Re.ありふれない錬成師で最高最善の魔王、世界最強を超越する   作:天元突破クローズエボルハザード

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Q.このイベントはスキップできないんですか?
A.レミアとの絆レベルを上げられる重要なイベントなので、スキップ非推奨です。


00:70/輝く海のレジェンダリー

ゆるりと肌を撫でる潮風と、優しいさざ波の音がする。

まるで時間すら遠慮して、そろりそろりと遅く歩いているかのような平穏。

そんな光景の中で、俺は溜息を零していた。

 

【メルジーネ海底遺跡】を攻略してから今日で4日目。

世話になっているミュウ&レミア邸の海に面したウッドデッキで、俺は胡坐を搔きながら今後の冒険で必要になりそうなアーティファクトの作成に取り掛かっていた。

造っているのは、飛空艇に太陽光収束レーザー、超長距離転移用ゲート等々、これまでにない強力なものだ。

作成自体、これまでの経験と培ってきた力のおかげで難なく進んでおり、後は試運転を残すばかりだ。

では、なぜ溜息をついていたのか。その理由は……

 

ミュウ「パパぁ~、お昼ご飯なの~!!」ザバァッ

海中からトビウオの様に飛び上がってきたのは、当の悩みのタネである海人族の少女。

そして、我が愛しき義理の娘ミュウである。

波飛沫を侍らせたまま、何の遠慮もなく胸元へ飛び込んできたので、しっかりと抱き留める。

すると、そのままぐりぐりと顔まで押し付けてくる。なんとも愛らしい。が、それはそれ。

 

ハジメ「ミュウ、ちゃんと乾かさないとダメだよ?風邪ひいちゃうから。」

ミュウ「ごめんなさいなの~。」

とはいえ、まだ4歳位なのでゆるんゆるんで叱る。ミュウもゆるんゆるんに返す。

全くもって甘えん坊な我が娘だ……え?娘にだだ甘な親バカパパが言うなって?はて、なんのことやら。

 

ハジメ「そう言えば、ユエ達は?」

ミュウ「先に行ってるの。ミュウはパパを呼びに来る任務を受けました!」

キリッとした顔で、ちょっと得意げに鼻をピスピスと鳴らすミュウ。思わず、ハートにキュンッ!と矢がぶっ刺さった。

 

ハジメ「そうか~、ミュウは偉いね~、ありがとう~。」

そう言って優しく撫でる。ミュウも「うふふ~」とレミア遺伝のほわんほわんな笑顔を見せた。

レミアの子供時代もこんな感じだったのだろうか?思わず気になりかけるが、直ぐに意識はミュウへと移る。

するとミュウも、微睡んでしまいそうな心地よい空気からハッと我に返ったのか、キレのある動きで立ち上がり、俺の手を引いた。

 

ミュウ「パパ、はやく!ママのごはんが冷めちゃうの!」

ハジメ「そうだね、キリもいいし今日はここまでにしよう。抱っこしようか?」

ミュウ「……に、任務中なので!」

そう……これが理由なのだ。

 

俺達の旅の再開、そしてミュウとの別れをどう切り出せばよいか……迷宮攻略前からずっと悩んでいたのだ。

それに、ミュウも彼女なりに見送る覚悟を決めようとしているのだ。4歳の子供にとっては、苦渋の決断だろう。

だからこそ、心苦しいのだ……そんな苦悩を抱えながら、ミュウの小さな紅葉のような手に引かれて、俺は食卓へと向かった。

 

賑やかな昼食の一時。何故か料理をやたらと露天風串焼きスタイルにしたがるミュウ。

フューレンで食べた、串焼きが余程気に入ったのだろうか?その割には、口元が汚れてしまっているが。

そんなミュウの特等席は、俺とレミアの間。

当然、レミアが「あらあら。」と困った表情で、俺が「ちゃんと噛めよ。」と苦笑いして、交互にミュウの口元を拭っている。

実に微笑ましい三人家族の日常――みたいな光景だ。

 

