Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
決意を胸に進む香織と雫。そんな二人が、ハジメの部屋で見つけたものとは!?
追記:白河上皇さん、誤字報告ありがとうございます。
時間は、ハジメ達の出立の日から少し進む。
光輝達勇者一行は、再び【オルクス大迷宮】にやって来ていた。
但し、訪れているのは光輝達勇者パーティと小悪党組、それに永山重吾という大柄な柔道部の男子生徒が率いる男女5人のパーティだけだった。
理由は簡単だ。
話題には出さなくとも、ハジメの死が多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまったのである。
"戦いの果ての死"というものを強く実感させられてしまい、真面に戦闘などできなくなったのだ。
一種のトラウマという奴である。
ハジメが危惧した通り、現実における命の奪い合いの意味を、嫌でも思い知らされることになったのだ。
戦争の悲惨さや死と隣り合わせの世界を実感させられてしまった。
当然、聖教教会関係者はいい顔をしなかった。
実戦を繰り返し、時がたてばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。
時には、帰れなくなると脅したり、甘言による説得をしたりと、手段はさまざまであった。
しかし、それに猛然と抗議した者がいた。愛子先生だ。
愛子は当時、遠征には参加していなかった。
作農師という特殊かつ激レアな天職のため、実戦訓練よりも教会側としては農地開拓の方に力を入れてほしかったのである。
愛子がいれば、食糧問題は解決してしまう可能性が限りなく高いからだ。
そんな愛子はハジメの訃報を知るとショックのあまり寝込んでしまった。
自分が安全圏でのんびりしている間に、生徒が死んでしまったこと、その犯人が同じ生徒の一人だったという事実に、全員を日本に連れて帰ることが出来なくなったということに、責任感の強い愛子はショックを受けたのだ。
そんな愛子を香織と雫が支え、「せめて戦えなくなったクラスメイトだけでも守ってあげてほしい」というハジメの願いを伝えた。
その言葉で目が覚めた彼女は、生徒達のために立ち上がったのだ。
自分が死ぬと分かっていても戦場に赴き、誰よりも仲間のことを思っていた生徒が、自分に願いを託してくれた。
だからこそ、戦えないという生徒をこれ以上戦場に送り出す事など断じて許せなかった。
愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである。
その愛子先生が土壌変化を起こし、不退転の意思で生徒達への戦闘訓練の強制に抗議しているのだ。
関係の悪化を避けたい教会側は、愛子の抗議を受け入れた。
結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティと小悪党組、永山重吾のパーティーのみが訓練を継続する事になった。
そんな彼等は、再び訓練を兼ねて【オルクス大迷宮】に挑む事になったのだ。今回もメルドと数人の騎士団員が付き添っている。
今日で迷宮攻略6日目。
現在の階層は60層だ。確認されている最高到達階数まであと5層である。
しかし、光輝達は現在立ち往生していた。
正確には先へ行けないのではなく、何時かの悪夢を思い出して思わず立ち止まってしまったのだ。
そう、彼らの目の前にはいつかの物とは異なるが、同じような断崖絶壁が広がっていたのである。
次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。
それ自体は問題ないが、やはり思い出してしまうのだろう。
が、それでも歩みを止めない者もいた。それは、香織と雫だけだった。
香織「……待っていてね、ハジメ君。」
