Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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Q.マキシマムマイティXを使えばよかったことない?
A.変成魔法がないのでダメです。


00:58/このオアシスにはナニカいる

香織「ハジメくん、取り敢えず車内に入ってもらう方がいいんじゃないかな?」

ハジメ「そうだな……このままでは日射病になりかねない。中で話そうか。」

そういうわけで、俺達は青年をブリーゼに案内した。

招かれた青年は、車内の快適さに思わず「やはり神の領域か!?」と叫ぶ。

 

先程まで死にかけていたというのに案外元気なものだ。

尤も、冷たい水を飲んで一息つくと自分が使命を果たせず道半ばで倒れた事を思い出した様で、直ぐに表情を引き締めた。

 

???「まず、助けてくれた事に感謝する。

あのまま死んでいたらと思うと……アンカジまで終わってしまうところだった。

私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ。」

なんと驚いた事に、ビィズと名乗った青年はとんだ大物だったらしい。

 

【アンカジ公国】は【海上の町エリセン】より運送される海産物の鮮度を極力落とさないまま運ぶ為の要所だ。

そして、エリセンからの海産物の供給量は北大陸全体の8割に及ぶ。

つまり、北大陸における一分野の食料供給において、ほぼ独占的な権限を持っているに等しいという事だ。

単なる名目だけの貴族ではなく、【ハイリヒ王国】の中でも信頼の厚い屈指の大貴族という事である。

 

ビィズの方も、香織の素性("神の使徒"として異世界から召喚された者)や俺達の冒険者ランクを聞き、目を剥いて驚愕を露わにした。

そして「これは神の采配か!我等の為に女神を遣わして下さったのか!」といきなり天に祈り始めた。

この場合、女神とは当然香織の事なのだが、当の本人はキョトンとしている。

取り敢えず話が進まないので"威圧"で急かすと、ビィズは冷や汗を流しながら咳払いしつつ語りだした。

 


 

ビィズ曰く、こういう事らしい。4日前、アンカジにおいて原因不明の高熱を発し倒れる人が続出した。

それは本当に突然の事で、初日だけで人口27万人のうち3000人近くが意識不明に陥り、症状を訴える人が1万人に上ったという。

直ぐに医療院は飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たったが、香織と同じく進行を遅らせる事は何とか出来ても完治させる事は出来なかった。

 

そうこうしている内にも、次々と患者は増えていく。

にも関わらず、医療関係者の中にも倒れるものが現れ始めた。

進行を遅らせる為の魔法の使い手も圧倒的に数が足りず、何の手立ても打てずに混乱する中で、遂に処置を受けられなかった人々の中から死者が出始めた。

発症してから僅か2日で死亡するという事実に絶望が立ち込める。

 

そんな中、1人の薬師がひょんな事から飲み水に"液体鑑定"をかけた。

するとなんと、その水には魔力の暴走を促す毒素が含まれている事が判明したのだ。

直ちに調査チームが組まれ、最悪の事態を想定しながらアンカジのオアシスが調べられたのだが、案の定オアシスそのものが汚染されていた。

 

当然、アンカジの様な砂漠のど真ん中にある国においてオアシスは生命線であるから、その警備・維持・管理は厳重に厳重を重ねてある。

普通に考えれば、アンカジの警備を抜いてオアシスに毒素を流し込むなど不可能に近いと言っても過言ではない程に、あらゆる対策が施されているのだ。

 

一体どこから、どうやって、誰が……。

首を捻る調査チームだったが、それより重要なのは、2日以上前からストックしてある分以外使える水が失くなってしまったという事だ。

そして結局、既に汚染された水を飲んで感染してしまった患者を救う手立てが無いという事である。

 