香織「うぅ~、羨ましいなぁ。」

シア「むぅ。旅の間は、ほとんど私がレミアさんのポジションでしたのに……。」

ティオ「ホホホ、ミュウは余程ご主人様とレミアが好きなのじゃなぁ。」

その光景を見ていた香織とシアはむむむっと唸り、ティオはそんな2人にカラカラと笑っていた。

 

ユエ「子供欲しい子供欲しい子供欲しいハジメの赤ちゃん欲しい子供欲しい――」

トネリコ「あ、あの~ユエさん?落ち着いて……いますね。」

幸利「正気のままでアレかよ。」

一方、ユエは願望を決壊したダムの如く溢れ出させ、その様子をトシとトネリコにツッコまれていた。

 

レミア「あらあら……そう言えば皆さん。今日の冒険はどうでした?」

おぉ、流石は一時の母というべきか。あらあらうふふっと、おっとり笑顔で空気を読み、話題を逸らしてくれた。

これが幾つもの争いを止めたというエリセン名物、"レミアのゆるふわスマイル"か……恐るべし!

 

ミュウ「みゅう~、なんにもなかったの。」

ワイルドに串の魚肉を食い千切ったミュウは、いかにもがっかりした様子を見せる。

連日、ミュウ率いるユエ達冒険者パーティは、エリセン近海で冒険ごっこをしているのだが、今日も今日とて成果はなかったらしい。

 

ユエ「……ん。"エリセン建設時の隠し資金"は見つからなかった。」

ティオ「小さな洞窟は、幾つも見つけたんじゃがなぁ。」

香織「海底洞窟とか鍾乳洞とかは幻想的で良かったんだけどね。」

シア「これで"エリセン七大伝説"は6つ目まで空振りですね~。」

"エリセン七大伝説"とは!所謂《いわゆる》、地方の都市伝説だ。

今回の隠し資金の他にも、そういった都市伝説が幾つかあるのだ。

 

幸利「……"幸福もたらす人面魚"は、ハジメがフューレンで見たっていう奴じゃね?」

トネリコ「"海の亡霊"や"濃霧の中のゴーストシップ"も、結局見つかりませんでしたね……。」

ハジメ「"海底都市"は恐らくエリセンの前身であった、海上都市が沈んだ結果だろう。

実際にその記録があったからな。」

後、個人的に"海賊王の遺産"はかなり期待していたんだがな……歴史の(ポーネ)「おいバカやめろ。」(´・ω・`)

とはいえ、あくまで伝説は伝説。本職でも何も見つけていないので、空振りするのは当然だ。

 

ミュウ「みゅう~、現実(リアル)はいつだって非情(リアルぇ)なの……。」

ハジメ「……ミュウ、そんな言葉を何処で覚えてきた?」

ミュウ「みゅ?パパが寝言で偶に言っていたの!」

畜生、俺のバカ。内心でそう叫び、思わず頭を抱えた。

レミアも、娘が最近訳の分からない用語をよく使うせいか、何とも言えない困った様子だった。

 

ハジメ「まぁ、あれだ。そんなに気を落とさないでよ、ミュウ。まだ後1つ、最後に残っているでしょ?」

ミュウ「みゅ。"輝く海の意思"が残ってるの。」

いつ誰が言い始めたのかも、どこから伝わったのかもわからない、最古にして最も内容がはっきりしない海の伝説――"輝く海の意思"。

 

何でも、光の海が現れるのだという。

時間も場所も不明で、水平線の彼方まで光に溢れ、そこには"何か"がいて、その"何か"に遭遇したものの願いが叶うらしい、とのことだ。

如何にもロマンチックな光景だろう、出来る事なら写真も撮りたいが……見つかるといいなぁ。

 