雫「……行きましょう、香織。」
二人は決意を新たに、崖下の暗闇を物ともせずに進む。その理由は、ホルアドへの再出発前夜まで遡る……。
香織「いよいよ、だね……。」
雫「えぇ、明日からが本当の戦いよ。気を引き締めましょう。」
大迷宮攻略の為、王宮で準備を完了した二人は、明日に備えて寝る前に、ハジメの部屋を訪れようとしていた。
勿論、周りに誰もいないことを確認しつつ、道のりには時々フェイクも混ぜて。
そうしてハジメの部屋の前にたどり着き、そのドアを開けて目に入ったのは――
香織「!ベッドの上に何かある!」
雫「これは……刀、かしら?それと、手紙?」
天蓋付きベッドの上に、一振りの刀と手紙が添えられていた。
雫「!これ、凄いわね……刀身もとても綺麗。」
その刀を手に取った雫が、鞘からゆっくり抜刀すると、まるで光を吸収するような漆黒の刀身が現れた。
刃紋と共に確りとした反りが入っており、完全に片刃として造られた日本刀だ。
香織「!雫ちゃん、これ!」
すると今度は、手紙の差出人を見た香織が封筒を差し出した。
そこに書かれていた名は、現在行方不明兼死亡扱いのクラスメイトにして、元は道場での知り合いで親友の想い人
――南雲ハジメ。
その内容は、以下の通りだった。
『経緯については、引き続きゴチゾウ通信で連絡する。ただ、出来れば、そちらの現状についても知りたい。
以後、例の引き出しは通信用として互いにゴチゾウを送り合う形で行きたい。
後、例の引き出しには、追加の贈り物も入っている。きっと役に立ってくれるだろう。幸運を祈る。ハジメ』
雫「例の引き出し……これね。」
香織「通信ってことは……やっぱりまだ生きているんだね!よかった……。」
ハジメの無事に安堵しつつも、二人は以前ハジメの残した袋が入っていた引き出しを開ける。
するとその中には、指輪が2つと腕輪が一つ、そしてスナックのゴチゾウ、"ザクザクチップスゴチゾウ"があった。
香織「グミちゃん、ハジメ君によろしくね!」
ゴチゾウ「~~~♪」
ホッピングミゴチゾウを引き出しに戻すと、前回同様必要なものを纏め、自分たちの部屋に戻った。
そして再び周りに誰もいないことを確認し、映像を再生させた。
ハジメ『……え~、テステス。聞こえているかな?』
香織「ハジメ君だ!良かった、本当に生きててくれたんだ……!」
雫「よかったわね、香織……。」
映像に出てきたハジメを見て、その無事を確認した香織は思わず涙ぐみ、雫の胸に顔を埋めた。
そんな香織を慰めつつ、頭を撫でる雫。そんな二人をよそに、映像は続く。
ハジメ『これを見ていると言うことは、私の言っていた通り、部屋を開けてくれたということなのだろう。
おかげでこうして、ガヴフォンによるメッセージのやり取りが可能なのだから、そうだと信じている。
さて、今の私の現状についてだが……簡潔に言うと、私が落ちた場所は大迷宮の更に奥深くだ。』
香織「……え?」
雫「大迷宮の……更に奥?」
その言葉に困惑する二人、映像のハジメは更に続ける。
ハジメ『そして現在、私は大迷宮の踏破に成功し、こうして君たちにメッセージを伝えている。』
雫「踏破したの!?」
香織「凄い……流石ハジメ君!」
その事実に、雫は驚愕し、香織はハジメの凄さに目を輝かせている。
ハジメ『大迷宮の最奥では、踏破した者に神代の魔法を伝授してくれる場所があるらしい。
それらは全部で7つある。もしこれら全てを揃えることが出来れば……
元の世界への帰還も可能になるかもしれない。』
香織「!元の世界に……。」
雫「神代の魔法……。」
その言葉は、クラスメイト達にとっても重要な情報だった。それを皆が聞けば、希望を見出せるかもしれない。
今すぐ伝えに行った方がよいのではないか、と思われたが、ハジメの話は続いていた。
ハジメ『とはいえ、私自身も迷宮踏破にはとても苦労した。
