Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
???「ふふっ、あなた達の痴態、今日こそじっくりねっとり見せてもらうわ!」
上弦の月が時折雲に隠れながらも、健気に夜の闇を照らす。
今もまた、風にさらわれた雲の上から顔を覗かせその輝きを魅せていた。
その光は、地上のとある建物を照らし出す。
もっと具体的に言えば、その建物の屋根からロープを垂らし、それにしがみつきながら何処かの特殊部隊員の様に華麗な下降を見せる一人の少女を照らし出していた。
スルスルと3階にある角部屋の窓まで降りると、そこで反転し、逆さまになりながら窓の上部よりそっと顔を覗かせる。
???「この日のためにクリスタベルさんに教わったクライミング技術その他!
まさかこんな場所にいるとは思うまい、ククク。
さぁ、どんなアブノーマルなプレイをしているのか、ばっちり確認してあげる!」
ハァハァと興奮した様な気持ちの悪い荒い呼吸をしながら室内に目を凝らすこの少女、何を隠そうブルックの町でも人気の宿――マサカの宿の看板娘、ソーナちゃんである。
明るく元気で、ハキハキした喋りに、くるくると動き回る働き者。
美人という訳ではないが野に咲く一輪の花の様に素朴な可愛さがある看板娘だ。
町の中にも彼女を狙っている独身男は結構いる。
そんな彼女は現在、持てる技術の全てを駆使してとある客室の"覗き"に全力を費やしていた。
その表情は、彼女に惚れている男連中が見れば一瞬で幻滅するであろう……エロオヤジのそれだった。
ソーナ「くっ、やはり暗い。よく見えないわ。もう少し角度をずらして……。」
???「……こうかい?」
ソーナ「そうそう、この角度なら……それにしても静かね?もう少し嬌声が聞こえるかと思ったのに……。」
???「遮音や遮光の手段なら結構あるよ?後は、死角にいるから見れないとか。」
ソーナ「はっ!?その手があったか!くぅう小賢しい、でも私は諦めない!
その痴態だけでもこの眼に焼き付け………………。」
繰り返すが、ここは3階の窓の外。
ソーナの様に馬鹿な事でもしない限り、間近に声が聞こえる事など有り得ない。
ソーナは一瞬で滝の様な汗を流すと、ギギギという油を差し忘れた機械の様にぎこちない動きで振り返った。
そこには……空中に仁王立ちする、薄ら寒い笑みを浮かべたハジメがいた。
ソーナ「ち……ちなうんですよ?お客様。これは、その、あの、そう!宿の定期点検です!」
ハジメ「ほ~ん、こんな夜中に?」
ソーナ「そ、そうなんですよ~。
ほら、夜中にちゃちゃっとやってしまえば、昼に補修しているところ見られずに済むじゃないですか。
宿屋だからガタが来てると思われるのは、ね?」
ハジメ「成程、確かに評判は大事だよねぇ?」
ソーナ「そ、そうそう!評判は大事です!」
ハジメ「ところでさぁ、この宿で最近覗き魔が出るって噂があるんだけど……どう思う?」
ソーナ「そ、それは由々しき事態ですね!の、覗きだなんて、ゆ、許せません、よ?」
ハジメ「うんうん、その通りだね。覗きは許せない、ねぇ?」
ソーナ「え、ええ、許せませんとも……。」
ソーナはハジメと顔を見合わせると「ははは」と笑い始めた。
但し、小刻みに震えながら汗をポタポタ垂らしているという何とも追い詰められた様な笑いだったが。
ハジメ「折檻だべぇ~。」
ソーナ「ひぃーー、ごめんなざぁ~い!」
ハジメがソーナの顔面にアイアンクローを決め込む。メリメリと音を立ててめり込むハジメの指。
空中でジタバタともがきながらソーナは悲鳴を上げ、必死に許しを請う。
ソーナは一般人の女の子だ。
それに対するお仕置きにしては、少々やりすぎなのではと思うレベルで力を入れるハジメ。
これが初犯なら、まだもう少し手加減くらいしただろう。
しかし、【ライセン大迷宮】から帰還した次の日に再び宿に泊まった夜から毎晩、あの手この手で覗きをされればいい加減配慮も薄くなるというものだ。
果ては、香織との連絡の為にホルアドに移動しようとする際にも、こっそり後をつけてくるのだ。
