神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~   作:犬型大

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怒られた

「あーあ……この光景はあまり見たくなったんだがな」

 

 目を開けるとそこは病院だった。

 マサキは回帰前よく病院に運ばれた。

 

 弱かったこともあるのだが、瞬間拘束というスキルを発動させるためによく前線にいて怪我をすることも多かったからだ。

 それでもみんなの役に立てることが嬉しくていくら病院送りにされようとも戦い続けた。

 

 そのせいで親しい人たちには大きな心配をかけてしまったものである。

 今回は病院なんか行くもんかと思っていたのに目覚めて病院の天井を見るまで意外と早かったものだとため息が漏れてしまう。

 

「分かってたが……ここまでとはな」

 

 体に無理がかかるだろうことは分かっていた。

 たとえ回帰前の一番鍛えられた状態でもあの人数と大型モンスターを全て同時に抑え込むのは厳しかっただろう。

 

「ここはどこだ……?」

 

 病院なのは分かるけれどどこの病院なのかまでは分からない。

 マサキは体を起こすとナースコールのボタンを探す。

 

「あったあった……」

 

「あっ、マサキさん!」

 

 ナースコールを見つけたマサキがボタンを押そうとした瞬間病室に人が入ってきた。

 それはレイだった。

 

「心配、したんですよ!」

 

 無事でよかった。

 そんな言葉をかける前にレイがマサキに詰め寄った。

 

 吐息が触れるほどの距離にレイの顔があってマサキは思わず顔を赤くする。

 

「あんな無茶するだなんて聞いてないですよ!」

 

「……悪かったよ」

 

 無茶なことは分かっていたので言わなかった。

 言ったら絶対にレイは止めるだろうと思った。

 

 命までかけるようなつもりはなかったけれど木は燃やしておきたかった。

 

「あんなことするなって言うつもりはありません……」

 

 怒った顔だったレイの顔がキュッと悲しそうなものに変わる。

 

「でも……言ってほしかったです」

 

 仮に言われて止めても、やる時はやるだろう。

 だからと秘密にされて無茶をされるのは悲しいし寂しい。

 

「無茶するなら……無茶するって言ってください……止めるけど……どうしてもなら私も、頑張りますから」

 

「レイ……」

 

「マサキさん、死んじゃうかと思って……」

 

 回帰前の自慢は女を泣かせことがないと言うことだった。

 仲のいい人がいなくて泣いてくれるような人もいなかった、最後まで生き残ってしまったということでそうだっただけなのだが、ともかくマサキが女性を泣かせるような真似をしたことはなかった。

 

 だけど今はレイを泣かせてしまった。

 ふと、回帰前にマサキが先に死んだならレイは泣いてくれただろうかなんて考えがよぎる。

 

 レイの方が先に死んでしまってマサキは生き残っていたのでどうなったのか分からない。

 

「死んでないだろ?」

 

「でも……怖かったんです。何も知らずにマサキさんにだけ無茶させて……」

 

「あれは俺にしかできなかったことだし……レイに心配をかけたくなかったから」

 

「倒れたら結局同じじゃないですか!」

 

「まあ…………そうだな。悪かった……謝るよ」

 

「謝罪なんていりません!」

 

 むくれた顔をしたレイはそっぽを向いてしまう。

 こんな時は子供っぽくて少し笑ってしまいそうになる。

 

「どうしたら許してくれる?」

 

「約束してください」

 

「何をだ?」

 

「全部話してくれるって」

 

「全部?」

 

「計画してることがあるなら教えてください。無茶をするなら無茶するかもって言ってください。私にも何かできることがあるなら……頼ってください」

 

 泣いて赤くなった目をマサキに向ける。

 回帰前とは明らかに関係が違う。

 

 でも回帰前の関係よりも悪くないと思う自分がいる。

 

「分かったよ。これからはちゃんと言う」

 

 マサキは困ったように笑いながらレイの涙を親指で拭ってあげる。

 こんな時に上手く言葉を返せる経験が回帰前の記憶を掘り起こしてもないのが悔しい。

 

「絶対ですよ?」

 

「……あー、私お邪魔だったかな?」

 

「ひゃい! い、いつから見てたんですか?」

 

「最初からずっといたわ」

 

 見つめ合うマサキとレイを見て病室の入り口に立っていたカスミが盛大にため息をついた。

 レイは忘れていたのだけど病室に来る前はカスミと一緒にいた。

 

「いいわね、良い相手がいて」

 

「べべべ別にそんな関係じゃないですよ!」

 

 カスミは呆れ顔で病室の椅子に座り、レイは顔を真っ赤にする。

 

「それなら時間の問題かもしれないわね」

 

 否定するレイをカスミは鼻で笑う。

 いつの間に仲良くなったのだとマサキは二人の様子を眺める。

 

「とりあえず生きていてよかったです。あのまま死なれたら後味悪すぎますからね」

 

「結局攻略は……」

 

「そのまま成功しましたよ。死傷者はある程度出てしまいましたが規模を考えれば少ない方だと」

 

「そうなのか」

 

「あの木の実を持ち帰った人は何人か出ましたけどね」

 

 カスミはため息をつく。

 戦いの最中の落ちた実を拾った人は意外といる。

 

 ただ戦いの最中だったので誰が持ち帰ったかまではカスミも把握していない。

 一人だけ見つけて毒があると警告したのだが信じてもらえず暴言を吐かれる始末だった。

 

「警告はした……無理に他人のものは奪えないからあとは食べないことを祈るしかないわね」

 

「まあ多少はしょうがない」

 

「ともかく今回は助かったわ。彼女のこと泣かせちゃダメよ」

 

「……努力はしますよ」

 

「彼女じゃないですって……」

 

 おそらく回帰前よりもゲートの中で死んだ人は少ないだろうとマサキは思う。

 実を持って行った人もだいぶ少ないはず。

 

「少し休むか……」

 

「そうですね。安静にしてください」

 

「ああ面倒見てくれる人もいるしな」

 

「私だって忙しんですからね!」

 

 回帰前は着替えすら持ってきてくれる人もいなかった。

 今回はレイもいてくれる。

 

 唇を尖らせるようにしながらマサキの頬に指を突き刺すレイのイタズラに笑いながらマサキはベッドに横たわった。

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