Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する 作:オリエピのエミュ力皆無マン
追記:六課さん、誤字報告ありがとうございました!
チュドォオオオン!!!ドォッガァアアアン!!!ゴォガァバァアア!!
ハジメ「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」
蜂モドキの襲撃から2時間程経った頃、大迷宮の樹海は紅蓮の業火に染まっていた。
空間はひび割れと言う名の悲鳴を上げ、大地は重力に抗う様にめくり上がり、木々は次々に灰へと変わっては、灼熱すら生温いレベルの焔が樹海を食いつくす。
激震と轟音が絶えず続くその有様は、正に"世界の終末"。
轟音の狭間に聞こえる悲鳴は、樹海に生息する魔物達だろう。声音には恐怖以外何もない。
恐慌に陥ったかの様な絶叫が響き渡っている。
そんな状況を創り出した張本人であるハジメは、言葉にならない憤怒の咆哮をあげながら、辺り一帯を次々に火の海へと変えている。
シア「あ、あの、ハジメさん、もうそれ位で……。」
香織「そ、そうだよ、ハジメ君。きっとあの、あの魔物も、もう死んじゃってると思うし……。」
ハジメ「あ゛ぁ゛ッ!?」
シア「……いえ、何でもないです。」
香織「……うん、邪魔してごめんなさい。」
オロオロしながらもシアと香織が宥めようと試みるも、振り返ったハジメの圧に委縮し、2人とも即行で前言を撤回してすごすごと引き下がった。
鈴「うぅ……怖いよぉ。シズシズぅ、エリエリぃ、止めてよぉ~。」
雫「無茶言わないで、鈴。私だってまだ死にたくないわ。まぁ、彼が怒るのも無理はないと思うけど……。」
恵理「あの状態の兄さんは止められないよ……どうしてこんなことになったんだろうね……。」
遠い目をしながらそう言う恵里に、ガクブルしながら涙目で抱きつく鈴。
そんな2人に雫は溜息を吐きつつ、鈴の頭を撫でて宥める。そして、チラリと傍らに目をやれば……
光輝「……ま、前が見えない……。」
そこには、イケメンフェイスが陥没して顔面が梅干し状態になってしまった光輝がいた。
下手人は誰であろう、ハジメさんである。
さて、ここでなにがあったのかを説明しよう。
現在から数分ほど前に遡り、一行が蜂型の魔物と戦ってから30分ほど樹海を探索した頃。
ハジメ達は、猿モドキの魔物の群れに出くわした。
棍棒や、石のナイフ等、一応の武装をしていた猿モドキの群れは、その俊敏さと樹海と言う地の利を生かしたトリッキーな動きがウリだったのだが、シアと香織は勿論の事、光輝達も全員、ハジメによって死ぬ程鍛え上げられた猛者達なので、次々と倒されていった。
圧倒された猿モドキは、どうやらそれで危機感を覚えたらしい。
そこで彼等は最優先目標を一番強い者、つまりハジメに変更し、新たな手を打った。
彼等にとって不幸だったのは、中途半端に知恵が回った事だろう。猿モドキ達は、思いっきり選択を間違えた。
"擬態"――赤錆色スライムと同じ、それが猿モドキの固有魔法だったのだが、彼等も大迷宮からハジメ達の情報を受け取っていたらしい。
そう、あろうことか、彼等は選んでしまったのだ。最も脅威となるハジメにとって、触れてはいけない逆鱗を。
猿モドキは、奥の茂みから"傷だらけで、あられもない格好となったミュウ"に擬態した仲間を引きずって来たのだ。
赤錆色スライムと同じく、見た目は本物と寸分も違わない。
勿論、ハジメも偽物だと即座に理解した。そして同時に、憤怒の一色に染まった。
あろうことか年端もいかぬ愛娘に擬態するばかりか、ボロボロな状態にするとは何様のつもりだ?と。
例え紛い物であったとしても、ハジメはパパで仮面ライダー。怒らぬ要素など1つとしてなかった。
尚、シア達も激怒したのだが……流石にハジメの怒り様を見て肝が冷えた様である。