ハジメ「午前中は一緒に行ってやれなかったけど、午後からは大丈夫だよ。

折角の冒険だし、今回は思い切って夜の海にお泊りで行こうか!」

ミュウ「みゅ!お泊りで冒険!行きたいの!」

一瞬、何かを我慢するみたいに眉をキュッと寄せつつも、直ぐに満面の笑みを浮かべて賛同するミュウ。

レミアも、愛おしそうに目を細めてミュウの頭を撫でる。

 

ハジメ「良ければ、レミアもどう?偶には家族サービスで、旅行にも連れて行ってあげたいんだけど……。」

レミア「勿論、是非お願いします。うふふ、家族旅行ですね、あ・な・た?」

……お願いだから、言っておくれ。本心ではないと。出ないとマジで本気にしかねん。

いや、別に本心ならそれはそれで嬉しいが!……ハァ、ミュウのいない内に聞いておくべきだったか?

そんなことを考えながら、午後からの冒険の準備を進める俺であった。

 


 

その夜。どんよりと黒い雲が、無数に千切られた綿菓子のように浮かぶ夜空の下、俺達は緩やかに進んでいた。

"オルカヴィア"の甲板は、海上BBQの為に広めに造っておいたのもあり、実に快適な航海を続けていた。

波の影響も、重力魔法のおかげでほぼ受けないので、ゆったりまったりと寛げる。

 

ハジメ「う~む……何だろうか?」

ユエ「ハジメ?」

トングを片手に肉奉行しながら、ふと何かを感じて疑問を浮かべる俺に、ユエが聞いてくる。

 

ハジメ「……いや、多分気のせいだろう。」

幸利「フラグか。」

ハジメ「違わい!はぁ……帰りは飛空艇の試運転がてら、雲海の旅でもするか。」

そんなことを呟いていると、飛空艇に関心を持ったのか、ミュウが聞いてきた。

 

ミュウ「パパ、"ひくうてい"ってなぁに?」

ハジメ「空を飛ぶ乗り物だよ。それにたっくさんの人や物が運べるんだ。」

ミュウ「町の人達みたいにお空を飛ぶの!?」*1

トネリコ「ミュウちゃん?人間は普通、お空を飛びませんよ?」

ティオ「綺麗な放物線を描いておったのぅ。」

トネリコがミュウの言葉に訂正をすると、ティオがしみじみと思い出した。

 

出発の際、家族旅行だとはしゃぐミュウに、微笑ましそうに次々と声をかける町の人々、ミュウのお友達、レミアのママ友達……そこまでは良かったのだ。

そこへ、俺への嫉妬に狂い、出発を阻止しようと襲い掛かってきた奴等がいたのだ。

全員俺がこの前懲らしめた筈の、密かにレミアの再婚相手を狙っていたハイエナ共だ。結果はって?

 

当然、フルボッコにして返り討ち。一人ずつお空の彼方へぶん投げてやった。

筆頭だった町長(王国貴族の人間の中年)や幹部勢は特別に、タイキックでぶっ飛ばしてやった。

全く……そんな見苦しい真似をするくらいなら、さっさと告って玉砕してしまえばよかったものを。

 

香織「レミアさんとミュウちゃんって、なんていうか街の人達から愛されてるよね……。」

シア「ハジメさんへの嫉妬の念が渦巻いていましたからねぇ……。

レミアさん、私と同じ亜人ですのに、人間族の殿方からもモテモテでしたし。」

ユエ「……ん。レミアは魔性の女。」

レミア「あ、あの、ユエさん?その言葉は少し語弊が……お仕事柄、色々な人と接する機会が多いだけで……。」

 

珍しく、ユエのジト目に物凄く困った表情になるレミア。

因みに彼女のお仕事は、王国から派遣された町長達人間族側の役人達と、海人族側との調整等を行うことだったりするらしい。

そういう部署のメンバーの1人で、いわば平社員、否、もっと言えばパート位の立場だそうだ。

 

しかし、レミア必殺(?)の、おっとりふわふわな雰囲気と、どんなささくれだった状況でも毒気を雲散霧消させてしまう穏やかな言動は、つい差別的になりやすい人間族側と、不満を溜め込みやすい海人族側において、ある種、最高の緩衝材かつ癒しとなっているようだ。