ただ、全く方法が無いという訳では無かった。1つ、患者達を救える方法が存在していたのだ。

それは、"静因石"と呼ばれる鉱石を必要とする方法だ。

この"静因石"は、魔力の活性を鎮める効果を持っている特殊な鉱石で、砂漠のずっと北方にある岩石地帯か【グリューエン大火山】で少量採取できる貴重な鉱石だ。

魔法の研究に従事する者が、魔力調整や暴走の予防に求める事が多い。

この静因石を粉末状にしたものを服用すれば体内の魔力を鎮める事が出来るだろう、という訳だ。

 

しかし、北方の岩石地帯は遠すぎて往復に少なくとも1ヶ月以上はかかってしまう。

また、アンカジの冒険者、特に【グリューエン大火山】の迷宮に入って静因石を採取し戻ってこられる程の者は既に病に倒れてしまっている。

生半可な冒険者では、【グリューエン大火山】を包み込む砂嵐すら突破できないのだ。

それに、仮にそれだけの実力者がいても、どちらにしろ安全な水のストックが圧倒的に足りない以上王国への救援要請は必要だった。

 

その救援要請にしても、総人口27万人を抱えるアンカジ公国を一時的にでも潤すだけの水の運搬や、【グリューエン大火山】という大迷宮に行って戻ってこられる実力者の手配など容易く出来る内容ではない。

公国から要請と言われれば無視する事は出来ずとも、内容が内容だけに一度アンカジの現状を調査しようとするのが普通だ。

しかし、そんな悠長な手続きを経てからでは遅いのだ。

なので、強権を発動出来るゼンゲン公か、その代理たるビィズが直接救援要請をする必要があった。

 


 

ビィズ「父上や母上、妹も既に感染していて、アンカジにストックしてあった静因石を服用する事で何とか持ち直したが、衰弱も激しくとても王国や近隣の町まで赴く事など出来そうもなかった。

だから私が救援を呼ぶため、一日前に護衛隊と共にアンカジを出発したのだ。

その時症状は出ていなかったが……感染していたのだろうな、恐らく発症までには個人差があるのだろう。

家族が倒れ、国が混乱し、救援は一刻を争うという状況に……動揺していた様だ。

万全を期して静因石を服用しておくべきだった。

今こうしている間にも、アンカジの民は命を落としていっているというのに……情けない!」

 

力の入らない体に、それでもあらん限りの力を込めて拳を己の膝に叩きつけるビィズ。

アンカジ公国の次期領主は、責任感の強い民思いな人物らしい。

護衛をしていた者達もサンドワームに襲われ全滅したというから、その事も相まって悔しくてならないのだろう。

僥倖だったのは、サンドワーム達が恐らくこの病を察知して捕食を躊躇った事だ。

病にかかったが故に力尽きたがそれ故にサンドワームに襲われず、結果俺達と出会う事が出来た。

人生、何が起きるかわからないものである。万事塞翁が馬とはよく言ったものだ。

 

ビィズ「……君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。

どうか、私に力を貸して欲しい。」

そう言って、ビィズは深く頭を下げた。

 

領主代理がそう簡単に頭を下げるべきでない事はビィズ自身が一番分かっているのだろうが、降って湧いた様な僥倖を逃してなるものかと必死なのだろう。

十中八九、魔人族の仕業で間違いないだろう。さっきの毒も魔物由来だと考えれば、妥当だ。

そうなると、飲み水の確保であればどうにでもなるが……感染者全員の治療となると少々骨が折れそうだ。

 

先程の魔法でも1人ずつしか集中して治療できない上、それを国民全員分と予想すれば完徹1月は覚悟せにゃならん。

身体に関する神代魔法さえあれば、マキシマムマイティのリプログラミングで一発なんだが……。

……ん?待てよ、体外に排出不可能なのは魔力なのであって、毒自体は……。

 

ミュウ「パパー、たすけてあげないの?」

ハジメ「……いや、どのみちアンカジによるつもりだったしな。乗りかかった以上、やってやるさ。」

物凄く純真な眼差しで言ってくるミュウに、俺はいつものように笑顔で返す。

 

