を認めない実力至上主義の価値観か。いずれにしろ、クズじみた考えだな。
合理的な部分はあるが、彼等が絶滅してしまった場合も別の種族を酷使するつもりなのだろう。
先刻、アルテナ達が他都市に輸送されたのも、売上金を復興に当てる為と……正に蛮族国家だな。
と、帝国への評価が駄々下がりになっていた時だった。
俺達から少し離れた所で犬人族と見られる10歳位の少年が瓦礫に躓いて派手に転び、手押し車に乗せていた瓦礫を盛大にぶちまけてしまった。
足を打ったのか蹲って痛みに耐えている少年に、監視役の帝国兵が剣呑な眼差しを向け、棍棒を片手に近寄り始めた。
何をする気なのかは明白だ。
光輝「おい!やめっ『ブォンッ!』!?」
それを見て、光輝が帝国兵を止めようと、大声を上げながら駆け出そうとする。
が、その前に風を切るような音が微かに響き、帝国兵が勢いよくつんのめり顔面から瓦礫にダイブした。
ゴシャッ!と何とも痛々しい音が響き、帝国兵はピクリとも動かなくなった。
同僚の帝国兵が慌てて駆けつけて容態を見た後、ダラダラと流れる鼻血と涎を見て、呆れた表情で頭を振った。
そして面倒そうに、且つ嫌そうにしながらも担いで何処かへ運び去っていった。犬耳少年の事は放置である。
犬耳少年はというと、何が起きたのかわからないといった様子で暫く呆然としていたが、ハッとした表情で立ち上がると自分が散らかした瓦礫を急いでかき集めて、何事も無かった様に手押し車で運搬を再開した。
そして、出鼻を挫かれ、同じく呆然としている光輝に、俺は声を掛けた。
ハジメ「気持ちは分かるが、無策で突っ込むな。やるならせめて、さっきみたいにバレない様にしろ。」
光輝「!……すまない、ハジメ。」
俺の言葉に光輝も落ち着きを取り戻したのか、顔を俯かせながらも進みだした。
因みに、さっきは極小の針を高速で飛ばし、帝国兵の股間を打ち抜き、針の先端に込められた麻痺毒で気絶させた、と言う寸法だ。
俺とて、力を継承しただけではあるが、これでも"仮面ライダー"の端くれなのだ。
王である以上、時に残酷な決断を下す事もあるが、誰かが目の前で苦しんでいれば、愛と平和の守護者として何も感じない訳ではない。
しかし、だからといって本来の目的を放り出す訳にはいかない事も承知しており、今ここで奴隷解放運動などしてしまっては、元も子もないのだ。
それに、ここは日本ではなく異世界なので、日本での価値観や規則は適用できない。
奴隷も現時点ではこの国における所有物*2なので、それをどうこうすると盗人扱いされかねない。
まぁ、だからと言ってウチの家来達を強奪したことは許さんし、この場合こちらに奪い返すと言う大義名分はあるがな。
最悪、帝国とドンパチする覚悟も必要だし、二度と亜人族を奴隷にさせない方法を確立する必要もある。
でなければ、今奴隷達を力尽くで助けたとしても、後に帝国からの報復や亜人族捕獲活動が激化する可能性が高く、そうなれば待っているのは更なる地獄だろう。
そんな微妙な空気の中でも、俺達は足を進ませざるを得ないのであった。
ティオ「色々、難儀じゃのぅ。」
一方その頃。いつの間にか雫の隣に来ていたティオが、少し苦笑いを浮かべながらそう言った。
雫「……単純な人間なんて、あまりいませんよ。」
ティオ「道理じゃな。人より多くを気付いてしまうお主も、確かに難儀じゃ。放っておけないその性格も含めての。」
深い眼差しを向けられて、雫は言葉に詰まった。
ティオ「年長者の戯言と流してくれてもいいが……お主は、少し甘えた方が良い。
世話を焼いてばかりでは、お主の方が道を見失うぞ?取り敢えず、ほれ。甘えさせてくれそうな者がおるじゃろ?」
雫「え?」
そう言われた雫の視線がスッと前に流れ──
香織「雫ちゃん。なんだか難しい表情ばっかりだよ。大丈夫?」
隣にいた香織に、心配そうな声をかけられた。慌てて視線を転じる雫。香織の手が、そっと雫の握った。
雫「……ふふ、ありがと、香織。大丈夫よ。まぁ、何というか、光輝の事が少し、ね?
