Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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お待たせいたしました!今回はリリアーナの受難について、です。
はてさて、皇帝はハジメについてどう思うのでしょうか?


サイド-Ⅶ:隠す(-hidden-)

時間は少し遡る。

リリアーナが侍女や近衛達と共に帝都近郊へ降ろされた後、一行は"ノア・エルーナ"に積み込まれていた馬車と馬に乗って帝都へと入った。

 

先に送り出した王国の使者や大使を軽く追い抜いて来てしまったので、帝国側は王国の王女が来訪する事を知らない筈だ。

帝城の使用人や接待役の貴族達はさぞや慌てる事だろうと、リリアーナは申し訳なく思いつつも、今は時間が惜しいので突撃訪問を敢行する。

一応、近衛騎士を先行させて先触れを出しているので、それでご勘弁願いたいところだ。

 

ヘリーナ「厳戒態勢で御座いますね。」

馬車に同乗している侍女──ヘリーナが、小窓から外を覗きつつ言った。

リリアーナが痛ましそうな表情で答える。

 

リリアーナ「魔人族の襲撃のせいでしょう。ハウリア族の話は聞いていましたが、かなりの被害を受けた様ですね。」

ヘリーナ「本当に、あの御方がいて下さって幸いでした。本命でない帝国でこの有様です。

あの状態の王国では、助かる道は無かったでしょう。」

リリアーナ「そうですね……

ハジメさんが代理の国王として即位し、様々な偉業を成したこともあって、国民の皆様は安心できましたし。

何より……。」

ヘリーナ「契約とはいえ、ご自身との婚約をお交わしになられましたからね?」

リリアーナ「ちっ、違いますよ!?えぇ、本当に!」///

 

そうは言いつつも本心では嬉しいリリアーナ、勿論ヘリーナには筒抜けであった。

リリアーナ付きの専属侍女、ヘリーナ。幼少の頃よりリリアーナを陰に日向に支えてきた優秀な侍女だ。

時々、看過出来ない言動を取るのが玉に瑕だが、リリアーナにとっては心許せる友人の様な存在だ。

 

そうこうしている間に、馬車は帝城へと辿り着いた。

突然の来訪に一悶着あったものの、リリアーナ達は無事に部屋へ通され、その日の夕刻にはガハルド皇帝陛下への謁見が叶う事となった。

リリアーナが、やってきた案内に従って謁見の間に通されると、そこには既にガハルドが実に楽し気な笑みを浮かべて待っていた。

 

ガハルド・D・ヘルシャー。もうそろそろ50代が見えてきそうな年齢にも係わらず、見た目は40代前半。

場合によっては30代後半にも見える若々しさと猛々しい覇気を纏った男。

灰色に近い銀色の髪と、狼を思わせる鋭い目、服越しでも分かる極限まで引き絞られた肉体は些かの衰えも感じさせない。

 

光輝達の実力を確かめるべく、ガハルドがお忍びで王国に来た時以来だが、数ヶ月程度ではやはり変わりはないらしい。

魔人族に襲撃されたと聞いていたので、或いは怪我の一つでもしているかと思えば、そんな様子も皆無である。

 

ガハルド「よく来てくれたな、リリアーナ姫。

随分と急な来訪だが、それだけの土産話があるのだと楽しみにしているぞ。」

リリアーナは「ご期待には添えないと思いますが……。」と前置きをし、先ず王国で起きた事件のあらましを語った。

 

王国内に蔓延った恐ろしい浸食から始まった一連の出来事。

魔人族による魔物の大群の侵攻、"真の神の使徒"による暗躍と神の真意、聖教教会総本山の崩壊、檜山大介の裏切り、そしてエリヒド‟前‟国王の退位に、この世界の真実……

 

口を挟まず黙って聞いていたガハルドは、リリアーナが口を閉ざすと同時に大きく息を吐いた。

そして、椅子に深く腰を預けると片手で顔を覆って天を仰いでしまった。

豪放磊落な皇帝陛下をして、伝えられた事実の有様と真実の大きさには流石に動揺を隠せなかったらしい。

気持ちは分かると、リリアーナがお茶に口を付けつつ待つ事暫し。

 