元々【グリューエン大火山】には行く予定だったし、アンカジはその時の拠点にするつもりだった。

とはいえ、4歳の幼子であるミュウを大迷宮に連れて行くつもりではなかったので、何処かに預けようと考えていたのだ。

 

そこでちょうどアンカジのお偉いさんからの依頼と来た。

これならミュウを安心して預けられるし、俺達も大迷宮攻略の序に"静因石"を確保できる。

ミュウも海人族だから魔力暴走の心配もないので、アンカジにいても問題はないだろう。

勿論、誘拐対策に護衛アーティファクトは幾つかおいて行くが。

 

ビィズ「ハジメ殿が"金"クラスなら、このまま大火山から静因石を採取してきてもらいたいのだが、水の確保の為に王都へ行く必要もある。

この移動型のアーティファクトは、ハジメ殿以外にも扱えるのだろうか?」

ハジメ「その気になれば自動操縦は可能だが……魔力を物凄く食うから、俺たち以外では無理だろう。

まぁ、飲み水の確保程度ならどうとでもなる。患者の治療は香織がやってくれる。」

ビィズ「どうとでもなる?それはどういう事だ?」

 

数十万人分の水を確保できるという言葉に、訝しむビィズ。当然の疑問だ。

しかし、水は何も運搬しなくとも手に入る方法がある。

それは水系魔法で大気中の水分を集めて作り出すという方法だ。

 

勿論普通の術師ではおよそ不可能だろうが、ここには魔法に関して稀代の天才が2人もいる。

そう、ユエとトネリコだ。しかもユエは、魔力を直ぐ様回復する手段も多数持ち合わせている。

ビィズなりランジィなりがアンカジに残っている静因石をしっかり服用し体調を万全に整えて、改めて王国に救援要請をしに行く位の時間は十分に稼げる筈である。

俺?一応出来るっちゃあ出来るけど、今回はパスだ。別の役割もあるしな。

 

その辺りの事を掻い摘んで説明すると、最初は信じられないといった様子のビィズだったが、どちらにしろ今の自分の状態では真面に王国まで辿り着けるか微妙だったので、"神の使徒"たる香織の説得も相まってアンカジに引き返す事を了承した。

 


 

赤銅色の砂が舞う中たどり着いたアンカジは、【中立商業都市フューレン】を超える外壁に囲まれた乳白色の都だった。

外壁も建築物も軒並みミルク色で、外界の赤銅色とのコントラストが美しい。

 

ただフューレンと異なるのは、不規則な形で都を囲む外壁の各所から光の柱が天へと登っており、上空で他の柱と合流してアンカジ全体を覆う強大なドームを形成している事だ。

時折何かがぶつかったのか波紋の様なものが広がり、まるで水中から揺れる水面を眺めている様な、不思議で美しい光景が広がっていた。

 

どうやら、このドームが砂の侵入を防いでいる様だ。

月に何度か大規模な砂嵐に見舞われるそうだが、このドームのお陰で曇天の様な様相になるだけでアンカジ内に砂が侵入する事は無いという。

 

俺達は、これまた光り輝く巨大な門からアンカジへと入都した。

砂の侵入を防ぐ目的から、門まで魔法によるバリア式になっている様だ。

門番はブリーゼを見ても少し目を見開く程度で、大した反応を見せなかった。

アンカジの現状が影響しているのか暗い雰囲気で気迫も無く、どこか投げやり気味だ。

尤も、ブリーゼの窓から次期領主が顔を出した途端、直立不動となり兵士らしい覇気を取り戻したが。

 

アンカジの入場門は高台にあった。

ここに訪れた者がアンカジの美しさを最初に一望出来るように、という心遣いらしい。

確かに美しい都だと、俺達は感嘆した。

 

太陽の光を反射してキラキラと煌めくオアシスが東側にあり、その周辺には多くの木々が生えていてい非常に緑豊かだった。

オアシスの水は幾筋もの川となって町中に流れ込み、砂漠のど真ん中だというのに小船があちこちに停泊している。

町のいたる所に緑豊かな広場が設置されていて、広大な土地を広々と利用している事がよく分かる。

 

