ヒールが痛いとパーティーを追い出されたヒーラーは痛み無効の獣人少女とのんびりできるところを探します   作:犬型大

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ギルドからの依頼2

「やった!」

 

 投げたナイフがショックシープの顔の横に当たった。

 やや深めにざっくりと切り裂けて血が飛ぶ。

 

 痛みはあるのだろうけどショックシープは突撃をやめない。

 

「治してやるよ」

 

 エイルはニヤリと笑うとショックシープに向かって手を伸ばした。

 次の瞬間ショックシープが白目を剥いて気を失った。

 

 気を失っても突撃の勢いは無くならない。

 足がもつれてショックシープは頭を地面にめり込ませるようにして倒れ、エイルはもう一体の突撃も含めて横に転がって回避した。

 

「もう一体いくぞ!」

 

「うん!」

 

 エイルが治したショックシープは気を失って動かない。

 残るはあと一体。

 

 気絶したショックシープにとどめを刺すのは後回しにしてエイルは再びショックシープと睨み合う。

 

「来るぞ!」

 

 二回足を地面に打ち鳴らしショックシープはエイルに向かって突撃した。

 

「ここ!」

 

 エイルの斜め後ろに陣取ったミツナがナイフを投げる。

 

「上手いぞ!」

 

 真っ直ぐに飛んでいったナイフはショックシープの目に刺さった。

 普通に大きなダメージとなる一投であった。

 

「痛いだろ?」

 

 これならばとエイルは回避もしないでショックシープの治療を始める。

 治療したといえばカンタンなのだがミツナは不思議なものを見たような気分になった。

 

 ショックシープの目から一人でにナイフが抜けて飛んだ。

 深々とナイフが刺さったはずなのに白目を剥いた無事な眼球が一瞬で戻ってきた。

 

 そのままショックシープは地面を転がってエイルの前で止まって動かなくなった。

 

「し、死んでる……」

 

 トドメを刺すのだろうとショックシープに近づいてミツナは驚く。

 目にナイフを刺されたショックシープは死んでいたのだ。

 

 目を治してもらったはずなのにむしろ死を迎えた。

 

「死ぬほど痛いなんて言うだろ? 本当に痛すぎれば本当に死に至るんだ」

 

 ショックシープに対して痛みというショックで攻撃した。

 痛みというものがわからないミツナであったけれど痛みだけで相手を殺すことができるなんて恐ろしいと今初めて思った。

 

「な、何するんですか?」

 

 エイルは死んだショックシープの首にナイフを突き立て首を切り裂く。

 

「この倒し方はいいんだけど……傷もない死体っていうのは側から見たら奇妙だろ?」

 

 どうやって倒したのだと聞かれて治して倒したのだと説明するのも面倒だ。

 だからあたかも首を切り裂いて倒したかのように偽装しておく。

 

「あっちをお願いしていいかな?」

 

「あ、うん」

 

 ミツナは気を失っているショックシープの方に走る。

 首を切ってトドメを刺し、エイルの方に引きずっていく。

 

「投げナイフももっと買っておけばよかったね」

 

「これまで爪と牙ばっかで戦ってたから……」

 

「これから学んでいけばいいさ。色々な戦い方がある。僕も色々と叩き込まれたものだ」

 

 他にもどんなことができるのだろう。

 色々なことを知っているエイルのことを一つ知るたびに胸がドキドキするとミツナは思った。

 

 もっと知りたい。

 そのためにはミツナももっと努力して、エイルのそばにいられるようにならなきゃいけないと感じていたのだった。

 

 ーーーーー

 

「うーん、なんだろな?」

 

 依頼に記載されていた規定数のショックシープを倒した。

 エイルが引きつけつつミツナが投げナイフで傷つけたり、あるいはその逆でミツナが引きつけてエイルがナイフで傷をつけたりとリスクを分担しながら依頼をこなした。

 

 依頼料そのものは倒したショックシープを引き渡した時点で受け取れるのだけどショックシープの買い取りのお金というものももらえる。

 買い取りについては実際に納品された魔物の状態を見て算出されるので次の日に依頼料と合わせて受け取ることにした。

 

 ゆっくりと休んで次の日にお金を受け取りに来たのだけどエイルとミツナは何故か受付でお金はもらえず奥の会議室に通された。

 紅茶を出されてゆっくりと飲みながら会議室に通された理由を考えるが思い当たる節がない。

 

「ふーふー……熱い……」

 

 ミツナは紅茶をよく冷まして飲んでいる。

 熱いものが苦手なようでずっと息を吹きかけて温度を下げようとしていた。

 

 両手でカップを持ってふーふーする姿はちょっとかわいいなとエイルは思った。

 

「お待たせすいません。仕事が立て込んでいまして」

 

 倒したショックシープに何か不備でもあったのだろうかとドキドキして待っていると三十代ぐらいの男性が会議室に入ってきた。

 短く顎髭を伸ばしていて鋭い目つきをしている。

 

「私はこのギルドのギルド長をやっているタチーノと申します。今回このようにお呼び立てして申し訳ありません」

 

 エイルはタチーノの握手の求めに応じるけれどミツナはカップの紅茶を見つめたまま動かない。

 やはり他人は苦手なようだ。

 

 タチーノも特に気を悪くした様子もなく手を引っ込めて座る。

 

「何かお話でもあるのですか?」

 

 普通なら受付で依頼料と納品したショックシープの精算金を受け取って終わりだ。

 わざわざ会議室に呼び出されることなんてない。

 

「一つご相談したいことがあるのです」

 

「相談?」

 

 エイルたちは旅の途中でたまたまこの町に立ち寄ったに過ぎない。

 よそ者であり、特に功績を上げた冒険者でもない。

 

 ギルド長から何かをお願いされる要素などないのだ。

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