Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
それにあの御方は、間違いなく帝国処かラスボス真っ二つにしそうな御仁です。
転移で来たとしても、確実にハジメさん達の師匠として君臨しつつ、フェアベルゲンをシマにする未来しかうp主には見えません。
……ハウリア出身だったらって?間違いなくアレが無惨の様になりますね(笑)
追記:白河上皇さん、誤字報告ありがとうございます!
ちょっとした用事を済ませた俺は、オーロラカーテンで岩石地帯に移動し、ハウリア達の熱狂的な歓迎に出迎えられた。
ハウリア達自身も、お互いに肩を叩き合い、鳩尾を殴り合い、クロスカウンターを決め合って、罵り合いながら無事を喜び合っている。
シア「ぐすっ、良かったですぅ!喜び合い方がおかしいですけどぉ、皆無事で良かったですぅ……!
ハジメさん、ユエさん、ありがとうございますぅ!!」
涙声で感謝するシア。一目、家族の無事な姿を見たいという彼女の願いは、確かに叶ったのだ。
ユエ「……ん。間に合って良かった。」
そんな彼女の頭を、背伸びしたユエが撫でる。
すると、シアの涙腺はあえなく決壊し、そのままお姉さんに縋りつく妹の様に抱き着いた。
……そういえば、もうそろそろこの世界に来て一年近くになるな。父さんたちは元気にしてっかな?
なんて、故郷への哀愁を思い浮かべながら、ユエにいい子いい子されているシアのウサミミを撫でる俺であった。
と、その時、耳に風切り音が響いたので、咄嗟に何かを受け止める。
そこには、黒い鞘に収められた見覚えのある刀が、片手の人差し指と中指の間に、白羽取りの要領で掴み取られていた。
ハジメ「HAHAHA、どうしたんだい、雫?何かトラブルでもあったのかい?」
鞘に収めた状態の刀で俺に殴りかかった襲撃者――雫は、片手の指先で掴んでいるだけにもかかわらず、いくら力を込めてもビクともしない俺に舌打ちしながらも、尚、ギリギリと力を込めている。
しかし、か弱い女の子の雫ではピクリとも動かせない。
雫「……ストレス発散の為にハジメ君に甘えてみただけよ。大丈夫、私は、ハジメ君を信じているわ。
そのマリアナ海溝より深い度量で受け止めてくれるって……だから大人しく!私に!タコ殴りに!されなさい!」
ハジメ「おや、不満があったなら言ってくれればよかったのに……嫌だったのは台詞か?それともピンクか?」
雫「嘘おっしゃい!あなたの意図はわかっているのよ!絶対、悪ふざけでしょ!
何となく雰囲気に流されたけど!一発、殴らずにはいられない、この気持ち!男なら受け止めなさい!」
ハジメ「んな、理不尽な……。」
どうやら桃忍仮面のダメージが思ったより深かったらしい。
確かに、拒めばよかっただけなので、場の雰囲気や仮面自体の優秀な機能に流された雫の自業自得ではある。
しかし、そうとは分かっていても、明らかに悪ふざけが入っていた俺の言動のせいか、八つ当たりせずにはいられないのだろう。
尤も、実力差は天と地ほどなのであまり効力はない。すると、雫は刀の能力を一つ解放した。
雫「こんのぉ!"雷華"!」バチバチッ!
