Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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注:前半はタイトルとは何も関係がありません。次回から大火山へ行きます。
後、香織は治療に専念しますので、今作では空間魔法取得は後日となりますので、ご了承ください。


00:59/塞ぐ唇

波紋疾走によって浮かび上がってきたのは、体長約10m、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持っていた。

その姿はスライム……そう表現するのが一番分かりやすいだろう。だが、やはりサイズがおかしい。

 

ランズィ「こ、このバチェラムが元凶……なのか?」

呆然とランズィ公がそんな事を呟く。バチェラムとは、トータスにおけるスライム型の魔物の事だ。

彼の言う通り、この世界のスライム型の魔物はせいぜい体長1m位で、周囲の水を操る様な力も無い。

少なくとも触手の様に操る事は、自身の肉体以外では出来ないので、やはり魔人族の仕業だろう。

 

ハジメ「間違いないでしょう、奴等は生物に関する何らかの秘術でも用いて魔物を進化させたんだと思います。

だから奴等は、より勢いを増したと考えるのが妥当ですね。」

ランズィ「……確かに、それもそうだな。だが倒せるのか?」

俺達が話している間も、まるで混乱している様に触手攻撃をしてくるオアシスバチュラム。

が、ユエ達の魔法による防御の前には及ばず、全て攻撃が防がれている。

 

ハジメ「大丈夫です……これで十分です。」

そう言って指を突き出し、槍のような形状にした操気弾を、雷光と共に勢いよく放つ。

雷を纏いながら放たれた気弾は、カクッと慣性を無視して進路を変えた魔石をまるで磁石が引き合う様に、或いは魔石そのものが自ら当たりにいったかの様に寸分違わず撃ち抜いた。

 

気弾の衝撃と雷の熱量によって魔石は一瞬で消滅し、同時にオアシスバチュラムを構成していた水も力を失ってただの水へと戻った。

ドザァー……と大量の水が降り注ぐ音を響かせながら、激しく波立つオアシスを見つめるランズィ公達。

 

ランズィ「……終わったのかね?」

ハジメ「えぇ、魔物は仕留めたました。ただ……やはり原因を排除しても浄化はされていないみたいです。」

その言葉に、自分達アンカジを存亡の危機に陥れた元凶があっさり撃退された事にまるで狐に抓まれた様な気分になるランズィ公達。

それでも元凶が目の前で消滅した事は確かなので、慌ててランズィの部下の一人が水質の鑑定を行った。

 

ランズィ「……どうだ?」

部下「……いえ、やはり汚染されたままです。」

ランズィ公の期待する様な声音に、しかし部下は落胆した様子で首を振った。

オアシスから汲んだ水からも人々が感染していた事から予想していた事ではある。

だが、オアシスバチュラムがいなくても一度汚染された水は残るという事実にやはり皆落胆が隠せない様だ。

 

ティオ「まぁ、そう気を落とすでない。元凶がいなくなった以上、これ以上汚染が進む事は無い。

新鮮な水は地下水脈からいくらでも湧き出るのじゃから、上手く汚染水を排出してやればそう遠くない内に元のオアシスを取り戻せよう。」

ティオが慰める様にランズィ公達に言うと、彼等も気を取り直し復興に向けて意欲を見せ始めた。

ランズィ公を中心に一丸となっている姿から、アンカジの住民は皆がこの国を愛しているのだという事がよく分かる。

過酷な環境にある国だからこそ、愛国心も強いのだろう。

 

ハジメ(……さて、オアシスの浄化自体は出来なくもないのだが……それでは俺1人で済んでしまうしな。)

実はこの先で手に入る神代魔法が、ハルツィナ樹海の迷宮を開く為の"再生の力"という可能性も捨てきれないのだ。

であれば、それを香織に習得してもらえば、回復魔法が更に飛躍するだろう。

 

それに、オアシスや土壌の浄化にも役立つかもしれないし、香織にとっても成長のチャンスになるだろう。

既に毒素の排出に関しては、クローズドラゴンがいれば何とかなるし、ミニジーニアスボトルの使い方も念の為に知らせておいたから、後はアンカジの人達に任せておいても良さそうだ。

