Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
Go!ファイッ!アビスゲート!
Ready Go!!
樹海に滞在する事が決まった翌日、俺達は深刻な問題に直面していた。それは……
浩介「魔王、南雲ハジメ!!この俺と……決闘しろぉぉぉ!!!」
この男の恋愛に関する騒動である。
話は少し前まで遡る。ハジメ達がパルから説明を受けていた頃の事だった。
浩介もハジメ達と共にその話を聞いていた。
すると、そんな浩介の隣にいたラナが、にっこりと、何処か妖絶な、それでいて可愛らしさも感じさせる微笑みを浩介に向けてきた。
その笑顔に、思わず浩介の顔がきゅ~っと赤く染まっていく。
元々、愛玩奴隷として一番人気があっただけに兎人族は総じて整った容姿をしている。
そしてラナも、物凄く美人だった。こんな年上の美人に至近距離から覗き込まれた経験なんて皆無の浩介である。
絶句は当然、心臓は今にも飛び出しそうだ。
ラナ「ふふ、君ってとっても気配操作が上手なのね。私じゃ敵わないわね。」
そう言って浩介に称賛を送るラナ。本来なら、照れるところなのだろう。そうなのだが……。
浩介「えっと……ごめんなさい、これ、生まれつきなんです……。
別に"隠形"も、アーティファクトも使ってないっす。昔から、親とか先生にも忘れられる位なんで……。」
浩介の放った自虐ネタに、思わずラナは固まる。同時に、温かくも敬意と親近感に溢れた瞳を彼に向ける。
ラナ「我が名は"疾影のラナインフェリナ"。
疾風の様に駆け、影の様に忍び寄り、致命の一撃をプレゼントする、ハウリア族一の忍び手。」
浩介「ら、ラナさん?」
やっぱりラナもハウリアであった。
何処からか取り出したサングラスをかけ、中指でクイッと押し上げながらフッと笑い、何故かキレッキレのターンをした。
余りのギャップに浩介も困惑するが、勿論ラナさんはハウリアなのでお構い無しだ。
ラナ「……と、言いたい所なのだけど、陛下から最強の暗殺者と呼ばれている貴方を見ていたら、この二つ名を名乗るのが恥ずかしくなったわ。
だから、悔しいけど"疾影"の二つ名は君に譲る。
君こそが今日から"疾影"……いえ、私を超えているのだから……"疾牙影爪のコウスケ・E・アビスゲート"と名乗るといいわ!
本当に悔しいけれどね!」
浩介「うぇっ!?い、いえ、遠慮しときま――」
ツッコミどころは満載だ。アビスゲートって何だよッと今すぐ問いたい。
というか、中学時代の黒歴史的なあれこれが掘り返されるので、そういう言動は止めて頂きたい、と少し思ったが……
次の瞬間には全て、些細な事だと吹き飛んだ。
ラナ「貴方にこれをあげるわ!」
そんな事を言って、自分が身に着けていたサングラスを浩介の顔に手ずからそっとかけてくれたのだ。
しかも、その時にラナの指が浩介の耳に触れた。
ラナ「これからも陛下の為に、一緒に未来を切り開きましょう?コウスケ・E・アビスゲート。」
ダメ押しに輝く様な笑顔と、共に未来を歩もう的な言葉なんて送られたら。浩介は、幻視した。
己のハートに刃が突き立った言葉を。そして、確かに聞いた。頭の中で何かが弾けた音を。
浩介「……。」
あの笑顔は反則だ、とか。
彼女いない歴=年齢の思春期男子に、美人お姉さんが簡単にボディタッチしちゃいけないとか。
色々理由はあるけれど、何より嬉しかったのはやはり、使徒はおろか上司の魔王ですら完全には気が付けない自分を、何でもない事みたいに見つけれくれた事。
浩介「ラナ、インフェリナ、さん……素敵だ……。」
それは正しく、恋の兆し。そして、浩介が才能の限界を突破する最後の鍵。
意識が塗り変わり、力が溢れる。湧き上がる衝動のままにサングラスをクイッと。口元にフッと笑みを。
無意識にキレッキレのターンを!