ハジメ「ん?」
しかし、幾ら放電されようとも、俺にはただのマッサージにしか感じない。
それが気に食わないのか、雫は思わずツッコミを入れる。
雫「ちょっと、ハジメ君。電撃を流しているのに、なんで平気なのよ?」
ハジメ「そりゃあ製作者本人だし、鍛えてますから。あ、折角だからもう片方の肩もお願い。よく凝るんだよね。」
雫「くっ、仕方ないわね……今回は引くわ。でも、いつかその澄まし顔を殴ってやる。」
HAHAHA、その日が来ると良いがな。
すると、雫の背後に目を丸くしている光輝達がいた。どうやら、思いがけない雫の行動に驚いているようだ。
香織は何処か困った様な、ユエはジト目で、それぞれ雫を見つめており、小声で「雫ちゃんが八つ当たりするなんて……初めて見たよ。」「……甘えとも言う。」等と話し合っている。
何故かティオやレミア、トネリコまでうんうんと頷いている。
どうやら、俺達のやり取りはじゃれ合っている様にしか見えなかったようだ。
カム「陛下、宜しいですか?」
すると、漸く
真剣な表情である事から、唯の再会の挨拶というわけではなさそうだと察した俺は頷き、了承の意を伝えた。
序に、"宝物庫"から長椅子を幾つか取り出し、車座状にしておいた。
カム「先ず、何があったのかという事ですが……簡単に言えば、我々は少々やり過ぎた様です」
取り出した椅子の内の一つに腰掛け、他の皆を座らせると、改めてカムから話を聞いた。
その内容を要約すると、こういう事だ。
カム達は、樹海で殿を務めた帝国の部隊員を相当数撃破した。
本隊に合流出来なかった兵士の数と生き残りの証言から、帝国は【フェアベルゲン】に通常の戦士達とは毛色の異なる未知の集団がいると警戒を強めたらしかった。
既に魔人族によって大きな被害を出した後だからだろう。
奴等の警戒心は極めて高く、"亜人族は樹海から出ない"という常識を捨てて、奪還に来る可能性を意識していた様だ。
どうやら帝国兵をかなり警戒させたらしい。
或いは、単なる戦闘の果ての撃破ではなく味方の姿が次々と消えていき、見つけた時には首を落とされているという暗殺に近い形の敗北を喫し、慢心故に打ちのめされてヘタれたか。
何れにしろ、正体不明の暗殺特化集団という驚異を前に、帝国はその正体を確かめずにはいられなかった様だ。
というのも、カム達が帝都に到着した時、攫われた大勢の亜人族は即労働に駆り出されるでもなく、一箇所に纏められていたのだ。
しまったと思うが時既に遅し。厳重に厳重を重ねて構築された監視網に発見され、カム達は一時撤退を余儀なくされた。
カム達もあっさり罠にはまるという失態を犯した訳だが、帝国が直接樹海に踏み込んで来るという愚策を行うとは思わず、まさかの事態に対する少なくない動揺があった、としか言いようがない。
樹海を焼き払うわ、亜人奴隷に拷問まがいの強制をして霧を突破するわと、とても同じ人間とは思われたくない所業だったしな。
帝国も相当驚いた事だろう。
何せ、網に掛かった正体不明の集団は、温厚で争い事とは無縁の愛玩奴隷である兎人族だったのだから。
しかも、樹海の中でもないのに、包囲する帝国兵に対して連携を駆使して対等以上に渡り合ったのだ。
当然、その非常識は帝国上層の興味を引き、その結果……
カム「我等は生け捕りにされ、連日、取り調べを受けていた訳です。
あちらさんの興味は主に、ハウリア族が豹変した原因と所持していた装備の出所。
そして、フェアベルゲンの意図ってところです。
どうやら、我等をフェアベルゲンの隠し玉か何かと勘違いしている様で……
実は、危うく一族郎党処刑されかけた上、追放処分を受けた関係だとは思いもしないでしょうなぁ。」
尋問官に、自分達は【フェアベルゲン】と、寧ろ敵対している関係だと何度も言ってやったそうだが、寧ろ国の為にあっさり自分達を切り捨てた覚悟のある奴等だと、関心を強めただけらしい。
特に、何度か尋問を見に来たガハルドなど不敵な笑みを浮かべながら、新しい玩具を見つけた子供の様に瞳を輝かせていたという。
ハジメ「で?捕虜になった言い訳がしたい訳ではないのだろう?本題を話せ。」
カム「失礼しました、陛下。
では、本題ですが、我々ハウリア族と新たに家族として向かえ入れた者を合わせた新生ハウリア族は──
帝国に戦争を仕掛けます。」
ハジメ「……そうか。」
カムの鋭い眼差しでなされた宣言に、その場の時が止まる。
そう錯覚する程、俺とカムを含めたハウリア族以外は、一切の動きを止めて硬直していた。
理解が追いついていないのか、或いは驚愕の余り思考停止に陥ったのか。
周囲に静寂が満ちて、僅かに虫の奏でる鳴き声が夜の岩石地帯に響く。その静寂を破ったのはシアだった。
シア「何を、何を言っているんですか、父様?私の聞き間違いでしょうか?