 

ランズィ「……そういえばハジメ殿、貴殿はあの魔物が魔人族の仕業だと言っていたが、そう言うからには思い当たる事があるのだな?」

ハジメ「えぇ、【ウルの町】で豊穣の女神を狙って大群を差し向けたり、【ホルアド】の【オルクス大迷宮】でも勇者一行にも襲い掛かってきましたし……

ホント、行く先々で邪魔ばっかりしてくる奴等なんですよ。」

ランズィ「なんと……愈々本格的に動き出したという事か。

……ハジメ殿、貴殿は冒険者と名乗っていたが……その見識といい、強さといい、やはり香織殿と同じ……。」

ハジメ「まぁ、自分達にも事情があるんですよ。それに王都以外のピンチも救わなきゃ、でしょう?」

そう言って肩を竦めると、ランズィ公はそれ以上の詮索を止めた。なので話を続けた。

 

ハジメ「こんな小細工に魔物を使ってるってことは、魔人族の軍備は既に整いつつあるんでしょう。

今回も一気に仕掛ける前に危険や不確定要素、北大陸の要所に対する調査と打撃を目的として、やって来たに違いありません。

豊穣の女神や勇者達を狙ったのがいい証拠です。」

ランズィ「では、このアンカジが狙われたのは……食料の供給を断つ為、ということか。」

 

ハジメ「はい。

エリセンからの海鮮系食料に、こちらの名産品である果物等、多大な供給のある品ばかりですからね。

それに大砂漠のど真ん中という地理から救援も呼びにくいので、魔人族にとっては狙い目の要所でしょう。」

ランズィ「成程……。」

それを聞いたランズィ公は、低く唸り声を上げ苦い表情を見せた。

 

ランズィ「魔物の事はこちらでも聞き及んでいる。

独自に調査はしていたが……よもや、あんなものまで使役できるようになっているとは……

見通しが甘かったか。」

ハジメ「無理もないでしょう。王都でも恐らく新種の魔物の情報は掴んでいないでしょうし。

勇者一行が襲われたのもつい最近なので、今頃はあちこちで大騒ぎでしょうからね。」

まぁ、妄信主義の王都のアホ共(一部除く)よりは、しっかりしていると思うけど。

 

ランズィ「……ハジメ殿、ユエ殿、トネリコ殿、ティオ殿、幸利殿。

アンカジ公国領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、国を代表して礼を言う。

この国は貴殿等に救われた。」

ランズィ公がそう言うと、彼等の部下達も深々と頭を下げた。

 

本来、領主たる者がそう簡単に頭を下げるべきではないのだが……成程、愛国心は威信に勝る、という事か。

周囲の者達も止めない辺り、この国はとても素晴らしい信念を持っているようだ。

にしても……ビィズ殿と仕草も言動もそっくりだ。彼の真面目さは親譲りなのだろう。

 

ハジメ「領主殿、ご子息から死者が出ていると聞きましたが、その死体はもう埋葬しましたか?」

ランズィ「……は?」

ハジメ「必要なことなんです、お願いします。」

ランズィ「……いや、その時点では魔法が原因だと判明していなかったから、未知の病である可能性も考慮して弔いも出来ていない。」

ふむ、それならば或いは……行けるか?

 

ハジメ「わかりました。出来ればその死体を、一か所に集めておいて下さい。

死体が傷まない場所が好ましいでしょう。必要なら保存用の氷も幾つか出しますので。」

ランズィ「?あ、あぁ、了解した。

……それで、アンカジには未だ苦しんでいる患者達が大勢いる……それも、頼めるかね?」

?警戒させてしまったか?まぁいいか、静因石を採取すればそれなりの信頼も得られるだろうし。

 

ハジメ「元々、【グリューエン大火山】には用事で出向くつもりでしたし、構いません。

それに死体の移動もお願いしましたので、その代金だとでも思っていただければ、と。

ところで、どの程度採取する必要がありますか?」

あっさり引き受けた俺にホッと胸を撫で下ろしたのか、ランズィ公は部下に資料を持ってこさせ、現在の患者数と必要な採取量を伝えた。

……思ってた以上に、相当な量が必要そうだ。

 

