ヒールが痛いとパーティーを追い出されたヒーラーは痛み無効の獣人少女とのんびりできるところを探します   作:犬型大

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きな臭い襲撃2

「問答無用か……」

 

 山賊たちは何も言わずにただ襲いかかってきた。

 降伏を促すこともなければ金銭を要求することもない。

 

 ただ殺すという目をしている。

 

「ミツナ、やるぞ!」

 

 共闘はするけれど他の冒険者との連携はあまり期待していない。

 他の人の邪魔にならないようにしつつミツナと連携をとって戦う。

 

「はっ!」

 

「いいぞ! くらえ!」

 

 ミツナが相手を傷つければエイルがそれをヒールする。

 ヒール効果を最大限に引き出したエイルのヒールは小さい傷なら一瞬で治してしまう。

 

 しかしその代わり激痛を伴う。

 ミツナも攻撃して終わりではない。

 

 攻撃してエイルがヒールしても傷が浅かったり相手が痛みに強かったりすると気絶しないこともある。

 たとえ気絶しなくとも痛みに相手は怯む。

 

 ちゃんと相手のことを見て気絶していないようならミツナはしっかりトドメを刺す。

 エイルも当然戦う。

 

 ミツナのフォローをするように立ち回りながらも山賊と戦って切りつけヒールする。

 

「な、なんだ!?」

 

 ついでに他の人が傷つけた山賊もヒールして倒しておく。

 目の前で急に人が倒れるものだからみんな困惑したが、エイルがやっているのだと分かると切り替えてそのまま戦いに集中する。

 

 流石貴族が信頼した冒険者だけあって動きがいい。

 山賊たちが次々と倒されていく。

 

「うっ!」

 

「ミツナ! 大丈夫か!」

 

「大丈夫!」

 

 山賊の鋭い一撃がミツナに迫った。

 なんとかガードが間に合ったけれど意外と危ないところであった。

 

 乱雑に剣を振り回している山賊たちの中でしっかりとした剣術である。

 何かが違うとエイルは感じた。

 

 他の山賊と同じく黒い布で顔を隠していて分かりにくいが、小柄な体格と剣を持つ手から女の可能性があると見ていた。

 

「ミツナ、そいつ強いぞ!」

 

「ほん、と、だね!」

 

 ミツナは山賊の攻撃をギリギリで防ぐ。

 技術的には未熟でも動体視力が良くて相手の攻撃も容易く防いでしまうミツナが防戦を強いられている。

 

「チッ……他にも何人かいるな」

 

 戦いを見ていてエイルは気がついた。

 ミツナが戦っている山賊のように強いやつか何人かいることに。

 

 弱い山賊が倒れて人数優位の状況なのでまだ大丈夫そうだが油断はできない。

 

「うっ!」

 

「危ない!」

 

 エイルの優先はミツナである。

 ガードが間に合わずミツナが切られかけたところをエイルが横から山賊に切りかかる。

 

 練度の低い山賊ならそのまま切られていただろうが、ミツナが戦う女の山賊は周りのことがよく見えている。

 エイルの攻撃をかわして素早く距離を取られてしまった。

 

「あんた何者だ? ただの山賊じゃないな?」

 

「…………チッ」

 

「逃すか!」

 

 エイルの質問にも答えず目だけを動かして周りの状況を確認した女の山賊は軽く舌打ちすると背を向けて逃げ始めた。

 ミツナがそれを見て素早く女の山賊を追いかける。

 

 ボムバードとの戦いで培った瞬間的なダッシュを見せて女の山賊に迫る。

 

「はあっ!」

 

 ミツナが剣を振る。

 剣先が女の山賊に届いた。

 

 エイルは手を伸ばしてヒールをかける。

 

「…………ダメか」

 

 ヒールは発動しなかった。

 確かに女の山賊に向けてヒールを飛ばしたはずなのに何も治せなかった。

 

「ダメだった?」

 

 女の山賊はそのまま走り去ってしまい、悔しそうな顔をしたミツナが戻ってきた。

 

「どうやら掠めたのは服だけのようだ」

 

 ミツナが間に挟まったとかでヒールできなかったわけでもなければヒールしたけど効かなかったわけでもない。

 ヒールが発動しなかったのだ。

 

 つまり女の山賊は怪我をしていなかったということになる。

 ミツナの剣は相手に届いたけれども切先が服を僅かにかすめただけだったのである。

 

「ミツナはよく戦ったよ」

 

 ミツナがぺたりと耳をたたんで撫でろ言わんばかりのスペースができている。

 最後こそ逃してしまったが戦いに関してはミツナもよくやった。

 

 無意識に耳をたたむミツナの頭を撫でてやる。

 一瞬驚き、そして照れたように笑う。

 

「まあ無事でよかったと考えることにしようか」

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