今、私の家族が帝国と戦争をすると言ったように聞こえたんですが……。」
カム「シア、聞き間違いではない。我等ハウリア族は、帝国に戦争を仕掛ける。確かにそう言った。」
僅かに震えながら、努めて冷静であろうとしたシアだったが、カムの揺るぎない言葉を聞いて血相を変えた。
シア「ばっ、馬鹿な事を言わないで下さいっ!何を考えているのですかっ!
確かに父様達は強くなりましたけど、たった100人とちょっとなんですよ?それで帝国と戦争?血迷いましたか!
同族を奪われた恨みで、真面な判断も出来なくなったんですね!?」
カム「シア、そうではない。我等は正気だ。話を──」
シア「聞くウサミミを持ちませんっ!復讐でないなら、調子に乗ってるんですね?
だったら今すぐ武器を手に取って下さい!帝国の前に私が相手になります。
その伸びきった鼻っ柱を叩き折ってくれます!」
興奮状態で"宝物庫"から"ドリュッケン"を取り出し、豪風と共に一回転させてビシッ!とカムの眼前に突きつけるシア。
その表情は、無謀を通り越して、只の自殺としか思えない決断を下したカム達への純粋な怒りで満ちていた。
淡青白色の魔力が荒れ狂い、物理的圧力すら伴ったプレッシャーが放たれる。
その迫力は凄まじく、それこそ光輝達異世界チート組ですら霞む程だ。
事実、いつも元気に笑っていて、怒ると言っても何処かコミカルさがあるシアからは想像できない怒気と迫力に、光輝達は息を呑んで硬直している。
だが、そんな勇者達さえ怯む迫力で戦槌を突きつけられた当のカムは、臆する事も無く、只静かな眼差しで真っ直ぐに娘を見つめ返していた。
睨み合う、或いは見つめ合う2人を誰もが固唾を呑んで見守る中……俺はシアのすぐ後ろに移動し、シアの毛玉のように丸くてふわっふわのウサシッポを鷲掴みにし、絶妙な手加減でモフモフした。
シア「ひゃわぁっ!?いきなりなんですかぁっ!?あぅ、だめぇ、しょこはだめですぅ~!ハジメしゃん、やめれぇ~!」
ウサシッポを絶妙にモフられて、ふんにゃりと力が抜けてしまったシア。
実はこのウサシッポ、ウサミミとは別の意味で"気持ちよく"なってしまうらしく、夜戦()におけるシアの弱点でもある。
四つん這い状態になってハァハァと熱い吐息を漏らしつつ、シアは恨めしげに俺を睨んだ。
触られるのは嬉しいけれど、時と場合を考えてほしいと、その目が言葉より雄弁に物語っている。
が、その瞳も熱っぽく潤んでいて、艶姿を強調する以外の役割は果たしていない。
緊迫した状況が、次の瞬間にはピンクな空間に早変わりしたことに目を丸くする周囲の者達。
若干、前屈みになっている連中もいれば、顔を赤く染めている者もいる。
そんな周囲を尻目に、俺は苦笑いを浮かべると、今度はシアのウサミミを撫でた。
先程の妙にエロい手つきではなく、優しげで労わるような手つきで。
真剣なやり取りの最中にセクハラをカマしてきた俺を恨めしげに睨んでいたシアだったが、途端、気持ちよさそうに目を細めた。
ハジメ「どう?少しは落ち着いた?カムの話はまだ終わっていないから、ぶっ飛ばすのは全部聞いてからでも遅くはないでしょ?」
シア「うっ……そうですね……すみません。ちょっと頭に血が上りました。もう大丈夫です。父様もごめんなさい。」
ウサミミをへにょんとさせて、シアは反省を示す。するとカムは、優し気に眼を細めて頭を振った。
カム「家族を心配する事の何が悪い?謝る必要など無いよ。こっちこそ、もう少し言葉に配慮すべきだったな。
……最近どうも、そういう気遣いを忘れがちでなぁ。
罵倒した方が伝わりやすいというか何というか……それにしても、くっくっくっ。」
シア「な、なんですか、父様。その笑いは……。」
カム「いや、お前が幸せそうで何よりだと思っただけだ。……暫く見ない間に、陛下とは随分絆が深まったと見える。