何せ、私のいた場所――それも奈落の第1層目で周辺の魔物がベヒモスクラスの強さだ。
もし、君たちがこの奈落に挑むというのであれば、くれぐれも気を付けてほしい。
魔物には勿論だが、周辺の土壌についてもだ。私の通った場所でも、火気厳禁のエリアがあったからね。』
香織「ベヒモス以上……!?」
雫「周辺の環境への対応も重視されるのね……確かに、油断はできないわね。」
想像以上の迷宮の手強さに驚く二人、そしてハジメは更に危険性について挙げる。
ハジメ『それに、魔人族ももしかしたら大迷宮にやってくるかもしれない。だからと言って焦ってはいけない。
魔人族と遭遇してしまった場合、決して戦わず命を優先してほしい。
本来であれば、皆にも私の生存を伝えてほしいが……諸々の事情でそういうわけにもいかなくてな。
特に、教会に知られれば余計に面倒なことになる。何としても隠し通してほしい。』
雫「……そういうことね。」
香織「?雫ちゃん?」
雫はハジメの言いたいことが分かっていた。
もしこれをイシュタル達が知れば、元の世界への帰還よりも戦争の勝利を優先させようと、他のクラスメイト達を人質にする可能性が高い。
それを知ったハジメは、敢えて自分から教会の監視を離れたのだ。それを確信した雫は香織にもそれを伝える。
香織は困惑しつつも、ハジメの帰還を信じ、この情報を胸の内に秘めておくことにしたのだった。
しかし、そんな二人に更なる衝撃の事実が、ハジメの口からもたらされた。
ハジメ『あぁ、それともう一つだけ。これだけは今すぐ、伝えておかねばいけないことがあった。
私を落とした犯人――檜山には気をつけてくれ。』
香織「……檜山、君が?」
雫「!香織……。」
自分のクラスメイトがハジメを落とした、その事実に香織は衝撃を受ける。
ハジメ『奴の狙いは香織、君だ。君と仲の良い私を妬み、奴は私を憎らしく思っていた。
だからあの時、何度も火球を放っては私を妨害していた、というわけだ。』
香織「そんな……私のせいで……。」
雫「香織!」
悔しさのあまり拳を握り締める香織。その眼には後悔と怒りが滲み出ていた。
ハジメ『光輝が狙われなかった理由は……言わずとも分かるか。いずれにしろ、君のことが心配だ。
後ろから奴に狙われないよう、十分に警戒してほしい。雫も頼む、香織のことを守ってあげてくれ。』
香織「!……ハジメ君……。」
しかし、ハジメの香織に対する気持ちを聞き、負の感情も和らいでいった。
雫もその様子を見てホッとしつつ、ハジメからの頼みを聞き入れ、静かに頷いた。
ハジメ『それと、香織。これは余計なお世話かもしれないが……
もし君が自分のせいでと思いつめているなら、伝えておこう。あの結果に、君が原因になることは何一つない。
ただ奴が勝手に暴走し、勝手に嫉妬し、勝手に私を狙った。ただそれだけのことさ。
だからどうか、また会える時まで笑顔でいてほしい。君には、笑顔がとても似合う。
自分を責めたり、他人を憎んだりする姿は、君には似合わない。』
香織「!もう、それはずるいよ……。」///
雫「ふふふっ、よかったわね、香織。」
香織「!もう、雫ちゃん!子供扱いしないでってば!」///
更にトドメとばかりに、ハジメからの褒め殺しで顔を真っ赤にする香織。
そんな照れてる香織の頭を、雫は暖かい視線を向けて撫でた。
香織はそれに抗議するが、更に赤くなった顔のせいで説得力がない。
ハジメ『さて、暗い話は終わりにしよう。
君たちに送った指輪と腕輪、そして刀についての説明がまだだったね。
それらは、私が手に入れた神代魔法を使って創造した、所謂アーティファクトだ。』
香織・雫「「……アーティファクトォ!?」」
自分達への贈り物がまさかのアーティファクトだということに、驚く二人。
ハジメ『とはいっても、付けられる効果は現状一つしかない。だが、効果は保証する。
