Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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遂に来ました!タイトルにもある通り、あの男がいよいよ登場いたします!

追記:白河上皇さん、誤字報告ありがとうございます。


00:94/輪舞曲・開幕は深淵と共に

日がすっかり落ち、辺りが暗闇で覆われた帝城の一角。

2人の帝国兵が、警備の為に決められたルートを巡回していた。

その手には魔法的な火が燃え盛る松明のようなものが持たれており、不埒な侵入者の味方をする夜闇を懸命に払っている。

 

帝国兵A「はぁ。今頃、お偉方はパーティーか……美味いもん食ってんだろうなぁ。」

帝国兵B「おい、無駄口叩くなよ。バレたら連帯責任なんだぞ。」

1人の兵士が遠くに見える明かりを眺めながら溜息混じりに愚痴を零した。

相方の兵士が顔を顰めながら注意するが、その表情の原因は言葉通りのものでは無い様だ。

 

どちらかといえば、"暑い時に暑いと言うと余計に暑い気がするから言うな"と言う、うんざり気味の雰囲気が漂っている。

内心では、同じく愚痴を吐いていたらしい。

 

帝国兵A「だけどさ、お前も早く出世して、ああいうのに出たいと思うだろ?」

帝国兵B「……そりゃあな。あそこに出られる位なら、金も女もまず困らねぇしな……。」

帝国兵A「だよなぁ。パーティーで散々飲み食いした後は、お嬢様方と朝まで、だろ?天国じゃん。

あ~、こんなとこで意味のねぇ巡回なんかしてないで女抱きてぇ。兎人族の女がいいなぁ。」

帝国兵B「お前、兎人族の女、好きだなぁ。

亜人族の女は大体いい体してっけど、お前、娼館行っても兎人族ばっかだもんな。」

帝国兵A「そりゃあ、あいつらが1番甚振り甲斐があるからな。いい声で泣くんだよ。」

帝国兵B「趣味悪ぃな……。」

帝国兵A「何言ってんだよ。兎人族って、ほら、虐めてくださいオーラが出てるだろ?

俺はそれを叶えてやってんの。お前だって、何人も使い潰してんだろ?」

帝国兵B「しょうがねぇだろ?いい声で泣くんだから。」

 

2人の巡回兵は、顔を見合わせると何が面白いのか下品な笑い声を上げた。

帝国において、亜人は所詮道具と変わらない。ストレスや性欲を発散する為の、幾らでも替えの利く道具なのだ。

故に、この2人が特別、嗜虐的な性格なのではなく、亜人を辱め弄ぶのは帝国兵全体に蔓延している常識と言ってよかった。

 

帝国兵B「おい、今、何か……?」

と、その時、片割れの兵士が建物の影に何かを見たのか警戒したような表情になって声を上げた。

帝国兵A「あ?どうした?」

警戒しながら建物へと近付き、暗がりを照らしだそうとする兵士。疑問の声を上げながらもう1人も追随する。

 

先行していた兵士は「誰かいるのか?」と誰何しながら、丁度人1人がギリギリ通れる程度の建物と建物の隙間にバッ!と松明の火を向けた。

しかし、その先に人影はなく「見間違いだったか……?」と呟きながら安堵の吐息を漏らすと、苦笑いしながら相棒を振り返った兵士だったが……

 

帝国兵B「悪い、見間違い――。?おい、マウル?どこだ?マウル?」

そこに相棒の姿はなく、足元に彼が持っていた筈の松明だけが残されていた。

何処へ行ったんだと、キョロキョロと辺りを見渡す兵士だったが、周囲に人影はない。彼の背筋に冷たいものが流れる。

湧き上がる恐怖心を誤魔化すかの様に、兵士は声に苛立ちを滲ませて、再度、相棒へ呼びかけた。

 

帝国兵B「おい、マウル。悪ふざけなら――んぐっ!?」

その瞬間、誰もいなかった筈の建物の隙間からスッと2本の腕が音もなく伸びた。

何もない闇の中から直接生えてきたかの様な腕の1本には、光を吸収する艶消しの黒色ナイフが握られており、片手が兵士の口元を塞ぐと同時に、一瞬で延髄に深く突き立てられる。

 

