神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~   作:犬型大

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違法な取引を阻止せよ!1

「遅いぞ」

 

「指定された時間には間に合ったんだからいいだろ」

 

 深夜の港にタクシーも使わず集まれというのだから時間もギリギリになる。

 マサキは自分の車もないのだからどうしても仕方ない。

 

 タナカの悪態をトモナリは正面から返す。

 回帰前ならあり得なかったかもしれないが今はタナカなど怖くない。

 

 むしろ一度マサキにボコボコにされたことのあるタナカは舌打ちをしてマサキから視線を逸らす。

 

「おい、覚醒者はこっちだ」

 

 イセヤマに呼ばれる。

 十名ほどの覚醒者がいて正直一人も善人のようには見えなかった。

 

「武器は……剣だけか?」

 

 装備をつけてくるようにと言われたのでちゃんと装備はしてきた。

 だけど元よりお金のないマサキは剣だけしか持っていない。

 

「剣があれば戦える」

 

「……ふん、まあいい」

 

 今更帰れともいえない。

 イセヤマは不愉快そうな表情をしながらマサキについては気にしないことにした。

 

「お前らはここで待ってろ」

 

 非覚醒者とは別行動のようだ。

 マサキは一番後ろからついていく。

 

『聞こえているか?』

 

 マサキの耳元で声がする。

 

『聞こえていたら剣の鞘に手を添えてくれ』

 

 マサキは言われた通りに鞘に触れる。

 

『よし、これからのことは君の働きにかかっている。一応君の声を拾えるようにはしてあるが周りが覚醒者ばかりだとバレるかもしれないから会話は避けよう』

 

 マサキは今一人ではなかった。

 イセヤマに呼ばれてからカスミに連絡を取って覚醒者協会のシンイチを紹介してもらった。

 

 イセヤマたちがやろうとしていることは限りなく黒に近いものであるが、マサキの証言だけでは黒だと断定しきることもできない。

 しかし少し前に大きな事件があった港で怪しい取引があるということで覚醒者協会が動いた。

 

 捜査自体に進展もなく、今回のことがもしかしたら前回苦杯をなめさせられた相手に関わることかもしれないと最終的に乗り出すことになったのだ。

 マサキは周りの音を拾う盗聴器と向こうからの指示が聞こえる無線機を身につけていた。

 

 技術の進歩はすごいものでパッと見では分からないようになっている。

 盗聴器を通せば向こうとの会話もできるが覚醒者は感覚も敏感だ。

 

 小さい声でも聞こえてしまう可能性がある。

 無線機から聞こえてくる向こうの声がギリギリだろう。

 

 感覚が鋭めな人が集中するともしかしたら無線機の声すら聞こえるかもしれない。

 声の相手はシンイチである。

 

『埠頭に一隻船が止まっている。確認したが今日この時間に入港する予定の船はない。止まっているはずの船もない。どうやら取引の相手のようだ』

 

 言われた船が見えてくる。

 船の近くにさらに何人かの人がいる。

 

 一人強いのがいるとマサキは思った。

 寒くもないのに黒いロングコートに革の手袋といった少し異質な出立ちの男から強い魔力を感じる。

 

 明らかに格上の相手で戦えば抵抗もできずにやられてしまいそうだ。

 

「ようやくきたな。まずは品物の確認だ」

 

 無駄な会話しないで話に入っていく。

 スーツの日本人が寄りかかっていたコンテナを開く。

 

 スーツの日本人とスーツの外国人がコンテナの中に入っていく。

 中に見えるのは木箱だった。

 

 木箱の中に何が入っているのかは外から確認できない。

 スーツの日本人がナイフを取り出して木箱に差し込んで軽く開ける。

 

 そして何かを確認してスーツの外国人を見て頷く。

 どうやら取引はスーツの日本人とスーツの外国人で行われているようで、イセヤマたちは何かの仕事を手伝うようだ。

 

「そしてこれが……」

 

「子供だと……」

 

『子供? 何があった?』

 

 スーツの日本人は隣のコンテナを開けた。

 中にいたのは子供だった。

 

 小学生から中学生ぐらいの年齢の五人の子供。

 それぞれ国は違いそうだが一つの共通点があった。

 

「魔力を感じる……覚醒者の子供たちか……」

 

 できるだけ周りにバレないようにしつつ独り言を装って見たものを伝えようとする。

 他にも驚いている人はいるので独り言を呟いてもバレはしない。

 

「イ、イセヤマさんこれは……」

 

「なんだ? もうこれを見た以上お前らも共犯だ。もっと何か知りたいのか?」

 

「うっ……いえ」

 

 子供たちはなんなのかと訊ねようとした人がいたけれど睨みつけられて黙っているしかない。

 なんなのか知りたいが知ることも怖いのだろう。

 

『子供……まさか人身売買を行っているのか。これは確実に確保せねばならない。きっと対価を受け取る。そうして取引が成立したら我々も突入する』

 

 人身売買が行われていると聞いてシンイチの声に緊張感が走る。

 スーツの日本人は女の子たちの顔を軽く確認してコンテナから出てくる。

 

 女の子たちは薄汚れていて怯えた表情をしている。

 マサキも顔にこそ出さないがここにいるやつ全員クズであると怒りを覚えていた。

 

「お前らの仕事はこいつらを指定の場所に連れていくことだ。手を出すなよ? 傷もつけるな」

 

「分かってます」

 

 イセヤマがスーツの日本人に頭を下げる。

 そしてスーツの日本人が横にいた男からアタッシュケースを受け取るとスーツの外国人に差し出す。

 

『取引がされた。突入する!』

 

 スーツの外国人がアタッシュケースを受け取った。

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