この時点でハジメパパは、取り敢えず光輝の顔面をギャグ漫画の如く陥没させ、視覚を奪った。
ハジメ以外の唯一の男子であったばかりにとばっちりを食らう光輝……なんとも不憫な勇者である。
そして、既に能面状態の大魔王様に、猿モドキ達はミュウモドキを殴りつけると同時に嘲笑を見せると言うダメ押しをした。
ミュウモドキ等、悲壮感たっぷりに「パパ、助けて……。」等と泣きながら言うものだから、さぁ大変。
その瞬間、誰もが思った。「あ、これあいつら終わったわ……。」と。後はこの始末☆。
終焉の刻来たれり、辺獄顕現である。
既に直径約500mの範囲が焼け野原、或いは鋭く尖った土柱だらけで、あちこちに人型の炭化した猿モドキの残骸は勿論の事、樹海の生きとし生ける魔物の全てが、自然と共に灰燼に帰しては、その残骸を地面に転がしている。
一応、範囲内にユエ達がいないことは確認済みなものの……暴走する様は魔王を通り越して破壊神である。
このままでは、大迷宮の全てを灰にしながら進撃しかねないハジメ。
勇者は未だ前が見えない状態。現状、頼りの綱は、ハジメの嫁達であるシアと香織しかいない。
雫「ほら!2人共、諦めないで!シアと香織以外に誰がハジメ君を止められるというの!」
シア「し、雫さん。でもですねぇ……。」
香織「うん……雫ちゃん……今はちょっと……。」
雫「でもじゃないわ!どうしてそこで諦めるの!諦めたら樹海の終わりよ!ほら、頑張れ!頑張れ!出来る、出来る!
恋する乙女は無敵でしょ!!」
何故かどっかのコーチ達を思わせるセリフでシアと香織を鼓舞する雫。
ぶっちゃけ、今のハジメに近寄りたくなかったので、どうにか2人に止めさせようと必死だ。
そんな雫の必死な様子に、シアと香織は顔を見合わせると、一拍。
決然とした表情で頷き合い、ドライバーの操作の隙を狙ってハジメに飛びかかった。
それぞれ左右の腕に思いっきり抱きつく。
シア「ハジメさん!もう、これ位にっ、これ位にしときましょう!」
香織「そうだよ、ハジメ君!ちょっと落ち着こう!?」
必死にぎゅうっと抱きつくシアと香織を一瞥するハジメ、そして意外にもあっさりと引き下がったのか、無言で変身を解除した。
ハジメ「……まぁ、辺りにユエ達の反応は無かったし、敵も全滅したみたいだからな。この位にしてやるよ。
……取り敢えずリューティリスの奴はホルマリン漬けにでもするけど。」
香織「ハジメ君!?」
冗談なのか本気なのか分からない言葉をボソッと口にしつつも、ハジメは肩を竦める。
落ち着きを取り戻したのか、何時もの冷静な様子を見て、シアと香織、そして雫達もホッと息を吐く。
ハジメ「すまんな、気を遣わせて。親として本気でキレてしまってつい、な。」
シア「いえ、あいつらのやり方は私も頭に来ましたし。仕方ありませんよ。」
香織「うん……ホント、最低だったね。……ある意味、流石、大迷宮って感じだよ。」
落ち着きを取り戻したハジメが苦笑いを見せると、2人は敵の悪辣な手段に嫌悪感を露わにしつつ頭を振った。
同じ女としても、ミュウ大好きお姉ちゃん達としても、やはり思うところがあったらしい。
殆ど荒野と化した樹海の一部を背景にハジメ達が話していると、雫が頬を引き攣らせながら歩み寄ってきた。
雫「ハジメ君。落ち着いたのなら、そろそろ光輝を何とかしてあげて欲しいのだけど……。」
ハジメ「あ……。」
その言葉に、ハジメが「忘れてた……。」と慌てて光輝の方を見れば、当の光輝は未だに前が見えずにいた。
何とも哀れを誘う姿である。申し訳なさそうにハジメは回復魔法で治療するのであった。
ハジメ「ごめん、光輝。一応、目潰しは避けたつもりなんだけど……。」
光輝「いや、気にするとこはそこじゃないだろ!他にやりようはあっただろ!?」
ハジメ「お前……もしあの偽物が香織や雫に擬態して出てきた状況を、師範代や智一さんにどう言い訳するつもりだ?