一瞬、ビクンと痙攣した後、グッタリと力を抜いた兵士は、そのまま2本の腕に引き摺られて闇の中へと消えていった。

何時の間にか、彼等の松明も消え去り、ただ生温い夜風だけがゆるゆると闇の中を吹き抜け、風に紛れそうな程小さな囁き声がした。

 

???「司令部(HQ)、こちらα(アルファ)。Cポイント制圧完了。」

???『α、こちらHQ。了解。E2ポイントへ向かえ。歩哨4人。東より回りこめ。』

α「HQ、こちらα。了解。」

そんな囁きの後、黒ずくめの衣装に全身を包んだ複数の人影が、足音1つ立てず移動を開始した。

 

顔面まで黒い布できっちり隠しているが、目の部分だけは視界確保の為に空いており、そこから鋭い眼光が覗いている。

背中には小太刀が2本括りつけられていた。

外国人がその姿を見たのなら間違いなく「Oh!ジャパニーズニンジャ!」と、目をキラキラさせながら言いそうな格好だ。

 

だが、個人の特定は出来なくとも、残念な事にその正体までは全く忍べていなかった。

何故なら、覆面の頭上からはニョッキリとウサミミが生えていたからだ。

どこからどう見ても兎人族であり、ハウリア族であった。

 

彼等は、闇に紛れて建物の影に身を潜める。

そこからそっと顔を覗かせれば、報告通り4人の歩哨が2組に分かれて互いに目視出来る位置に佇んでいた。

ハウリア族の1人が背後に控える3人にハンドシグナルを送る。

3人はそれに頷き、スッと後ろに下がると、まるで溶け込む様に夜の闇へと姿を消した。

 

待つこと数秒。指示した場所から、歩哨の視線が逸れた隙にチカッ!と光が瞬く。

同じく、歩哨の視界に入らないように考慮して、ハウリア族の1人がライターサイズの容器の蓋を一瞬だけ開けた。

この容器は、中に緑光石が仕込まれた簡易懐中電灯の様な物だ。

 

合図を送ったハウリア族は、背後の2人を振り返るとハンドシグナルで指示を出しながら動き出した。

2組の歩哨が互いの姿を視界の外に置いた瞬間、気配を極限まで薄くして一気に接近し、1人が兵士の口と鼻を片手で覆いながら延髄を一突き。

 

帝国兵「――ッ!?」

もう1人も同じく、片手で拘束しながら別の兵士の腎臓を突き刺し組み倒す。

最後の1人は、歩哨が手放した松明を落ちる前にキャッチして火を消し、その他の痕跡が残っていないか確認する。

そして、一気に建物の影に引き摺っていった。

 

しかし、流石に無音とはいかず、もう1組の歩哨が「ん?」と視線を向ける。

が、その視線の先に先程までいた仲間の姿はない。松明の光も無く暗闇が存在するだけだ。

「あいつら、どこへ行ったんだ?」と、訝しみながら目を凝らす歩哨は、闇の中で微かに動く人影を捉えた。

何か大きなものを引き摺る姿だ。ゾワリッと、危機感が背筋を駆け抜ける。

 

歩哨は咄嗟に、首元に下げた警笛を吹き鳴らそうと手を伸ばした……

次の瞬間、その歩哨の首にナイフが突き立てられ、歩哨は悲鳴を上げることも出来ず、その意識を永遠の闇に沈めることになった。

警笛を握った歩哨の隣では、やはり相方の歩哨も同じ様にナイフを突き立てられて絶命している。

同時に、松明の火が消されて建物の影に引き摺られていった。

 

現在、帝城の至るところで同じ様な殺戮が行われていた。

この時点で既に、複数の詰所に控えていた多くの兵士達の首が胴体と永遠のお別れを済ました後であり、兵舎で就寝中の兵士達は樹海製の眠り薬によって普段とは比べ物にならない程、深い眠りにつかされていた。

警報が鳴ったとしても、朝までぐっすり眠り、普段の疲れを存分に癒す事だろう。

尤も、それは運が良ければ、の話だが……そうでないものは、永遠の休息を得る、としか言えない。

 

今宵の空に浮かぶのは繊月。別名"2日月"。新月の翌日に昇る、見えるか見えないかくらいの極細の月だ。

それはまるで、悪魔が浮かべた笑みの様。

実力至上主義を掲げた者達が最弱と罵った相手に蹂躙されるという、この月下の喜劇を嘲笑っているかの様だった。

 