浩介「そう、我こそ……疾牙影爪のコウスケ・E・アビスゲート――深淵卿である!」
その日、この世界にまた1人、痛々しくも香ばしい言動を撒き散らすアサシンが誕生してしまった。
それも、自力で限界を超え、無限分身とも言える偉業を成し遂げるヤベーヤツが。
その日から、浩介はラナに対し猛アプローチを行っていた。
しかし、ラナイ……ラナはハウリア族であり、ハウリア族は例外なくハジメを信望している。
それこそ、女性のハウリアならば、ハジメが望めば即その身を捧げるほどに。
勿論、ハジメには同じハウリア族にして最強の殴打系バグキャラウサギであるシア・ハウリアがいるので、自らハジメにお情けを貰おうなどという勇者はいない。
が、それでもハジメという"自分達の王"にして、"神も世界も蹴散らす最高最善の魔王様"を男の基準にしてしまうので……ありていに言えば、めちゃくちゃ理想が高いのだ。
なので、当然、浩介のアプローチにもラナは靡かなかった。
「ふっ、私は、〝あのお方〟に仕える影。影に愛などいらないわ……。」とか、「あなたも物好きね。触れれば火傷では済まないと分かっていて、私のような危険な女を求めるなんて……。」とか、「やめておきなさい。私と共に、深淵よりなお深い、闇の底を歩み続ける覚悟など、あなたにはないでしょう?」とか、そんなことを不敵な、あるいは妖しい笑みと共に告げながら。
が、そんな言動にもめげない上に真摯に答え続け、アプローチを繰り返した浩介に、流石のラナもちょっとばかし絆された様で、最終的にはこうなった。
ラナ「……うぅ、そ、そんなに私がいいの?じゃなくて、ごほんっ。それほどまでにこの呪われた身を欲するとは……。
でも、私は陛下のものだし……じゃなくて、ごほんっ。生憎だけど、我が身は既に"あの方"のもの。だから、ね?
諦めて……じゃなくて、ごほんっ。影は影に、光は光に生きるのが定めというものよ。
で、でも、まぁ、陛下に傷の1つでもつけられる位なら……考えなくもない、かも?じゃなくてっ、ごほんっ。
ふっ、それでもこの身を欲するのなら、無敗の最強王者に挑み、見事、勝ち取ってみなさいな。」
もじもじ、そわそわしながらそんな事を言う綺麗なウサミミお姉さん。
浩介の胸中に、かつての【グリューエン大火山】の噴火にも等しい爆熱が宿ったのは言うまでもない。
そう、ラナの出した条件とは、魔王ハジメへ一撃入れること……。
ハジメが聞けば「俺まで巻き込むなぁ!?」と叫びたくなる程の鬼畜条件だったのである。
しかし、燃え尽きる勢いで熱き恋のパトスを燃やしていた浩介は、只管魂魄魔法の修練に時間を費やすのであった。
そして今日、浩介はハジメを開けた場所に呼び出すと、ハジメを真っ直ぐに睨みながら大きく息を吸い、どうかしたのか?と目を丸くしているハジメへとビシッと指を突き付け、天すら衝かんとばかりに気合いの入った言葉を迸らせた。
そして今に至り、浩介は俺との一騎打ちに燃えている、という訳だ。
ハジメ「り、理由から聞こうか?」
取り敢えずヒクつきそうになる口元を押さえ、浩介に訳を聞く。答えは当然……。
浩介「……あの人は言っていた。お前の顔に傷の1つでも付けられるなら、考えなくもない、と。」
あの人?なんて思っていると、何事かと皆集まってきた。……って、うん?なんか、ラナの様子がおかしいぞ?
……おい、まさかとは思うがそうじゃないよな?
浩介「ラナさんっ。大好きっす!
貴女が出した条件――陛下に傷の1つでもつけられるなら、考えなくもないって言葉、信じてます!
