神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~   作:犬型大

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一人目を探せ3

 ストーカー男を見つけてから数日、ストーカー男の監視は続けていた。

 たまたまストーカー男の家の近くに古いアパートがあったので屋上に忍び込んでそこから監視することができたのである。

 

 基本的にレイは日々決められた時間通りに動いていて、ストーカー男はそれを把握してストーカーしている。

 レイが大学で授業がある間にストーカー男はアルバイトをしているようでアルバイト中の男は非常に地味で目立たない。

 

 レイについてもあまり分からない。

 友達といるところをあまり見たことがなく、日々の行動にイレギュラーが少ない。

 

 家に帰れば買い物以外で外出することもなくて何をしているのか不明なのである。

 

「はぁっ……」

 

 マサキは飲み終えた水のペットボトルを潰しながら空を見上げた。

 昼間の公園、小さい子供たちを親が遊ばせている。

 

 サラリーマンが昼間休んでいたりするのでベンチに座っていても不審者扱いされないのはありがたい。

 

「もう後数日……」

 

 レイに接触する機会がないままに時間だけが過ぎていく。

 本気でナンパしてみようと思ったけれど勇気が出なくてやめた。

 

 そろそろレイの授業が終わる頃だと思って公園で待っているがストーカーのせいでスケジュールを把握してしまい、もうマサキも完全なるストーカーである。

 横目でレイが公園に入ってきたのが見えた。

 

 レイはいつものように目立たぬ格好でその後ろにはいつものストーカー男の姿も見える。

 今日もすれ違うだけで、またなんのきっかけもない。

 

「やはり事件を待つしか……」

 

「誰か助けて!」

 

「なんだ?」

 

 ストーカー男が通り過ぎるのを待って行動しようと思っていたら女性の叫び声が聞こえてきた。

 

「……連れ去りか?」

 

 見ると男性が子供を抱きかかえ、女性がそれを止めようと男にすがりついている。

 周りにいるのはほとんど子供で、いても親が数人である。

 

 関わりたくないのか自分の子供を呼び寄せて距離を取ろうとしている。

 助ける人はおろか助けを呼ぼうとする人もいない。

 

「何をしているんですか!」

 

 マサキも本来ならあまり関わりたくはない。

 しかしその様子を見たレイが男性に向かって走っていった。

 

「チッ……余計なことに首突っ込んで」

 

 レイはまだ覚醒もしていない一般人である。

 子供を抱える男性は体格も良くてレイではとても敵いそうにない。

 

 ストーカー男は距離を取って物陰から様子をうかがっている。

 マサキは立ち上がって潰したペットボトルをゴミ箱に投げ入れると携帯を取り出してゆっくりと歩き出した。

 

 連絡するのは警察。

 さっさと端的に用件を伝える。

 

「うるせえ!」

 

「あっ……! あいつ!」

 

 レイも協力して男性を止めて子供を取り戻そうとしていたのだけど、急に割り込んできたレイにイラついた男性がレイの顔を殴りつけた。

 警察に細かな状況を説明している暇もない。

 

「ともかく早く来てください!」

 

 マサキは電話を切ると走り出した。

 

「おいっ!」

 

 殴られても必死に男を行かせまいとするレイに苛立ちが大きくなって再びレイのことを殴りつけようとしている男性を圭が殴りつけた。

 

 男性が怯んだ隙にマサキは子供を引き剥がして抱き寄せて男性を足で押して蹴り倒す。

 

「何しやがる!」

 

「事情は知らんが女殴る奴にマトモな人はいねえよ」

 

 子供を母親のところに行かせてマサキは拳を構える。

 

「ぶっ殺してやる!」

 

「子供の前でそんな言葉遣いするもんじゃないぞ」

 

「お兄さん、危ない!」

 

 男性がマサキの顔面を殴りつけようと拳を振るった。

 

「意外と速いな」

 

 マサキは腕で男性のパンチの軌道を逸らした。

 これぐらいなら対処できない速さではないが想像していたよりも男性が強そうだと思った。

 

「この野郎!」

 

「むっ?」

 

 男の体から魔力が溢れ出す。

 

「……覚醒者だったのか」

 

「人の家の事情に首突っ込んだこと後悔させてやる!」

 

 先ほどよりも素早い拳がマサキに襲いかかる。

 覚醒者になど勝てるはずがない。

 

 そう思ったレイは思わず手で顔を覆った。

 脳裏には最近時々聞く覚醒者による凄惨な事件のニュースがあった。

 

「なに!?」

 

 男性は驚いた。

 マサキはギリギリで男性の拳をかわし、受け流し、1発のパンチも当たることがなかったからだ。

 

「ふんっ!」

 

「ぬわあああっ!」

 

 マサキは突き出された拳をかわすと腕を掴み、男性を投げ飛ばした。

 受け身も取らず背中を強打する。

 

 覚醒者ではあるようだが戦闘の経験はなさそうだし適切な訓練も受けていないようだ。

 パンチは非常に大振りで冷静に見ればかわすことは難しくなかった。

 

 ケンカの経験はありそうだけどそんなもの素人の間でしか通じない。

 

「このクソガキ!」

 

 若く見られがちなマサキであるがガキと言われるほどには若くない。

 男性に比べればかなり年下なのでガキと言っても間違いじゃないだろうけれども。

 

 今度は殴るのではなくて掴みかかってきた。

 マサキは一歩下がって男性の手をかわすとアゴを蹴り上げる。

 

 手より足の方が長い。

 男性は蹴られながら手を伸ばしたけれどマサキには届かなかった。

 

 白昼、子供も多くいる公園で人が暴れているとなると警察の動きも早い。

 サイレンが聞こえてきて、マサキはニヤリと笑った。

 

「何笑ってやがる!」

 

 しかし頭に血が上った男性はサイレンに気づかずにマサキに再び殴りかかる。

 振り回される腕を容易くかわしていたのだけど突然マサキの動きが不自然に止まった。

 

 男性はそれをマサキの隙だと見て顔を殴りつけた。

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