不可抗力だったので仕方がありませんでした、じゃすまねぇだろ。良くて埋没、最悪の場合抹消だろうな。」
光輝「そこまでするか普通!?それに、偽物の為にあそこまでする必要は無かっただろ!?」
ハジメ「……実は殲滅後に、記憶飛ばしも兼ねて数発位殴るつもりだったんだぞ?それに比べたらまだマシだろ。」
光輝「……うん、俺が悪いな、そうだろうな!だから本気で勘弁して下さい!」
ハジメ「いや、やらないって。流石にトラウマ再発は俺としても避けたかったし……。」
そんなやり取りをして光輝を説得し、再び探索を進めようと、俺は索敵を再開した。
ハジメ「……んん?」
と、その時、不意に俺の"気配感知"が真っ直ぐ接近してくる生物の気配を捉えた。
小走り位の速度で1体だけ向かってくる。気配の感じからして、それほど強敵というわけではなさそうだ。
シアも気が付いている様子でウサ耳を傾げ、2人で背後の樹海の奥を見つめた。
香織達も何かが来る事に気付いた様で、意識を切り替えて身構えた。
ガサガサ……
光輝「今度は何だ……何が来る?」
空気が張り詰めていく中、光輝が呟く。
そして、草木が分かれる音を立てて樹々の合間から現れたのは――所謂ゴブリンに酷似した生き物だった。
暗緑色の肌に醜く歪んだ顔、身長140㎝程の小柄な体格でぼろ布を肩から巻きつけている。
……ん?この魂魄の波長は……もしかして、まさか。
俺がある考えに至りかけていると、そのゴブリンは俺達の姿を見つけ、どこか弾んだ声で「グギャ!」と鳴いた。
が、直後、自分の声にハッとした様に動きを止めた。そして、その場に佇みジッとこちらを見る。
顔の造形のせいで、まるで殺意を滾らせ睨んでいる様にも見える。
光輝「何もさせない!」
実際、そんな風に見えたのか、光輝が飛び出そうとしていた。なので、
ハジメ「こっちのセリフじゃ馬鹿モン!」
光輝「〇サラギ!?」
咄嗟のその襟首を引っ掴み、緊急停止をかけた。
一方、今正にその命を刈られそうになっていたゴブリンはというと、動く事無くこちらを見ていた。
その様子に動揺も敵意も無い……やっぱり、そういうことか。
光輝「ハジメ、急に何を――」
ハジメ「……ユエ。」
光輝「へ?」
ハジメ「……こいつは魔物じゃない、ユエだ。」
『!?』
俺の指摘に、光輝達は驚愕し、シアだけは何かに気付いた様で「まさか……。」と呟き、ゴブリンは「グギャ!」と肯定するかの様な鳴き声を上げた。
そんな彼等を尻目に、俺は目元を和らげ、躊躇うことなくゴブリンの手を取ると、もう一度「ユエ……」と呟いた。
すると、ゴブリンもまた、どこか嬉しそうに「グギャ……。」と鳴く。
シア「えっと、ハジメさん。まさかと思いますが、ユエさんなんですか。その、私には魔物に見えるのですが……?」
香織「わ、私も魔物に見えるよ。本当にユエなの?」
ハジメ「あぁ、魂魄が一致している。それに、さっき光輝に攻撃されそうになっているのに、動揺も敵意も無かった。
となれば、さっきの転移の際にランダムで魂を抜き取られて、迷宮の魔物の肉体に宿らされた、ってとこだろう。
多分、ここと氷雪洞窟の魔法も含めた神代魔法の複合技だな。」
疑問の声を上げる2人に推測を述べると、
だが、やはりまともに喋れないことに悄然と肩を落とす。が、そこは問題ない。
ハジメ「ふむ……やっぱり転移した後にその姿になってたのか。」
ユエ?「!グギャ!……グゴゴ。」
ハジメ「肉体そのものが変質した、と……やっぱり氷雪洞窟の神代魔法か。」
ユエ?「グギャ……ギャギャ、グギ。」
