Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する 作:天元突破クローズエボルハザード
ハジメ達が【海上の町エリセン】を目指して旅立った頃、【ハイリヒ王国】では光輝達が訓練に明け暮れていた。
と言っても、それは実力を向上させる為のものというよりは、【オルクス大迷宮】で突き付けられた現実的問題──
戦争に突入した場合に、果たして自分達は"人を殺す"事が出来るのか、という心の問題を解決する為の迷走じみた我武者羅なものだった。
実戦ですらない"訓練"如きでその様な大きな問題が解決する事など出来る筈も無く、当然の事として光輝達に進捗は見られなかった。
ある意味現実逃避とも言える事を、本人達も自覚している。
故に焦燥は募り、しかし踏み出す事も出来ず、彼等の心には鬱屈としたものが日々溜まっていく状態だ。
ましてや、自分達を率先して率いてくれていた勇者がその様な状態の筆頭格であるから、必然居残り組の生徒達のストレスも相当溜まっている様だった。
そんな暗い雰囲気の漂う王宮の片隅──訓練時間も終わった上、普段から殆ど使用されていない別の訓練場に、短くも鋭い呼気が響いた。
雫「はっ、疾っ!」
併せて、宙に無数の剣閃が走る。
綺麗な黒色の円を描くそれは、しかし残像が消えるよりも早く微かな音と共に鞘へと納められる。
刹那、再び抜く手も見せずに抜刀される。空間そのものを引き裂く様な鋭い斬撃。
それが振るわれる度に、少しだけヒュルン♪と揺れるのはポニーテールの毛先だ。誰もいない訓練場でただ一人。
贈られた漆黒の刀を振り続けるのは、クラスの良心にして他の追随を許さない苦労人こと、八重樫雫その人だった。
雫は連続して繰り出していた抜刀術を止めると、一度ゆっくりと深呼吸して瞑目した。
脳裏に浮かぶのは一人の女。赤い髪に浅黒い肌、自分達を敗走まで追いやった人間族の宿敵。
数多の魔物と、土属性の強力な魔法を操る魔人族。
自分達の知らないところで倒されたとはいえ、襲撃当時のイメージは鮮烈すぎる程明確だった。
抜刀体勢のまま、そっと添えられた右手は無意識の内に震えを帯びた。
雫(斬る、必ず斬る、斬らないと、殺さないと、今度こそ仲間が殺されるっ!!)
必死に己を叱咤する。あの時はハジメが助けに来てくれた。だが、そんな奇跡が何度も続く訳が無い。
そんな不確定なものに縋ってはならない。そうでなければ、今度こそ自分は大切なものを失う。だから、
雫「ッ、ハアッ!!」
気合一発、殺意を乗せた斬撃が放たれる。イメージの中の女魔人族を、雫は確かに斬った。
だが、それだけでは止まらない。一瞬顔を出した自分の弱気が、剣閃を鈍らせたという自覚がある。
敵の傷は浅い、甘えは許されない。故にその直後、更に背後へ一閃。
直ぐに体勢を立て直し、身を屈めて居合を放つ。
雫「セアァッ!!奔れ――"風爪"ッ!」
返す刀に生じた微風。それは、この刀を贈ってくれた男の技――爪熊から奪った魔法を付与した機能"風爪"。
腕輪によって魔力の直接操作を行うことで、初めて発動するそれは、王国の筆頭錬成師達を唸らせるほどの技術だった。
機能を十全に発揮した刀は、使い手のイメージを忠実になぞり、幻想の中の女魔人族を、今度こそ斬殺した。
雫「うっ、ぁ……。」
しかしその直後、僅かな呻き声が上がる。
雫は慌てて訓練場の隅に走ると、そこで胃から込み上げてきたものを吐き出した。
雫「ぅ!はぁ、はぁ、……まったく。訓練する度にこれじゃあ、食事が勿体ないわね。
かと言って見た目も味も適当過ぎる栄養食ばっかりじゃ、人として駄目になりそうだし……。」
大きく溜息を吐くと、雫はそんな独り言を呟いて苦笑いを浮かべた。
そうして、水筒や用意してもらったサンドイッチが置いてある木陰へフラフラと歩きだす。
訓練をすればこうなる事は分かっていた。食欲は無くても、吐き出したなら補給しなければ体が保たない。
無理をしてでも補給は必要だ。訓練場の外れに並んだ木の根元に腰を下ろし、先ずは水を一杯。
しっかり冷やしてある水が、火照った体と苦い口の中をさっぱりとさせてくれる。
雫「はぁ……。」
