ヒールが痛いとパーティーを追い出されたヒーラーは痛み無効の獣人少女とのんびりできるところを探します   作:犬型大

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あなたに忠誠を2

「致し方なく仲間を置き去りにすることはありますが意図して囮にすることは許されません。さらにパーティーの責任者を持ち回りにし、ミツナさんの時だけリスクの高い依頼を受けていたことも調べがつきました。

 自由を謳う冒険者ですがこうした行いを許容すれば今後も同様の事例で被害に遭ってしまう人も出てきてしまうことも懸念されます。冒険者ギルドとしてこのような行為は見過ごせません」

 

 つまり冒険者たちがミツナにやったことは全て違法であるということなのだ。

 基本的に全てが自己責任である冒険者であるがなんでもやっていいわけじゃない。

 

 一定のルールはあり、弱いものを守るための法もあるのだ。

 外で活動して死ぬことも多い冒険者が法を破った行いをしてもバレることは少ないので法があるだなんて知らない人もいる。

 

 ただ法がなくてもやっちゃいけないことはやってはダメなのである。

 

「ただ依頼の失敗における違約金は正当なものでしたのでお支払いする義務があります。今回他の冒険者たち四人にも平等に負ってもらいますがお支払いできない場合はそのまま奴隷を続けていただきます」

 

「……どうせ払えません」

 

 違約金はかなり大きかった。

 ミツナを含め冒険者たちと五人で分けてもミツナには払える額じゃなかった。

 

 奴隷から逃れられることにあまり期待はしていない。

 

「まあそう悲観的になるな。話はまだ終わっていない」

 

 デルカンはニヤリと笑った。

 

「違約金についてはこれだけだが君を囮にしたり騙して責任を負わせた罪はまた別だ。君は彼らのせいで目と腕を失った。これは非常に大きい」

 

 目も腕も生きていく上で大切なものである。

 それを失っては生きていくのも困難になってしまう。

 

「君は彼らに対してお金を請求することができる」

 

「お金ですか?」

 

「無くなった腕を戻せなど言えないだろう。償いとしてはお金を請求するしかない」

 

「でも……あいつらお金なんて」

 

「その通りだ。奴らの手元にはろくな財貨などない。そこでどうだろうか、一つ提案がある」

 

「……なに?」

 

「君の借金を彼らに負わせるのだ」

 

「借金を?」

 

 思いもよらない提案にエイルも驚く。

 

「お金がないのに請求はできないだろう。そこで君の借金を肩代わりさせてお金の支払いの代わりにするのだ」

 

「そんなことできるのか?」

 

「できるさ。借金を負ったやつが他の奴にお金を請求できる機会なんてないからほとんどの人が知らないだけだ」

 

 ゴナガーオが紙の束をミツナの前に置いた。

 

「今承諾してくださればこちらで話を進めます」

 

「承諾して……借金をあいつらに負わせたらどうなるんだ?」

 

「それは君がか? それとも彼らがか?」

 

「……両方」

 

「彼らは冒険者資格を剥奪。借金が支払えなければ奴隷行きだ。もし買い手がつかなければ強制労働行きにもなるだろうな」

 

 犯罪者である冒険者たちは犯罪者の烙印を押されて借金返済のために奴隷になる。

 ただどうしても買い手がつかなくて借金返済に見通しが立たなければ過酷な環境で働かされる地獄のような強制労働を課されることになる。

 

「そして君は解放だ」

 

「へっ?」

 

「君が支払うはずだった借金の全てを負わせることができるので君の借金はチャラ。奴隷である必要ないのだから自由の身となる」

 

「良かったじゃないか」

 

 驚いたようなミツナはエイルに視線を向けた。

 エイルは優しく微笑んでいた。

 

「そうすると……エイルは?」

 

 大きなお金を出してミツナを買ったのにミツナが奴隷から解放となるとエイルがただ損をする。

 

「それは心配するな」

 

 そう言ってデルカンはやや大きめの袋をテーブルに置いた。

 ジャラリと音がした袋はパンパンに中身が詰まっている。

 

「これは?」

 

「基本奴隷は借金に加えて利益を乗せた金額で取引される。お金を受けると借金は貸主に返されるがまだ返される前だったのだ」

 

 デルカンの行動は早かった。

 ミツナの記憶を読んだ時に奴隷商人のことも把握していて話をしに行っていた。

 

 ミツナを買ってから時間も経っていないのでミツナを買ったお金は違約金として返される前だった。

 ミツナが奴隷ではなくなったのでエイルが支払ったお金も返却するべきである。

 

 冒険者に借金を負わせて奴隷から解放されればお金は全てエイルに返されるということなのだ。

 

「お金も返ってくるみたいだし僕のことは気にしないで」

 

「…………」

 

 ミツナの目は揺れていた。

 しかしエイルはなぜミツナがためらうのか理解できなくて眉をひそめた。

 

「どうする?」

 

「……私は決められ……ない」

 

 ーーーーー

 

「これでお別れか」

 

 ミツナの隷属の首輪が外され、魔法がかけられた首輪はデルカンが回収していった。

 エイルの手にはずっしりとしたお金の入った袋がある。

 

 ミツナは冒険者に借金を負わせることにした。

 許すか、借金を負わせるかの二択しかなかったのだから当然のことである。

 

 冒険者ギルドから出てきたエイルは短い間に色々あったものだと思い返していた。

 パーティーをクビになってミツナを買って冒険者たちを捕まえた。

 

 こんなに濃密な時間はなかなかないだろう。

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