ガハルド「そうか……あの殺しても死ななそうな教皇の爺さんが逝ったか。

それに、エリヒド殿も退位、ロギンスの奴も左遷とは……。」

特に感情は込められていない。けれど、何処となく寂寥を感じさせる声音。

ガハルドは姿勢を戻すと、リリアーナに視線を合わせた。

 

ガハルド「凄まじい状況だった様だな。よく伝えに来てくれた、リリアーナ姫。」

リリアーナ「いえ、こちらも大変だった様ですから。」

ガハルドの見せた意外な態度に、リリアーナは少し驚きつつもそう言って返礼した。

 

実は、先程の説明では教皇達総本山に居た面々は神の思惑に一早く気づき、その使徒に立ち向かって亡くなったと説明したが、実際にはハジメ主導の下で行われた宗教弾圧により、末端の血筋に至るまで粛清されたというのが真相だ。

 

父エリヒドやメルドに関しても一度は亡くなっており、ハジメによって蘇生させられたことも後に説明するつもりだが、現体制に異議を唱えそうな者の強硬派は既に排除されており、その凄惨な末路を見た残りの面々もパッタリと批判の声は止んでいる。

そして、そんなリリアーナの隠した本音に気付く筈も無く……

 

ガハルド「しかし、そうか……教会は、神は、世界は……こりゃあ公表なんぞしようもんなら、世界がひっくり返るな。」

リリアーナ「その割には、ガハルド陛下はそれ程ショックを覚えていない様に見受けられますが……?」

ガハルド「いや、結構な衝撃だったぞ?生まれてより信仰していた対象がクソだったんだからな。

だが、まぁ、帝国は抑々実力至上主義。敵あらば殺す、欲しい物は奪う。弱者は強者に従えってのが信条だ。

神の勢力がぶっ飛ばされたってんなら、そりゃあ、ぶっ飛ばされた方が悪い。

そんな相手を、いつまでも崇めちゃいられんさ。」

リリアーナ「そ、そういうものですか……。」

 

帝国の実力至上主義は筋金入りだ。

何せ、王位継承問題ですら決闘という対外的に分かりやすい方法で解決する位なのだ。

とはいえ、今まで信仰していた神に対してまで、その理念を適用するとは……豪胆というべきか、野蛮というべきか。

本当に、この国の人間は……と、リリアーナは内心で呆れ、表情を引き攣らせる。

しかしガハルドは気にした様子も無く、早くも気持ちを切り替えた様だ。

 

ガハルド「しかし、あれだな。そう考えると、王国民の混乱はもっと凄まじかっただろう?

なんせ総本山のお膝元、信仰心に関してはウチ以上だからな。」

リリアーナ「それがですね……

実は、我が国では新国王の方針により、既に国全体で決別の方向に舵を切っております。」

ガハルド「……新国王?」

 

先程の説明に出てこなかった聞き捨てならない情報に、ガハルドの目が細まった。

ガハルドが食いついた事を確認したリリアーナは、先程の説明で明言していなかったハジメについて話す事にした。

 

帝国に対して、教会や神、魔人族の力の秘密を共有する上でハジメの存在を欠かす事は不可欠なので、事前にハジメから許諾は取っている。

それでも、話の流れによっては隠すつもりもあった。

 

実力者大好きな帝国が、ハジメにちょっかいを出すのを恐れたからだ。

ハジメ達がどうこう……等と言う問題ではなく、将来の同盟国たる筈の帝国が、地図から消える事が無い様に。

ただ、当のハジメ達は今頃樹海の奥深くだ。今の帝国では手の出しようもない。話す支障は無かった。

 

尚、万が一帝国兵がそこまで歩みを進め、ハジメ達と鉢合わせしてこの世から亡くなろうとも、新種の魔物か魔人族による襲撃として片づけられるだけであろうが……

そして、リリアーナからハジメの存在とわかる範囲の詳細を聞いたガハルドは……

 