ハジメ「その上、判別できる装備もない状態か……絆の試練としては中々にハードだな。
しかしどうやって……そうか、マーキングがあったな。」
ユエ?「ググッ……ゴガゴガ。」
ハジメ「え?破壊音響く場所にハジメあり?いや、そんな人を破壊神みたいに言わんでも……。」
ユエ?「……ギュウウ、ゴゴ。」
ハジメ「魔法や技能も使用不可か……でも、これ以上、変質するような感覚もない、と。」
ユエ?「ギギギ、ガギ。」
ハジメ「ま、大丈夫でしょ。この試練をさっさとクリアすれば、元に戻れるだろうし。
でなきゃ、試練の意味がないし、そこまで鬼畜過ぎる訳はない筈だ。」
ユエ?「……ギュウウ?」
ハジメ「あぁ、後はティオ、トシ、龍太郎、トネリコ……あ、後、浩介がいないんだ。
多分ユエと同じだと思う。何の魔物かまでは分かんないけど……何とかするから安心して。」
ユエ?「……グギャ!」
なんでわかるのかって?至って簡単、フィーリングですよ奥さん。
そりゃ何度も苦楽を共にしてきたんだ、この位簡単さ。
『……。』
ハジメ「?皆、どうしたの?……あぁ、そういえば"念話石"があったから、それを使えばいいんだったな。」
光輝「いやいやいやいや、待て待て待て待て!?」
雫「違う違う、ハジメ君。何か盛大におかしいから!?」
鈴「ちょっと待って、お願いだからちょっと待ってハジメン!?鈴、ついていけてないから!?」
?何故に総ツッコミ?シアと香織は苦笑いしているし、恵里はなんでか頭抱えているし……皆、疲れているのか?
雫「おかしいでしょ?何もかもおかしいわよね?どうして意思疎通が出来ているの?それもごく自然に!」
ハジメ「いや、何でも何も……ユエ、喋ってるでしょ?」
鈴「鈴にはグギャ!としか聞こえないよ!何語なの!?
何で理解できるの!?ハジメンの"言語理解"だけバージョンアップしてるの!?」
ハジメ「そんなもんフィーリングに決まってんだろ。後、シア達の場合でも即座にわかるぞ。」
恵里「兄さん、既に人間じゃなくなってたんだね……。」
なんて事を言うのでしょうかこの子は。お義兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはないぞ!
ハジメ「一先ず念話石を使ってみるぞ、それなら皆にも聞こえるだろうし。」
そう言ってユエ?に"念話石"付きのアクセサリーをつけてみる。……再生魔法や因果律操作使えばいいじゃんって?
変成魔法が無いし、そもそも入り口で必要な時点でそう簡単にはいかんだろ。
魔物に変質している以上、魔力の直接操作はできるだろうし、念話石なら意思疎通は可能だしな。
ユエ『……ハジメ?ハジメ、聞こえる?』
すると、まるで竜化したティオが話す時の様に、空間そのものに可憐な声が響く。
どうやら念話石は問題なく機能する様で、俺は安堵した。
そして、今まで目の前のゴブリンがユエだと言われても、どこか半信半疑だった光輝達も、ユエの声が聞こえた事で、漸く目の前の存在がユエの変わり果てた姿なのだと実感した様だ。
ユエ『……ハジメ?ハジメ、聞こえる?』
ハジメ「あぁ、聞こえるよ。ユエ、姿は変わっちゃったけど……無事で何よりだよ。」
ユエ『……んっ。ハジメなら気が付いてくれると思ってた。』
ハジメ「そりゃあ奥さん見抜けなきゃ旦那失格だろうし。何より、叔父殿に合わせる顔が無いだろ。」
ユエ『……ん。でも嬉しかった。大好き。』
ハジメ「……ありがと。」
ユエ『……ふふ。』
見た目変わっても色気出せるとかちょっと反則過ぎない?