 

『HQ、こちらα。H4ポイント制圧完了。』

『HQ、こちらβ。全Jポイント制圧完了。』

『HQ、こちらγ。全兵舎への睡眠薬散布完了。』

『HQ、こちらλ。皇子、皇太孫並びに皇女2名確保。』

 

帝城内のパーティー会場は、流石はと言うべき絢爛豪華さだった。

立食形式のパーティーで、純白のテーブルクロスが敷かれたテーブルの上には何百種類もの趣向を凝らした料理やスイーツが並べられている。

装飾や調度品も素晴らしく、つい目を奪われる華やかさだ……台無しになった時の被害総額は知らんが。

 

そんな煌びやかなパーティー会場で、俺は話しかけてくる帝国貴族を営業スマイルでやり過ごしていた。

――耳につけたイヤリング型通信アーティファクトから、次々と入ってくるハウリア達の報告も耳に入れながら。

俺以外の面々、特に光輝達"勇者一行"は注目の的で、少しでも面識を得ようと帝国貴族がしきりに話しかけていた。

 

真相がまだ公表されていないものの、"神の使徒"にして"勇者一行"の世間一般認識は、【オルクス大迷宮】の攻略階層を破竹の勢いで更新した強者と思われている様で、"強さ"が基準の彼等からすれば何とも興味をそそる存在なのだろう。

勿論、あわよくば個人的な繋がりを持ちたいという下心もたっぷりある様だが……。

 

尤も、俺に話しかけている奴等だけは、別の意味で下心満載の不埒者もいる様だ。

奴等の目的は言わずもがな。パーティーが始まってから片時も俺達の傍を離れない美貌の女性陣だ。

俺に話しかけている間も、チラチラと背後に控えるユエ達に視線が向いているのでバレバレである。

 

まぁ、それも無理の無い事だろう。

リリィの来訪歓迎と婚約祝いを兼ねたこのパーティーにおいて、ユエ達の存在は、花を添えるどころの騒ぎではない。

寧ろ、自分達こそ主役だと言わんばかりの強烈な存在感を放っていた。

 

シア「ほぇ~~。世の中には、こんな場所があるんですねぇ。樹海では考えられません。」

会場の豪華さにポカ~ンとしっぱなしのシアは、ムーンライト色のミニスカートドレス姿だ。

スラリと長く、引き締まった美脚を惜しげもなく晒している。

 

しかし、決して下品さはなく、ふんわりと広がったスカートと、珍しく楚々としたシアの雰囲気が彼女の可愛らしさをこれでもかと引き立てていた。

普段は真っ直ぐ下ろしている美しい髪を根元で纏めて前に垂らしている姿も、彼女に上品さと可愛らしさを与えている要因だろう。

 

ミュウ「みゅ!とってもキラキラなの!」

レミア「あらあら、ミュウったら。初めてのパーティーにはしゃいじゃって……。」

初めての、それも陸地でのパーティーに興奮しているミュウは、シアと同じくミニスカート丈のドレスだ。

リボンやフリルがあしらわれていて、全体的にふんわり可愛いデザインであり、活発で明るい女の子といった印象を与える。

 

そんなミュウを微笑ましそうに見るレミアは、マーメイドラインのドレスだ。

スタイルの良さが浮き彫りになっているのもあって、丈はロングだが薄いレース状なので奥のむっちりした美脚が見えており、ほんわかした雰囲気とはギャップのある色気が滲み出ている。

 

ティオ「料理も酒も一流じゃのぅ。今のうちに堪能しておかねばもったいない。」

トネリコ「こういう場はあまり慣れませんが……精一杯楽しみましょうか!」

その横で、上品にワインを傾けるティオは、普段の黒い和装擬きと同じ様な黒いロングドレス姿だ。

しかし、体のラインが出る様なタイプのドレスなので、凹凸の激しいボディラインが丸分かりであり、更に、背中と胸元が大きく開けているので、彼女の見事な双丘が今にも零れ落ちそうなほど露わになっている。

 