先ず指輪についてだが……簡単に言うと、指輪の裏にある魔方陣に魔力を流せば、魔力の直接操作が出来る。』
香織「ま、魔力の直接操作って……!」
雫「詠唱なしで、戦える……まさか、よね?」
更に驚愕の事実に衝撃を受けつつも、雫は嫌な予感を拭いきれなかった。
もしかして、ハジメはそれが使えるのかもしれない、という予測が頭を過っていた。
ハジメ『最初は、魔物肉を浄化しつつ、その浄化度合いを少しずつ少なくして毒耐性を身に着けようと思っていた。
だが、それを続けていくうちに"毒耐性"と"魔力操作"という技能が身に着いた。
おかげで、詠唱無しでも技能や魔法が使えるようになっている。』
雫「や、やっぱり……。」
香織「……そういえば、魔物のお肉があったよね。」
雫「香織!?絶対に止めなさい!?」
まさかのとんでもない方法に頭を抱えつつ、その危険な方法に手を出そうとする親友を、何とか食い止める雫。
ハジメ『その指輪にも、"魔力操作"を付与している。
発動のワードは、"奔れ"の一言だ。
そうすれば、詠唱無しで魔力を指輪から武器に流れるので、後は魔法名や技能名を叫べば、詠唱を省略してそれを発動できる、という寸法さ。』
香織「奔れ?ってどういうことだろう?」
雫「魔力を走らせるから、ということかしら?」
パスワードを疑問に思いつつも、指輪は思う存分使わせてもらおうと、二人は思ったのであった。
ハジメ『次に、腕輪について。これは、香織用に創ったものだ。
出来れば護身用にダガーか何かを用意してあげたかったが……怪しまれる可能性を考慮して腕輪にしたよ。
この腕輪についている技能は"浄化作用"、文字通り毒や石化などを浄化できる技能だ。
本来なら高速魔力回復も上がったが……努力家の香織なら、きっとすぐに身に着けられると思ってね。
これがあれば、回復の幅が広がるだろう。存分に使ってくれ。』
香織「ハジメ君……!ハッ!じゃあこれを使えば、さっき言ってた浄化も……!」
雫「それだけは絶対に止めなさい。せめて状態異常の回復に使ってちょうだい。」
ハジメの心遣いを嬉しく思いつつも、やっぱり危険な方法をやろうとすれば、即座に親友に止められる香織であった。
ハジメ『そして、刀については……言わずとも分かるか。この刀の銘は"水鏡-
雫用に打った、私にとって最初の刀ともいえる。柄には、刀に風の刃を纏わせる技能の術式が付与されている。
発動ワードは、先程の魔力操作の詠唱に続いて"風爪"と言えばいい。雫なら、この機能をより活かせるだろう。
因みに、鞘には自動修復機能が付与されているから、常に最新の状態で敵を切ることが出来る仕様だ。
素人でも鋼鉄をバターのように切り落とせる程の切れ味だ。雫なら、これでベヒモスの角だって切れるさ。』
雫「私用に、か……。」///
香織「フフッ、雫ちゃん、嬉しそうだね?」
雫「!?か、刀の方が好きだからよ!」///
今度は雫の顔が真っ赤になる番であった。こっちは香織以上に分かりやすい動揺であった。
勿論、答えはどちらも嬉しく思ったのである。尚、切れ味や技能に関しては頭の中から抜け落ちている模様。
ハジメ『そろそろか、あまり長すぎると他の奴等に気づかれる可能性も高いからな。
他の理由については今度の通信で述べようと思う。それまでどうか、無事でいてくれ。では、またな。』
そう締めくくられ、ハジメのメッセージは終了した。
雫「はぁ……なんて言うか、色々と衝撃的だったわね。」
香織「うん……でも、ハジメ君のくれたアーティファクトがあれば、きっと大丈夫だよ!」
雫「……えぇ、そうよね。必ずあの魔物を倒しましょう。」
余りの情報量の多さと感情の揺れ幅で疲れつつも、二人は決意を新たに迷宮攻略に備えて就寝するのであった。
と、言うのが、彼女達だけの経緯である。
勿論、他のものはそんなことはつゆ知らず、知っていてもそんな空気は読まないのが光輝の勇者クオリティ。