……分かってるよ、端から見ればゴブリンと男が見つめ合う絵面に見えているんだろ。
香織「ユエ……そんな姿になっても無事で良かったよ。」
ユエ『ん……香織も。』
シア「ユエさん。絶対、ぜぇ~たい!元に戻して見せますからね!それまでは、いっぱい頼っちゃって下さい!」
ユエ『……ん。シア、ありがとう。今は戦力になれないから頼りにしてる。』
ゴブッと微笑む(?)ユエ。中身がユエだと分かると、何となく愛嬌を感じるから不思議なものだ。
すると、光輝がバツの悪そうな表情で口を開いた。
光輝「ユエさん。その、さっきは済まなかった。君だと気が付かなくて……危うく傷つけるところだった。」
ユエ『……ん。仕方ない。それに信じてたから傷つくとは思わなかった。』
光輝「えっ、それって……?」
ユエ『……必ずハジメが守ってくれるって。』
光輝「……そうですよね。」
光輝はすごすごと引き下がり、「知ってたよ、俺信用無いもんね。」と乾いた笑い声を上げた。
雫は「何故、一瞬でも勘違いしそうになるのだ」と、呆れた様な目を向けている。
ハジメ「先ずはユエを発見、と……よし、それじゃあ他の奴等も探しに行こうか。
きっとおんなじ状況だろうし、攻略を急いだ方が良さそうだからね。」
同じ魔物だから襲われない、なんて可能性もあるが、弱体化している以上危険な状況である事には変わりない。
少し緩んでいた空気が緊張を取り戻したのを確認した俺達は、急ぎ探索を再開した。
ハジメ「……あれ、ティオじゃね?」
ユエ『……ん、どう見てもお姫様扱い。』
シア「見てくださいよ、ゴブリン達が座椅子のようになっていますよ。」
香織「どっちかというと……お神輿かな?」
ユエと合流してから更に10分後、今度は1匹のゴブリンを神輿の様に担いで向かってきたゴブリンの集団がやって来た。
ゴブリン?「グ?ギャギャ!」
あ、担ぎ上げられていたゴブリンがこっちに気づいた。
ゴブリン?「グギャギャギャ!!」
そのゴブリン?は自分を担いでいたゴブリンを踏み台に、こちらへジャンプしてきた。
いや、せめてゆっくり降りなよ。と、内心ツッコみつつも、俺はそのゴブリンに念話石付ネックレスをかけた。
ティオ『む、念話石じゃな。……どうじゃ、ご主人様よ、聞こえるかの?』
ハジメ「……色々言いたい事はあるけど、無事で何よりだよ。」
ティオ『うむ、たとえどんな姿に変り果てようとも、妾は妾じゃ。
この程度の屈辱で折れるほど、龍人族は軟ではない。』
ハジメ「それは頼もしくて何よりだ、では先を急ごう。まだ他の奴等が残っているしな。」
ティオと会話しつつ、周りにいたゴブリン共を駆逐した俺達は、三度探索を再開した。
ハジメ「ト、トネリコ……。」
シア「よりにもよってトネリコさんが……。」
香織「自分の一番苦手な魔物に……。」
ユエ『……不憫すぎる。』
ティオ『流石に同情を禁じ得ないのじゃ……。』
そして更に5分後、俺達は目の前の光景にかける言葉が見当たらなかった。
ワーム?「フシュ……フシュル……。」
……自分の姿に絶望している体長3mの芋虫型の魔物がいたからだ。光輝達も余りの光景に唖然としている。
誰にだってわかる、あれはトネリコだ。彼女は虫全般、特に芋虫系統が苦手だったし。
そんな彼女がまさかの芋虫になるって……どんな罰ゲームだよ。
ハジメ「……取り敢えず、念話石をつけてあげよう。」
一先ず、会話が成り立たない事には話が進まない。というわけで念話石を……少し長めの紐で括りつけた。
前に補給の際に長めの紐を買っておいて良かった。
トネリコ?『……ハジメさん。』
ハジメ「あぁ、聞こえるよ。」
トネリコ『……いっその事、殺してください……。』
ハジメ「……先に進めばきっと元に戻れるから、それまで辛抱してくれ。」
トネリコ『………………はい。』
ホントに不憫すぎる……そう思いながら、俺達は先を急ぐのであった。
