ヒールが痛いとパーティーを追い出されたヒーラーは痛み無効の獣人少女とのんびりできるところを探します   作:犬型大

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魔物もヒールします4

「ひとまずこれまでと変わらない感じでやっていこう」

 

 宿に荷物を置いて町の外にエイルたちはやってきていた。

 魔物の討伐といってもこれまでと同じくミツナがメインで戦いつつエイルが状況を見ながらフォローして動いていくつもりだ。

 

 依頼を受けた時に依頼の詳細な説明を受けた。

 町から東にある平原にショックシープという魔物がいる。

 

 普段は特に人を襲うようなこともない魔物なのであるが、戦う上では厄介な能力を持っている。

 数が増えてきてしまい、不意に冒険者や商人が接触してしまう事故も増えてきた。

 

 なので一度数を減らそうということで出された依頼である。

 

「私が戦えばいいんだな」

 

「二人で、戦うんだ」

 

「……そうだな」

 

 別にミツナは戦う役目を押し付けられてもエイルならば文句は無い。

 しかしエイルはミツナに任せるばかりではなく共に戦うのだと言ってくれる。

 

 こうしたところもミツナには嬉しかった。

 エイルの言い回しにミツナの尻尾もフリフリだ。

 

 ただ顔は平静を保っているつもりなので尻尾が意思とは関係なく振られていることにミツナは気づいていなかった。

 エイルの方はひっそりと尻尾の動きで感情が分かるようなことに気づいている。

 

「見晴らしはいいからすぐに見つけられそうだな」

 

 東の平原は起伏が少なく生えているのも背の低い草で非常に視界が開けていた。

 これならショックシープも簡単に見つけられそうである。

 

「適当に歩き回って探そう」

 

 エイルとミツナは平原を横切るように歩き始めた。

 

「でもやっぱりもう一人ぐらい仲間は欲しいな……」

 

 仲間を探すのは難しいことだとは分かっている。

 けれども二人だけで活動するのにはどうしても限界がある。

 

 荷物を分担して持ったり野営している時の焚き火や見張りの番、そして今現在の戦力を考えた時にももう一人や二人いてくれた方が楽に活動ができる。

 

「エイルが望むなら……いいけど」

 

「無理にとは言わないさ」

 

 仲間が欲しいというエイルの言葉にミツナはいい顔をしない。

 口ではエイルに従うといっているけれど感情が隠しきれなくてエイルは思わず笑ってしまう。

 

 ミツナが嫌がることは分かっていた。

 それに無理に誰かを仲間に引き入れようとはエイルも思っていない。

 

「誰かいい人がいればって話だよ」

 

 エイルとミツナの特殊性もある上にどこかいい場所が見つかれば旅を辞めてしまうという事情もある。

 全てを飲み込んでくれた上でミツナが気にいる人となると現実的に仲間を増やすことはできないだろう。

 

 それでも全てを乗り越えて条件に合致する人がいたのなら捕まえるつもりである。

 

「大丈夫だって。ミツナの嫌がることはしない」

 

「ん……心配してないよ……」

 

 エイルが笑顔を浮かべてミツナの頭を撫でてやる。

 ミツナは頬を赤く染めて尻尾を振る。

 

 今は二人きりがいいとミツナは思う。

 

「おっ、ショックシープがいる」

 

 離れたところにショックシープが歩いている。

 

「ちょうどいいな」

 

 普段は群れで動くはずのショックシープであるが見つけた個体は単体で動いていた。

 試しに戦ってみるのにちょうどいいとエイルは思った。

 

 白くてモコモコとした毛に覆われたショックシープの頭にはグルリとした巻角が生えている。

 正直あまり強そうな見た目をしていないなとミツナは思った。

 

「あれを倒そう」

 

「わかった!」

 

 エイルとミツナはショックシープを追いかける。

 

「……来るぞ!」

 

 二人に気づいたショックシープは険しい目をして頭を下げて角の先をエイルの方に向けた。

 人を襲うことが少ない魔物ではあるけれど何があっても逃げるような臆病な魔物ではなく向かってくる相手には容赦しない。

 

 ある程度近づいたところでショックシープはエイルに向かって突撃し始めた。

 地面を蹴って走り出したショックシープの速さは意外と侮れない。

 

「くらえ! ふぎゃっ!?」

 

 エイルの方に行く前にとミツナはショックシープに剣を振り下ろした。

 剣の刃がふわふわの毛に触れた瞬間これまでに経験したことのない衝撃がミツナの体を駆け抜けた。

 

 全身が動かなくなって目がチカチカとする。

 声すらも出せず何が起きているのか理解できない。

 

 ミツナのスキルによってミツナは痛みは感じないけれどそれ以外の感覚はある。

 

「ミツナ! ……チッ!」

 

 ショックシープは動けなくなったミツナを無視してそのままエイルに突撃を続けた。

 エイルは腰からナイフを取り出すとショックシープに投げつけながら突撃を転がってかわす。

 

「ヒール」

 

 とっさの投擲だったのでナイフはショックシープの額をかすめただけだった。

 けれども小さい傷がついた。

 

 地面を転がったエイルはショックシープに向かって手を伸ばす。

 エイルの手が淡く光を放ち、ショックシープの額の傷が同じく淡く光った。

 

 ものの一瞬で額の傷が治ったけれどショックシープは治療の痛みで気を失った。

 勢いをまだ殺し切っていなかったので自分の突撃の勢いで地面に衝突して転がっていく。

 

「ミツナ、大丈夫?」

 

 気絶したショックシープにトドメを刺すよりもエイルはまず動けなくなっているミツナに駆け寄った。

 

「なんか変な感じぃ……」

 

 エイルが来た時にはだいぶ症状は治っていた。

 しかしまだ全身がビリビリとしていて体が動かしにくい感じがある。

 

「ショックシープの能力さ」

 

 エイルがミツナに手をかざして治療する。

 治療を受けるとすぐに体に残っていた違和感が治っていく。

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