会場の男性陣の視線が、動く度に一々プルンッ!と震える凶器に吸い寄せられ、パートナーの女性に嫌味を言われる姿が続出していた。

とはいえ、ベルトや装飾で締められた全体からは"できる大人の女"というイメージを想起させる。

美しいというより格好いいと表現したくなる様なドレスだ。

 

それに気恥ずかしそうにしつつも賛同するトネリコは、白を基調とし、所々にリボンをあしらったドレス……というより、どこぞの千年生きたエルフが来てそうな服に黒い毛皮のフード付のマントを羽織っていた。

真っ直ぐ降ろしている金色の髪も、魔術で変化させたのか若干白銀に近くなっており、後ろで一つに結ってポニーテールにしていた。

 

何時もの、つばの大きな魔女らしい帽子にローブ姿や、大火山で見せた黒を基調としたへそ出し衣装とも違って、伊達メガネを外しており、少し新鮮で可愛らしい。

因みに、首元のネックレスにはグランツ鉱石が使用されており、青白く光り輝く宝石が彼女の衣装と相まって、その魅力をより引き立てていた。

 

香織「うぅ。私達、すっごく注目されてないかな?」

恵里「無理もないかも。張り切っておめかししたのが仇になっちゃったかな?」

雫「レミアさんのファッションセンスが良いのもあるわね。あの人、楽しそうだったし。」

 

恥ずかしそうに頬を染める香織は、肩口が完全に露出したタイプのスレンダーラインのドレスを着ている。

ティオ程の激しいボディラインではないが、そのバランスは正に神の造形。

チャイナドレスの様に深いスリットが入った裾から、ふとした拍子にチラリと覗く美脚や、アップに纏められた銀髪の輝き、色気を感じさせる項には思わず視線を奪われる。

 

その意見に苦笑している恵理は、アシンメトリーのデザインにフリルが施されたロングドレスを着ており、レミアのファッションセンスの良さに感嘆する雫は、ワンピースの上に一枚羽織った少し落ち着きのあるデザインだ。

2人とも、シア達程ではないものの、十分に魅力的だ。

 

ユエ「……ん。」

そして、ユエは何故か――純白のウェディングドレス擬きを纏っていた。

光沢のある生地で、肩口が露出しており、裾はフリルが何段も重ねられ大きく広がっている。

髪はポニーテールにしていて上品な白い花を模した髪飾りで纏められ、露出が一番少ないにも拘らず、白く艶かしい首筋や、やけに目を引く赤いルージュの引かれた唇、そして僅かに潤んで熱を孕んだ瞳がどうしようもなく男の劣情を誘い、外見の幼さと纏う妖艶な雰囲気のギャップからくるユエの魅力が何十倍にも引き立てられていた。

 

部屋で、ユエ達の着替えが終わるまで待っていた俺達男性陣も、彼女達が入ってきた瞬間、その溢れ出る魅力にやられて完全に硬直したのも仕方のない事だ。

ただ……今日の主役、俺達じゃないんだけど?

兎にも角にも、「これ、誰の婚約パーティーか理解してます?」とツッコミを入れられそうな位、ユエ達は魅力的だった。

 

因みに、鈴も十分に着飾っていて、帝国の令嬢方に負けない位に華やかだったのだが……流石にユエ達の強すぎる動機と原動力(俺の正妻ナンバーワンが自分だという自信)には数歩及ばず、どうしてもユエ達と比べると大人しい印象だったので、余り目立ってはいなかった。

雫の対応も如才無い物なので、帝国の貴族令嬢に群がられて姿すら見えない光輝達よりかは安心できそうだ。

……また自称妹を増やさないかは心配だが。

 

尚、龍太郎は「うんめぇ!」と連呼しながら料理を貪っており、正に"花より団子"状態だった。

それを鈴がしきりに、「ちょっと龍太郎君!恥ずかしいってば!」と諌めていた……が、「あ、このケーキ美味し。」と割と貪っているので、ある意味似た者同士だった。

因みにトシは、恵里のガードに回っている。まぁ、そりゃあ過保護気味にもなるわな。

 

『司令部HQ、こちらΔ。全ポイント爆破準備完了。』

『司令部HQ、こちらε。Mポイント制圧完了。』

と、耳から入る念話の報告を聞きつつ、帝国貴族を躱していた時だった。

 