ガハルド「……ちょっと待ってくれ、リリアーナ姫。」

リリアーナ「はい。心中お察ししますので、お好きなだけ。」

ガハルドは眉間を指でぐりぐりと揉み解しながら、必死に聞いた内容を吞み込もうとしている。

 

ガハルド「何の冗談だと一笑に付したいところだが……。」

リリアーナ「事実です。

ハジメさん――現国王陛下は、100万の大軍を殲滅し、アンカジや王都の死者を大量に蘇生出来る上、王国・帝国間を僅か半日程度で走破するアーティファクトを創り出した──稀代の錬成師にして、比類なき最高最善の大魔王です。」

眉は困った様に、しかし口元は勝ち誇った様な微笑みで断言するリリアーナ。ガハルドは眉間に深い皺を刻む。

 

ガハルド「戦術級……なんてレベルじゃない、個人で戦略級たぁ本当に何の冗談だ?

ナグモ・ハジメがその気になれば、個人で戦争……いや、このトータス全土を消し飛ばせるって事だろ?

危険度は、子供の精神に絶大な力を持った勇者なんて比べ物にならんぞ……とても放置はできん。

奴の人格はどうなんだ?」

言外に、見返りとして無茶な要求でもされているんじゃないのかと尋ねるガハルド。

そんな彼に、リリアーナは苦笑しながら頭を振る。

 

リリアーナ「いいえ、最初に代理の国王にしてくれと頼まれた時は驚きましたが、その後は私を契約婚と言う形で保護して下さりましたし、国にも個人的にも良くして頂いてます。

それに、ハジメさんは大事なものの為なら、神にも世界にも喧嘩を売ると常々豪語しておりました。

……なのでまぁ、邪魔やちょっかいはお止めになった方がよろしいかと。」

ガハルド「ちょっかいを出すなという事か?帝国の長たる俺に、また無茶な事を言う……。」

リリアーナの評に、ガハルドは失笑しつつも顎を撫で思案した。

あわよくば、手元に置いて管理したい。欲を言うなら、その力を利用したい。帝国の皇帝としては当然の考えだ。

 

ガハルド「……とはいえ、当の本人が、そんなとんでもない乗り物で世界を飛び回ってるんじゃあ話も碌に出来やしない。

約束を取り付けるにしても、相当後の話になりそうだしな。当面は様子見。

後は独自に、南雲ハジメと魔人族の力の根源、"神代魔法"の獲得に動く位か。」

リリアーナ「それがよろしいかと。まだ陛下の墓前に花を供えるつもりはありませんので。」

ガハルド「ふん、中々言うじゃねぇか。」

今までのリリアーナからは想像出来ない、尊大な上から目線の物言いに、ガハルドは鼻を鳴らした。

 

それを抜きにしても、大迷宮攻略の報酬が何か、それが分かったのは僥倖だが、だからといって自分達が獲得できる可能性は著しく低い事は分かっている。

やはり、既に持っている者の勧誘が一番現実的だ。だが、それも可能性は低そうだ。なんとも歯痒い状況である。

 

ガハルド「はぁ……それで?事情を伝えに来ただけではないんだろう?協議の内容を聞こう。」

リリアーナ「はい、端的に言えば、今後の連携について方針を固めたくまいりました。」

そう言ってリリアーナは、予めその内容を纏めた書類をガハルドに渡した。

 

それから2人は、魔人族に対する方針を話し合った。

一気に2人だけで決められる事でもないので、今のところは諸々の概算とそれに伴う各方面との具体的な協議内容の確認に留まった。

 

ガハルド「まぁ、こんなところだろう。

後重要なのは、対外的に関係強化をどう示すかだが……それに関してはリリアーナ姫、一役買ってもらうことになるぞ。」

リリアーナ「……分かっています。婚約の話であれば、こちらも考えていた事。

ハジメさんからもその時の為の配慮は受けておりますから、お話は受けさせていただきます。ただ……。」

ガハルド「あぁ、そちらの事情は分かる。今、リリアーナ姫が王国から抜けるのは不可能だ。

ランデル"元"王子の復位すらまだなのだろう?このままでは"元"王妃殿が過労で死んでしまうしな。」

 