ランズィ「かなりの量が必要だ、荷物持ちぐらいならこちらから出すが?」

ハジメ「いえ、この程度の量ならアーティファクトで運搬は可能です。」

ランズィ「……もう何でもありだな、これも神の御導きか。」

あらら、呆れられちゃったよ……まぁ、俺達チート軍団だし、何より俺魔王だし、しゃーない。

 


 

ハジメ「お~、頑張ってるなぁ……。」

話し合いも終わり、治療院へ出向くと、シアを伴った香織が、獅子奮迅の活躍を見せていた。

緊急性の高い患者から魔力を一斉に抜き取っては魔晶石にストックし、半径15m以内に集めた患者の病の進行を一斉に遅らせ、同時に衰弱を回復させる様回復魔法も行使する。

その手際のいいこと早いことよ。クローズドラゴンも頑張って解毒に努めている。

 

一方のシアは、動けない患者達をその剛力をもって一気に運んでいた。

馬車を走らせるのではなく、馬車に詰めた患者達を馬車ごと持ち上げて、建物の上をピョンピョン飛び跳ねながら他の施設を行ったり来たりしている。

急性の高い患者は、香織が各施設を移動するより集めて一気に処置した方が効率的だからな。

 

尤もこの方法、非力な筈のウサミミ少女の有り得ない光景に、それを見た者は自分も病気にかかって幻覚を見始めたのだと絶望して医療院に駆け込むという姿が多々見られたので、余計に医療院が混乱するという弊害もあったらしい。

 

医療院の職員達は、上級魔法を連発したり複数の回復魔法を当たり前の様に同時行使、それも無詠唱でやり切る香織の姿に驚愕を通り越すと深い尊敬の念を抱いた様で、今や全員が香織の指示の下患者達の治療に当たっていた。

クローズドラゴンの吐き出した毒素もしっかり封印されており、空気感染の心配はなさそうだ。

 

そんな彼等も、俺達が来たと知るや否や、医療院のスタッフや患者達が一緒にやって来たランズィ公に頭を垂れようとした。

それを手で制止しながら、ランズィ公は彼等の前に出ると、宣言した。

 

ランズィ「皆の者、聞け!たった今、オアシスを汚染していた原因が排除された!

時間はかかるかもしれないが、我等のオアシスが戻ってくるぞ!加えて水の確保も成った!

救援が来るまで十分に保つ量だ。更に、ここにいる金ランクの冒険者達が静因石の採取依頼を引き受けてくれた!

後数日だ、踏ん張れ!気力を奮い立たせ、この難局を乗り切ろう!」

 

耳に心地よいランズィ公のバリトンボイスが響く。

流石は北大陸の要所を治める貴族と言うべきか、その演説には力があった。

誰もが一瞬、何を言っているんだろうと戸惑った様に硬直していたが、領主の晴れやかな表情で言葉の意味が浸透したのだろう。

 

次の瞬間、建物が震える程の大歓声が上がった。

多くの人が亡くなり、砂漠の真ん中で安全な水も確保できず、絶望に包まれていた人達が笑顔を取り戻し始める。

患者やその家族達は互いに抱き合い、安堵に涙し、医療院のスタッフは仲間と肩を叩きあい気合を入れ直している。

幾人もの人々が俺達の協力に感謝を捧げた。するとその時、ランズィ公がチラリとこちらを見た。

 

まるで言外に「助けてくれないと私達死んじゃうからね?マジで頑張ってね?マジで依頼達成して帰ってきてね?こんなに喜んでいる人達が、感謝している人達が死に絶える……その罪悪感を味わいたくは、ないよね?」と言っているようだが……舐められたものだな。

 

ハジメ「そう心配せずとも、最初っから投げ出すつもりは毛頭ありません。

それに……実はここの果物も楽しみにしていたので、全力で解決しますから。」

ランズィ「!ははっ、そうか!それは失礼した。」

最後の理由に何処かほっこりしたのか、ランズィ公は笑みを溢した。そんな彼から視線を外した俺は、香織に声を掛ける。

 

ハジメ「香織、これから【グリューエン大火山】に行くんだが……患者はどれくらい残っている?