そうなったら、たまったものじゃあない。因みに、それでもこの宿を利用しているのは飯が美味いからである。
既にビクンビクンしているソーナをジャイアントスイングよろしくぶん回し、勢いよく投げてはその先に瞬時に移動してキャッチ、再びぶん回して投げては、先に移動してを3回ほど繰り返すことで、内蔵と脳をシェイクさせてから脇に抱え直すハジメ。
ソーナは脳震盪で目を回しつつ、漸く解放されたとホッと安堵の息を吐く。
しかし、ふと見た下には……鬼がいた。満面の笑みだが、眼が笑っていない母親という鬼が。
ソーナ「ひぃ!!」
目を回していたソーナが、気がついた事に気がついたのだろう。
ゆっくり手を掲げると、おいでおいでをする母親。まるで地獄への誘いだった。
ハジメ「……今回は、尻叩き百発じゃすまないね。ふぁいと~。」
ソーナ「いやぁああーーー!」
ハジメがポツリとこぼした言葉に、今までのお仕置きを思い出して悲鳴を上げるソーナ。
きっと、翌日の朝食時には、お尻をパンパンに腫らした涙目のソーナを見る事ができるだろう。
毎晩毎朝の出来事に溜息を吐くハジメであった。
そんな宿屋のむっつり娘、ソーナを彼女の母親に引渡し、宿の部屋に戻った俺は、そのまま両手を広げて仰向けになり、ベッドにドサッと寝転んだ。
ハジメ「……ちかれた。」
ユエ「……お疲れ様。」
シア「おかえりなさいですぅ。」
そんな俺に声を掛けたのは、勿論ユエとシアだ。
窓から差し込む月明かりだけが部屋の中を照らし、2人の姿を淡く浮かび上がらせる。
対面のベッドの上で女の子座りしているユエと、浅く腰掛けたシア。
2人共ネグリジェだけという何とも扇情的な姿だ。
2人の美貌と相まって、一枚の絵画として描かれたのなら、それが二流の書き手でも名作と謳われそうだ。
ハジメ「かもしれないね。……それにしても一体何があの子を駆り立てるんだか。
屋根から降りてくるとか、どこのBIG BOSSだよ。
てか、クリスタベルさんは何故その技術を知っているんだ……。まぁ、それは別にいいとしてだ。
流石に、いくら飯が美味くても別の宿を探すべきかもね。」
呆れた様な口調でそう話す俺に、シアはクスリと笑って立ち上がり、俺のベッドに腰掛ける。
ユエもいそいそと立ち上がると俺のベッドに移動し、横たわる俺の膝を自らの頭の下に入れた。
所謂膝枕である。
シア「きっと、私達の関係がソーナちゃんの女の子な部分に火を付けちゃったんですね。
気になってしょうがないんですよ。可愛いじゃないですか。」
ユエ「……でも、手口がどんどん巧妙になってるのは……心配。」
ハジメ「全くだ。昨日なんて、シュノーケルを自作して湯船の底に張り込んでたからね……
水中から爛々と輝く眼を見つけた時は、思わず氷魔法を放ちそうになったよ。」
シア「う~ん、確かに宿の娘としてはマズイですよね…一応、私達以外にはしてない様ですが……。」
ソーナの奇行について雑談しながら、シアが俺にそっと体を寄せる。
俺はそれを受けいれつつ、二人の頭を撫でていた。……そういえば、香織はあれからどうしているだろうか。
前に、連絡をよこしたときに、ユエとシアのことについて色々聞かれたなぁ……。
香織『えぇっ!?一緒にお風呂も入ったの!?そんなのうらやま……じゃなくて、ふしだらだよ!』///
雫『香織、顔を赤くして言っても説得力ないわよ……それに、出会った時は全裸だったのよね?』///
ハジメ「……言っとくけど、すぐに上着をかけたからね?」
香織『ずるい!』
ハジメ「なんでさ!?」
ユエとの出会い、隠れ家での出来事……
雫『き、狐さんの尻尾も触ったのね……。』
香織『大丈夫だよ、雫ちゃん!ハジメ君にお願いすればモフらせてくれるよ!』
ハジメ「任せろ、こんな時の為にカム達に貸しを作らせた甲斐があったな。」
雫『そこまでしなくてもいいから!?』///
シアとの出会い、そして獣人たち……
香織『数千年越しの再会かぁ……なんだか、ロマンチックだよね。』
雫『そうね、オスカーさんにとって、ミレディさんは一番大事な女性だったのでしょうね。』
ハジメ(……言えない、オスカーはメイドスキーで、ミレディの言動はウザさが多いなんて……!)
