神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~   作:犬型大

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実の奪い合い4

「魔力はできるだけ温存しておきたいからな」

 

 マサキが撒いた粉は魔物の素材を乾燥させて砕いたもので火をつけると非常によく燃えるものであった。

 そして赤い魔石は火の力が込められているもので持っているとほんのりと温かく、叩き割ると火が出るものである。

 

 実がなっている木は魔物でないけれど魔力を含んでいて普通の木とは違う。

 魔力を多く含んだ木は燃え始めると長持ちして燃料としてもいいのだけど代わりに非常に燃えにくくなっている。

 

 魔法で木を燃やしてもよかったのだけど燃え始めるまでが大変なのだ。

 まだまだマサキは弱い。

 

 ここで木を燃やすために魔力を浪費する必要はなく、道具を使えばいいのである。

 

「次の木を探しに行こう」

 

「まだあるんですか?」

 

「木は全部で三本あるんだ」

 

「へぇ……でもどこからそんな情報を?」

 

「……前に攻略されたことがあるゲートなんだ」

 

 全く同じゲートが出現するということも稀にある。

 多少地形が違うけれど出てくるモンスターが同じだったとかそんなこともある。

 

「そうなんですね」

 

 もちろんこのゲートが世界に現れたのが今回が初めてだ。

 前に攻略したというのはマサキの記憶の中での話であるので全部が全部嘘でもない。

 

 まだ覚醒者として駆け出しのレイはマサキの言葉に特に疑問も持たなかった。

 

「急いで探すぞ。他の人が実を食べる前に」

 

「分かりました!」

 

 木が完全に燃え上がることを確認してマサキとレイは次の探して移動を始める。

 

「危ない木の実なのに持っていくんですね」

 

「そのまま食べると危険って話だ。この実をうまく使えば能力を上げるところだけ取り出した薬……ポーションが作れるんだ。毒薬変じて薬となるってことわざもある。ようするに使いようだ」

 

「なるほど」

 

「それに全部の木を他の人が実を持ってく前に燃やせるとは限らない。誰かが食べた時に元となる実がないと毒の研究もできない」

 

「博識な上に……思慮深いですね」

 

「そんな目で見るなよ」

 

 レイはキラキラとした目でマサキのことを見ている。

 気恥ずかしさと気まずさがマサキの中に湧き起こる。

 

 ただ過去の知識を使っているだけで凄くもなんともない。

 レイに尊敬の目を向けられるようなことは何一つないのである。

 

 実を集めているのだって建前上人のためではあるけれど、後々ポーションにして自分のために使うのだから実際褒められることじゃない。

 

「ほら、モンスターだ。レイ、倒してみなよ」

 

 次の木の場所を記憶の中から引っ張り出しながら歩いているとモンスターが現れた。

 大きなリスのようなモンスターであるが、モンスターだからか顔つきが凶悪で可愛くない。

 

 デカい犬ほどのサイズがあってマサキたちに対して威嚇するように歯を剥き出している。

 ゴブリンなんかとの戦いもレイは乗り越えてきた。

 

 見た目だけでモンスターの強さの上下は分かりにくいところがあるけれど、一応リスはゴブリンよりも上になる。

 というかゴブリンよりも下のモンスターなんかいない。

 

 だからリスの方が強いモンスターとはなるもののレイの覚醒者としての能力はマサキより優れている。

 おそらく神様からの力を受け取っているから最初からある程度強いのだとマサキは思っている。

 

「が、頑張ります!」

 

 CSクラス、つまり現在の覚醒者能力がCランクもあるならリスぐらい簡単に倒せてしまうだろう。

 レイは剣を抜いてリスと睨み合う。

 

 能力上はレイの方が強いのであるが戦いの技術なんかはマサキには敵わない。

 今も緊張していて動きが固く、実力を十分に発揮できる状態とは言い難い。

 

 こればかりは数をこなして経験を積むしかない。

 

「ほっ……やっ!」

 

「惜しいな」

 

 飛びかかってくるリスをかわして剣を振り下ろす。

 リスの攻撃をかわした反応も反撃を繰り出したこともよかった。

 

 しかし回避から攻撃に移る動作がスムーズではなくリスに反撃をかわされてしまう。

 ゴブリンが相手なら通じたのかもしれないけれどリスの方が素早いので決まらなかったのだ。

 

「くっ…………えいっ!」

 

 距離を置いたリスが再びレイに飛びかかる。

 一度攻撃をかわしたレイは少し冷静になって今度は回避しながら剣を振る。

 

 空中で切り裂かれたリスは体をのけぞらせながら地面に落ちた。

 

「ど、どう?」

 

「良い感じだったぞ」

 

 マサキは剣を抜いてリスにトドメを刺す。

 やや狙いが逸れて傷が浅かったので一撃で倒すには至っていなかった。

 

 動けなさそうな雰囲気はあるけれどトドメはしっかり刺しておく。

 

「やった!」

 

 マサキに褒められてレイは嬉しそうに笑う。

 

「えーと……」

 

 マサキはリスの背中を大きく切り裂き、剣先で中をまさぐる。

 

「あったあった」

 

 剣先に固いものが触れる。

 マサキが上手く剣を使ってそれをほじくり出す。

 

 リスの中から出てきたのはリスの魔石であった。

 荷物からペーパータオルを取り出して魔石の血を拭って袋の中に入れておく。

 

「よし、行こう」

 

「そういえば他の木がどこにあるのか分かってるんですか?」

 

「大体の見当はついてる。あの山を左に見ながらまっすぐだ」

 

 ゲートの中に地図はない。

 けれども回帰前の記憶には木の大体の位置もあった。

 

 木の実が毒だと判明してゲートについて聞き取り調査が行われた。

 その時に木のおおよその位置関係もネット記事に上がっていたのである。

 

 マサキは何かのタイミングでその記事を見ていたことを覚えていた。

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