知らず溜息が漏れる。視線は陽の落ちかけている西の空を見上げている。すっかり夕暮れ時だ。
するとふと、雫は以前何処かで聞いた地球の事柄を思い出す。
情報源は家族かテレビか、はたまた教師や級友か、それとも件の
「日の落ちる夕暮れ時は、2種類ある。一つは、美しい夕暮れの光景が見れる時間帯――"黄昏"。
もう一つは、人ならざる不吉なもの……不思議や怪異といった災いが、地に紛れる落陽を門にやって来る時間帯。
――大いなる禍つの時、通称"逢魔ヶ時"。」
???「にゃ~。」
雫「え?」
と、その時。不意に鳴き声が響いた。驚いて視線を落とせば、そこにはいつの間にか栗毛色の猫がいた。
姿形は地球と同じ。トータスにも存在する普通の猫だ。
雫「あなた、何処から入って来たの?」
ここは王宮。高い壁と堀、そして背後の山が鉄壁を約束する場所。猫の子一匹入れる筈が無い。
雫がそっと手を伸ばしてみれば、猫は警戒する様子も見せずされるがままに撫でられる。
栗毛は艶やかで、よく手入れされているのが分かった。
雫「どこかの貴族の飼い猫かしらね。ご主人のところから逃げて来たの?」
猫「うにゃぁ~。」
首筋をなでなで。猫はゴロゴロと喉を鳴らして雫に擦り寄った。雫の"撫で"がお気に召したらしい。
自分に甘えてくる栗色の猫に雫は……
雫「……か、可愛い。」
だらしなく頬を緩めた。それも仕方のない事だ。雫とて女の子、可愛い物には目がないのだ。
そのせいか、先程までの殺伐とした空気も沈んだ気持ちも霧散し、"ごろにゃ~ん"する猫に夢中になる。
鍛錬で疲れているのだろう。
クールビューティで通っており、貴族の令嬢からは"お姉様"等と呼ばれる雫は──禁忌に手を出した。
雫「可愛いにゃ~♪
でも、飼い主さんから逃げてくるなんていけない子にゃ、そんな子は、雫さんがお仕置きしちゃうにゃぁよぉ~♪」
そう、禁忌"猫語で会話しちゃう"だ。
格好いい雫しか知らない令嬢達が今の雫を見たら、きっと己の正気を疑うか……
鼻から幸福感を垂れ流して血の海に沈む事だろう。
互いに"念話"のスキルがある訳でもないのに、にゃんにゃん言いながら人懐っこい猫を愛でに愛でまくる雫。
大切な事なのでもう一度。──雫は、疲れているのだ。
暫く撫でられるままだった猫は徐に歩き出すと、サンドイッチが入ったバスケットに鼻をつけてフンフンと嗅ぎ出した。
雫「どうしたのにゃ?サンドイッチが欲しいにゃ?」
猫は視線で訴える。「超欲しいにゃ。」と。可愛らしいおねだりに、雫はデレる。デレデレにデレる。
勿論拒否などしない。ただ用意したサンドイッチは、そのままでは大きすぎて猫が食べるには適さない。
雫「ちょっと待つにゃ~、今雫さんが切り分けてあげるにゃ~♪」
手で千切れよ、とツッコミを入れる者はこの場にいない。
しかし、サンドイッチを片手に、腰を落として抜刀体勢になったことにも、想像とはいえ人を斬った刀で食品を切ろうとする事にもツッコむ者もいない。
そしてイメージで人を斬った刀で、今度はサンドイッチを斬ろうとする女――八重樫雫。
三度目だが敢えて言おう、しずにゃんは疲れているのだ。
雫「奔れ――"風爪"ッ!」
きっと製作者のハジメからしても、「確かに時短には最適だけれども……。」と、やや微妙に想定外の使われ方に思わずツッコむであろう使われ方をした刀が、見事、空中に投げられたサンドイッチを撫でる。
原形を留めたままポトリと雫の掌に帰還したサンドイッチは、雫が器用にも片手で抜刀した瞬間、パラリと形を崩して1cm角切り分けられた。
猫さんにいいところを見せちゃった、と思っているらしい雫はキメ顔で言った。
雫「また、つまらぬ物を斬ってしまったにゃ。」
そしてキメ顔のまま振り返り──
リリアーナ「……。」
雫「……。」
目が合った。猫とではない、生暖かい眼差しをした……リリアーナ王女と。キメ顔のまま固まる雫。
無言の王女様。静寂が場を支配する。いつの間にかサンドイッチが一つ無くなっていて、猫の姿も無い。
ヒュルリと風が吹き、そして沈黙が破られた。
リリアーナ「……つまらぬ物を、斬ってしまったですにゃ?」
王女様が尋ねる。しずにゃんの返答は……