ガハルドの言葉に、リリアーナは苦笑いしながら頷く。

結局、皇太子との婚約話を纏め、一両日中には帝都にて発表。

その後、リリアーナは一時帰国し、状況が落ち着き次第、改めて輿入れの準備に来るという事になった。

王国と帝国の強固な同盟関係を国民に見せつける事で、足踏みを揃えて活性化する魔人族に対抗すると示すのだ。

 

凡そ、予定していた通りに話が進んでリリアーナは満足そうに笑った。

――内心の、小さな痛みには気が付かないふりをして……。

そして、その2日後の夜。協議を重ねるガハルドとリリアーナの下に、一報が飛び込んできた。

 


 

帝国兵「以上で報告を終わります!」

ガハルド「ご苦労、下がれ。」

帝国兵「はっ!」

ツカツカと規則正しい足音を響かせて部下が出て行った扉を暫く見つめた後、ガハルドは、目の前で澄まし顔をしているリリアーナに視線を転じた。

 

リリアーナは、ガハルドの視線に気が付くと「大変そうですね?」と心配する様な、或いは困った様な微笑みを向けた。

隣国の王女として、先程報告された内容を憂いている様な、されど口出しは余計だと弁えている様な、そんな表情だ。

ある意味、見事な表情だと、ガハルドは思いながらリリアーナから視線を外し、溜息を吐く。

 

ガハルド「全く、困ったものだ。

ふざけた強さの魔物や魔人族の襲撃の次は、ふざけた仮面を着けた、ふざけた強さの6人組の襲撃か……

この件、どう思う?リリアーナ姫。」

リリアーナ「……私には、わかりかねます。

先程の報告では魔人族の切り札的な部隊とのことでしたが……

有り得ない魔物を使役するのですから、有り得ない人材もいるのでは?」

ガハルド「そうだな、その可能性はあるだろう。

連中が態々仮面なんぞつける訳がないと分かっているが、まぁ、可能性はゼロではない。

何が目的かと尋ねたら、やれ亜人奴隷達を寄越せだの、やれ折角の労働力に八つ当たりして無駄に消費するなだの、そんな事を抜かすのだから、意味不明すぎてとても恐ろしいと、俺も思う。」

リリアーナ「そう、ですね。」

 

リリアーナの表情は崩れない。ガハルドが面白そうにリリアーナを観察しているが、彼女の笑顔という仮面は鉄壁だ。

何せ、貼り付けたような笑顔ではなく、王族必須スキルであるその場の状況に応じて変幻自在に変わる笑顔なのだから。

すると、ふと、ガハルドは何かを思い出したかの様に一瞬動きを止めると、次の瞬間には悪そうな笑みを浮かべて口を開いた。

 

ガハルド「ところで、リリアーナ姫。」

リリアーナ「はい?」

ガハルド「確か勇者殿は、あの南雲ハジメと一緒に樹海に向かったのだったな?」

リリアーナ「?えぇ、その通りです。ですがそれが?」

ガハルド「いやなに、てっきり帝都に来ているのかと思っただけだ。

そして、どこかで奴隷解放でも詠っているのかとね。」

リリアーナ「あら、ガハルド陛下ともあろう御方が、推測と事実を混同なさっているのですか?