ライセンでの試練、解放者の歴史と、反応は様々だった。
ユエ「……ハジメの昔の女って、むっつり?」
ハジメ「……違うと信じたい。」
シア「語るに落ちてません?」
……俺は信じてる、あの日の純情な乙女の香織を。
因みに、俺等の会話をこっそり盗み聞きしてやがったソーナちゃんの誤解とか好奇心とか妄想とかが更に深まり、やたらと高い潜入スキルを持つ宿屋の看板娘が爆誕するらしいが……これはまた別の話。
カランカラン……と、そんな音を立てて冒険者ギルド【ブルック支部】の扉が開く。
入ってきたのは、勿論俺たちだ。ここ数日ですっかり有名人となったせいか、視線が多い。
ギルド内のカフェには、いつもの如く何組かの冒険者達が思い思いの時を過ごしており、俺達の姿に気がつくと片手を上げて挨拶してくる者もいる。
男は相変わらずユエとシアに見蕩れ、ついで俺に羨望と嫉妬の視線を向けるが、そこに陰湿なものはない。
樹海から出立してブルックに滞在すること一週間、その間にユエ達を手に入れようと画策した者は今や一人もいない。
何故かって?そりゃあ、誰だって死にたくはないからだろうな。
嘗て俺が放った威圧と、金的によって刻み付けられた恐怖は相当なもので、本人を直接口説いたり無理やり襲おうとする阿保共は流石にいなくなったものの、外堀を埋める為に俺から攻略を試みる輩が代わりに大量発生した。
まぁ、全員纏めてぶっ飛ばしてやったが。その後は、余剰資金を使ってちょっとした宴を開いてやった。
何故わざわざそんなことをって?人心掌握の為に酒を奢るのは、一般人の常套手段だからさ。
それに、町の人々にも振舞ったので、決闘騒ぎの終息に加えて好印象を与えられるので、一石二鳥だ。
後は……いつの間にか広まっていた異名くらいか。
さっき話したブルック滞在時の出来事(威圧と金的、決闘騒ぎ、etc)に加えて、大迷宮踏破者かつ樹海で大暴れした者(情報ソースはユエとシア、キャサリンさんと話していたら話が弾んでうっかりバラしたらしい)であることから、人々からは"無敵の覇王"だの、"戦神富豪"だの、痛い二つ名で覚えられている。
因みに、ユエも自分の身を守るべく、口説きに来たりシアを狙う奴を見つけては、
そんな3人が組んでいることから、申請前なのにパーティー名は"黄金覇道"で浸透してた。
正直、乾いた笑いしか出てこなかった。
キャサリン「おや、今日は3人一緒かい?」
俺達がカウンターに近づくといつも通りキャサリンさんがいて、先に声をかけてきた。
キャサリンさんの声音に意外さが含まれているのは、この一週間でギルドにやって来たのは大抵、俺一人かユエとシアだからだ。
ハジメ「あぁ、そろそろ拠点を移そうと思っていてな。
明日にはもう町を出るから、挨拶しておこうかなって。
序に、目的地関連で依頼があれば受けておこうって思ったんだ。」
それにフューレンの方が、ホルアドには近そうだしな。香織との連絡が取りやすくなる。
あぁ、そういえば大樹に行くまでの間、ユエとシアはちょくちょくミレディの所に通っては、魔法談義をしていたらしい。
最も、とても高度過ぎてシアがついていけず涙していたのは、ここだけの話。
俺は何してたのかって?魂魄魔法のおかげで生成魔法の幅が広がったから、色々と検証してた。
オスカーからの意見も交えて、試行錯誤を重ねていたら、新素材の発見に至ったのはここだけの秘密だ。
キャサリン「そうかい、行っちまうのかい。
そりゃあ寂しくなるねぇ、あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~。」
ハジメ「賑やかすぎるのも考え物だけどね……ま、悪い気はしなかったよ。」
思い返せば色々あったな……様々な人に出会ったものだ。
ユエちゃんに踏まれ隊――町中でいきなり土下座して、ユエに向かって「踏んで下さい!」とか絶叫する奴等、
シアちゃんの奴隷になり隊――同じく、シアに向かって「奴隷にしてほしい」とか絶叫する奴等、
お兄さまの妹になり隊――ソウルシスターズのパチモン、宿屋のむっつり……あれ、おかしいな。
何故だろう、ろくな奴がいない……どう見ても変態の巣窟にしか聞こえない。何故だ?