陛下には随分と可愛がられている様で安心したぞ。もしや、そろそろ孫の顔が見られたりするか?」
シア「なっ、みゃ、みゃごって……何を言ってるんですか、父様!そ、そんなまだ、私は……。」///
カムにからかわれて、顔を真っ赤にしながらチラチラと上目遣いに俺を見るシア。
見ればハウリア達が皆、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。
やれやれ、どいつもこいつも……ホント、いい性格になったものだ。
そんな事を思いながらシアに「事が終わったら、ね?」と小声で伝え、カムに尋ねた。
ハジメ「それで?俺にも参戦しろと言いたいのか?」
カム「ははっ、それこそまさかですよ。ただ、こんな決断が出来たのも、全ては陛下に鍛えられたおかげです。
なので、せめて決意表明だけでもと、そう思っただけですよ。」
カムが笑いながら俺の推測を否定する。どうやら本当に自分達だけでやるつもりの様だ。
彼等の瞳に宿る決意は本物で、復讐に狂っている訳でも、力を得て調子に乗っている訳でもない事がよく分かる。
しかしそうなると、本当に無謀としか言いようがない決断であり、その決断に至った理由が気になるところだ。
シアの表情も悲痛そうに歪んでいるし……。
ハジメ「理由は?」
カム「意外ですな、聞いてくれるのですか?興味は無いかと思いましたが……。」
ハジメ「なに、どうせ奴等のろくでもない言動にキレたのだろう?
とはいえ、詳細だけでも聞いておくべきかと思ってな。」
そう言って、俺はチラリと横を見る。そこには、家族の未来を想い、ウサミミをへたれさせているシアの姿がある。
カムはそれで察したのか、嬉しそうに目元を緩めると、「成程……。」と頷き、理由を話し出した。
カム「先程も言った通り、我等兎人族は皇帝の興味を引いてしまいました。それも極めて強い興味を。
帝国は実力至上主義を掲げる強欲な者達が集う国で、皇帝も例には漏れません。
そして、弱い者は強い者に従うのが当然であるという価値観が性根に染み付いている。」
ハジメ「つまり何か?自称皇帝の山猿は、兎人族狩りでも始めると?」
カム「肯定です。尋問を受けている時、皇帝自らやって来て「飼ってやる」と言われました。
勿論、その場で唾を吐きかけてやりましたが……。」
ハジメ「ふむ、そうこなくてはな。」
皇帝の顔に唾を吐いたというカムの言葉に、ハウリア達は「流石、族長だぜ!」と盛り上がり、光輝達は「あのガハルド陛下に!?」と驚愕を露わにし、俺は口角を僅かに上げた。
無理もないだろう。
歴史上、皇帝の顔に唾を吐いた者など、亜人族以外の種族も含めてカムが史上初なのではないだろうか。
カム「しかし、そのせいで逆に気に入られてしまいまして……。
全ての兎人族を捕らえて調教してみるのも面白そうだなどと、それは強欲そうな顔で笑っていました。
断言しますが、あの顔は本気です。再び樹海に進撃して、今度はより多くの兎人族を襲うでしょう。」
ハジメ「……皇帝ってのはそっちもいけるのか。スマッシュする手間が省ける。」
幸利「お前、絶対なんか変な勘違いしてんだろ。」
そんなやり取りの後で、カムは難しい表情で溜息を一つ。
カム「また、未だ立て直しきれていないフェアベルゲンでは、次の襲撃には耐え切れない。
そこで、もし帝国から見逃す代わりに兎人族の引渡しでも要求されれば……。」
ハジメ「成程。受身に回れば手が回らず、文字通り同族の全てを奪われる……なら、こっちから殺るって訳か。」
カム「肯定です。ハウリア族が生き残るだけなら、それほど難しくはない。
しかし、我等のせいで他の兎人族の未来が奪われるのは……耐え難い。」
どうやら、思っていた以上に、カム達は状況的に追い詰められていた様だ。
カムの言う通り、ハウリア達だけが生き残る事は、樹海を利用しての逃亡とゲリラ戦に徹すればそれ程難しくはないだろう。