今、ラナさんの目の前で、ハジメに、めっきり!くっきり!傷をつけてやりますっ!!!」
ラナ「あ、ちょっ、それはっ……。」
やっぱりお前かい!そして、浩介とラナ以外の全員が一斉に唱和した。
『『『『『またハウリアかっ!!!』』』』』
「何て事言ってくれたんだ!」と言う非難の眼差しと、「これで陛下の寵愛レースから1人、有力者が脱落した!」という女性ハウリア陣のニヤニヤとした視線が、一斉にラナへと向けられる。
そんな渦中の中、当の本人は冷や汗を流しながら視線を泳がせていた。しかも、頬を染めて、もじもじしている。
が、最終的に誤魔化す様に『テヘ☆ペロ♪』してたので、何も言えなかった。
ハジメ「……はぁ、仕方がない。その挑戦、受けてやろう。軽く揉んでやるからさっさとかかって来な。」
そう言って挑発する様に人差し指をクイッと曲げる。正直、無理ゲーだと思うからな。
早く済ませて勝者権限ではよくっつけよう。
浩介「フッ、そう簡単に上手くいくとは思わない事だ。魔王。」ババッ!
……な~んか、むず痒そうな言い回しっぽい言動になってやがる。アイツ、既にハウリア化が進行してやがったか。
帝国でもあんな感じだったし……日本に帰ってから大丈夫かなぁ?
というか、その無駄にキレのある動きは何だ。その腕クロスやターンに何の意味がある。
浩介「凄絶なる戦いの最中、深淵卿は闇よりなお暗き底よりやってくる。
さぁ、闇のベールよ、暗き亡者よ、深淵に力を!それは、夢幻にして無限の力……。」
ハジメ「待った、その如何にも中二臭い詠唱は何だ。」
俺のツッコミに言葉を返すことなく、浩介はちょっと斜めに傾きながら片手を広げて顔に添えて、フッと笑った。
……なんかちょい腹立つなオイ。
浩介「――
ハジメ「!」
その瞬間、浩介の纏う魔力に変化が起こった。それは正しく、この前の帝城で見せたオーラだ。
浩介「私は乙女座の男、コウスケ・E・アビスゲートッ!!」
ハジメ「いや、おめーはかに座だろ。」
浩介「どれほどの性能差であろうと!今日の私は、魔王をも凌駕する存在だ!」
グラハムさんの真似で随分言ってくれるなぁ……それなら俺にも考えがある。
ハジメ「ラナ、俺がこの戦いで勝ったら浩介と付き合え。魔王命令だ、異論は認めん。」
ラナ「!」
どの道、ラナの想いは既に分かり切っている。だからはよ付き合え。
浩介「……魔王。」
ハジメ「なんだ、こう――ッ!」
その瞬間、何処からか現れたのか、目の前の浩介とは別にもう1人、浩介が俺のすぐ傍に出現し、小太刀を振るってきた。
咄嗟に気づいて避けたが……なんだ、今の鋭さは。
浩介「余計な手出しは無用だ。我は誓ったのだ。彼女の出した条件を、必ず成し遂げて見せると。
それこそが、吾輩の想いが真実であることの証明である、と。」
小太刀をこちらに突き付け、静かにそう告げる浩介。その拳は強く握られており、怒りで震えている事が分かる。
浩介「男の誓いに、訂正はないっ!!故に我が栄光は、我自身の手で掴む!分かったら取り消せ、バカ魔王!!」
その言葉は、浩介自身の言葉でもあり、裏の人格(?)でもある深淵卿の言葉でもあった。
成程、覚悟はとっくの昔に決まっていた、という訳か。しかし……ククク。