というか、シア達亜人族は被差別種族じゃなかったのかとか、お前らが奴隷になってどうするとかツッコミどころは満載だった。
キャサリン「まぁ、楽しかったならなによりだよ。で、何処に行くんだい?」
ハジメ「フューレンだね、今度はそこを拠点に西に観光に行くつもりだよ。」
そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリンさん。
早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始める。
【中立商業都市フューレン】――大陸一の商業都市にして、東西南北を結ぶ中継地点だ。
次の目的地である、【グリューエン大砂漠】にある七大迷宮の一つ、【グリューエン大火山】に行くには、相当な準備が必要になる。
ならば補給がてら、フューレンの観光でもして行こうという話になったというわけだ。
その次は、西の海底遺跡――【メルジーネ大迷宮】に行く序に、海上の街【エリセン】の観光だ。
キャサリン「う~ん……おや、いいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。
丁度空きが後一人分あるよ、どうだい?受けるかい?」
キャサリンにより差し出された依頼書を受け取り内容を確認する俺。
確かに、依頼内容は商隊の護衛依頼の様だ。中規模な商隊の様で、15人程の護衛を求めているらしい。
ユエ達は冒険者登録をしていないので、俺の分で丁度だ。
ハジメ「連れの同伴は大丈夫か?」
キャサリン「ああ、問題ないよ。
あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。
まして、ユエちゃん達も結構な実力者だ。1人分の料金で3人も優秀な冒険者を雇える様なもんだ。
断る理由も無いさね。」
ハジメ「ふむ……どうする、二人とも?」
俺は問いかける様に2人の方を振り返った。後、オーロラカーテンでホルアドから移動はしない。
それだと風情がないしな。飛んで行ったりするのも、狙われやすいしな。
ユエ「……急ぐ旅じゃない。」
シア「そうですねぇ~、偶には他の冒険者方と一緒というのも良いかもしれません。
ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」
ハジメ「なら、決まりだな。その依頼を受けよう!」
俺は2人皆の意見に頷くとキャサリンさんに依頼を受ける事を伝える。
ユエの言う通り、7大迷宮の攻略の時間は限られてはいない。
であれば、このままのんびり進んで、シアの言う様に冒険者独自のノウハウを学んでみるのも一興だろう。
『急いては事を仕損じる』とも言うしな、世間の情勢を集める為にも受注しておくべきだろう。
キャサリン「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ。」
ハジメ「りょーかい。」
俺が依頼書を受け取るのを確認すると、キャサリンさんが俺の後ろのユエとシアに目を向けた。
キャサリン「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ?この子に泣かされたら何時でも家においで。
あたしがぶん殴ってやるからね。」
ユエ「……ん、お世話になった。ありがとう。」
シア「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難うございました!」
キャサリンさんの人情味あふれる言葉に皆の頬も緩む。特にシアは嬉しそうだ。
シア曰く、この町に来てからというもの、自分が亜人族であるという事を忘れそうになるらしい。
勿論、全員が全員シアに対して友好的という訳では無いが、それでもキャサリンさんを筆頭にソーナやクリスタベルさん、ちょっと引いてしまうがファンだという町の人達はシアを亜人族という点で差別的扱いをしない。
土地柄か、それともそう言う人達が自然と流れ着く町なのか。
それはわからないが、いずれにしろシアにとっては故郷の樹海に近いくらい温かい場所であったようだ。
勿論、差別する奴が出てきたら俺が裁くが……ここではそう言ったことはなかった。
寧ろ、町総出でそいつをフルボッコにする未来しか見えない。ある意味頼もしいというか……まぁ、いっか!