そのようなことありませんわよね?」

ガハルド「はっはっは、もちろんだ!根拠もない推測を事実のように語ったりはしない。」

リリアーナ「ふふふ、そうでしょうね。」

「ははは。」「ふふふ。」と皇帝陛下と王女の笑い声が応接室に響き渡った。

 

ガハルド「あぁ、そうだ。

さっきのナグモ・ハジメの話で思い出したんだがな……実は最近、面白い亜人族を捕まえてな。」

リリアーナ「はい?」

突然の話題変更に目を瞬かせたリリアーナにお構いなく、ガハルドは続けた。

 

ガハルド「特殊な……そう、あまりにも特殊な──兎人族だ。」

リリアーナ「……。」

ブワッと毛穴が開く様な、鳥肌が立つ様な感覚。

その一瞬の動揺による呼吸の乱れを、ガハルドは見逃さなかった。

 

ガハルド「樹海の外だってのに、帝国の兵士と真面にやりあいやがった。

とても、兎人族とは思えん殺意と覇気を持ってな。」

リリアーナ「まぁ……!温厚の代名詞の様な兎人族に、その様な部族もいるのですね。恐ろしい……。」

ガハルド「それだけじゃない。ソイツ等の装備がな、これまた凄かった。

オルクス大迷宮でしか採れないような貴重な鉱石で造られたものばかりでな。」

リリアーナ「それはそれは、フェアベルゲンの技術力も侮れませんね。」

ガハルド「そうだな。本当に、フェアベルゲン内部の技術力のみで造ったんならな?

俺には、あんな解析不能な業物の数々を量産できるのは、"稀代の錬成師"……それも"異世界"の技術を取り入れたものとしか思えんが。」

リリアーナ「まぁ!そんな凄い装備でしたら、私やハジメさんにも一度見せて頂きたいものですね。

きっとあの人なら我も無く飛びつくでしょうし。」

暫くの間、「ははは」「ふふふ」と皇帝陛下と王女の笑い声が応接室に響き渡る。

 

が、内心でリリアーナの胃はしくしくしていた。

今日の協議を終えたら、ヘリーナ特製のお腹に優しい紅茶を入れて貰おう、そうしようと、心のヘリーナに彼女はお願いしたのであった。

と、その時、再び扉がノックされた。

 

ガハルド「入れ。」

帝国兵「ハッ、失礼します!緊急故、報告をお許し願いたく!」

ガハルド「構わん。どうした?また仮面でも出たか?」

帝国兵「い、いえ!それが、その……──地下牢のハウリア族が全員、脱獄した模様です!現在、行方が分かりません!」

ガハルド「……。」

 

ガハルドの視線がリリアーナに向けられた。彼にしては珍しく無表情だ。

無機質な目が、ジッとリリアーナに注がれている。

リリアーナは「あらまぁ、大変!」と言いたげな表情を張り付け、さも深刻そうな同情の視線を返す。

それを受けて尚無表情のまま、ガハルドが無感情な声音で尋ねた。

 

ガハルド「そういえば、リリアーナ姫。」

リリアーナ「はい、何でしょう?」

ガハルド「南雲ハジメには、異常な程に強い仲間がいるのだったな?その内の1人は、兎人族だとか。」

リリアーナ「仲間……えぇ、確かに兎人族の方がいらっしゃいましたね。」

それが何か?と可愛らしく、首をコテンと傾ける。誰がどう見ても、本当に不思議に思っている様に感じる顔だ。

だが内心では、正に絶叫の嵐だった。

 

リリアーナ(来てる!あの人、絶対に来てるぅ!

帝城の地下牢から気付かれずに脱獄させるなんて、あの人にしか無理ぃ!というか、これ絶対にバレていますって!

……もしかして、私も関与を疑われています?いやぁっ、どうして私がこんな目に!

皇帝陛下が未だかつて見たことない目で私を見てますよぉ!)