惚れた女性が敬愛を捧げる男を前に、貴女の気持ちを自分に向けさせて見せるという、1人の男としての意地に、ラナの顔がボバッと爆発したみたいに真っ赤に染まり、周りの者達も感嘆の声を上げた。
無論、私もそれに答えぬ訳にはいかない。これは最早ただの戦いではない、男同士の真剣勝負なのだ。
ハジメ「全員下がっていろ、結界を張れる者は全員で結界を張れ。
――私も久々に、全力で踏み潰してやりたくなったのでな。」
あぁ、実にいい気分だ。ここまで高揚する戦いは何時ぶりだろうか。思わず闘気が溢れ出てきた。
そんな私の姿に驚きつつも、ユエ達は頷いて外縁部に移動を始めた。
ラナ「あ、あの……。」
すると、背中に手を添えられ、どこか楽しそうな表情のシアに移動を促されていたラナが途中で振り返り、言葉を探して、けれど見つからなくて、しどろもどろな様子で浩介に声をかけようとした。
浩介「言葉は不要だ。ただ、見ていてくれればいい。その果ての結論なら、どんな答えだろうと――俺は受け入れる。」
ラナ「!……。」
それにしっかりと返す浩介の背中を、ラナは暫く見つめた後、何かを決めた様に強い眼差しになると、無言で踵を返した。
ハジメ「……変身。」
その一部始終を見届けた私は、ドライバーを出現させると、両端を押した。
……思えば、味方との試合でこれを使うのは、此度が初めてか。
ハジメ「私にここまでさせたのだ、魂が尽きるまで足掻いてみせるがいい。」
仮面の下で不敵な笑みを浮かべ、右手を浩介へと向ける。
溢れ出す気配は全てを畏怖させる程の圧を纏っており、それらが凝縮されて浩介に向けられている。
常人であれば瞬時に発狂して自殺しかねない、そんな圧を前にしても浩介は不敵な笑みを返してきた。
浩介「ククッ。それでこそだ、魔王。やはり、吾輩と貴殿は運命の赤い糸で結ばれていた様だ。
そうとも、我々は戦う運命にあった!」
ハジメ「いい加減グラハムの真似は止めろ。お前には早い。」
浩介「何を言うか!リスペクトに早いも遅いも無い!無論、本気で拝借し、本気で言っている!」
ハジメ「……すっかりハウリアに染まりおって。後で黒歴史になっても知らんぞ?」
浩介「一向に構わん!そんな事より抱き締めたいぞ、我が魔王!応えてくれたこと、感謝するっ!」
ハジメ「分かったからいい加減黙ってくれ。暗殺に長ったらしい台詞は無用だろう。」
そう言って衝撃波を飛ばすと、浩介は何やら障壁で防いだ模様。はて、あのような技能等あったか?
浩介「甘いぞ、魔王!!」
ハジメ「貴様がな。」
そう言って背後から強襲してきた浩介を迎え撃つ。殺気は隠しきれておらず、いとも簡単に撃退できた。
やれやれ、大見え切ってこの程度……な訳が無いよなぁ?
そう思うのと同時に、周囲から複数の浩介(分身)が襲い掛かってきた。
ハジメ「ラウス・バーンの影法師以上に厄介だな、まるでどこぞの黒い羽虫を彷彿とさせて不愉快だ。」
浩介「そうつれない事を言ってくれるな、魔王よ!我が深淵の妙技、とくとご堪能あれ!!」
ハジメ「その口調はいい加減やめろ、シリアスな空気が崩れる。」
浩介「ハーハッハッハッ!刺激的であろう!?気に入ってもらえて何よりだ!」
ハジメ「よーし、速攻で倒して黙らせてやる。折角高揚してきた気分がイラつきに変わる等、初めてだぞ。」
浩介「クハッ!我が初めてとは光栄だ!さぁ、踊ろうではないか、魔王よ!愛しき者の為に!