ヘリーナ「陛下!大変です!」

ハジメ「?ヘリーナ?」

突如、リリィと一緒だった筈のヘリーナ達が、焦った様子でこちらに向かってきた。――いよいよか。

 

ハジメ「どうした?折角のパーティーなんだ、リリィについてやらなくてよいのか?」

ヘリーナ「それが……リリアーナ様が皇太子と共に姿を消しました!」

ハジメ「……何?」

勿論、真相は知っているけど敢えて惚ける。

 

ハジメ「2人の声は聞こえなかったのか?大声なら部屋の外からでも聞けるだろう。」

ヘリーナ「いいえ、全く聞こえませんでした。どういうことか帝国側に説明を求めましたが……。」

ハジメ「連中はだんまり、と……。」

それを聞いた俺は、宝物庫から拳大の水晶を取り出した。

 

ヘリーナ「?それは……?」

ハジメ「リリィにあげた指輪と遠隔通信ができるアーティファクトだ。

これを使えば、その時何が『っ!?いやぁ!痛っ!』あった、か……。」

すると、水晶に映し出された光景には、リリィの胸を強引に鷲掴む猿がいた。

成程、これが皇太子か……親が親なら子も猿か。

 

バイアス『そこそこ育ってんな。まだまだ足りねぇが、それなりに美味そうだ。』

リリアーナ『や、やめっ!』

映像は続き、猿はそのままリリィを押し倒す。リリィが悲鳴を上げるも、誰も部屋に入ってこない。

 

バイアス『幾らでも泣き叫んでいいぞ?

この部屋は特殊な仕掛けがしてあるから、外には一切、音が漏れない。

まぁ、仮に飼い犬共が入ってこようが、皇太子である俺に何が出来る訳でもないからな。

何なら、処女を散らすところを奴等に見てもらうか?くはははっ!』

ハジメ「……。」

殺しておいて正解だったな。

 

リリアーナ『どうして……こんな……!』

バイアス『その眼だ。反抗的なその眼を、苦痛に、絶望に、快楽に染め上げてやりたいのさ。

俺はな、自分に盾突く奴を嬲って屈服させるのが何より好きなんだ。

必死に足掻いていた奴等が、結局何も出来なかったと頭を垂れて跪く姿を見る事以上に気持ちの良い事等無い。

この快感を一度でも味わえば、もう病みつきだ。リリアーナ。

初めて会った時、品定めする俺を気丈に睨み返してきた時から、何時か滅茶苦茶にしてやりたいと思っていたんだ。』

元から醜い顔を更に醜く歪め、猿は傲慢に宣う。

 

リリアーナ『あなたという人はっ……!』

バイアス『なぁ、リリアーナ。

結婚どころか、婚約パーティーの前に純潔を散らしたお前は、どんな顔でパーティーに出るんだ?

あぁ、楽しみで仕方がねぇよ。例の婚約者だった、魔王とか言うガキにも見せてやりたいなぁ?』

その言葉を聞いた瞬間、私はガハルドを睨みつけた。

 

ザワザワ……

 

因みに、先程の映像は会場内に響いており、その内容を聞いていたユエ達女性陣は勿論、光輝達男性陣からも侮蔑の視線がガハルドに向けられており、帝国貴族達はというと、同盟相手の王女を皇太子が辱めようとした事に顔を青褪めさせ、衛兵達も頭を抱えている。

 

『司令部HQ、こちらζ。Pポイント制圧完了。』

『司令部HQ、こちらη。Rポイント制圧完了。』

ハジメ「……弁明はあるか、ガハルド。」

そこで一旦映像を切った私は、こちらに向かっていたガハルドに問いかける。

答え次第では、この国の存亡も考えねばな……。

 

ガハルド「弁明も何も、バイアスはそういう奴だったしなぁ……それよりも、王女が心配ではないのか?」

ハジメ「戯けた事を……貴様こそ、玩具遊びにかまけていた末の結果を……いや、そういう国だったな。

文明とは名ばかりの猿山に、王女の輿入れを許可した事がそもそもの間違いであったか。」

そう言って互いに睨みあいながら、皮肉を飛ばしあう。周囲は一部を除き、その光景にハラハラしている。

 

ガハルド「おいおい、ここは両国の関係強化の場だぞ?そんなことを言って――」

ハジメ「魔人族程度に苦戦する上、裏切りも下克上もやる様な国が、同盟相手に足りうるとでも?」

ガハルド「……中々言ってくれるじゃねぇか、それならこのパーティーはどうなる?」

ハジメ「それはこちらの台詞だ。折角のリリィの晴れ舞台をどうしてくれる?