と、リリアーナが内心穏やかでは無い時だった。

 

プルルルル

 

リリアーナ「ひゃっ!?」

ガハルド「うん?リリアーナ姫、この音は一体なんだ?」

突如、静寂を破るように響く着信音。その発信源は、リリアーナの方から聞こえていた。

ガハルドの質問に、リリアーナは慌ててハジメから貰った念話石を取り出し、スイッチを入れた。

因みに、この念話石はハジメさんが電池代わりの神結晶を埋め込んだ特別製で、緊急用にと持たされていたのだ。

 

リリアーナ『も、もしもし。』

ハジメ『リリィ!そっちは無事か!?今、丁度大迷宮攻略も終わったから、観光も兼ねて帝都に来てたんだが……

なんか、暴動が起こったらしいぞ。そっちにも賊は入ってこなかったか?』

リリアーナ『え?えぇ、まぁ……はい。』

絶対貴方の仕業でしょう!と、内心でリリアーナがツッコんでいると、ふとガハルドが横から手を伸ばした。

 

ガハルド「ほぉ、これは通信機か何かか?」

リリアーナ「ちょっ!?ガハルド陛下!?お返しください、それは私のです!」

ひょいと念話石を取り上げられたリリアーナが、焦った顔で取り返そうとぴょんぴょんする。

しかし、ガハルドはそんな彼女にお構いなく、念話石を観察し始めた。

 

ガハルド「成程、このスイッチで魔力が通るようになっているのか……実に興味深い。」

ハジメ『リリィ?おいリリィ、変事をしろ!』

すると、向こう側が焦りだしたのか、声を張り上げたので、ガハルドは通話相手に声を掛ける。

 

ガハルド「お前が、南雲ハジメか?」

ハジメ『……。』

その声を聞いた通話相手、ハジメは何も答えない。それに対し、再びガハルドが問いかけようとした時だった。

 

ハジメ『お前は誰だ?』

ガハルド「あぁ、俺は『いや、答えなくてもいい。』は?」

ハジメ『貴様は私の敵だ、故に今すぐ処刑してやる。大人しくそこで待っていろ。』

ガハルド「ち、ちょっと待て!」

ハジメ『黙れ。』

 

何時の間にか敵認定された上に、向こうからもの凄い殺気と圧を乗せた声が飛んできた事に、流石のガハルドも焦る。

だがハジメは聞く耳持たず、そのまま帝城へと向かうつもりの様だ。

 

リリアーナ「しっ、失礼します!」

ガハルド「うぉっ!?」

これは不味いと思ったリリアーナは、咄嗟にガハルドから念話石を奪い返すと、直ぐに念話に出る。

 

リリアーナ「私は大丈夫です、ハジメさん!さっきは、皇帝陛下が急に念話石を取り上げてしまったもので……。」

ハジメ『む、そうか……お前が無事なら良いんだ。』

リリアーナの声が聞こえたのか、ハジメも落ち着きを取り戻し、殺気を収めた。

 

ハジメ『それにしても、先程の不躾な男が同盟相手か?俺は不安で仕方がないぞ。

もしリリィが難癖付けられて虐められてみろ、うっかり帝国を滅ぼしかねん。』

リリアーナ「ハジメさん!?」

まさか、帝国の危機が早くも訪れ、自分がそれを救ったとは思わず、リリアーナは頭を抱えた。

思ってもらえるのは嬉しい事なのだが、いくら何でも愛が重すぎるのも考え物なのだ。

 

ハジメ『まぁ、良い。明日、そちらに出向く故、安否確認序に連絡を入れようと思っていたんだ。』

リリアーナ「あ、明日ですか……?」

ハジメ『あぁ、早い内にリリィの様子を見たいと、香織達も心配していたからな。』

リリアーナ「そうですか……わかりました、皇帝陛下にもお伝えしておきます。」

ハジメ『頼んだ。だが、万が一何かあった時はすぐに連絡しろ。アレの手先が帝国にもいないとは限らんからな。』

そう言ってハジメが連絡を切ると、リリアーナは緊張が解けたのかその場にへたり込んだ。

 

ガハルド「今のが、南雲ハジメか……どうやら、相当大事に思われているようだな、リリアーナ姫?」

リリアーナ「……えぇ、だってハジメさんは、最高最善の魔王ですから。」

そう語るリリアーナの瞳には、何処か寂しさが宿っていた事を、ガハルドですら知る由もなかった。

 


 