我が求愛のダンスは、貴殿の本気があって初めて完成するのだから!!』
ハジメ「……忍者、殺すべし。サーチアンドデストロイだ、クソボケぬらりひょんめ。」
そんな会話をしつつも、私は冷静に分身体を着実に殲滅しており、その速度は分身の出現スピードを軽く上回っていた。
ハジメ「どうした、貴様の本気はその程度か!」
浩介「否、これからが本番である!我が肉体よ、持ってくれ!ギア・Ⅳ……Ⅴ……Ⅵ……!!」
すると、分身の出現速度は上がり、徐々に出現スピードが殲滅速度と拮抗していく。
浩介「Ⅶ……Ⅷ……Ⅸ……!!」
ハジメ「そんな急に上げて良いのか?最悪、魂が消し飛ぶぞ。生きていたとしても廃人だろうに。」
浩介「貴殿の首を取るならその程度安物よ!ギア……X!!!」
そしてとうとう、私の攻撃速度を上回った浩介達が襲い掛かってきた。
無論、接近してくる分身達を片っ端から蹂躙していくが、直ぐに群がっては消し飛ばされ、群がっては消し飛ばされが延々と続いた。
まるでマトリックスのワンシーンの様だ。
ティオ「やっぱりおかしいとおもうんじゃが!?なんじゃ、あの魔法は!」
ユエ「……ん。私も知らない。あれ、本当に人類?」
トネリコ「私の知る限りでは第四魔法に近いのではないかと……というか、そうじゃないと説明が付きません。」
シア「あはは……ラナさん、もしかしてとんでもない人に好かれちゃったんじゃないですか?」
ラナ「凄い……ボスを相手にあそこまで……!」
ミュウ「みゅ、ラナお姉さんのお目目がハートになってるの!」
レミア「あらあら、これは完全に相思相愛ですね♪」
香織「それはいいんだけど……あれって「黒ごまよ。」雫ちゃん!?」
鈴「カオリン、シズシズの事はそっとしてあげよう?」
幸利「てか、遠藤の奴が使ってるのって……限界突破じゃね?」
恵里「それもギアⅩって……負担、相当やばいんじゃない?」
龍太郎「それ程までに本気って事か……ハジメもやべぇけど浩介もやべぇな。」
光輝「……なぁ、龍太郎。勇者って、なんなんだろうな……ああ、そっか。肩書きだけ強そうな奴、かな?
うん、それなら俺にお似合いだ。へへ……。」
おいそこぉ!折角立ち直ったのに闇堕ちしかけてんじゃないよ!
浩介「ッ!流石は魔王殿だ!時間経過によるスペック上昇すら追いつかんとは!」
ハジメ「その割には衰弱の副作用がなさそうだが?
……まさかとは思うが、時間をかけてやれば疲労無しで私に届くとは思っていまいな?」
浩介「然り!これぞ正に深淵の力である!!」
ハジメ「いや、深淵要素どこだよ。」
浩介「……うん、だよね。
"効果:凄絶なる戦いの最中、深淵卿は闇よりなお暗き底よりやってくる。さぁ、闇のベールよ、暗き亡者よ、深淵に力を!それは、夢幻にして無限の力……"
とかステプレに書かれても、訳分からないよね?」
ハジメ「急に素に戻るな。しかし……ふむ。」
そう呟くと私は一旦距離を取り、ある提案をした。
ハジメ「……浩介、ギアⅩまでどのくらいの時間がかかる?」
浩介「……よもやそれまで待ってやる、等と言うのではあるまいな?それは「今ここで、本気の貴様を叩き潰したい。」!」
ハジメ「故に、真っ向から全力で来い。全て蹴散らしてくれよう。」
そう言って腕を組むと、浩介は嬉しそうに笑って叫んだ。
浩介「ハハハハハ!!やはり貴殿は最高に魔王だな!今宵は素晴らしい深淵の闇になりそうだ!!」
その言葉と同時に、浩介の纏うオーラが更に鋭さを増し、分身体の数も増えていく。
無論、私もギアⅩになる瞬間を未来予知で見極め、そこを狙い撃つつもりだ。
……そうして、2時間が経った頃だろうか。いよいよ事態は動き出した。
浩介「我に本気を出させた事を後悔するがいい、魔王!!
ハジメ「漸くか……待っていたぞ、深淵卿ォ!!!」
その言葉と同時に、私と浩介は互いにぶつかり合った。
拳と小太刀が衝突し、すぐさま小太刀が砕け、浩介へと拳が深く突き刺さる。
浩介「グアァッ!?」ドゴォン!!!