花嫁も不在な上、婚約前に猿に強姦されるなぞ、前代未聞だぞ。他国が聞いたら、どう思うだろうな?」

私がそう言い放つとガハルドは無表情になり、覇気を放ち始める。

周りにいた衛兵達も、それに合わせて臨戦態勢を取り始めた。

 

ハジメ「なんだ?リリィと皇太子を探しに行かなくてよいのか?」

ガハルド「お前こそ、俺に挑発してばかりで、さっさと王女を探しに行かなくていいのか?」

ハジメ「先程、手練れに連絡を入れたのでな。それよりも……殺気を放つ相手が違うだろう?」

ガハルド「こいつ……人の国を猿山呼ばわりしておいて、ただで返してもらえるとでも思ってんのか?」

ハジメ「思うとも。何故なら……この国は弱肉強食なのだからな?」

言外に「お前達が弱者だ。」と言わんばかりの皮肉を叩きつけると、更にガハルドの額に青筋が増えた。

 

『司令部HQ、こちらμ。Sポイント制圧完了。』

『司令部HQ、こちらν。Yポイント制圧完了。』

ガハルド「……今日会ったばかりだがはっきり言ってやる。南雲ハジメ、俺はお前が気に食わねぇ!」ゴォッ!

そう言うとガハルドが拳を振り上げる。その光景に令嬢の誰かが悲鳴を上げる。

 

ハジメ「奇遇だな、私もこの国の価値観と貴様等皇族が、反吐を吐く程嫌いだ。」ピタッ

が、私はそれを左手の小指であっさり受け止め、そのまま返した。

見ていた貴族達は、帝国最強の拳を1本の指だけで止めた事に驚いたのか、口をあんぐりとさせていた。

 

ハジメ「弱肉強食主義自体はそれほど間違ってはいないから否定はせん。

だが、過ぎたるは猶及ばざるが如しという諺が私の世界にあってな……分かるだろう?」

ガハルド「……亜人共を好きに扱うのが気に食わないと?だからハウリアを逃がしたってか?あぁ!?」

ハジメ「おいおい、冤罪も甚だしいな。火事場泥棒はそちらだろうに。」

あまりの怒りに余裕が崩れているのか、ガハルドが大声で怒鳴る。勿論、皮肉を込めて平然と返した。

 

ガハルド「テメェがそこの兎人族を連れている以上、ハウリアと繋がっているのは明白なんだよ!

あのアーティファクト群だってそうだ!作ったのはテメェなんだろ!?いい加減、白状しやがれ!!」

ハジメ「見当違いの八つ当たりなら他所でやってくれないか?

ほれ、貴様が喚き散らすせいで何の関係も無いシアが怖がってしまっているではないか。」

 

とうとう感情を抑えきれなくなったのか、ガハルドは激昂した。

が、俺からすれば、迫力は鼠の威嚇程度なので、シアを抱きしめながら奴を諫めた。

尤も、シアは怖がってはおらず、得意げな表情だが。と、その時だった。

 

 

 

???「――姫君の行方なら、我が知っているぞ?」

 

 

 

『!?』

突如、響いた声。その台詞を口にしたのは何処の誰か。

会場内の殆どの人間が、その声の主を探すべく、しきりに首を動かしている。

 

ガハルド「ッ!誰だ、何処にいやがる!」

???「ここだ、蛮族国家の親玉よ。」

ガハルドが誰何の怒声を上げれば、再び声が響いた。それも今度ははっきりと壇上から。

全員がその方向へ一斉に視線を向けると……

 

???「……フッ。」

全身黒づくめの男――それも何故か、片手で顔を覆いつつ、その指の隙間からこちらを睥睨し、目元にはワンレンズタイプのサングラスをかけ、もう片方の手には黒塗りのナイフを持ちながら、顔を覆う手とクロスするように構えている……何がどうしてこうなったのか分からない、変わり果てた戦友(浩介)がいた。

 