だが、その代わりに他の兎人族が地獄を見る事になる。
彼等が"強い兎人族"という
ハジメ「だが、まさか本気で100人と少しなんて数で帝国と渡り合えるとは思っていないのだろう?」
カム「勿論です。平原で相対して雄叫び上げながら正面衝突など有り得ません。
我等は兎人族、気配の扱いだけは、どんな種族にも負けやしません。」
そう言って、ニヤリと笑うカムに、俺は答えた。
ハジメ「ならば策は1つ、暗殺あるのみ、か。」
カム「肯定です。
我等に牙を剥けば、気を抜いた瞬間、闇から刃が翻り首が飛ぶ……それを実践し奴らに恐怖と危機感を植え付けます。
いつ、どこから襲われるかわからない、兎人族はそれが出来る種族なのだと力を示します。
弱者でも格下でもなく、敵に回すには死を覚悟する必要がある脅威だと、奴等に認識させる訳です。」
確かに有効な策の一つだ。だが、
ハジメ「奴等も無駄に力がある訳ではあるまい。暗殺者対策位、してあるだろう。」
カム「勿論しているでしょうな。しかし、我等が狙うのは皇帝の一族ではなく、彼等の周囲の人間です。
流石に、周囲の人間全てにまで厳重な守りなど無いでしょう。
昨日、今日、親しくしていた人間が、或いは部下が、1人また1人と消えていく……。
我等に出来るのは、今のところこれ位ですが、十分効果的かと思います。
最終的に、我等に対する不干渉の方針を取らせる事が出来れば十全ですな。」
何ともえげつない策だ。だが、
ただ、それだと、帝国側に脅威を感じさせるには必然的に時間が掛かってしまうので、大規模な報復行為に出られる可能性が高い。
帝国が兎人族の本格的な捕縛戦又は殲滅戦に出るか、それとも、実力主義の元、その力をある程度認めて交渉のテーブルに付くか、どちらが早いかという紛れもない賭けだ。
それも極めて分の悪い賭け。
しかし、それでもやらなければ、どちらにしろ兎人族の未来は暗いのだろう。
既にハウリア族は全員、覚悟を決めた表情だ。
シア「……父様……皆……。」
その言葉に、シアは悄然と肩を落とす。
帝国兵相手に立ち回り、絶対監獄ともいうべき帝城の地下牢からも逃走を果たした兎人族を、皇帝は私的興味と公的責務として見逃しはしないだろうと、彼女も察したのだ。
カム達ハウリア族に残された道は、他の同族を見捨てて自分達だけ生き残るか、全員仲良く帝国の玩具になるか、身命を賭して戦うか、そのどれかしかないのだ。
カム「シア、そんな顔をするな。
以前の様に只怯えて逃げて蔑まれて、結局蹂躙されて、それを仕方ないと甘受する事の何と無様な事か……。
今、こうして戦おうと、その意志を持てる事が、我々はこの上なく嬉しいのだ。」
シア「でも!」
カム「シア、我等は生存の権利を勝ち取る為に戦う。ただ、生きる為ではない。
ハウリアとしての矜持を持って生きる為だ。
どんなに力を持とうとも、ここで引けば、結局、我等は以前と同じ敗者となる。それだけは断じて許容出来ない。」
シア「父様……。」
カム「前を見るのだ、シア。これ以上、我等を振り返るな。お前は決意した筈だ。
陛下と共に外の世界へ出て、前へ進むのだと。その決意のまま、真っ直ぐ進め。」
カムが、族長としてでも、戦闘集団のリーダーとしてでもなく、1人の父親として娘の背中を押す。
自分達の事でこれ以上立ち止まるなと、共に居たいと望んだ相手と前へ進めと。
泣きそうな表情で顔を俯けてしまうシアに愛し気な眼差しを向けた後、カムは俺に視線を転じて目礼する。
娘を頼みますとでも言う様に。
そんな俺の代わりに、光輝が如何にも「俺が何とかする!」とでも言いそうな雰囲気で腰を上げるが、雫の刀に後頭部をぶん殴られて撃沈した。
……なんか、ちょっと怒ってない?いつもより止め方が雑に見えるんだが……しかも電流が流れているし。
すると、シアがこちらに振り返った。
カム「シア!」
シア「!」ビクッ!