恵里「……ねぇ、兄さん。あのクワガタ、私達を呼んでない?」
ハジメ「奇遇だな、俺もそう思う。そして嫌な予感しかしない。」
そしてまたもや魔物に遭遇、それも何やら焦った様子のクワガタだ。なんか「ついてこい」って言ってる様だが……。
仕方がないのでついて行ってみると……
オーガ?『ぐらぁああ!』
ハジメ「……。」
……オーガの様な魔物達が殴り合っていた。
しかもその内の1体がやたらと洗練された武道の動き――空手をしており、逃げればいいのにガチンコで殴り合いに応じている。
なので全員確信した、この脳筋オーガは龍太郎だと。そしてつまり、アイツの元に俺達を導いたクワガタは……。
幸利『お、念話石か。助かったぜ。』
恵里「トシ君……。」
ハジメ「お前も大変だったんだな……。」
やっぱりトシであった。
その後、他のオーガ共を蹴散らし、ボロボロの
正座で項垂れ、女の子にガミガミ説教されるその姿は、鈴がお腹を抱えて笑い転げる位、シュールだった。
……うん、不謹慎だけど自業自得だししゃーない。兎にも角にも、これで全員合流だな。*1
鞭の様にしなり不規則な軌道を描いて襲い来る巨大な枝。刃物の様に舞い散り飛び交う葉。
砲弾の様に撃ち込まれる木の実。突如、地面から鋭い切先を向けて飛び出してくる槍の様な根。
一つ一つが致死の攻撃。それは、かつて俺が【オルクス大迷宮】のある階層で戦ったトレント擬きに酷似していた。
尤も、俺が相対した個体に比べれば大きさは当然段違いで、目の前で大暴れしているそれは直径10m高さ30mはありそうな巨木だ。
そんな巨大トレントと相対しているのは、光輝達大迷宮ビギナーズである。
内1名が魔物化しているが……まぁ、大丈夫だろう。
オーガ『うらぁああ!』
その魔物化中である龍太郎はと言うと、実際のオーガと変わらない雄叫びを上げながら、岩のような拳を振るい襲い来る枝を迎撃している。
合流完了後に周囲探索を行い、この巨木が鎮座している場所に辿り着いたのだが……到着直後、巨木が暴れ始めた。
場所的に、そして強さ的に、この階層の主であろう。つまり、この巨木を踏み越えなければ、先には進めないという訳だ。
出来ればちゃっちゃと全員で倒したいのだが……俺が蹴散らし過ぎたし、ここは光輝達に譲る事にした。
一応、香織も補助要員として参戦しているので、万が一という事は無いだろう。
光輝「ぐッ!攻撃が重い!」
丸太の様な太さの枝が風を切り裂きながら迫る。
光輝は聖剣でその一撃を受け止めるが、攻撃のあまりの重さに、食いしばった歯の隙間から呻き声が漏れていた。
雫は手裏剣の様に飛んでくる葉の刃を捌くので手一杯、鈴も強力な障壁を張って攻撃を凌ぎつつ隙を作ろうとしているが上手くいかず、恵里はその援護にかかりっきりだ。
雫「くっ、ダメね。香織がいるから継戦能力は心配ないけれど……。」
黒刀の能力の1つ――"爪閃"*2をフル活用し、次々と枝葉を切り裂きながらも、雫は押しきれないことに歯噛みしていた。
迷宮に入る前に特訓は行っているので、少しはマシなのだが……やはりもう少し慣れるまでには時間が必要か。
それに俺達も初見の大迷宮なのもあって、神代魔法を持っていない組の苦戦はデカい。
……仕方がない、俺達も手伝いに回るか。
ハジメ「シア、少し離れる。一応バリアは張っておくが、敵が来たら教えてくれ。」
シア「はいです!」
そう言って俺はカプセムの能力でバリアを張り、光輝達の元へと向かうと、火炎剣烈火とフレイムセイバーの二刀流で枝葉を次々に焼き斬った。
ハジメ「光輝、雫、こいつで武器に炎を!」
そう言って俺は鬼火を吐き、2人の武器に炎を纏わせた。
光輝「!これならいける……雫!」
雫「えぇ!」
よし、一先ずこれでいいか。
さて……目の前のトレント擬きは1体だけだが、強さは光輝達が戦ってきた魔物達よりも上だろう。光輝達はどう出る?