「なっ、何者だ貴様は!」

浩介?「生憎と外道に名乗る名はない。が、今宵は特別に名乗る事としよう。」

そう言って浩介?は、何故か一回転して再び中二じみたポーズを取り、名乗り上げた。

 

浩介?「我は"疾牙"、我は"影爪"、我は"夢幻"、我こそは、影より出でてその刃を振るい、咎人を裁く執行者。

我が名は、深淵卿。」

……どこの白面侍だ、お前は。

 

「なっ、なにが深淵卿だっ!咎人を捌くだと!?戯言も大概にしろ!」

「そ、そうだ!しかも、ふざけた格好をしやがって!貴様もあの仮面共の関係者だな!」

「陛下!王女の行方を知っているのであれば、皇太子殿下の行方も知っている筈です!

直ちに奴を捕らえ、拷問して聞き出します!」

……止めておいた方が良いと思うんだけどなぁ。

 

浩介?「……我を捕えるだと?フッ、それこそ不可能だ。」

そう言って浩介らしき男は、帝国兵に向けて挑発する様な笑みを浮かべると、自身の床に何かを叩きつけた。

すると、その中から大量の煙が出てきて、壇上を包みこんだ。

 

「くそっ、こんな子供騙し等――「我を捕える事は、何人たりとも不可能だ。――恋焦がれる人と、我が主君以外は、な。」!?」

衛兵の一人が何か言う前に、何時の間にかそいつの近くにいた浩介らしき男が、得意げに嗤う。

 

浩介?「故にこそ、我を知る者は口を揃えて言う。」

「!?」

同時に、また別の所で香ばしいポージングの浩介らしき男が現れ、得意げに嗤う。

 

浩介?「そう――不可視の刃にして、最強の暗殺者、と。」

浩介?「我を眼に捕らえた時点で、お前達は既に敗北していたのだ。」

浩介?「お前達が深淵を覗く時、深淵もまたお前達を覗いている。」

浩介?「たとえどれだけ厳重に隠し通そうとも、我の眼にはお前達の全てが筒抜けだ。」

浩介?「既にこの帝城は、お前達にとっての棺桶なのだよ!」

……待って、何これ。俺、全然聞いてないんだけど!?

 

「ひ、怯むな!所詮は幻術のた――ぐはっ!?」

浩介?「否、全ての我が本物だ。」

衛兵が何かを言い終える前に、何時の間にか背後に現れていた浩介らしき男に当身を食らわされた。

確かに凄い……んだが、一々やるそのポージングと、口から飛び出す何処かこそばゆい言動はどうにかならんのかね?

 

香織『ははは、ハジメ君!?これもハジメ君の計画なの!?』

ハジメ『んな訳ないだろ、大体浩介は何がどうしてああなったんだ?』

幸利『またお前が何かやったんじゃないのか?』

ハジメ『違うわ!そもそもあいつが分身を使える事自体、初耳だよ!』

恵里『何というか……その、アレに似てない?』

雫『やめて、恵里!言わないで頂戴!遠藤君は黒ごまなの!』

鈴『シズシズ、黒ごまって……何を連想したか隠せてないよ。』

龍太郎『なぁ、光輝。もしかして、お前より遠藤の方が強くね?』

光輝『……正直、否定出来ない。』

ねぇ、この状況マジで大丈夫なの!?

 

『HQ、こちらΣ。Zポイント制圧完了。』

『全隊へ通達。こちらHQ、全ての配置が完了した。カウントダウンを開始します。』

待って、この状況でカウントダウン入るの?

確かにガハルドの注意もこう……深淵卿に向いているから別にいいけどさぁ!

と、そんな中でも通信が聞こえた他の面々には緊張が走り、特にシアは瞑目して一度深呼吸し、一拍、スッと目を開けた。

その瞳に宿る戦意に、思わず誰もが息を呑む。

 

シア『ハジメさん、ユエさん。』

視線が巡る。香織達にも余さず。それに私は頷き、不敵に笑って言った。

ハジメ『あぁ、今からお前は……"ハウリア族族長の娘"だ。好き放題、暴れて来い!』

その言葉に、シアもまた不敵に笑う。そして、

 

シア『はい、行ってきます!』

そう言ってスゥッと気配を薄めていき、誰にも気づかれずに会場から出ていった。

気付かれぬ様にその背を見送ると、ふと背後から気配を感じ、手刀を放った。

――別に、あわよくばガハルドだったら、うっかりでくたばってもらおうとか、微塵も思っていないぞ?