キャサリン「あんたも、こんないい子達泣かせんじゃないよ?精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」
ハジメ「無論だとも。二人は俺にとって、大事な人達だしな。何があっても守り抜くさ。」
キャサリンさんの言葉に得意げに返すと、キャサリンさんが一通の手紙を差し出してきた。
俺は片眉を上げながら、それを受け取った。
ハジメ「これは?」
キャサリン「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びの様なものだよ。
他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね。」
そう言ってバッチリとウインクするキャサリンさんに、思わず苦笑する。
こういう手紙をくれる人は、大体が「実は重要なポジション」というのが多い。詮索せずとも何となく分かる。
キャサリン「おや、詮索は無しだよ?いい女に秘密はつきものさね。」
ハジメ「違いない。じゃ、ありがたく受け取っておこう。」
キャサリン「素直でよろしい!色々あるだろうけど、死なない様にね。」
ハジメ「はっはっは!生憎、そう簡単に死ぬタマでもないのでな。たとえ死んでも戻ってみせるさ。」
謎多き片田舎の町のギルド職員・キャサリンさん。
俺達はそんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出された。
その後、クリスタベルさんの場所にも寄って、素敵な服装を見繕ってもらったことも含めて、改めてお礼を言いに行った。
そして最後の晩と聞き、2人そろって堂々と風呂場に乱入。
そして部屋に突撃を敢行したソーナちゃんがブチギレた母親に、亀甲縛りをされて一晩中宿の正面に吊るされるという事件の話も割愛だ。
何故母親が亀甲縛りを知っていたのかという話も割愛だ。
翌日の早朝。
そんな愉快?なブルックの町民達を思い出にしながら、正面門にやって来た俺達を迎えたのは商隊の纏め役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。
どうやら俺達が最後の様で、纏め役らしき人物と14人の冒険者が、やって来た俺達を見て一斉にざわついた。
「お、おい、まさか残りの3人ってあの"
「マジかよ!嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」
「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」
「いや、それはお前がアル中だからだろ?」
ユエとシアの登場に喜びを顕にする者、手の震えを俺達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者など様々な反応だ。
俺が愉快なものを見たような表情をしながら近寄ると、商隊の纏め役らしき人物が声をかけた。
???「君達が最後の護衛かね?」
ハジメ「あぁ、これが依頼書だ。」
俺は、懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、纏め役の男性は納得した様に頷き自己紹介を始めた。
???「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。
君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。
道中の護衛は期待させてもらうよ。」
ハジメ「……もっと、ユンケル?……商隊の長も多忙なんだな……。」
某日本の栄養ドリンクを思い出させる名前に、思わず同情してしまう。
何故そんな視線を向けられるのか分からないモットーさんは首を傾げながら、「まぁ、大変だが慣れたものだよ。」と苦笑い気味に返した。
なんだかんだで面白そうな奴等だなぁ……退屈はしなさそうだ。
ハジメ「まぁ、それはさておき、期待は裏切らないさ。俺はハジメ、こっちは俺の仲間達のユエとシアだよ。」
モットー「それは頼もしいな……ところで、この兎人族……売るつもりはないかね?
それなりの値段を付けさせてもらうが?」
すると、モットーの視線が値踏みする様にシアを見始めた。兎人族で青みがかった白髪の超がつく美少女だ。
商人の性として、珍しい商品に口を出さずにはいられないという事か。
首輪から奴隷と判断し、即行で所有者たる俺に売買交渉を持ちかけるあたり、きっと優秀な商人なのだろう。
だが……欲を出し過ぎたな?誰の女に、不快な視線向けてんだコイツ?
その視線を受けて、シアが「うっ」と嫌そうに唸り俺の背後にそそっと隠れる。
ユエのモットーを見る視線が厳しい。
だが、一般的な認識として樹海の外にいる亜人族とは即ち奴隷であり、珍しい奴隷の売買交渉を申し出るのは商人として当たり前の事なのだろう。
モットーが責められる謂れは無い……獣人が人間と魔物のハーフという真実が知られていなければ、だが。
モットー「ほぉ、随分と懐かれていますな。……中々大事にされている様だ。
ならば、私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、如何です?」
ハジメ「そうか、では前金代わりに神の死体50匹を用意してこい。話はそれからだ。」
シアの様子を興味深そうに見ていたモットーが更に交渉を持ちかけるが、俺はバッサリ切る。
モットー「そ、それは……。」
ハジメ「え?何?もしかして、金さえ積めば女一人譲ってもらえるとでも思っていたの?
アンタ商人だよな?なら、客が不快になるような話題くらい避けろよ。客足遠のくぞ?」
それに、この世界の神でなければいいのだし、世界を渡って捕らえればいいだろう。
ハジメ「それでもまだごねるつもりなら――死ぬよ?」
モットー「ッ!?」
瞬間、静かで凍り付くような声音と共に放たれたプレッシャーによって、モットーは倒れ伏し、他の冒険者もその間身動きが取れなくなる。
モットー「ハァッ……ハァッ……!