雫「う……うにゃああああああああああああっ!?」///
勿論、猫語の絶叫だった。
雫「見ないでぇ、こんな私を見ないでぇ!いっそ殺してぇ!」
リリアーナ「ま、まぁまぁ。いいじゃないですか……フフ、とっても可愛かったですよ雫。」
訓練場の片隅で、羞恥で崩れ落ちている雫。
リリアーナはそんな彼女の傍らに腰を落とし、クスクスと笑いながら慰めている。雫の復活には暫く時間がかかった。
どうにか精神を立て直した雫は、少し恨めしそうな眼差しでリリアーナに尋ねる。
雫「それで?リリィはどうしてここに?
こんな人気の少ない訓練場に態々来るなんて、私に用があったのでしょう?」
その言葉に、リリアーナは少し表情を引き締めて口を開いた。
リリアーナ「用があったのは確かですが……光輝さん達の傍に、姿が見えなかったもので。」
どうやら、仲間と一緒にいなかった事で心配をかけたらしい。雫はリリアーナの心遣いに笑みを浮かべる。
雫「心配してくれたのね、ありがとうリリィ。でも、私は大丈夫よ?」
リリアーナ「ですが……どうしてこんな所で、それも一人で……。」
無性に一人になりたい時がある──そんな言葉を、雫は悟られぬ様グッと呑み込んだ。
だが、幼い頃から権力者同士の権謀術数を相手取ってきたリリアーナ相手には誤魔化し切れなかったらしい。
リリアーナ「雫、貴女は無理をし過ぎです。
国の為に頼っている私が言うのは、烏滸がましいかもしれませんが……。」
雫「烏滸がましいなんて思ってないわよ。
私達の為にリリィがどれだけ心を砕いてくれているか、私達はよく知っているんだから。
それに、私も無理なんてしてないわ。
ただ、今の光輝達は色々複雑だから、時にはこうして距離を取る事も必要なのよ。」
リリアーナには、その言葉が全てだとは到底思えなかった。
だが「大丈夫!」と笑顔で言い切る雫に、これ以上は逆に困らせるだけかと思い話題を転換する事にした。
リリアーナ「やはり、光輝さん達は相当参っていますか?」
雫「そうね、オルクスでの敗戦はそう簡単に割り切れないでしょう。
特に光輝に関しては、香織の事もあるから。」
想い人と旅立っていった親友を想い、雫は西の空を眺める。
リリアーナ「寂しいですか?」
雫の横顔に寂寥を感じた訳ではない。
ただなんとなく、その眼差しに感じるものがあってリリアーナはそう尋ねた。
雫「別に、寂しくはないわよ?ここにいなくても香織とは繋がってる、そう信じているし。
……それに、こうして探しに来てくれる心配性なお姫様もいるしね?」
ちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべながらそんな事を言った雫に、リリアーナは思わず雫の"妹"を自称する者達と同じ様に頬を染めてしまった。
リリアーナ「流石、皆のお姉様。」
そう言った途端、雫がリリアーナの頬をむにぃと摘んだ。お姉様呼びに対するお仕置きらしい。
きっと自称"妹"達からすればご褒美だろう。
リリアーナの耳に「妬ましいィ!羨ましいィ!」という令嬢達の怨嗟の声が響いた。
雫「それで?肝心の用の方は何だったの?」
自分の話題はもう十分だと、雫がリリアーナに当初の用件を尋ねる。
頬摘みの刑を受けたリリアーナは、先程とは別の意味で頬を染めながら答えた。
リリアーナ「魔人族の変化と、ハジメさんの事です。」
雫「やっぱりその話ね。それで、陛下や教会側は何て?」
【オルクス大迷宮】より帰還してから今まで、王宮は相当荒れていた。無理もない話だ。
雫達の報告によれば、魔人族は強力無比な魔物の軍勢を保有しつつあり、勇者パーティが敗走せざるを得なかったというのだ。
人間族滅亡の危機である。
同時に、現状で人間族の希望となる筈だった勇者をして追い詰められた相手を、理不尽とも言うべき圧倒的な力であっさり駆逐したハジメの事も、王国と教会を騒がせた原因だった。
早馬により、【ウルの町】での事件については簡単な報告はなされている。
だが、事が事だけに誰もが半信半疑だったのだ。【オルクス大迷宮】での事件は、その疑いを晴らすに足るものだった。
嘗て生産職の"錬成師"でありながらも、戦力で言えば人間族の最高峰に位置していたハジメの生存。