 

深淵卿「フッ!流石はハイリヒの王だけはあるか。」

……お前かーい。

深淵卿「姫の行方を知りたいか?異界から来た魔王よ。」

ハジメ「やかましいわ。」

寧ろお前に何があったかの方が気になるわ。

 

深淵卿『我が魔王よ、頼みがある。』

ハジメ『この状況下でか?』

深淵卿『時間稼ぎの為、暫し我と戦闘を繰り広げて貰いたい。』

ハジメ『それは構わんが……ガハルドに疑われないのか?』

深淵卿『問題ない、我はご息女等非戦闘員を狙うフリをする。』

ハジメ『成程、それに合わせろと。良いだろう、精々バレるなよ?』

 

深淵卿の振るう苦無を、武装色付の手刀で流しながら、念話で互いに作戦共有をした俺は、即座に2人の近くに飛ぶと、ユエ達にもアイコンタクトを送る。

その意図を察したユエ達も、続々と集まって来て、何時の間にか非戦闘員を守る為に手一杯と言う図が出来上がった。

 

これで一先ず、多少の誤魔化しは効くだろう。

そう思ってガハルドの方を見れば、奴も大量の深淵卿に押され気味の様で、ジリジリと俺達から距離を離されていた。

同時に、耳元の通信機器から決然とした声が響いた。

 

『全隊へ。こちらα1。これより我等は、数百年に及ぶ迫害に終止符を打ち、この世界の歴史に名を刻む。

恐怖の代名詞となる名だ。この場所は運命の交差点。地獄へ落ちるか未来へ進むか、全てはこの一戦にかかっている。

遠慮容赦は一切無用。さぁ、最弱の爪牙がどれ程のものか見せてやろう!』

 

ガハルド「くそっ!次から次へと何なんだ!ふざけた強さの仮面の次は、ゴキブリみたいな暗殺者だと!?

ふざけんのもいい加減にしやがれ!」

深淵卿「所詮は井の中の蛙、大海を知らぬのも無理はあるまい。」

深淵卿「我よりも強き者はごまんといる。お前如き、虫けら同然だ。」

ガハルド「がぁぁぁぁ!!耳元でごちゃごちゃうるせぇッ!!」

……もう、あいつ一人だけでいいんじゃないかなぁ。

 

『10、9、8……』

そんな中でも、私達と蔓延るウサギ達、そして深淵卿にだけ響く運命のカウントダウン。

カム『魔王陛下。この戦場へ導いて下さったこと、感謝します。』

勿論、何も知らない帝国の奴等には聞こえない。

 

そして、ガハルドが一先ず魔法や剣技で周囲の深淵卿を吹き飛ばすと、それに追随するかの様に他の深淵卿が次々に消えていった。

最終的に、全ての深淵卿が消え去り、まるで最初からその痕跡が無かったかの様に、静寂だけが全てを支配した。

一方、念話の向こうでは、スゥ―ッと息を吸う様な音の後に、覇気に満ちた声で音頭が取られた。

 

『気合を入れろ!ゆくぞ!!!』

『『『『『『おうっ!!!』』』』』』

『4、3、2、1……』

そして、カウントダウンは遂に――

 

ガハルド「全衛兵に告ぐ!そこのいけ好かないクソガキを捕えろぉッ!生死は問わん!

帝国を敵に回すとどれだけ恐ろしいか、目に物を見せてやれ!!」

『ゼロ。ご武運を。』

その瞬間。全ての光が消え失せ、会場は闇に呑み込まれた。




次回、前後編で帝国編クライマックスです!

もし、ハジメさん以外の別キャラ視点でオリジナル番外長編(web 原作アフターを除く)を作るとしたら、誰を主人公にする?

  • ユエ
  • シア
  • ティオ
  • レミア
  • ミュウ
  • 香織
  • トネリコ
  • リリアーナ
  • 愛子
  • 星野アイ
  • 幸利
  • 恵里
  • 光輝
  • 浩介
  • 龍太郎&鈴
  • 優花
  • 両親サイド
  • 良いから本編プリーズ
  • その他(活動報告でリクエスト)
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