だが、シアが口を開く前に、何を言う気か察したカムが叱責する様にシアの名前を強い口調で呼び止め、シアは体を震わせる。
どうやら、カム達は、俺に助けを求めるつもりはない様だ。
自分達のミスでまんまと敵の罠に嵌り、皇帝の目に止まってしまった事は自業自得と言える事態。
だからこそ、ここで俺の力を当てにして解決を委ねる様では、以前と何も変わらない。
カムが言った様に、この戦いは、兎人族が掲げる事が出来る様になった矜持を貫く為の戦いなのだ、と。
勿論、シアもまたそれは理解しているのだろう。
ただ逃げるだけしか出来なかったのは自分も同じであり、今は、俺達の仲間としての矜持がある。
結局、シアは何も言えず口を噤んだ。
しかし、余りに分の悪い賭けを行おうとしている家族の姿に、彼女の心は否応なく痛んでいる。
それが分かっているからこそ、俺は俯くシアに声を掛けた。
ハジメ「シア。」
シア「ハジメさん……。」
俺を見つめるシアの瞳に、僅かばかり期待の色が宿る。
立ち上がった俺は、そんなシアの肩に手を置き、数歩後ろに下がらせる。そして徐にカム達に告げた。
ハジメ「甘ったれるな、馬鹿共。交渉など論外だ。」
カム「なっ!」
その言葉にカム達からはどよめきが、シアの表情には喜色が広がる。
ハジメ「何故、勝手に人の領地にずかずかと踏み込んで、好き放題荒らしてくれたコソ泥風情に、話し合いによる協定等と言う妥協をしてやらねばならんのだ?
貴様等はそれで満足なのか?えぇ?その程度で本当に奴等が蛮行を止めると、本気で思っているのか?」
カム「し、しかし……。」
正直、俺も腹に据えかねていたのだ。だからこそ、今回は交渉なんて生温い事は必要ない。
ハジメ「今回の件は、ハウリア族が強さを示さねばならない。
俺の配下だからと言う理由ではなく、ハウリア族だからこそ容易ならざる相手なのだ、と。」
カム「で、ですが陛下……なら、一体……?」
困惑を深めるカム達に、俺は淡々と告げる。
ハジメ「今回は俺が裏方に回ってやる。下準備も演出もしてやろう。
だから、シアを悲しませる様な作戦は却下だ。やるなら徹底的に、情け容赦一切無く踏み潰せ。
二度と刃向かおうと思わなくなる程の敗北を見せつけ、今まで蹂躙された同胞達の分の恩讐を知らしめてやれ。
奴等が泣き喚きながら、ハウリアの命令を聞きたいと自ら懇願するまで、敵は全て惨殺しろ。
そして、奴等の心臓に延々と続く恐怖を刻み付けるのだ――今度はお前達が刈られ、搾取される番なのだ、と。」
辺りに静寂が満ちる。
全員、俺の気迫に呑まれて硬直しているのか、ゴクリッと生唾を飲み込む音がやけに明瞭に響いた。
が、何時までも返事を待ってやる気はないので、俺は周囲を睥睨しながら、スゥーッと息を吸うと、雷でも落ちたのかと錯覚する様な怒声を上げた。
ハジメ「返事はどうした!この『アウェイキング!』共がぁ!」
ハウリア's『ッ!?サッ、Sir,Yes,Sir!!』
ハジメ「聞こえんぞ!貴様等、それでよく戦争なぞとほざいたな!所詮は『アライジング!』の集まりか!?」
ハウリア's『Sir,No,Sir!!!』
ハジメ「違うと言うのなら、証明してみせろ!全てを血と泥に沈めろ!!」
ハウリア's『ガンホー!!ガンホー!!ガンホー!!』
ハジメ「貴様等の研ぎ澄ました復讐と意地の刃で、邪魔する者の尽くを斬り伏せろ!」
ハウリア's『ビヘッド!!ビヘッド!!ビヘッド!!』
ハジメ「主役は貴様等だ!この俺が膳立てする以上、半端は許さん!解っているな!」
ハウリア's『Aye,aye,Sir!!!』
ハジメ「良いだろう!気合を入れろ!新生ハウリア族、122名で……」
ハウリア's『……。』
ハジメ「帝国を……駆逐しろぉぉぉ!!!」
ハウリア's『YAHAAAAAAAAAAAAAA!!!!』
膳立てとは何をする気なのか、帝国を駆逐する等それこそ不可能ではないのか。