 

それに、仕事に関係なく、家族内紛争(夫婦喧嘩)の仲裁にまで呼ばれてしまう位、レミアはエリセン住民から信頼と信愛を向けられているのだ。

娘であるミュウも同様に、2人揃って大人気だ。それ故か、面白い渾名もついていたが。

 

ハジメ「確か"一家に一人レミアちゃん"だったかぁ……まぁ、気持ちは分からんでもない。」

エリセンの方々、レミアが欲しいらしい。そんな標語が生まれる程。

レミアが傍にいてくれれば、一生穏やかに生きていけそう……と、思っているのだろう。

 

レミア「ハ、ハジメさん。それは、その、恥ずかしいので言わないでください……。」///

頬を染めつつも心底困った表情になるレミア。

そういうとこだぞ、とは思いつつも敢えて口には出さないでおいた。

 

ミュウ「パパ、パパ。あと、"鉄壁のレミアちゃん"もあるの!」

レミア「ミュウ!?」///

ハジメ「そういうミュウも"鉄壁のミュウちゃん"で、二人合わせて"鉄壁母娘"って呼ばれているじゃん。」

娘からまさかの追撃を喰らうレミア。しかし、ミュウもミュウで、しっかりとレミアをガードしてるんだが……。

 

因みにこの渾名は、レミアは誰にどんなアプローチをされようとも、きっぱり解釈の余地のないお断りをすることから始まり、ミュウが「さぁ!パパと呼んでごらん!」と外堀を埋めたがる変態(迫る男達)に、「絶対にイヤ!」と笑顔かつ完璧速攻の拒絶を示すのもあって、そう呼ばれるようになったらしい。

結果、ミュウが「パパ」と呼び、多分冗談だが「あなた」とレミアが呼ぶので、その馬鹿共が騒ぎ出すことになったわけだが……。

 

香織「レミアさん。本当にハジメ君のこと狙ってませんよね?ね?」

そんな渦中の原因であるレミアに、香織が恐る恐る尋ねる。ユエ達も注目している。

レミアはチラリとこちらを見て……何故か一瞬で目線を外し、改めてミュウを見てから答えた。

 

レミア「うふふ。」///

香織「その"うふふ"はどういう意味かな!?かな!?」

ユエ「……レミア、良い度胸。海の藻屑にしてあげる。」

おっとり笑顔で躱すレミアに、ジト目の香織とユエが両サイドから迫る。

しかしそれでも、レミアの笑みは崩せない。……何故か、若干頬に赤みがあるのは気のせいだろうか?

 

そんなこんなで、和やかに進む食事兼探索開始から数時間。そろそろ深夜に差し掛かる頃合いだ。

途中で何度か転移もしたので、一応の目標地点でもあった【メルジーネ海底遺跡】を通り過ぎ、更に北西へ100kmは進んだ大海原のど真ん中だ。

 

甲板で適当にくつろいで探索するものの……不可思議な現象は見当たらず。

その上、満腹感に揺り籠のような心地いい揺れ、ゆるりと吹く涼風に穏やかな時間。

ミュウの瞼が自然と重くなり、心が潮時だと思われた。

 

ハジメ「……ミュウ、そろそろ――「やっ、なの。」……。」

「絶対に最後の伝説を見つけるのだ!」と意気込み、必死に眠気を払うミュウ。

しかし、幼い体は「眠いから寝るぞ」と強く催促を繰り返しているようだ。どう見ても限界だろう。

思わず困った表情で、レミアを見る。レミアもまた、困った表情で娘の頭を撫でる。

 

レミア「ミュウ?」

ミュウ「やっ。」

どうしても嫌なようだ。意地でも眠らん!という気迫を感じる。

 

ユエ「……ん~、ミュウ。ユエお姉ちゃんは眠い。一緒に寝よ?」

流石ユエ、ナイスフォロー。ただでさえ普段から眠たげな眼をしているのだから、眠そうな演技もプロの女優並みだ。

 