北側は農業地帯の様だ。

アンカジは果物の産出量が豊富という話を証明する様に、俺達の目には多種多様な果物が育てられているのが分かった。

実はこの世界の果物にも興味があったので、楽しみの一つでもあったのだが……。

 

西側には一際大きな宮殿らしき建造物があり、他の乳白色の建物と異なって純白と言っていい白さだった。

他とは一線を画す荘厳さと規模なので、あれが領主の住む場所なのだろう。

その宮殿の周辺に無骨な建物が区画に沿って規則正しく並んでいるので、行政区にでもなっているのかもしれない。

砂漠の国でありながら、まるで水の都と表現したくなる……【アンカジ公国】はそんな所だった。

 

ハジメ「これは凄いな……フェアベルゲンとは違った美しさがある。」

ユエ「……ん。綺麗な都。」

思わず感嘆が漏れた俺に、ユエが同意する。

他のメンバーも気持ちは同じ様で、「ほぅ……。」と息を漏らしている。

 

ミュウ「でも、なんだか元気がないの。」

ポツリと呟いたのはミュウだ。

その言葉通り、その壮観さに反してアンカジの都は暗く陰気な雰囲気に覆われていた。

 

普段はエリセンとの中継地である事や果物の取引で交易が盛んであり、また観光地としても人気のある事から活気と喧騒に満ちた都なのだが……

今は通りに出ている者は極めて少なく、殆どの店も営業していない様だった。

誰もが戸口をしっかり締め切って、まるで嵐が過ぎ去るのをジッと蹲って待っているかの様な、そんな静けさが支配していた。

 

ビィズ「……使徒様やハジメ殿にも、活気に満ちた我が国をお見せしたかった。

すまないが、今は時間がない。都の案内は全てが解決した後にでも私自らさせて頂こう。一先ずは、父上の下へ。

あの宮殿だ。」

ビィズの言葉に頷き、俺達は原因のオアシスを背にして進みだした。

 


 

ビィズ「父上!」

ランズィ「ビィズ!お前、どうして戻ってきた!?」

ビィズの顔パスで宮殿内に入った俺達は、そのまま領主のランズィ公の執務室へと通された。

衰弱が激しいと聞いていたのだが、どうやら治癒魔法と回復薬を多用して根性で執務に乗り出していたらしい。

 

そんなランズィ公は、1日前に救援要請を出しに王都へ向かった筈の息子が帰ってきた事に驚きを露わにする。

俺達によって病原を取り除かれたお陰で、確りと自身の足で立って事情説明を手早く済ませるビィズ。

話はトントン拍子に進み、あっという間に俺達の出番がやってくる。

 

ハジメ「まずは毒素への対策だな。

幸いにも体外への排出は出来るようだから、こいつに吸い出してもらおう。」

そう言って懐から取り出したのは、群青色と黒をベースとしたドラゴン型自立思考デバイス――"クローズドラゴン"だ。

 

ランズィ「な、なんだそれは……?」

ハジメ「まぁ、困惑するのも分かりますが見ててください。ビィズ殿、お願いします。」

早速実証だ。

というわけで、事前にビィズに頼んで、感染の疑いがある人を連れてきてもらい、腕を出してもらう。

 

クローズドラゴン『―♪―♪

軽快な音楽のような鳴き声を上げ、クローズドラゴンはその腕に噛み付いた。

すると、みるみる毒素が吸収されていき、装填してあったミニジーニアスボトル*1と相乗して、一気に分解していった。

毒を吸いきったドラゴンは、分解しきれなかった毒素を俺の用意した箱に吐き出した。

後は、香織が余剰魔力を吸収して魔晶石に収めれば……

 

医者「こ、これは……!信じられない!完治しております!」

ランズィ「何!?それは本当か!」

ハジメ「感染者の場合だと、毒の吸出しは数回行う必要はありますが……

まだ症状の出ていない方や一時的に収まっている方であれば、この通りです。」

その言葉を聞いてランズィ公等の目が輝く。どうやら信じて貰えたようだ。

 