ヘリーナ「……以上が、リリアーナ様とガハルド陛下の協議の内容です。」

ハジメ『……そうか。予想はしていたが、成程……ますます気に入らねぇな。』

誰もが寝静まった深夜、リリアーナとは別に念話石を支給されていたヘリーナは、ハジメにリリアーナとガハルドの協議についての報告をしていた。

その内容に、向こう側にいるハジメの声音が、若干不機嫌気味だ。

 

ヘリーナ「しかし陛下、折角の同盟を破綻させる訳にもいきません。リリアーナ様もそれをお望みには……。」

ハジメ『なら、問おう。ヘリーナ、お前個人の意見としてはどうなんだ?』

ヘリーナ「それ、は……。」

ハジメ『……。』

一旦言葉を切ったヘリーナは、リリアーナの友人としての答えを口にした。

 

ヘリーナ「……私としては、リリアーナ様に幸せになって貰いたいと思っております。

そしてその相手は、皇太子などではありません。」

ハジメ『……そうか、ならばそうしよう。』

ヘリーナ「え?」

その答えを聞いたハジメから帰ってきた言葉に、ヘリーナは一瞬戸惑った。

 

ハジメ『ヘリーナ、明日そちらに向かう。リリィの婚約についても俺がどうとでもしてやるから安心しておけ。』

ヘリーナ「!陛下……。」

ハジメ『あぁ、同盟の件にも支障が出んようにしておく。それに、向こうはそれ処じゃなくなりそうだしな。』

ヘリーナ「は、はぁ……。」

若干不穏な言葉が聞こえたものの、ヘリーナはハジメの心遣いに内心感謝するのであった。

 


 

翌日。

この日は、今夜行われる両国間の協力体制と、リリアーナと皇太子との婚約発表を兼ねた歓迎パーティが催される事になっており、リリアーナはその準備の為に、朝から慌ただしく動いていた。

そんな彼女の耳に、一報が届く。

 

使用人「リリアーナ様。その……門の所にですね、リリアーナ様を訪ねて来ている方々がいるそうなのですが……。」

門番の兵士から伝言を預かった使用人が困惑した様に伝えてくる。

恐らく、昨日来訪を伝えてきたハジメ達だろうと思い、リリアーナは小首を傾げて尋ねた。

 

リリアーナ「どなたですか?」

使用人「はぁ。何でも、勇者を名乗っていらっしゃるとか。それも、国王陛下をお連れになっていらっしゃるそうで……。」

途端、リリアーナは安堵する。

 

リリアーナ「直ぐにお迎えに参りましょう。先ず私の部屋の応接室に通して下さい。

きっと彼等もそれを望んでいることでしょうし。」

使用人「は、はい。」

伝令の使用人が退室すると同時に、リリアーナはヘリーナ達に声を掛けた。

 

リリアーナ「ヘリーナ、ハジメさん達とガハルド陛下の謁見前に割り込みますよ!準備を!」

ヘリーナ「お任せあれ!既に準備を始めております!」

実は、リリアーナ宛てに使用人が来た時点で、ヘリーナを筆頭として連れてきた侍女達が一斉に動き出しており、準備も始まっていた。

そして、リリアーナもまた、「大丈夫かなぁ……?と心配になりつつも、ハジメ達を饗す為に準備を進めるのだった。

まぁ、大丈夫ではないのだが……それをリリアーナは知る由もなかった。




次回より、いよいよハジメさん達が大アバレします。
ハウリア達の見せ場は再来週辺りになりますので、お楽しみに!

もし、ハジメさん以外の別キャラ視点でオリジナル番外長編(web 原作アフターを除く)を作るとしたら、誰を主人公にする?

  • ユエ
  • シア
  • ティオ
  • レミア
  • ミュウ
  • 香織
  • トネリコ
  • リリアーナ
  • 愛子
  • 星野アイ
  • 幸利
  • 恵里
  • 光輝
  • 浩介
  • 龍太郎&鈴
  • 優花
  • 両親サイド
  • 良いから本編プリーズ
  • その他(活動報告でリクエスト)
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