光輝「皆、"神威"を使うから時間稼ぎを頼む!」
雫「!分かったわ!龍太郎、鈴、恵里!固まって!」
鈴「了解だよ!」
恵里「うん!」
龍太郎『応よ!』
ふむ……"神威"を使う様だな。確かにあれなら一気に掃討は出来るしな。
すると、光輝がその場で聖剣を頭上に掲げたまま微動だにしなくなった。
既に魔力操作は習得済みだが、"神威"程の大技にはまだチャージが必要の様だ。
とはいえ、以前よりも格段に必要時間は短いだろう。全集中で1分以内と言ったところか?
しかし、その隙をトレントモドキが逃す筈もなく、左右から木の枝が、頭上から竜巻のように迫る葉の刃が、正面から木の実の砲弾が襲い来る。
鈴「"聖絶"!」
それを見越していた鈴が輝く障壁を張った。
今まで何度も光輝達の窮地を救ってきた十八番の障壁は、多大な衝撃に亀裂を入れられながらも初撃の集中砲火を見事に凌ぎ切った。
鈴「っぅうううっ!」
恵里「鈴!"城炎"!」
連続して放たれる巨大トレントの攻撃に"聖絶"の亀裂が大きくなり、やがて耐え切れず粉砕される。
鈴の呻き声が響く中、急迫する攻撃を恵里が魔法で焼き払い、その撃ち漏らしを雫と龍太郎オーガが、刃と拳で捌ききる。
雫「はぁああああっ!」
龍太郎『おぉおおおおっ!!』
悲鳴とも雄叫びともつかない声を上げながら持てる技の全てで迎撃する2人。
しかし、それでも怒涛の攻撃に無傷とはいかず、捌ききれなかった攻撃によって、一瞬にして傷だらけになり、体中から血飛沫が宙に舞った。
香織「――"回天"!」
が、戦場に響くその一言で、雫達の傷は一瞬で癒えた。勿論、香織の回復魔法だ。
"回天"は複数人用の中級回復魔法だが、香織の腕にかかれば軽く上級以上の効果で回復可能だ。
殆ど時間の巻き戻しかと思う速度で傷が癒えていく。
同時に、光輝の方もチャージが完了した様だ。
光輝から膨大な魔力が迸り、掲げる聖剣に収束すると、太陽の様に燦然と輝く聖剣をグッと握り直した光輝は、大きく息を吸う。
そして、
光輝「皆、行くぞ!――"神威・炎帝ッ"!!」
自身の切り札たる最大の魔法を、光輝は解き放った。光と炎の奔流が射線上の地面を削り飛ばしながら爆進する。
葉の刃を吹き飛ばし、木の枝を消滅させ、木の実の砲撃を真正面から呑み込み――轟音と共に光が爆ぜ、周囲を白に染め上げる。
光輝「やったか!」
ハジメ「それ言っちゃダメ!」
白く染まった視界の中で、言ってはならないセリフを言ってしまった光輝にツッコむも時すでに遅し。
そのフラグはきっちり回収され、光が収まり粉塵が晴れた先には……
あちこち欠損しつつも、堂々と立ち塞がる巨大トレントの姿があった。
光輝「うそ、だろ……!?」
その光景に呆然とした光輝の声が虚しく虚空に響く。呆けているのは光輝だけではなかった。
雫達もまた、光輝の切り札が通じなかったことに激しく動揺していた。
しかし、そんな事情もお構いなしに、巨大トレントは、戦意すら喪失せず、寧ろ傷を負わされたことに怒りを抱いた様で、より一層殺意を滾らせると再び怒涛の攻撃を繰り出してきた。
その旗、立てるべからず
P.S.最近、モチベが上がらなくてピンチです……
一応、来年の3月末まではどうにか投稿してあるので、それまでは安心してください。
もし、ハジメさん以外の別キャラ視点でオリジナル番外長編(web 原作アフターを除く)を作るとしたら、誰を主人公にする?
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ユエ
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シア
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ティオ
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レミア
-
ミュウ
-
香織
-
雫
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トネリコ
-
リリアーナ
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愛子
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星野アイ
-
幸利
-
恵里
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光輝
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浩介
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龍太郎&鈴
-
優花
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両親サイド
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良いから本編プリーズ
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その他(活動報告でリクエスト)