ハジメ「……チェック「と思っていたのか?」!」
しかし、衝撃でふっ飛ばされそうになった浩介は私の腕にしがみついてきた。
そしてこれが狙いだったのか、周囲の景色が浩介(分身体)一色となり、私へと一斉に襲い掛かってきた。
浩介『衝魂!!!』
ハジメ「ッ!うおぉぉぉぉぉ!!!」
咄嗟に"限界突破・覇潰"を発動して周囲の分身体を焼き払いつつ、時間停止を発動させようと試みた。
しかし、後ほんの数瞬の所で魂へと衝撃が奔り、中断されてしまった。
浩介「ガハァッ!!」
だが、浩介も無事では済まなかった様で、全身から血を噴き出したまま近くの大木へと激突した。
既に何本か骨も折れ、内臓にも深刻なダメージが入っているだろう。
ラナ「こうくーーーーーーんっ!!」
『『『『『こうくん!?』』』』』
ラナの悲鳴と、既に愛称呼びになっていることにギョッとする観衆。
血飛沫にまみれながら地に落ちた浩介は、それでも血反吐で地面を塗らしつつも起き上がろうとする。
ハジメ「どうやらここまでの様だな……しかし、賞賛には値する。
この鎧を初めて解除させた者は、お前が最初で最後なのだから。」
そう言いながらも、ふらついた状態で私は歩みを進め、浩介へとドンナーを突き付ける。
ハジメ「最後に言い残すことはあるか?」
浩介「……。」
しかし浩介は黙ったまま、泣きそうな表情で一心に自分を見てくれているラナへと視線を向け――笑った。
浩介「ゲフッ……ハァッ……本望、だよ……!」
ハジメ「……そうか。」
そう言って引き金を――
浩介「うあぁぁぁ!!!」
ハジメ「……。」
弱弱しい拳で殴りかかる浩介、私はその拳を容易く避ける。そして――
グチャッ!!
『ッ!』
ラナ「そんな……。」
浩介「……。」
その拳は、確かに浩介の心臓をぶち抜いた。
ハジメ「……さらばだ、深淵卿。」
自身の身体を貫いた拳が引き抜かれ、浩介はその場に倒れこんだ。私はその姿に瞑目してもう一方の拳を掲げた。
それは正しく、残酷で悲しき勝利の宣言――
パァンッ!
ハジメ「ッ!?」
その寸前だった。大木についていた木の実が突如爆ぜ、中にあった棘が周囲に飛んだ。
予想外の攻撃に驚きつつも、どうにか避けた。しかし何故……そう思ってその樹々を改めて観察した。
そして漸く気づいた――この戦いの本当の結末を。
ハジメ「これは……波紋疾走、だと……!?」
そう、なんと浩介の奴は足先から大木に波紋を流し、木の実を活性化させたのだ。
先程魔力も込めずに私へと殴りかかってきたのは、それをカモフラージュする為のトリック。
正に、一世一代の大博打。その結果……私の頬には傷が出来ていた。
それも僅かではあるが、奇しくもその場所は、かつて旅の同行を認めてもらおうと奮戦したシアが、ユエにつけた傷と同じ場所だった。
ハジメ「最初からこれが狙いだった、という訳か……。」
倒れ伏しながらもどこか満足げな浩介。その雄姿に脱力しながら、私は彼に駆け寄った。
……魂魄の損傷が大分酷いな。ホント無茶しやがって!神代魔法は勿論、創世の力等も使って漸く蘇生出来たけどな!
浩介「……ぅ……ここ、は……。」
ハジメ「全く、お前には本当に驚かせられるな……浩介、お前の勝ちだ。」
苦笑い気味に俺はそう言って、朧気に言葉を零す浩介に肩を貸す。
そして、もう片方の手を掴んで掲げてやれば、その瞬間、ギャラリーから大歓声が上がった。
いつの間にかフェアベルゲンの人々も集まっていて、事情を聞いていただろう。大騒ぎしている。
光輝達は、ただただ『すげぇっ』と壊れた機械の様に繰り返し、ユエ達も『まさか本当にやり遂げるとは……!』と言いたげな様子で目をぱちくりしている。
そんな中、真っ先に駆けつけてきたのは、勿論ラナだった。
ラナ「こうくんっ!!」
浩介「エッ!?こうくん!?」
本当に精根尽き果てて動けない浩介に、ラナは覆い被さる様にして抱きついた。
おやおや、なんとも熱々なこって……。
浩介(え、これどういう状況!?あ、なんかすっげぇ良い匂いする……てか、柔らか……じゃなくて!
