ヒールが痛いとパーティーを追い出されたヒーラーは痛み無効の獣人少女とのんびりできるところを探します   作:犬型大

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問題を抱えた村1

 道中大きな町もなく、ちょうどいい護衛依頼なんかもなかったエイルとミツナはのんびりと旅を続けていた。

 イクレイの護衛のおかげで金銭的にはかなり余裕ができたので焦って依頼なんかをする必要もない。

 

 旅の予定も余裕を持って行けるので早めに村で休んだりと二人旅でも快適に過ごしている。

 

「ぐるっと回らなきゃいけないとはな……」

 

 ただ全てが順調というわけでもなく予定の狂いも発生していた。

 本来はノリナトの国を横断する形で隣の国であるウガチに向かう予定であった。

 

 道の都合でまっすぐ横断はできなくとも大きく見ればまっすぐに近いルートで行く予定だったのだが、そうできなくなったのである。

 最短で横断しようと思っていたのだが、ノリナトの国の真ん中には山脈が走っていた。

 

 ある程度ノリナトの国についてもルートを調べていたのだが隣国の詳細な地図となるとなかなか難しい。

 ノリナトに入って初めて横断しようとすると山脈にぶつかることを知ったのだ。

 

「山越える……ってわけにもいかないもんね」

 

 当然ながらルートとして山越えというものも考えた。

 しかし山脈は意外と険しいらしく、山慣れしていないエイルとミツナで越えていくのにはリスクが大きかった。

 

 そもそも焦る旅ではないのだ、何が何でも最短ルートを通っていく必要はない。

 慣れない山登りでリスクを負い、結局そのために時間がかかってしまうなら最初から安全に回っていった方がいい。

 

 山脈手前の町にやってきたエイルは冒険者ギルドで地図と睨み合いをしていた。

 結局地図は地図であり、どのルートを行ってみてもいくまではどのような旅になるのか分からない。

 

 ただある程度の快適さなんかはコントロールできる。

 町の間隔が近いところを行けば宿に泊まりながら旅ができるし、森など木々がありそうなところなら夜の枝が集めやすい。

 

 急がない旅なので多少遠回りでも快適になりそうなルートを行きたいとエイルは思っている。

 そしてついでなら何か名物とか美味しいものとかも食べたい。

 

「すいません」

 

 エイルとミツナはカウンター裏にあるテーブルで地図を見ていた。

 大きなギルドなら閲覧室があるものだが、小さいギルドだと仕方がない。

 

 エイルが声をかけたのは

 カウンターで暇そうにしている冒険者ギルドの受付の人であった。

 

 中年のベテラン受付でテキパキと仕事をする印象のいい人である。

 

「何かありましたか?」

 

「少し聞きたいがありまして」

 

「なんでしょうか?」

 

 地図を見て分からないのなら人に聞けばいい。

 ちょうどいい感じで受付もベテランなのでちゃんとした答えも返ってきそうだ。

 

「この山の向こうに行きたいんだけどどの道を通ればいいのか分からないんです。よかったらアドバイスが欲しくて」

 

「山の向こうですね。直接山を越えるのはあまりお勧めしません。時々登山に訪れる方もいらっしゃいますが経験者でないと厳しいでしょう」

 

 ベテラン受付はエイルの相談を聞いてニッコリと笑顔を浮かべた。

 山脈の手前までくればこうした相談をされることも多い。

 

 道の案内などベテラン受付にとっては慣れたものだった。

 

「山を越えないのでしたら北側を行く道と南側を行く道があります。早いのは南側を行くルートですね」

 

 今は縦に走る山脈を正面にしている。

 山脈に向かって右回りに行くのが南側ルートであった。

 

「観光がしたいなら北側もいいですよ。ちょうど山を回り込むあたりで山が綺麗に見えるポイントがあるんです」

 

「食事はどうですか?」

 

「食事ですか? そうですね……それも北側でしょうか。山を見るのに北側の方が観光に力を入れていますからね。……ああ、そうだ」

 

「何かありましたか?」

 

 地図を眺めていたベテラン受付が何かを思い出した。

 

「今時期でしたら南側も冒険者にオススメですよ」

 

「急になんですか?」

 

「この時期になると南側のある地域で魔物が大量発生するのです。そのために広く冒険者を募っているのですよ。単発の仕事ですが割がいいので人が集まるのです。冒険者さんなら一つそうしたものも目的かと思いまして」

 

「確かにそれもいいかもしれないですね」

 

 エイルはニッコリと笑ってベテラン受付の話に頷いたのだった。

 

 ーーーーー

 

「それでどっち行くの?」

 

 一応依頼も確認したがいい感じの護衛依頼はなかった。

 やっぱりこのまま二人旅だなとミツナはほんのりと尻尾を振っていた。

 

 ただエイルがベテラン受付の話を聞いて山脈のどちらを回っていくルートに行くのかはミツナにも分かっていない。

 ミツナとしてはどっちでもよかった。

 

 綺麗な山の風景よりもお肉が山のように積まれた食事の方がいいなと思うぐらいである。

 ロマンチックな雰囲気になれるのなら悪くないかもしれないとは少しだけ思う。

 

「北側に行こう」

 

「……いいの?」

 

「何がだ?」

 

「なんだか仕事とかあるって言ってたし」

 

 南側の方が近いらしく、ついでに冒険者として割のいい仕事もあるとベテラン受付は言っていた。

 だからミツナは南側の方に行くのかなとはなんとなく考えていたのである。

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