その圧倒的な力の秘密。聖剣ですら敵わなかった相手を、いとも容易く倒して見せた未知のアーティファクト群。
これだけの情報だけでも、魔人族の脅威から人間族を救い得る可能性が多分にある。興味を抱かずにはいられないものだ。
にも拘わらず、当の本人は帰還するどころか独自に行動しており、国王や魔人族の王を同列の愚王と嘲笑するばかりか、信奉する神を虚像と貶し、剰え自分の意にそぐわないなら相手が国でも教会でも、ましてや神や世界であろうと滅ぼすと脅したという。
当然、王国や教会の上層部からすれば腸の煮えくり返るどころか激昂する話であり、その処遇についてどうするべきかはここ数日の話題の種だった。
正に『会議は踊る、されど進まず』という状態だったのだ。
そんな状況にも遂に終わりが来て何らかの結論が出たのと期待した雫だったが、リリアーナは珍しくも溜息を吐きながら頭を振った。
リリアーナ「結論という程のものは何も出ていません。魔人族に関しては、一刻も早く勇者──
光輝さん達に対抗出来る力をつけさせろとか、魔物の大群を操れる生徒がいたなら他にもいるかもしれないから天職を調べ直そうと、そういう話ばかりです。
……問題は実力よりも心の方にあるというのに、教会の方々はそれが分からないのです。
『神の使徒に選ばれておいて、何故敵を討つ事に悩むのか?』、『何故与えられた使命に喜びを感じないのか?』等々……。」
リリアーナとて聖教教会の敬虔な信者だ。
その彼女が教会の人間に対しその様な物言いをする事に、雫が不思議そうな表情をする。
雫の疑問を察して、リリアーナは苦笑いを浮かべた。
リリアーナ「現実的問題に対して、思想や感情を切り離すのは得意ですから。」
王女の神髄此処に見たり。まだ14歳という年齢を考えると、雫としては微妙な表情をせざるを得ない。
ハジメが聞いたら、「今の国王よりもよっぽど適正あるけどなぁ。」と、漏らしそうな発言であった。
リリアーナ「まぁそうは言っても、教会の方々も以前はここまで極端ではなかったと思うのですが……
やはり、余裕が無くなってきているのかもしれませんね。
兎に角、教会側から無理のあるアプローチがなされるかもしれません。
光輝さん達が不安定な今、何が切っ掛けで危ない方向へ転がるか分かりませんから、一応事前に話しておこうと思った訳です。」
雫「そういう事ね……うん、分かったわ。ありがとうリリィ。」
心構えが有るのと無いのでは全く違う。
事前に知っていれば、何か吹き込まれてもある程度は受け流して自分の頭でしっかり考えられるだろう。
雫「それで……ハジメ君については?」
その質問に、リリアーナは一瞬だけ言葉に詰まった。雫の中に嫌な予感が過る。
残念なことに、その予感は当たっていたらしい。
リリアーナ「ハジメさんに、異端者認定の話が出ました。」
雫「……冗談、ではないのね。」
リリアーナの言葉に、雫は思わず天を仰いだ。何なら両手で顔を覆ってしまった。
──異端者認定。
全ての人間に、法の下の討伐が許されるという教会の有する強力な権力の一端。
神敵であるが故に、認定を受けた者に対しては何をしても許される。
また、認定を受けた者に対する幇助目的の一切の行為が禁じられる。
それは即ち、この世界で生きる事を許さないという決定だ。
以前されたその説明を思い出し、雫は思わず頭を抱えた。
それはつまり、あの南雲ハジメに、勇者である光輝をたった一撃で戦闘不能にまで追い込んだあの男に、正当防衛という名の反撃の口実を与えるという事だ。
雫とてハジメの実力は知っている。何なら本人も簡単に話してくれたのだ。
時間操作、自然発火、ダメージ無効、武装の大量展開、未来予知、巨大ブラックホール、透過に大量分身……
どう聞いてもチートのオンパレードであるというのに、これだけでもほんの一部の能力でしかないと本人は言う。
もし本当に異端者認定されたなら、討伐隊も派遣されるだろう。そうなればその急先鋒に抜擢されるのは十中八九自分達だ。
つまり、ハジメの性格上手加減されるとはいえ、その圧倒的な力が自分達に向けられるという事だ。
それを思い、雫は無意識の内に身震いした。