ど、どうやら随分と大切にされているようで……、割に合わない取引でしたな……。」
立ち上がりそう口にするモットー。未だ青ざめた表情ではあるが、気を失わなかった彼は優秀な商人なのだろう。
まぁ、今回は相手が相手なので、分不相応であることは明白だっただろうに。自業自得だ。
ハジメ「別に言いふらしても構わんぞ?その時はその時で、敵は全員蹴散らせばよいだけなのだから。
だが、ここで諦めるのであれば初犯故に見逃そう。だからといって、次があるなどとは思うなよ……?」
威圧を込めて更に迫る。これで納得しないなら、魂魄魔法で頭イジイジするしかないけど。
モットー「……私も耄碌したものだ。まさか、欲に目がくらんで龍の尻を蹴り飛ばすとは……。」
そう言うとモットーは、俺にもうじき出発する事と詳細はリーダーに聞くよう告げると、すごすごと下がり、商隊の方へ戻っていった。
まぁ、流石に頭イジイジは面倒だしやりたくなかったから、引き下がってくれて助かったよ。
因みに、"竜の尻を蹴り飛ばす"とはこの世界の諺で、竜とは竜人族を指すらしい。
彼等はその全身を覆う鱗で鉄壁の防御力を誇るが、目や口内を除けば唯一尻穴の付近に鱗が無く弱点となっているとのことだ。
防御力の高さ故に眠りが深く、一度眠ると余程の事が無い限り起きないのだが、弱点の尻を刺激されると一発で目を覚まし烈火の如く怒り狂うという。
昔何を思ったのか、それを実行して叩き潰された阿呆がいたとか。
そこから因んで、手を出さなければ無害な相手に態々手を出して返り討ちに遭う愚か者という意味で伝わる様になったという。
尚、依然述べた通り、竜人族は500年以上前に滅びたとされている。
理由は……全部アレのせいで良いか。逐一述べるのも面倒だ。さて、そんなどうでもいいことはおいといて、だ。
周りを見ると、再びざわついている事に気がついた。
「すげぇ……女一人の為に、あそこまで言うか……痺れるぜ!」
「流石、"無敵の覇王"と言ったところか。自分の女に手を出すやつには容赦しない……ふっ、漢だぜ。」
「いいわねぇ~、私も一度くらい言われてみたいわ❤️」
「いや、お前男だろ?誰がそんな事……ッあ、すまん、謝るからっやめっアッーーー♂!!」
……元気な奴等だなぁ。
ムニュウ
ハジメ「ん?」
そんな事を思っていると、背中に何やら柔らかい感触を感じ、更に腕が背後から回されて、俺を抱きしめてくる。
肩越しに振り返ってみれば、肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。
その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいる。
ハジメ「……護衛はちゃんとやってね?」
シア「うふふふ、わかってますよぉ~、うふふふ~♪」
まるで伝わっていない……しゃあないなぁ、しばらく好きにさせてあげるか。
すると、ユエもトコトコと傍に寄って来て、俺の袖をクイクイと引っぱった。
ハジメ「?どしたのユエ?」
ユエ「ん……カッコよかったから大丈夫。」
ハジメ「……それはどうも。」
そう言って頭を撫でると、ユエは気持ちよさそうに目を細める。
早朝の正門前、多数の人間がいる中で、背中に幸せそうなウサミミ美少女をはりつけ、右手には金髪紅眼のこれまた美少女を纏わりつかせる俺。
商隊の女性陣は生暖かい眼差しで、男性陣は死んだ魚の様な眼差しでこちらを見ている。
尚、俺に突き刺さる煩わしい視線や言葉については、スルーした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ハジメさんはオルクスで香織にキスされたとき、ガチで照れてました。なので、信じているんです。
後、異名に関してはもう諦めています。それと、情報を漏らした2人には、後で全身くすぐりの刑に処しました。
次回は、護衛珍道中です。お楽しみに!
今後、登場予定のヒロインでハジメさんの正妻にするとしたら?
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勿論、ユエ!
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勇者シアでしょ!
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幼馴染の香織だ!
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ヒロインと言ったら雫だろ!
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原作と性格違うけどティオです!
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魔性のレミアさん一択!
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愛子と禁断のロマンス!
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王族同士でリリアーナを推す!
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頑張れ、優花!
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ローゼ(アフターティオ編)
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ミンディ(アフターまおゆう編)
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トネリコ(アンケートその1)
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星野アイ(アンケートその2)
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ユウキ(アンケートその3)
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大穴、ミュウに全乗せ!
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対抗馬リスティ、出る!
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その他①(読者リクエスト)
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その他②(別作品から更に追加)
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その他③(原作内から追加)