光輝の目には、歩みを止めない香織の姿がハジメの仇を必ず取ろうと決意する様に映った。
クラスメイトの死に悲しみつつも、理に元気に振舞って皆を勇気づけているのだと結論づけた。
故に思い込みというフィルターがかかり、微笑む香織の姿も無理している様にしか見えない。
そして香織がハジメを特別に想っていて、その生存を知っている等と露程にも思っていない光輝は、度々香織にズレた慰めの言葉をかけてしまうのだ。
光輝「香織……君の優しいところ俺は好きだ。
でも、クラスメイトの死に何時までも囚われていちゃいけない!前へ進むんだ。
きっと、ハジメもそれを望んでる。」
雫「ちょっと、光輝……!」
光輝「雫は黙っていてくれ!例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。
……香織、大丈夫だ。俺が傍にいる、俺は死んだりしない、もう誰も死なせはしない。
香織を悲しませたりしないと約束するよ。」
雫「はぁ~、何時もの暴走ね……香織……。」
香織「あはは、大丈夫だよ、雫ちゃん。……えっと、光輝くんも言いたい事は分かったから大丈夫だよ。」
光輝「そうか、わかってくれたか!」
香織(なんて言うか……光輝君、ぐいぐい来るよね。)
雫(全くよね……幼馴染の話くらい、少しは聞きなさいよ。)
光輝の見当違い全開の言葉に、香織と雫は顔を合わせて、内心苦笑いするしかなかった。
恐らく、今の香織の気持ちを素直に話しても、光輝には伝わらないだろう。
光輝の中でハジメは既に死んだ事になっている。
故に、香織の訓練への熱意や迷宮攻略の目的がハジメとの再会とは知りもしない。
自分の信じた事を疑わず貫き通す性分は、そんな香織の気持ちも辛い言持ちを押し殺していると解釈するだろう。
長い付き合い故に光輝の思考パターンを何となく分かってしまう香織は、だからこそ何も言わず合わせるのだった。
因みに、完全に口説いている様にしか思えないセリフだが、本人は至って真面目に下心なく語っている。
光輝の言動に慣れてしまっている雫と香織は普通にスルーしているが、他の女子生徒なら甘いマスクや雰囲気と相まって一発で落ちているだろう。
普通、イケメンで性格もよく文武両道とくれば、その幼馴染の女の子は惚れていそうなものだが、雫は小さい頃から実家の道場で大人の門下生と接していた事、厳格な父親の影響、そして天性の洞察力で光輝の欠点とも言うべき正義感に気がついていた事から、それに振り回される事も多く幼馴染として以上の感情は抱いていなかった。
ハジメもそのことを懸念しており、光輝のいないところで互いによく愚痴ってはいたものだった。
何度かはハジメが割って入って、その暴走を修正しようと奔走してくれた時もあり、光輝のことは他の人よりは大切であるものの、ハジメと光輝のどちらかと問われれば、迷いながらもハジメを選んでしまうかもしれないと、内心では思っている。
香織は生来の恋愛鈍感スキルと雫から色々聞かされているので、光輝の言動にときめく事ができない。
いい人だと思っているし、幼馴染として大切にも思っているが恋愛感情には結びつかなかった。
そんな彼女にとっては、誰かのために東奔西走し続けるハジメの背中の方が、魅力的に見えたのだから。
恵里「大丈夫、私も手伝うから!頑張ろう、香織ちゃん!雫ちゃん!」
鈴「そうだよ~、鈴は何時でもカオリンの味方だからね!」
光輝との会話を傍で聞いていて、会話に参加したのは恵里と鈴だ。
二人共、ハジメとの縁で知り合っており、光輝率いる勇者パーティーにも加わっている実力者だ。
そんな二人も、ハジメに対する香織の気持ちは知っており、香織の目的にも賛同してくれている。
香織「うん、恵里ちゃん、鈴ちゃん、ありがとう!」
鈴「うぅ~、カオリンは健気だねぇ~、ハジメンめ!鈴のカオリンをこんなに悲しませて!