ミュウ「ここはミュウに任せて、先にベッドに行け!なの。」

ハジメ「……本当にごめん。」

しかしミュウは、俺の寝言から覚えた言葉であっさりと躱す。

寝かけた頭でも速攻で有効活用する点を褒めるべきか、要らんことを吸収しなくていいと告げるべきか……。

 

ハジメ「ミュウ。代わりにパパが起きておくから寝よう。何かあったらすぐに起こすから、ね?」

ミュウ「それじゃあ、ダメなの。」

妥協案もあえなく撃墜。

かといって、無理に寝かせては絶対に泣かれるし、このまま夜更かしさせるのは発育に響くし……とはいえ、伝説発見の意気込みにしては、少々頑なすぎる気がするので、一度聞いてみることにした。

 

ハジメ「ミュウ、どうしてもダメなのか?ダメならダメで、何がダメか教えてくれないか?」

ミュウ「……眠ったら、朝が来ちゃうの。」

ハジメ「……。」

ミュウ「最後の冒険、直ぐに終わっちゃうの。」

甲板の上で膝を抱え、月明かりだけの暗い海をじっと見つめ続けるミュウ。

その横顔に浮かんでいたのは、冒険のわくわくではなく、何かを繫ぎ止めようとする必死さだった。

 

最後の冒険――それは単に、"最後の伝説"という意味だけでなく、ミュウが俺達と出来る最後の冒険という意味なのだろう。

甲板で寛いでいるように見えて、実のところ、ミュウは常に俺の傍に張り付いている。

俺が何処に座ろうとも、ちょっと船内に物を取りに行く時でも、ぴったりと。まるで、カルガモの雛の様に。

それが何より雄弁に、ミュウの心情を表していた。

 

ハジメ「ミュウ……。」

俺はミュウの柔らかなエメラルドグリーンの髪を優しく撫でた。

そして、俺自身も覚悟を決めなければならないのだと、腹を括ることにした。

俺もユエ達も、少しでもミュウに想い出を作る為、或いは俺たち自身無意識に出ていた別れを惜しむ気持ちのせいか、はたまたどのようにして別れを告げるべきかで悩んだのか、出発を先延ばしにしていた。

 

しかし、それが逆にミュウを追い詰めるのであれば、俺たち自身で未練を断ち切るしか、ミュウも別れを切り出せる方法は無いのだろう。

何より、最後の想い出を憂いたまま終わらせてしまうのは、流石に酷過ぎる。

 

そう思い、レミアにちらりと目を向けると、視線に気づいた彼女は、「お任せします。」とでも言うように微笑み返してきた。

ユエ達もミュウを見つめて思い悩んでいる。……俺が言うしかないか。今、ここで。

 

ハジメ「ミュウ。」

ミュウは、ビクッと震えた。声音から何かを察したのか、恐る恐るといった様子で俺を見上げる。

同時に、拒否するかのように瞳を潤ませ始めた。……我が娘ながら、本当に聡いな。

娘の成長を嬉しく思いながらも、俺はミュウを抱っこして膝の上に乗せ、遥か海へ視線を向けた。

 

ハジメ「綺麗だよなぁ……。」

ミュウ「みゅ?」

ハジメ「ほら、月明かりが反射して、雲も海もキラキラだ。」

ミュウ「……綺麗なの。」

天の中央に昇った月が、少し疎らになった雲を幻想的に照らし、或いは雲の隙間から月光の梯子を下ろして大海原を彩っている。

 

ハジメ「こんな綺麗な海、見たことがない。」

ミュウ「そうなの?」

意外そうな表情で俺を見上げるミュウ。海で生まれ、育ったミュウからすれば見慣れた光景なのかもしれない。

しかし、俺達異世界人の世界――地球では、海に関する仕事をしている人でもない限り、ただの高校生では滅多にお目にはかかれない筈だ。

 