必要なら俺も手伝うよ。」

香織「ハジメ君……。」

その言葉を聞いた香織は嬉しそうに頬を綻ばせるが、直ぐに真剣な表情となって虚空を見つめた。

 

香織「ハジメ君。私は、ここに残って患者さん達の治療をするよ。

このままだと出発が遅れちゃいそうだし、ハジメ君達は静因石をお願い。」

ハジメ「そうか……それは仕方がないな。」

出来れば香織にも神代魔法を覚えてほしかったのだが……だとすると、大火山の神代魔法が"再生の力"でない方が個人的には助かるんだけどなぁ。

 

ハジメ「速攻で予備含めて採取してくるよ。だから……待っててくれ。」

香織「ふふ……そうだね、頼りにしてる。ミュウちゃんは私がしっかり見てるから。」

……何だろうな、この出張に出向く夫を見送る新妻みたいな展開は。

 

香織「私も頑張るから……無事に帰ってきてね。待ってるから……。」

ハジメ「あぁ……でも、少しの間離れちゃうから……。」

そう言って香織の顎に手を添えると、顔を近づけ……

 

チュ……

 

香織「んむぅっ!?」///

ハジメ「んっ、ちゅる……ぷはっ、その分前借りしとくわ!ここは任せたぞ、香織!」

唇同士を近づけ、舌を一絡めした。これで、あの夜の不意打ちキスのお返しは完了したな。

……って、あれ?香織の反応がない。もしかして、やりすぎて気絶しちまったか?

 

香織「~~~ッ!うんっ、頑張りゅっ!!」///

顔を赤くしながらも、凄い上機嫌な表情で答えてくれた。良かった、平常運転だ。

そんな香織を微笑ましそうに見ながら、俺達は【グリューエン大火山】へと向かう事にした。

事前に話は通してあったが、医療院で忙しい香織だけでなくランズィ公等にもミュウの世話を改めて頼んでおく。

 

俺達の青春じみた光景に苦笑いしつつも、ランズィ公は快くミュウの世話を引き受けてくれた。

予め言い聞かせてあったものの、俺達が出発すると雰囲気で察した途端寂しそうに顔を俯かせるミュウ。

そんなミュウに、俺は膝をついて目線を合わせると、ミュウの頭をゆっくり撫でた。

 

ハジメ「ミュウ、少し山登りに行ってくる。いい子で留守番してるんだぞ?」

ミュウ「うぅ、いい子してるの、だから早く帰ってきて欲しいの、パパ。」

ハジメ「あぁ、勿論さ。ミュウの為なら光すらも超えて見せるさ。」

服の裾をギュッと両手で握り締め泣くのを我慢するミュウを、優しく宥めながら香織に渡す。

何やら視線が温かいが……まぁ、良いか!こうして俺達は、【グリューエン大火山】へと出発するのだった。




ユエ「ハジメ、私にもキス。」
シア「あっ、じゃあ私も!」
ティオ「妾も接吻を所望するのじゃ。」
トネリコ「わっ、私も……。」
ハジメ「……。」
やっぱりこうなりましたとさ、ちゃんちゃん。(by 幸利)

もしもfateとのトリプルをやるとして、どんな女性サーヴァントと組ませたい?(モルガン・トネリコは本編で準レギュラーなので除く))

  • アルトリア(青王)
  • モードレッド
  • 玉藻の前
  • スカサハ
  • レディ・アヴァロン
  • 宮本武蔵
  • 沖田総司(オルタ含む)
  • 伊吹童子
  • ティアマト
  • ミスクレーン
  • 魔王信長
  • ククルカン
  • ジャンヌ(オルタ・メタ含む)
  • ネロ
  • アルテラ
  • 源氏鯖(頼光・義経・巴)
  • 河上彦斎
  • いっそのことカルデア入り
  • その他(活動報告欄で入力)
  • それって、貴方の癖ですよね?
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