でも、今は神の使徒な親友もいるし、いざって時には頼らせてもらうわね?」
香織「うん!任せて、雫ちゃん!」
親友の心遣いとティオの善意による助言に感謝しながら、雫は少し肩の力を抜いて前を行くハジメ達の後を追うのだった。
と、そんな雰囲気の中、辿り着いた帝都の冒険者ギルドは、そのまんま酒場という様子だった。
広いスペースに雑多な感じでテーブルが置かれており、カウンターは2つある。
一つは手続きに関するカウンターで、受付は女性だが粗野な感じが滲みでており、もう一方のカウンターは完全にバーカウンターだった。
昼間にも関わらず飲んだくれ共があちこちにおり、暇なら復興を手伝えとツッコミを入れたくなる有様だった。
そして、俺達が中に足を踏み入れると、もう何度目になるか分からない毎度お馴染みの反応が返ってくる。
即ち、ユエ達に対する不躾で下卑た視線だ。いい加減うんざりするものだ。
なので、俺も覇気と威圧で死のイメージを流し込みしつつ、カウンターへ向かう。
軍事国家の冒険者と言えども、所詮は飲んだくれ。
一気に酔いは醒めた様だが、皆一様に顔を恐怖で引き攣らせ、気絶している者もチラホラいた。
おまけに大なり小なり失禁しており、少しすれば異臭が漂い始めるだろう。
他の街で見たにこやかさもなければ、ついさっきまで気怠げでやる気がなさそうだったカウンターの受付嬢も、顔を青褪めさせながら震えている。
が、そんな事情など知ったこっちゃないので、さっさと情報を貰いに行った。
ハジメ「情報を貰おうか。ここ最近、帝都内で騒動を起こした亜人について知ってる奴は?」
受付嬢「……。」
その質問に受付嬢は、恐怖と困惑の表情を浮かべていた。質問の内容が、奇妙だったからだろうか?
まぁ、この国の常識であれば、亜人奴隷の情報が欲しいなら商人ギルドや何処かの商会にでも行けばいいし、帝都内で騒動を起こせる奴隷などいはしない。
奴隷の首輪が大抵の反抗を封じるからだ。
そして、帝都内に奴隷でない亜人族などいない事から、その質問は有り得ない可能性を尋ねているのと変わらない。
結果、受付嬢は何やら震えた様子で、バーカウンターの方を指差す。
受付嬢「……情報は、あっちで。」
ハジメ「どうも。」
そう返してバーカウンターを見れば、ロマンスグレーの初老の男の姿があり、どうやら『情報収集は酒場で』というテンプレが守られている様だ。
受付嬢はそれだけ言うと、糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
俺はその様子に肩を竦めると、皆を引き連れて、バーカウンターへと向かった。
他の冒険者共はというと、あまりの恐怖に縮こまって、必死に目を逸らしていた。
そうして、俺はバーカウンターの前に陣取り、マスターらしきロマンスグレーの男に先程受付嬢にしたのと同じ質問をした。
すると、流石は酒場のマスターなだけあって意地があるのか、冷や汗を掻きながらも無視する様にグラスを磨き続けているだけだった。
マスター「ここは酒場だ。ガキが遠足に来る場所じゃない。酒も飲まない奴を相手にする気もない。
さっさと出て行け。」
ほぅ……何ともテンプレながらも、ある種真っ当な返答だ。こういうの、ちょっとテンション上がるなぁ。
それに、相手が圧倒的に格上だと理解しつつも、プロ意識で立ち続けるのも高評価だ。
既にピカピカのグラスしかないのに磨くのを止めないという点も、実によい。
であるならば、要望通りここで酒を飲むのも吝かではない。そう思った俺は、納得顔でカウンターにお金を置いた。
ハジメ「それは御尤もだ。マスター、この店で一番キツくて質の悪い酒をボトルで。相場の倍は出そう。」
マスター「何?……吐いたら、叩き出すぞ。」
俺の注文に一瞬、眉をピクリと動かしたものの、マスターは特に断るでもなく、背後の棚から一升瓶を取り出しカウンターにゴトリと音をさせながら置いた。
ガキだの叩き出すだのと虚勢を張りながらも素直に出したのは、俺の実力を先程の流れで悟ったからだろうか。
そう思いながら、俺はボトルを手に取ると、指先で先端をトンッ、と軽く叩く。
すると、まるで最初から切れ目でも入っていたかの様に、綺麗に先端が横に流れ落ち――る前に、俺にキャッチされた。
その行為自体と切断面の滑らかさに、周囲は勿論マスターまで息を呑んでいた。
封の空いたボトルからは強烈なアルコール臭が漂い、傍にいたシア達が思わず鼻を覆って咽てしまっていた。