因みに、ハジメさんは一応クラスメイト達やこの世界の良識人達は、軽症で済ませるつもりだが、他は一切容赦なくぶっ飛ばすつもりだった。
なんなら魔人族だろうと教会だろうと殲滅するし、必要なら国も神も消すので、自分を相手にするとはそういうことだろうと認識している。
リリアーナ「あくまでそういう話が出たというだけです、まず認定が下される事はありませんよ。
『教会に従わないから』なんて理由で発令される程、軽い認定ではないのです。ただ、人の口は決して閉ざせないもの。
会議の中での勢い余った発言であったとしても、一度そういう話が出たという噂は流れるかもしれません。
そして異端者認定の候補に挙がったというだけで、ハジメさんに対する認識はあまりいいものにはならないでしょう。」
雫「……つまり、"流されるな"と言いたいのねリリィは。」
頭の中を駆け巡る最悪の未来を片隅に追いやり、雫は冷静に返す。
リリアーナ「はい。人間族存続の危機ですから、発言が過激になるのはやむを得ない面もあります。
そのせいで、そういう話が出たというだけです。雫達がこの話を耳にしても、どうかそれぐらいの認識でお願いしますね。
ハジメさんに対してどういう方針を取るべきかは、愛子さん達が帰ってきて報告を聞いてからになります。」
真剣な眼差しでそう忠告するリリアーナの真意を、雫は正確に読み取った。
リリアーナは、ハジメが戻ってきた時の居場所を守ろうとしているのだ。
ハジメのことは勿論、リリィ自身の為という事もあるだろうが、一番は彼に付いていった香織の為だろう。
親友の下に戻っても、そこに想い人の居場所が無いというのは、きっと辛い事だ。
尤も、敵対者によっては情け容赦なく踏み潰すハジメのことなので、寧ろ力づくで居場所を作る事も出来るだろうが。
尚、雫は知らない。ハジメの持つオーマジオウの真の力は、世界や時空を創造して破壊する力であることを。
それはさておき。
雫「本当に、ありがとうリリィ。」
雫は親愛の情をたっぷりと込めて礼をした。
リリアーナ「……神の御意志とは言え、こちらの事情に巻き込んでいるのです。
出来る事ぐらいはしませんと、それこそ神に顔向け出来ません。
それに……雫も香織も、私の大切なお友達ですから。」//
そう言ってリリアーナは、少し照れた様に顔を背けた。
雫はそれを見て思わずリリアーナを抱き締めて、「お友達じゃなくて親友でしょ!」と訂正する。
リリアーナの頬は真っ赤に染まった。
その後、話し合う事を話し合った2人は、ガールズトークへと突入した。
王女という立場のリリアーナと、クラス一の苦労人という立場の雫は、互いに気苦労が絶えない。
それ故に、友達同士の何でもないお喋りの時間というのが何よりも心癒す一時だったのだ。
但し。2人が楽しむ代償として、幾人かの尊厳が犠牲になっていたりする。
例えば、香織に恋心を抱いていたランデル殿下がショックで寝込んだ挙句、ここ最近は毎晩リリアーナに泣きついてくるという話。
そのランデル殿下が復活したと思ったら、いきなり光輝の下へ行き「香織を取られるとは何たる体たらく!男として恥ずかしくないのか!?」などと叫び、光輝が胸を押さえて四つん這いになった話。
そして自分の言葉がブーメランになって返り、同じ様に四つん這いになったランデル殿下の話。
いずれも本人達が聞いたら、数日は寝込むだろう黒歴史な話。
そしてハジメや香織の話。
日本においてハジメが起こした出来事や彼の対人関係、香織がゲームショップで起こしてしまった悲しい事件(笑)等々。
2人が聞いたら香織は慌てて弁解するだろうし、ハジメは苦笑いしながらも詳細を話してくれるはずだ。
そんな2人を想像した雫は思わず笑いが込み上げる。
生のガールズトーク。それは、古来よりこの世の知るべきではない事柄の一つ。
男子禁制の
それに区切りがついたのは、日もとっぷりと暮れて夜の帳が降り始めた頃だった。
リリアーナ「それでは雫、私は戻りますね。本当に無理をしては駄目ですよ?」
雫「えぇ、分かってるわ。今日は私も部屋に戻る。色々ありがとう、リリィ。」
漸く犠牲を強いるお喋りに区切りをつけた2人は、互いに少しはストレスが発散された様な朗らかな笑みを浮かべ合った。