確か俺は、ハジメに心臓を貫かれて……あれ?じゃあ俺、負けた筈なのに何で皆嬉しそうなんだ?
なんでラナさんが抱きついて来ているんだ!?)
ありゃ、陶然として、今の状況が分かっていない様だな。
ハジメ「浩介、お前の勝ちだよ。ホレ、ここの傷。お前が最後の一矢でつけた傷だ。」
浩介「……へ?」
ハジメ「お前、波紋疾走を無意識の内に使ってたんだよ。それで木の実が弾けてこの傷が出来たんだ。」
浩介「じゃ、じゃあ俺は……。」
ラナ「……うん、勝ったよ。」
浩介「そっか……ん?んん!?」
漸く今がどんな状況かに気が付いたのか、浩介は次第に赤面した。
浩介「ラ、ラララ、ラナさん!?何を!?」///
ラナ「ハッ!?ち、違うのよ、今のは!えっと、ええっと……フッ、なかなかやるわね、アビスゲート。
まさか陛下に、本当に傷をつけるなんて凄すぎるわ!
それにすっごくかっこ良かったし――じゃなくて、その、あの――あだっ!?」ベシッ
バッと体を離し、真っ赤になりながらしどろもどろにしゃべりまくるラナ。
すると、集まってきたギャラリーの中からミナが歩み出て、その頭を叩く。
ラナ「な、何するのよ!」
ミナ「ちゃんと聞いてあげなさいよ。この後に及んで、照れて誤魔化すのはハウリアの女失格よ?」
ラナ「うっ……。」///
叱咤されて、ラナは真っ赤な顔のまま浩介に視線を戻した。
上目遣いで見つめてくる姿にキュンとなったのか、浩介は心臓を押さえて呼吸を必死に整えている。
誰もが固唾を呑んで見守る中、浩介はどうにか体を起こし、ラナの手を取った。
浩介「えっと、改めて言います。俺、ラナさんが好きです。
きっかけは、"隠形"していた俺ですら見つけてくれたことだけど……
それだけじゃなくて、今は、貴女の人柄も好きです。俺、いろいろ頑張るんでっ、付き合ってください!」///
真っ直ぐな言葉。その返事は、ラナの表情を見れば言葉にせずとも分かりきっていた。
ラナ「……………………はぃ。」///
小さな、けれどはっきりした声音で、ラナは浩介の想いに応えたのだった。そして再び起こる大歓声。
香織が再生魔法の光を浩介に降り注がせたので、まるで天から祝福でもされているかの様な光景が広がった。
それが余計に場を盛り上げ、フェアベルゲンの広場には暫くの間、幾つもの祝福の声が木霊し続けるのだった。
ハジメ「……お疲れ、浩介。」
浩介「ハジメ……。」
そうして、ラナがミナやシア達に揉みくちゃにされている間。俺達は広場の端で互いに健闘を称え合っていた。
ハジメ「結婚、おめでと。盛大に祝福するよ。」
浩介「……おう、ありがとな。……その、今の言葉だけじゃなくて、本気で戦ってくれて。」
ハジメ「そりゃ俺は王様で、お前の親友だからな。それに、お前の気持ちも分かるし、色々世話になったしな。」
そう言って拳を突き出し、合わせようと――したが何故か空ぶったので、浩介の方を見れば……
浩介「痛いよぉ、心が痛いよぉ~……。」
ハジメ「……。」
……何とも閉まらないヒーローの姿が、そこにあった。
そんな浩介を見て、仕方が無いなぁと肩を竦める俺であった。
過去一苦労したかもしれません……色んな意味で。
もし、ハジメさん以外の別キャラ視点でオリジナル番外長編(web 原作アフターを除く)を作るとしたら、誰を主人公にする?
-
ユエ
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シア
-
ティオ
-
レミア
-
ミュウ
-
香織
-
雫
-
トネリコ
-
リリアーナ
-
愛子
-
星野アイ
-
幸利
-
恵里
-
光輝
-
浩介
-
龍太郎&鈴
-
優花
-
両親サイド
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良いから本編プリーズ
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