そんな疑問は、熱狂するハウリア達の頭には元より浮かぶ事すらないようだ。
自分達が王と仰ぐ人物が、扉の鍵は開けてくれるのだ。
ならば、その先で待っている障害くらい斬り裂けなくては、何が魔王の精鋭か――新生ハウリア族の名折れだ。
鍛えてくれた陛下にも顔向けは出来ない。
故に、ハウリア達の心は一つとなって、帝国駆逐への闘志で燃え上がっていた。
帝都から離れた岩石地帯に、闘志と殺意の雄叫びが響き渡る。
鈴「……うぅ~、シズシズ、エリエリ、あの人達怖いよぉ~。」
雫「大丈夫よ、鈴。私も怖いから……ていうかハジメ君の発想とノリも十分怖いけど。」
恵理「気持ちは分かるよ、というか兄さんが一番怖い。」
幸利「あぁ、こりゃドSスイッチ完全起動状態だな。帝国は何もかもおしまいだぁ……。」
龍太郎「ハジメ……へへ、まさかハー○マン先生を取り入れていたとはな、やるじゃねぇか……!」
光輝「龍太郎!?なんで、ちょっと親近感持ってるんだ!?どう見ても異常な雰囲気だろ!?」
雫達が、それぞれ唖然とした表情で異様な熱気に包まれるハウリア達の様子を眺めていた。
尚一人だけ、俺の鼓舞の参考になった対象をリスペクトしていた様で、実にいい笑顔を浮かべていたが。
ティオ「う~む、すごいのぉ~。兎人族がここまで変わるとは。流石、ご主人様じゃ。
あっさり帝国潰しを目的にしよるし。」
トネリコ「敵対者は悉くあんな風に潰されるんですね~……あれ?もしかして、私の故郷も危ない?」
ミュウ「さっすがパパなの!敵はみーんなデストロイ!パパのカッコいいところなの!」
レミア「あらあら……ミュウ、ママはパパが若干怖いのだけれど……。」
香織「ねぇ、ユエ。シアの表情見てよ、蕩けちゃってるよ。同性の私でも、ちょっとドキドキしちゃう位可愛いよ。」
ユエ「……ん、確かに可愛い。シアが泣かない為だから……嬉しくて当たり前。」
そしてユエ達の方は、蕩けた表情で俺を見つめるシアについて語り合っていた。
その後、帝国駆逐の詳細を詰めた俺達は、その時に備えて各々休む事になった。
シアは暫くの間、俺の傍を離れたがらなかった。
何時もの元気の良さは鳴りを潜め、しかし、決して暗く沈んでいる訳ではなく、頬を薔薇色に染めてしずしずと俺の服の裾を掴んだまま寄り添うのだ。
ウサミミが時折、ちょこちょこと俺に触れ、離れてを繰り返す。
その様は、ただただ、傍で俺の事を感じていたいという気持ちを表している様だった。
ハジメ「……。」
一夜明けて、東の空が白み始める少し前、俺は岩場に腰掛け、帝都を睨みつけていた。
見張り役以外の皆が寝静まっており、場所も死角になっているので、久しぶりに1人での瞑想をしていたのだ。
因みに、隣で寝ていたミュウは、これまた隣で寝ぼけていたユエに任せた。
ハジメ「これが終わったら大迷宮、か……。」
家族、と聞いて、ふと思い出したのだ――
聞き出せるタイミングはあった、だがそこまで踏み込む覚悟はまだ無かった。
しかし、シアの時の様にいざという場合もある事を、今回思い知らされた。
だからこそ、一区切り着いたら聞き出さなければならない……――俺達とも、ユエ達とも違う世界から来た、彼女の話を。
彼女の故郷、家族、そして……彼女自身の正体を。
夜明けを待つ中でそんな覚悟を決めた俺は、東の空に昇り始めた朝日を見つめるのであった。
そして同時に、新生ハウリア族の戦いの狼煙が、今、上がった。
ハジメの語るその人物とは……今後の展開も見逃せない!
もし、ハジメさん以外の別キャラ視点でオリジナル番外長編(web 原作アフターを除く)を作るとしたら、誰を主人公にする?
-
ユエ
-
シア
-
ティオ
-
レミア
-
ミュウ
-
香織
-
雫
-
トネリコ
-
リリアーナ
-
愛子
-
星野アイ
-
幸利
-
恵里
-
光輝
-
浩介
-
龍太郎&鈴
-
優花
-
両親サイド
-
良いから本編プリーズ
-
その他(活動報告でリクエスト)