光輝達も「うっ……」と呻きながら後退りしている。念の為、ミュウをレミアに預けておいたのは正解だったな……。
雫「ハ、ハジメ君?そ、それを飲む気なの?絶対、やめた方がいいと思うわよ?」
恵里「兄さん、未成年だよね?いくら毒耐性があるからって、無理はいけないでしょ……。」
鈴「そ、そうだよ。絶対、吐いちゃうって。鈴なんか既に吐きそうだよ。」
香織「っていうかハジメくん、どうせ飲むならもっといいお酒にしようよ。」
シア「香織さんの言う通りですよ、ハジメさん。どうして態々質の悪いのを……?」
女性陣が口々に制止の声を掛けてくる。傍らのユエも酒の匂いに眉を顰めつつ、俺の服の裾をクイクイと引っ張っている。
ハジメ「どうせ酔えないんだ。それなのに良い酒を飲むなんて言語道断だろう。
なら、キツいのを飲んだ方が面白い。それが……このマスターのプロ意識への礼儀というものさ。」
俺がそう言うと、マスターの口元が僅かに楽しげな笑みを浮かべているのが見えた。
やはりテンプレに理解のあるマスターだったか!尚の事、テンションが上がるものだ。
……いや、もしかしたらこの帝都には、酒の味に敬意を向ける冒険者など、そんなにいないだけかもしれんが。
そんな考察をした俺は、「え~」と批判的な声を出す女性陣を無視して、殆ど異臭と言っても過言ではない匂いを発する酒を、飲むというより流し込むようにあおり始めた。
さぁ、マスター!しっかり見ておけよ!最高最善の魔王の雄姿を!
ゴキュゴキュ……
シーンとする店内に、喉を鳴らす音だけが響き渡り、俺は一度も止まる事なく、ものの数秒でボトル一本を飲み干した。
そして、手に持ったボトルをそのまま握り砕き、瞬間錬成で大ジョッキに変えてみせると、口元に笑みを浮かべながらマスターを「何か文句が?」と目で言いながら見やる。
マスター「……分かった分かった。お前は客だ。」
その一連の行動を見たマスターは、両手を上げて降参の意を示すと苦笑いを浮かべた。中々に渋くて素敵な御仁だ。
こちらも実に楽しかった。――店が残っていたら、今度はゆっくり飲みに行きたい位には。
因みに、俺が飲んだ酒は、アルコール度数で言うなら95%という「もう飲み物じゃないよね?」というレベルのものだったらしく、品質も最低ランクのもので、正にただのアルコールといった感じのような代物、との事。
マスターもそれを一瞬で飲み干された挙句、顔色一つ変えない以上、"ガキ"扱いするわけにもいかなかった様だ。
ハジメ「……それで?さっきの質問に対する情報は?勿論、相応の対価は払おう。」
マスター「いや、対価ならさっきの酒代で構わん。……お前が聞きたいのは兎人族の事か?」
ハジメ「!……情報があるようだな。詳しく頼む」
どうやら、マスターは相応の情報を掴んでいるらしかった。
曰く、数日前に大捕物があったそうで、その時、兎人族でありながら帝国兵を蹴散らし逃亡を図ったとんでもない集団がいたのだとか。
しかし、流石に十数人で100人以上の帝国兵に帝都内で完全包囲されてしまっては逃げ切る事はやはり出来ず、全員捕まり城に連行されたそうだ。
それでも、兎人族の常識を覆す実力に結構な話題になっていたので、町中で適当に聞いても情報は集められた様だ。
ハジメ(やはり城か……。)
内心でそう呟きながら傍らのシアを見ると、やはりシアの顔色は曇っている。
果たして、帝都に不法侵入した亜人がどういった扱いを受けるのか……、少なくとも明るい未来は期待できないだろう。
だが、連行したという点は確かな希望だ。
男の兎人族も愛玩奴隷として需要が無い訳ではないが、カム達の様な初老の男まで需要が高い訳ではない。
しかも、帝国兵に牙を剥く様な存在だ。
その場で即座に処刑されていてもおかしくはないし、寧ろその方が自然である。
つまり、帝国はカム達に何らかの価値を見出し、生かしたまま飼い殺しにでもする腹積もりなのだろう。
そんな思考を込めてカウンターの下でシアの手を握る。見れば、反対側の手はユエが握っている。
シアも、俺とユエの気持ちが伝わったようで、瞳に力を宿しコクリと頷いた。
そんな俺達、特に珍しい髪色の兎人族であるシアを、マスターが意味深な眼差しで見やる。
捕まった兎人族達との関係をあれこれ推測でもしているのだろう。折角なので、そんなマスターに俺は尋ねた。
