ヒールが痛いとパーティーを追い出されたヒーラーは痛み無効の獣人少女とのんびりできるところを探します   作:犬型大

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恩を返したくて2

「うっ、その……ミツナは何かしたいことがないのかい?」

 

 うなだれた様子がまた泣きそうな感じに見えてエイルは慌てる。

 

「やりたいこと……」

 

 自分のやりたいことはなんだっただろうかとミツナは考える。

 小さい頃は色々と考えたものだ。

 

 しかし両親が死んで一人で生きていかねばならなくなってからはただその日を生きていくことに必死で、願いといえば今日を生き延びたいというぐらいのものだった。

 

「平和に生きたい……誰も私のことを馬鹿にしないようなところでのんびりと暮らしたい」

 

 ミツナとて戦っていたいわけじゃなかった。

 のんびりと暮らしていけるならそうしたいと思っていた。

 

 周りの目を気にしないで自分らしくゆっくりと暮らせしたい。

 今思いつくミツナのやりたいことだった。

 

「……そっか」

 

 自分と同じだなとエイルは思った。

 ミツナは傷ついていて、周りを気にせずに生きていきたいと願っているのだ。

 

 エイルもまた周りに何か言われることに嫌気がさしていた。

 

「分かった」

 

「……エイル?」

 

「俺と……一緒に来てくれるか?」

 

「いいの?」

 

「ああ、俺もどっか程よい田舎でのんびりとするつもりなんだ。一人じゃ大変だし……ミツナがよかったら一緒に来て、のんびりとできるところでも探そう」

 

 ミツナはエイルが自分のことを蔑んだ目で見ないと思っているのと同様にエイルもミツナがヒーラーを見下すような目で自分を見ないのだと感じていた。

 痛み無効なのでヒールが痛いという感覚が分からないのだろう。

 

 ミツナの中ではエイルはただ怪我を治せる人であり、世の中の人が見るような感情で見てくることがなかった。

 だから一緒にいて心地の悪さを感じたことがなかった。

 

 敵対心を剥き出しにされるのは苦々しい思いだったけれどしょうがないことであるし嫌というほどでもなかった。

 違うのだけれど同じような傷や思いを抱えた者同士。

 

 あんなことがあった後でミツナが他の人と冒険者としてやっていくのも大変だろう。

 ならば一緒にのんびりとできる場所を探してもいいのではないかと思った。

 

 どこかでミツナが良い場所を見つけたら別れてもいい。

 見つからなくて旅を続けるなら二人の方が楽なことも多い。

 

「ただし」

 

「ただし?」

 

 何を言われるのか。

 何でもしようとミツナはエイルの言葉の先を待つ。

 

「エイル様ってのはやめて。エイルでいい」

 

「で、でも……」

 

「これから俺とミツナは旅の仲間だ」

 

「仲間……」

 

「そう。対等な仲間だ。様なんて付ける必要はない。もし付けるならこの話は無しだ」

 

「わ、分かった! エイル……こ、これでいいか?」

 

 エイルの名前を呼んでミツナは少し頬を赤らめる。

 名前を呼ぶだけなのに少し気恥ずかしい。

 

「ふふ、それでいい。これからよろしくね、ミツナ」

 

「よろしく……エイル」

 

 なんとなく勢いに任せた感じはあるけれども、こうした決断は勢いでやってしまうのもいい。

 エイルが差し出した手を見てミツナはそっと自分の赤い毛に覆われた手を出してぎゅっと握手を交わす。

 

 治療が痛すぎてパーティーをクビになったヒーラーと人にも獣人にも嫌われる神迷の獣人はこうして不思議な経緯を経て仲間になったのだった。

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