ハジメ「……ミュウのおかげだね。」

ミュウ「ミュウの?」

ハジメ「あぁ。ミュウが冒険に誘ってくれたから、こんなに綺麗な光景を見ることが出来たんだよ。」

ミュウ「……えへへ。」

もじもじと照れるミュウ。とても可愛いと思いながらも、グッと堪える。

 

ハジメ「だから約束する。俺は一生、今日の冒険を忘れない。」

ミュウ「……。」

ハジメ「パパのやるべきことが全部終わったら、また一緒に、この光景を見に行こう。」

俺がそう告げると、再び、ミュウの表情は硬くなった。

嬉しい言葉の筈なのに、その聡明さが、言葉に含まれた意味を察してしまうから。

 

ミュウの言葉を、俺は少し待った。

「行かないで。」あるいは「連れて行って。」というミュウの気持ちを、しっかり受け止めてあげたくて。

受け止めた上で、言葉を返してあげたくて。

 

しかし、ミュウは何も言わなかった。

ただ、口元をギュッと引き結んで、目元に溜まった涙すら流さずに堪えている。

静かで、胸が締め付けられるような切ない時間が流れた。

俺は大きく息を吐き、己の気持ちを整理すると、その言葉を口に――しようとした、その瞬間。

 

ハジメ「――ッ!?今のは!?」

突如、ゾクリと総毛立つような強大な気配を感じ、全員が一瞬硬直する。

それにこの気配は、さっき感じていたのと似ている……――まさかッ!

 

シア「ハジメさん!空が!」

その時、シアの声に視線を上げれば、空が急速に閉じていく。否、そう錯覚する程に、急速に雲が溢れ出した。

月が吞み込まれていくように消えていく。

ハジメ「ミュウ、レミア、俺達の傍を離れるなよ。何かはわからないけど、何かが来る!」

2人は不安に瞳を揺らしつつも、しっかり頷いて俺の傍に近づいた。

 

香織「霧が凄い勢いで……これ、自然の物じゃないよね?」

幸利「ファンタジー世界の自然現象、にしては出来過ぎている……。」

ティオ「解放者の試練……という訳でもなさそうじゃな。」

ユエ「……ハジメの勘は?」

ハジメ「意図的なものだ、しかしそれにしては……トネリコ?」

トネリコ「!いえ、気のせいだとは思いますが……もしかしたら、と思って。」

 

?その言葉を不思議に思っていると、オルカヴィアが濃霧に包まれた。

甲板上ですら、端と端では互いの姿が確認出来ないだろう深い霧。まるで【ハルツィナ樹海】の様だ。

これはまずいと思い、全員でレミアとミュウを守るように円陣を組む。

 

シア「伝説のお出ましです?」

ハジメ「だとよかったんだけどなぁ……どうみても輝いているように見えないぞ。」

ティオ「ご主人様よ、見よ。来るぞ。」

固い声音でそう告げるティオ。

真実を見抜かんとするように、瞳孔が縦に割れた黄金の竜眼が右舷側の濃霧を真っ直ぐに見つめている。

全員がそちらへと注目した直後、"それ"は姿を見せた。

 

ザバァァァァァンッ!!!

 

ハジメ「これは……!?」

濃霧の向こう側を横切っていく巨大な影。シルエットから判断するに体長は30m以上だろう。

にも関わらず、波音一つどころか、風も濃霧の乱れも無く、まるで"何もいない"ような感覚だ。

閉ざされた世界はただ静謐で、自分達の息遣いだけがいやに響いている。

 

香織「クジ、ラ?」

掠れる声で香織が呟いた。

潜水艦の、周囲の宙を泳ぐその巨大なシルエットには、確かに見覚えのある尾びれのような部分がある。

加えて、静謐であっても、放たれる気配の強大さは確かであり、皆慄然とせずにはいられなかった。

 