ハジメ「香織はシアと一緒に、患者の元へ行って治療をお願い。魔晶石も全部持って行って。

ユエ、ティオ、トネリコは俺と一緒に、水の確保と浄化だ。トシはミュウを頼む。

領主殿、最低でも200m四方の開けた場所はありますか?」

ランズィ「む?うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが……。」

農業地帯か……オアシスも近くにあったな。

 

ハジメ「ではそこで。シアは魔晶石が溜まったら、そこへ来て。皆、頼んだよ!」

ユエ「ん!」

シア「はい!」

ティオ「うむ!」

トシ「おう!」

ミュウ「はいなの!」

香織「うん!」

トネリコ「えぇ!」

俺の号令に、全員が元気よく頷いた。作戦はいたってシンプルだ。

 

シアが患者を運び出し、香織が"廻聖"で魔力を少しずつ抜きながら、クローズドラゴンが毒素を抜き出した後で、"万天"で体の傷を癒す。

取り出した魔力は魔晶石にストックして、緊急時の備えになるし、お得だな!

残りの俺達は貯水池を設置した後、そのままオアシスの原因を調査し、解決できそうなら序にやって、ダメそうならそのまま【グリューエン大火山】を目指せばいい。

 


 

現在、ランズィ公と護衛や付き人多数、そして俺、ユエ、トネリコ、ティオ、ミュウ、トシはアンカジ北部にある農業地帯の一角に来ていた。

200m四方どころかその3倍はありそうな平地が広がっている。

普段は、とある作物を育てている場所らしいのだが、時期的なものから今は休耕地になっているそうだ。

 

早速一番手として前に出たのは、ユエだ。すると、風も無く、ユエの黄金の髪がふわりと靡く。

圧倒的な魔力が大気を慄かせ、溢れ出る黄金の魔力光が周囲を塗り替える。行使されるのは神代の魔法。

一切合切を圧壊させる超常の力。

 

ユエ「──"壊劫"。」

スッと伸ばされた白く嫋やかな手の先、農地の直上に黒く渦巻く球体が出現する。

その球体は農地の上で形を変え薄く四角く引き伸ばされていき、遂に200m四方の薄い膜となった。

そして一瞬の停滞の後、音も立てずに地面へと落下し、そのまま何事も無かったかの様に大地を圧し潰した。

 

凄まじい圧力により盛大に陥没する大地。局地的な地揺れが発生し地響きが鳴り響く。

それは宛ら、大地が上げた悲鳴の様だ。

一瞬にして超重力を掛けられた農地は200m四方、深さ5mの巨大な貯水池となった。

 

そしてチラリとランズィ公達を見ると、護衛も含めて全員が顎が外れんばかりにカクンと口を開けて、目も飛び出さんばかりに見開いていた。

誰もが衝撃が強すぎて声が出ていない様だが、全員が内心で「なにィーー!?」と驚いているのは明白だな。

 

神代魔法を半分程の出力で放ったユエは「ふぅ」と息を吐く。

魔力枯渇という程ではないが、一気に大量に消費した事に変わりはなく僅かだが倦怠感を感じたようだ。

フラリと背後に体を倒れさせるユエ、勿論背後の俺がそれを支える。

序に向かい合うように抱き上げると、ユエは嬉しそうに頬を緩め、俺の首に腕を回すと抱きしめ返す。

 

ユエ「……いただきます。」カプッ!チュ~……

そして、そのまま俺の首筋に噛み付き、吸血を開始する。

ユエは、うっとりと瞳を潤ませながら、何度も何度も俺の首筋に舌を這わせる。

……何故だろう、別にそういう意図がある訳でもないのに、変な罪悪感がする気がした。

 