ハジメ「マスター。言い値を払うといったら、帝城の情報……どこまで出せる?」
マスター「!冗談でしていい質問じゃないが……、その様子を見る限り冗談という訳じゃなさそうだな……。」
俺が笑みを浮かべつつも、その全く笑っていない眼で同じ視線のマスターを真っ直ぐに射抜く。
さっきまで自分とのやり取りを楽しんでいた少年が、実は化けの皮を被った悪魔にでも思えたのか、マスターの表情が少し強ばっており、気のせいか冷や汗も流れている。
まぁ、質問の内容も、下手をすれば国家反逆の意思を疑われかねないものだしな。
尤も、ここは冒険者ギルドであり独立した機関であるから、帝国に対する"反逆"という観念自体が無い。
その辺りを踏まえてワンクッション挟んだのだ。
とは言え、いくらマスターが冒険者ギルドの人間であっても、自国、それも本拠地内部の情報を売り渡したと知られれば、帝国もただで済ます訳ではいかなくなるだろう。
お互いの深い部分に関しては、"見ざる・言わざる・聞かざる"が暗黙のルールというものだ。
安易に情報は口にしたくないのもわかる。だが、こっちも時間が無いのでな。さて、アンタはどう出る?
するとマスターは、苦渋の選択なのか、代わりに俺の訊ねた情報を知っている人間を教えてくれた。
マスター「……警邏隊の第4隊にネディルという男がいる。元牢番だ」
ハジメ「ネディル……訪ねてみよう。世話になったな、マスター。」
俺自身、マスターがあっさり帝城内部、特に捕虜がいる場所を教えてくれるとは思わなかったし、知らない可能性も考えていたので、知っている人間を教えてもらっただけでも助かったと思っている。
俺があっさり引き下がってくれたことに、ホッと安堵の息を吐くマスターに情報料を色を付けて渡し、異臭を放ちながら俺達から必死に顔を背ける冒険者達を尻目に、俺達は冒険者ギルドを後にした。
そして再びメインストリートを歩く中、シアが先程のやりとりについて尋ねてきた。
シア「あの、ハジメさん。さっき元牢番の人を紹介してもらったのは、もしかして……。」
ハジメ「勿論、
という訳で、皆は先に飯でも食べてゆっくりしてくれ。そこまで時間は掛からん。」
俺の指示に疑問顔をするユエ達だったが、その意図を察したのか納得したような表情になった。
ネディルとやらが帝国兵である以上、帝城内の構造を教えてくれと言っても「はいそうですか」と素直に教えないだろう。
だから無理矢理聞き出すのだ。そんな訳で、俺は雑踏の中へと溶け込んでいった。
そして1時間もかからない内に、皆と合流するのであった。
Q.ユエを連れて行かなかった理由は?
A.金的しかしないから。
もし、ハジメさん以外の別キャラ視点でオリジナル番外長編(web 原作アフターを除く)を作るとしたら、誰を主人公にする?
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ユエ
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シア
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ティオ
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レミア
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ミュウ
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香織
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雫
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トネリコ
-
リリアーナ
-
愛子
-
星野アイ
-
幸利
-
恵里
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光輝
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浩介
-
龍太郎&鈴
-
優花
-
両親サイド
-
良いから本編プリーズ
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その他(活動報告でリクエスト)