生きてなかったら鈴が殺っちゃうんだからね!」
恵里「いや、生きてなかったら殺せないからね!?」
鈴「細かい事はいいの!」
鈴が暴走し恵里が諌める。それがデフォだ。
いつも通りの光景を見せる姦しい二人に、楽しげな表情を見せる香織と雫。
因みに、光輝達は少し離れているので聞こえていない。
肝心な話やセリフに限って聞こえなくなる難聴スキルは、当然の如く光輝にも備わっている。
香織「大丈夫だよ、恵里ちゃん。ハジメ君はきっと生きているから。」
恵里「!香織ちゃん……。」
雫「鈴もそれくらいにしなさい。恵里が困ってるわよ?」
鈴「むぅ~……。」
雫の苦笑い混じりの言葉に、頬を膨らませる鈴。
恵里は、香織が鈴の言葉を本気で気にしていない様子にホッとしながら、義兄であるハジメの心配をしていた。
鈴「それにしても、エリリン。降霊術、使いこなすの早くない?さっきも魔物を盾にしたりしてたし……。」
恵里「まぁ、これくらいはね?トシ君は愛ちゃん先生の護衛についていくことになったし……
私もこっちで、兄さんを見つけられたらいいなってね。」
香織「恵里ちゃん……。」
雫「……そうね、必ず見つけましょう。」
そう言って、香織たちは手を伸ばして合わせ、互いを見合わせ強く頷くのだった。女子4人の友情は固かった。
恵里の天職は、"降霊術師"である。
闇系魔法は精神や意識に作用する系統の魔法で、実戦等では基本的に対象にバッドステータスを与える魔法と認識されている。
降霊術はその闇系魔法の中でも超高難度魔法で、死者の残留思念に作用する魔法だ。
聖教教会の司祭の中にも幾人かの使い手がおり、死者の残留思念を汲み取り遺族等に伝えるという何とも聖職者らしい使用方法がなされている。
尤も、この魔法の真髄はそこではない。
この魔法の本当の使い方は、遺体の残留思念を魔法で包み実体化の能力を与えて使役したり、遺体に憑依させて傀儡化するというものだ。
つまり、生前の技能や実力を劣化してはいるが発揮出来る死人、それを使役出来るのである。
また、生身の人間に憑依させる事でその技術や能力をある程度トレースする事も出来る。
しかし、ある程度の受け答えは出来るもののその見た目は青白い顔をした生気の無い、正に幽霊という印象であり、また死者を使役するという事に倫理的な嫌悪感を覚えてしまう。
が、そんなことは戦場では関係ないと恵里は割り切っていた。
この思考も、過去の経験やハジメの常住戦陣の教訓が生きてきたといえる。
そんな女子4人の姿を、正確には香織を、後方から暗い瞳で見つめる者がいた。檜山大介である。
あの日王都に戻ってしばらく経ち、生徒達にも落ち着きが戻ってきた頃、案の定あの窮地を招いた檜山には厳しい批難が待っていた。
檜山は当然予想していたので、ただ只管土下座で謝罪するに徹した。
こういう時、反論する事が下策以外の何物でもないと知っていたからだ。
特に、謝罪するタイミングと場所は重要だ。
檜山の狙いは光輝の目の前での土下座である。
光輝なら確実に謝罪する自分を許しクラスメイトを執り成してくれると予想していたのである。
その狙いは功を奏し、光輝の許しの言葉で檜山に対する批難は収まった。
尤も、香織と雫はいい顔をしていない。
二人とも檜山の魂胆には気づいており、ハジメが行方不明になる原因である上、幼馴染を利用したことに嫌悪感を抱いていた。
檜山(邪魔者のあいつもういない。これで香織は俺の……グフフッ。)
そんな事とはつゆ知らず、一線を越えてしまった檜山はもう止まる事が出来なかった。
香織を自分のものにする、その妄執に思わず口元に笑みが浮かぶ檜山。
近藤「おい、大介?どうかしたのか?」
檜山のおかしな様子に、近藤や中野、斎藤が怪訝そうな表情をしている。この3人は今でも檜山とつるんでいる。
元々、類は友を呼ぶと言う様に似た者同士の4人、一時期はギクシャクしたものの、檜山の殊勝な態度に友情を取り戻していた。
尤も、それが本当の意味での友情と言えるかは甚だ微妙ではあるが……。
檜山「い、いや、何でもない。もう60層を越えたんだと思うと嬉しくてな。」
近藤「あ~、確かにな。あと5層で歴代最高だもんな~。」
中野「俺等、相当強くなってるよな。全く、居残り組は根性無さ過ぎだろ。」
斎藤「まぁ、そう言うなって。俺らみたいな方が特別なんだからよ。」
檜山の誤魔化しに、特に何の疑問も抱かず同調する3人。
戦い続ける自分達を特別と思って調子づいているのは小悪党が小悪党たる所以だろう。
王宮でも居残り組に対して実に態度がでかい。横柄な態度に苦情が出ているくらいだ。
しかし、60層を突破できるだけの確かな実力があるので、強く文句を言えないところである。
尤も、勇者パーティーには及ばないので彼らも光輝達の傍では実に大人しい。小物らしい行動原理である。
メルド「気を引き締めろ!ここのマップは不完全だ。何が起こるか分からんからな!」
そして、ここまで一行は特に問題も無く、遂に歴代最高到達階層である65層に辿り着いた。
付き添いのメルドの声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。
暫く進んでいると、大きな広間に出た。何となく嫌な予感がする一同。
その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。
赤黒い脈動する直径10m程の魔法陣。それは、とても見覚えのある魔法陣だった。
光輝「ま、まさか、……アイツなのか!?」