ハジメ「魔石は無いし、魔力も魔物のそれではない……ティオ、トネリコ。」

ティオ「すまぬな、ご主人様よ。妾の知識にも、これはない。」

トネリコ「分かりません……ですが、どことなく精霊と同じ気配を感じます。」

博識かつ考察力に優れるティオも、別の視点での知識が豊富なトネリコも僅かに冷や汗を搔きつつ首を振る。

と、その瞬間、オルカヴィアが激しく揺れた。

 

シア「ッ、ハジメさん!?着水させました!?流されてますよ!」

ハジメ「いや、どちらかというと、引きずり込まれているな。」

轟ッと、遂に静寂が破られた。穏やかだった海が突如牙を剝き、恐ろしいほど急速かつ強力な海流が発生する。

更に正体不明の"何か"に合わせて霧が竜巻の如く渦を巻き始める。

 

ハジメ「さて、そろそろ本格的に……。」

ミュウ「パ、パパ!ダメなの!」

ハジメ「えっ!?」

迎撃しようと思ったその時、ミュウが抱き着くようにして制止した。

 

ハジメ「ミュウ、何かわかったのか!?」

ミュウ「みゅ……えっと、上手く言えないけど……悪い子じゃないの!」

ハジメ「悪い子じゃない……確かに、悪意は感じられないが……。」

 

正体を知っている訳ではなさそうだが、ミュウはその"何か"から何かを感じ取ったようだ。

傷つけてはダメだと。ミュウの中の何かがそう訴えているようだ。

その瞳には切実さと、上手く言葉にできないもどかしさが浮かんでいた。

幼子の勘には、大人に見抜けない何かを感じ取る性質があると聞いたことがある。恐らくミュウもそれだろう。

 

そうしている間にも、事態は加速度的に変化していく。

気が付いた時には濃霧が巨大な渦巻く壁を形成していて、まるで台風の目の中にいるような状況になっていた。

ただし、直上に空は見えず濃霧の天蓋で覆われていて、海水は巻き上げられるどころか逆に巨大クレーターを彷彿とさせる大渦を発生させている。

 

ティオ「海底に引き込む気かのぅ。」

ユエ「……変な感覚だけど、海と濃霧全体から魔力を感じる。」

シア「ハジメさん。一応、死ぬような未来は視えませんでしたよ!」

トネリコ「私の目にも、そう言った悪意は感じられませんでした。」

幸利「あながち、ミュウちゃんの言ってる通りなのかもしれないな。」

ふむ……いつでも脱出は可能だが、一先ずはミュウの意見も聞こうか。

 

ハジメ「ミュウ、あの何かはなんて?」

ミュウ「みゅ!あの子、呼んでるの!パパに助けてって言ってるの!」

?それって――

 

『――ォォオオオオオオオンッ!』

 

と、その時だった。突如、"何か"が吠えた。

それも獣の威嚇のような唸り声ではなく、もっと澄んだ管楽器の奏でる音色のような鳴き声で、だ。

同時に、俺達の体に光が纏わりつき、意識が一瞬で霞む。

 

ハジメ「取り敢えず皆、逸れない様しっかり掴まれ!」

俺の号令で、ミュウとレミアを中心に全員が抱き合うように固まった直後、オルカヴィア諸共、俺達の意識は海底へと沈んでいった。

*1
エリセン住民は空を飛びません。




今作では原作ハジメさん一行は、出さないつもりですので、ご了承下さい。

もしもfateとのトリプルをやるとして、どんな女性サーヴァントと組ませたい?(モルガン・トネリコは本編で準レギュラーなので除く))

  • アルトリア(青王)
  • モードレッド
  • 玉藻の前
  • スカサハ
  • レディ・アヴァロン
  • 宮本武蔵
  • 沖田総司(オルタ含む)
  • 伊吹童子
  • ティアマト
  • ミスクレーン
  • 魔王信長
  • ククルカン
  • ジャンヌ(オルタ・メタ含む)
  • ネロ
  • アルテラ
  • 源氏鯖(頼光・義経・巴)
  • 河上彦斎
  • いっそのことカルデア入り
  • その他(活動報告欄で入力)
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