ユエ「んっ……あむっ……ぴちゃぴちゃ……あふぅ……。」

ハジメ「ユエ、わざとやってない?」

小さな喘ぎのような声と淫靡さの漂う音を立てるユエに、思わずジト目になった。

前々からそうだが、どうしてそう天然なエロスを撒き散らすのだろうか。

 

そんなことを思いながら、申し訳なさそうにランズィ公達の方を見れば、やはりというか周囲の男達は前かがみになっていた。

否、ランズィ公のみ流石というべきか、驚愕からも立ち直り、鋭い眼光でこちらを見ている。

頭の中では色々考えているのだろう。なんだか、うちのエロ吸血鬼がごめんなさい。

ちょっと鼻息が荒い気がするし、目も血走っている気がするが、いたって真面目に考察しているに違いない。

 

因みに、ティオは背後からミュウを抱きしめて、しっかり見えないようにしてくれていた。

ミュウは「見えないの~」としきりに文句を言っていたが背後から抱きしめられ、シアを超える巨乳に後頭部からすっぽり収まってしまっているため抵抗は出来ないようだ。

 

トネリコは呆れてそれを見ており、トシはいつも通り、明後日の方向を向いていた。

そして、俺から貰った血を"血力変換"により魔力に変換したユエは、そっと俺の首筋から体を離すと、一度舌舐りし、今度は唇にキスをしようと――

 

ハジメ「……いい加減になさい。」

ユエ「あぅ……。」

する前に、俺に止められたのであった。

俺はユエをティオに預けると、貯水池の淵に立ち、両腕を前に出す。

 

ハジメ「"鉱物分離"、"収束錬成"。」

すると、周囲の土中から砂鉄と鉱物が集まり始め、それらが薄く展開されると貯水池の表面をコーティングしていく。

これなら砂に水が吸収される心配はないだろう。さて、後は水だな。

 

トネリコ「"氾禍浪"。」

今度はトネリコが、水系上級魔法を唱える。この魔法は、大波を作り出して相手にぶつける魔法だ。

普通の術師では、大波と言っても、せいぜい10から20m四方の津波が発生する程度だが、俺達の中に普通の術師なんていない。

 

いるのは、魔術理論の天才と回復魔法のエキスパート、フィジカルバグウサギに博識ドラゴン、無限再生可能なチート吸血鬼に時空をこの手の掴む魔王、それと魔物の大軍を支配できるヤヴァイ黒魔導士だ。

そんなわけで、横幅150m高さ100mの津波が虚空に発生し、一気に貯水池へと流れ込んだ。

この貯水池に貯められる水の総量は約200,000tだ。

途中でユエやトシが交代し、俺も試しに水遁・滝壺の術と大瀑布の術を試してみた結果、あっという間に溜まっていった。

 

ランズィ「……こんな事が……。」

ランズィ公は有り得べからざる事態に呆然としながら、眼前で太陽の光を反射してオアシスと同じ様に光り輝く池を見つめた。

最早言葉も無い様だ。

 

ハジメ「取り敢えず、これで当分は保つでしょう。

後はオアシスを調べてみて……何も分からなければ、稼いだ時間で水については救援要請すればよろしいかと。」

ランズィ「あ、ああ。いや、聞きたい事は山程あるが……ありがとう。心から感謝する。

これで、我が国民を干上がらせずに済む。オアシスの方も私が案内しよう。」

 

ランズィ公はまだ衝撃から立ち直りきれずにいる様だが、それでもすべき事は弁えている様で誠意を込めて礼をした。

そのままオアシスへと移動した俺達。

オアシスは相変わらずキラキラと光を反射して美しく輝いており、とても毒素を含んでいる様には見えなかった。

しかし……

 

ハジメ「領主殿、調査団はどの程度まで調べましたか?」

ランズィ「……確か、資料ではオアシスとそこから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査を行った様だ。

水質は息子から聞いての通り、地下水脈は特に異常は見つからなかった。

尤も、調べられたのはこのオアシスから数十mが限度だが。オアシスの底まではまだ手が回っていない。」

成程……それならオアシスの底にあった反応に気が付かないのも納得だ。

 