光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。
龍太郎「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」
龍太郎も驚愕を露わにして叫ぶ。それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷酷な声音のメルドだ。
メルド「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。
一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある、気を引き締めろ!退路の確保を忘れるな!」
いざという時、確実に逃げられるようにまず退路の確保を優先する指示を出すメルド。それに部下が即座に従う。
だが、光輝がそれに不満そうに言葉を返した。
光輝「メルドさん。俺たちはもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ!もう負けはしない!
必ず勝って見せます!」
龍太郎「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」
龍太郎も不敵な笑みを浮かべて呼応する。
メルドはやれやれと肩をすくめ、確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。
そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再び光輝達の前に現れた。
「グゥガァアアア!!!」
咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが光輝達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。
全員に緊張が走る中、そんなものとは無縁の決然とした表情で真っ直ぐ睨み返す女の子が2人。香織と雫だ。
香織「……もう、誰も奪わせない。あなたを踏み越えて、私はハジメ君に会いに行く。」
雫「……香織に指一本でも触れて見なさい。あなたのご自慢の角、真っ二つにしてあげるから。」
互いに、二人以外には聞こえない位の、しかし確かな意志の力を宿らせた声音で宣言した。
今ここに、過去を乗り越える為の戦いの火ぶたが切られたのであった。
次回、いよいよリベンジ開始。
今まで魂魄魔法なしでの情報伝達手段が乏しかったこの頃ですが、ガヴの登場のおかげでより伝達ツールが充実したので、これで香織サイドとの連携も書きやすくなりました。
今後も、オリジナル展開を出来るだけ詰め込めるように努めていきたいと思いますので、応援宜しくお願い致します。
アンケートその1の結果以外で、追加で登場させてほしいキャラは?
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ボボボーボ・ボーボボ
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五条悟
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ディアボロ(黄金の風)
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銀さん
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ブロリー
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ユウキ(SAO)
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カービィ
-
ヨシヒコ
-
鬼灯様
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アインズ・ウール・ゴウン
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シャドウ(影の実力者)
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エボルト
-
篠ノ之束
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ルフィ(風船で飛んできた)
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エスデス(アカメが斬る)
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フリーレン
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リムル
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サーヴァントの誰か(活動報告で入力)
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東方キャラ(リクは活動報告へ)
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その他(活動報告でリクエスト受付)