廊下の分かれ道まで来て、自室へ戻るリリアーナの背を見送る雫。
暫く、異世界で出来た優しい親友の王女様を見つめる。
そしてどこか暖かい気持ちを抱きながら、雫自身も別の廊下へと一歩を踏み出して——
雫「ッ!!?」
一瞬、背筋に氷塊を流し込まれた、様な気がした。刀に手を置き、抜刀体勢で振り返る。
油断無く視線を巡らせるが、そこには王宮の明かりと薄暗い廊下しかない。
雫「気のせい、かしら……?」
息を殺して気配を探るが、結局周囲には何も無い様だった。
警戒態勢を解いた雫は、「リリィの話で、私も少しナーバスになっているのかしら?」と自己診断して溜息を吐いた。
踵を返して雫は歩みを再開する。仲間の下へと戻るその足は、いつもより少し足早だった。
まるで、何かに追い立てられる様に。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ゴチゾウについては、今章の終盤で触れていきたいと思いますので、お楽しみに!
もしもfateとのトリプルをやるとして、どんな女性サーヴァントと組ませたい?(モルガン・トネリコは本編で準レギュラーなので除く))
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アルトリア(青王)
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モードレッド
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玉藻の前
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スカサハ
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レディ・アヴァロン
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宮本武蔵
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沖田総司(オルタ含む)
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伊吹童子
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ティアマト
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ミスクレーン
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魔王信長
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ククルカン
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ジャンヌ(オルタ・メタ含む)
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ネロ
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アルテラ
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源氏鯖(頼光・義経・巴)
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河上彦斎
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いっそのことカルデア入り
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その他(活動報告欄で入力)
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それって、貴方の癖ですよね?