ハジメ「オアシスの底には、何かアーティファクトでも沈めてあるのですか?」

ランズィ「いや、オアシスの警備と管理にとあるアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある。

結界系のアーティファクトでな、オアシス全体を汚染されるなどありえん事だ。

事実、今までオアシスが汚染された事など一度も無かったのだ。」

ランズィ公の言うアーティファクトとは"真意の裁断"と言い、実はこのアンカジを守っている光のドームの事だ。

 

砂の侵入を阻み、空気や水分等必要な物は通す作用がある便利な障壁らしいのだが、何を通すかは設定者の側で決める事が出来る。

そして、単純な障壁機能だけでなく探知機能もあり、何を探知するかの設定も出来る。

その探知の設定は汎用性があり、闇属性の魔法が組み込まれているのか精神作用も探知可能なのだ。

 

つまり、『オアシスに対して悪意のあるもの』と設定すれば、"真意の裁断"が反応し設定権者であるランズィ公に伝わるのである。

勿論、実際の設定がどんな内容かは秘匿されており領主にしかわからない。

因みに、現在は調査などで人の出入りが多い上既に汚染されてしまっている事もあり警備は最低限を残して解除されている。

 

ハジメ「……領主殿、今から言うことを落ち着いて聞いてください。

オアシスの底にアーティファクト以外の反応がありました。それも生き物――魔人族の魔物が。」

ランズィ「なんだとっ!?では、今回の騒動は……!」

ハジメ「十中八九奴等の妨害策です。獣人達に砂漠越えは難しいでしょうし、人間族は論外ですからね。」

 

それを聞き、【アンカジ公国】自慢のオアシスを汚され悔しそうに拳を握り締めるランズィ公。

俺は彼を宥めつつ、オアシスの底目掛けて青緑色の波紋疾走(ターコイズブルーオーバードライブ)を流す。

すると、オアシスの中央付近に僅かな反応があった。どうやら奴はそこにいるようだ。

 

ハジメ「ちょっと、乱暴しますよ。」

そう言ってオアシスから手を放して靴を脱ぐと、先程反応のあった場所へと波紋法で移動した。

そして、例の場所についた俺は、右手に雷光を溜めると、奥底目掛けて降りぬいた。

 

ハジメ「蒼稲妻の波紋疾走(ライトニングブルーオーバードライブ)!」

その拳から放たれた波紋は、水中であろうともその速さを失わずに、奥底に潜む存在へと直撃した。

余波で少しオアシスが波打ったが……来たか!

 

シュバッッ!

 

風を切り裂く音と共に、水が無数の触手となって俺達に襲いかかった。

慌てるランズィ公等を他所に、俺達は魔法や障壁で迎え撃った。

その直後、何かに引っ張られる様に水面が突如盛り上がったかと思うと、重力に逆らってそのまませり上がり10m近い高さの小山になった。

 

ランズィ公「何だ……これは……!?」

ランズィの呆然とした呟きが、やけに明瞭に響き渡った。

*1
道中で増幅させたジーニアスの成分を生成しておいたボトルにこめたもの




今作では浄化度合いは原作準拠で行きたいと思いますので、ご了承ください。
後、クローズドラゴン君にはマジで助けられました。

もしもfateとのトリプルをやるとして、どんな女性サーヴァントと組ませたい?(モルガン・トネリコは本編で準レギュラーなので除く))

  • アルトリア(青王)
  • モードレッド
  • 玉藻の前
  • スカサハ
  • レディ・アヴァロン
  • 宮本武蔵
  • 沖田総司(オルタ含む)
  • 伊吹童子
  • ティアマト
  • ミスクレーン
  • 魔王信長
  • ククルカン
  • ジャンヌ(オルタ・メタ含む)
  • ネロ
  • アルテラ
  • 源氏鯖(頼光・義経・巴)
  • 河上彦斎
  • いっそのことカルデア入り
  • その他(活動報告欄で入力)
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