神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~   作:犬型大

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実の奪い合い6

「た、戦いになっちゃいますよ?」

 

「うーん……どうしたものかね」

 

 マサキはため息をつく。

 平穏無事に話し合いが終わるなんて思っていなかったけれど目の前で命がかかった戦いが始まるのも多少面倒である。

 

 最悪マサキだけなら完全に無視してそのまま見学を続けるのだが、まだまだまっさらな状態のレイにとって血で血を洗う争いの光景はあまり良くない。

 けれども直接止めるような方法も思いつかない。

 

「やるつもりなら覚悟しろよ……」

 

「そっちこそ……」

 

「おやめなさい」

 

「あれは……」

 

 悩んでいるうちに緊張感が高まって戦いは避けられなくなった。

 こうなったら戦いが終わった後にマサキとレイで残った方を制圧して素早くケガの治療をしてやるぐらいだなと考えていた。

 

 そんな空気を切り裂くように一人の女性が二組の間に割り込んできた。

 軽くウェーブのかかった黒髪ロングの美人で手には細身の剣を持っている。

 

「三上佳純(ミカミカスミ)……」

 

「知り合いなんですか?」

 

 マサキはその女性を知っていた。

 現れたのは三上佳純という女性でマサキとは回帰前に出会ったことがあった。

 

 仲がいいわけではないけれど結構後半まで生きていたので何回か言葉を交わしたことがある。

 ゲートに入る時には見かけなかったが、百人もいれば見逃してしまうことがあってもしょうがない。

 

「たまたま名前知ってるだけさ」

 

 今カスミがどれぐらいの強さでどれぐらい知名度があるのかマサキには分からない。

 回帰前に話したことがあるぐらいで現在のところでは知り合ってすらいない。

 

「なんだお前!」

 

「割り込んでくるんじゃねえよ!」

 

「今あなたたちは覚醒者同士で争おうとしていましたね? そのようなこと見過ごせません」

 

 ただ相変わらずだなとマサキは思った。

 

「お前には関係ないだろ!」

 

「争ってなんになるのですか? 覚醒者同士協力すべきです。どうやらこちらの実を争っているようですが……争いのタネになるのなら捨ててしまいなさい」

 

「いきなりしゃしゃり出てきて勝手なこと言ってんじゃねえよ!」

 

 カスミは強い正義感の持ち主である。

 悪いことには容赦なく、こうした争いにもためらいなく首を突っ込んでいく。

 

 回帰前にマサキが出会った時にも変わりない性格をしていた。

 世界が善悪の区別が難しい状況になると大きな葛藤を心に抱えていたようであったけれど、自分なりの正義を貫きながら戦っていた。

 

 マサキは弱かったので戦場に連れていくべきではない。

 カスミがそんなことを主張して乗り込んできたことは記憶に強く残っている。

 

 結局瞬間拘束が必要な能力だと認めてカスミは引き下がった。

 良くいえば自分の芯をしっかりと持った人なのである。

 

 悪くいえば融通がきかない性格をしているのだ。

 ゲート中では色々採れることがあるので諍いも多いのだが普通の人は首を突っ込まない。

 

 他の人が関わりたがらないのにカスミは自分の利益よりもこうした問題に首を突っ込んでいく。

 

「問題を起こすなら……私が相手になりますよ」

 

 ちょっとした争いにも手を出すので当事者としては面倒であるが、今この状況に限ってはカスミの登場は利用できる。

 

「ふざけ……」

 

「お仕置き棒はもうあるのか……」

 

 実を先に取った方の男が動こうとした。

 敵対している男たちを攻撃しようとしたのか、カスミを攻撃しようとしたのかそれは分からない。

 

 ただ動き始めたのは男の方なのにカスミの方が動きが速かった。

 トラブルを止めるために全員殺していてはキリがない。

 

 ただ武器を持った相手を素手で制圧することは非常に困難である。

 だからカスミは非殺傷性の武器を持っている。

 

 鉄鞭(テツベン)と呼ばれる金属の棒状のデカい警棒みたいなものがカスミの武器なのだ。

 誰が呼んだかお仕置き棒。

 

 一応ちゃんとした武器も持っていて人のトラブルを解決する時にのみ鉄鞭が出てくるからそんな呼び方をされていた。

 今現在も同じかどうかは不明であるが鉄鞭を持っていることに変わりはない。

 

 先に動き出した男よりも速く動いたカスミは男のことを鉄鞭で殴り飛ばした。

 

「グッ……この女殺してしまえ!」

 

 男は何とか反応して腕でガードしたのだが腕は関節でもないところで曲がってしまっている。

 非殺傷性とはいうものの金属の塊なので殴られれば痛い。

 

 本気で殴れば普通に人だって殺せてしまう。

 覚醒者ならある程度本気で殴っても死にはしないが男のように骨ぐらい折れてしまうことは仕方ないのである。

 

「何だか知らないけどあいつらをやってしまえ!」

 

 実を取ったグループが動き出してもう一つのグループも動き出した。

 

「どどど、どーしますか!? な、何で笑ってるんですか!」

 

「何でもない」

 

 最初の想定とは違って三つ巴にはなったが戦いが起こってしまった。

 あまり人同士の戦いを見たことがないレイは青い顔してマサキのことを見る。

 

 回帰前なら冷たく全員切り捨ててしまえばいいなんて言い放っていただろうレイの初々しい姿にマサキは思わず笑ってしまう。

 

「助太刀するぞ。狙うのは男たちでミカミの味方をする」

 

「分かりました」

 

「武器は鞘に収めたまま抜いて戦うんだ」

 

 手加減というのは実力があるものが実力差があるものに対してやることである。

 技術があるマサキはともかくレイが真剣で戦うと相手を殺してしまう可能性がある。

 

 なので鞘をつけたままにして相手を殺さないようにするのだ。

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