人生満喫上位者in鬼門方面キヴォトスK-3   作:バージ

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1-C5-トリニティの影

 

相手は三人。全員がフード付きの真っ白な外套で体中を覆い隠していて、持っている武器以外では見分けがつかないような外見をしている。私もフードを目深にかぶっているから似たようなものだけど、相手はお面をしている訳でもないのに顔が真っ暗で見えない。

一人が火炎放射器、一人がショットガン、一人がアサルトライフルを持ち、そして全員が左手にハンドガンを持っている。もともと手に持っていたキャンドルスタンドはどこかに消えていた。

一方の私は地鎮祭正式装備である星々を描いたローブを着て、右手に狙撃銃、左手にハンドガンを持ち、その他アイテム類もしっかり持ってきている。

 

私が入ってから外側の結界の性質が変化して、物理干渉を阻むものに変わった。別に私の存在をわかっていて誘い出したという訳でもあるまいに、不可解な現象だ。解析は少しずつやるとしても、こいつらを倒すなり、ある程度の隙を作る程度のことは必要だ。

しっかり固定したからミネはそう邪魔にならないけど、相手の攻撃がミネに当たらないようには気を付ける必要がある。

 

戦いは音もなく始まる。近距離の二人が距離を詰めてくる。ショットガン持ちの方を狙撃銃で撃って後方まで吹っ飛ばす。次に火炎放射器持ちの方にハンドガンを乱射したところこちらはサイドステップで回避される。三人目のアサルトライフルの乱射は三人に囲まれない方向に走って避ける。

 

狙撃銃の貫通重視で狙い撃ちし、接近してくる火炎放射器持ちを撃ち抜く。普通の生徒なら一発で沈められる一撃は狙いたがわず敵の胴体を貫通した。しかし、敵は止まらない。まっすぐに高速で飛び掛かってくる。人間ではなく四足歩行の獣を思わせるような加速でこちらの付近10メートル以内に飛び込んだ敵はその手の火炎放射器を放つ。

放たれたのは人が想像するような火炎放射ではなく、ファンタジーで出てくるドラゴンのブレスの様な炎。当然のように人の移動速度を上回り、というか展開した十数人の兵士を一発で焼けるような範囲と弾速をしている。

しかもその気になればアサルトライフル並みの射程を有するだろうそれをもち、なおここまで接近するまで使わない。幽霊みたいな体をしておいて、戦闘の知恵まである。

 

「ミネ!目を閉じろ!」

 

相手の火炎が早すぎてそれ以上の指示が出せなかった。相手の動きに合わせて始めていたバックステップを中断、背負ったミネの鼻と口を左手で守り、目を閉じ息を止めて上に飛び上がる。息をすればたちまち肺まで焼かれるだろう。炎が到達するまでのわずかな時間に見えた炎の範囲を考えれば、抜けられる先は上しかない。

 

炎の中から抜けたことを判断し、目を開いて状況判断。アサルトライフル持ちはリロード中、しかしいつの間にか側面をとっていたショットガン持ちに撃たれる。空中で身を捩ってミネをかばい、狙う余裕がないので雑な照準で"鈍光衝撃弾"を発射。

"鈍光衝撃弾"は常に緊急用に用意しているいつでも一瞬で装填可能な特殊弾で、着弾点に斥力を放つ球状の光を発生させる。光の球は数秒間その場に残り続け、触れたものを勢いよく吹き飛ばす。

この衝撃はかなり強力でゾス星系の奴らの一撃すら防ぐ。またしても壁まで吹き飛ばされたショットガン持ちは激突した壁を壊して上下に亀裂を入れた。

 

ちなみに構造がシンプルで風紀委員長時代はヒナを始めとした幹部連中にあげたりしていたし、地鎮祭でもまれに使うものだから隠す必要なく気楽に使える。

 

特殊弾の射撃反動をあえて殺さないことで、発生した勢いを利用して体を移動させて柱の側面に着地。炎とショットガン、両方食らったおかげでどちらからも呪いを受けることが分かったし、自分の体なら呪いの解析は楽…なんだけどしてる隙あるかな!?

案の定敵の動きが速い、ギリギリのところで残りの二人が攻撃を再開するよりも早く移動し、高速で柱から柱へと飛び回る立体起動でアサルトライフル持ちを狙う。

しかし相手もさること、その機動力はなかなかのものだしアサルトライフルを牽制に使ってきて短時間では攻略できない。火炎放射器持ちも大型武器を持っているとは思えない軽快さで高速戦闘に参加してきて二対一。

 

牽制に徹した二人を突き崩すことができず、復帰してきたショットガン持ちが参戦し、またこちらが押されだす。なかなか難易度高いぞこれ!

相手に少なからず火力を叩き込んだはずなのに一切堪えた様子がなく、そして弾丸が命中した際の妙な感覚も考えれば、物理ダメージそのものに高い耐性がある可能性が高い。

衝撃自体は受けているのですべてを完全に無効化している訳ではないようだけど、悪くすれば実体を持たない幽霊よろしく物理ダメージが完全に無効である可能性すら存在する。その場合キヴォトスに現存するほとんどの攻撃は、ダメージを与えることが不可能ということになってしまう。

 

ミネを背負っていなければ、そうでなくともせめて怪我が完治していれば。そんな考えは隙にもならない刹那の内に思考の外に追いやり、素早く移動しながらの撃ち合いに興じる。攻撃が効かないってことは、いくらでも攻撃の的にできるってことだ…死にそうな奴を背負っていたりしなければもっと素直に楽しめたな!

 

それにこの感じ、何者かに見られてる…それも複数にだ。私が入ったから始めた訳じゃなく、それ以前からこの戦いを監視している奴がいる。こいつらは物理攻撃が効かないくらいでその気になれば倒せないわけじゃないが…倒したところで大したメリットもないんだよな。

多分こいつらはこの場所から動けない…というか外側の結界自体が、こいつらの行動に必要な可能性もあるが。それにこいつらの問題は戦闘力でも無敵性でもなくて、ひとえに人を殺せる手段を持っていることだ…つまりそれがないなら深刻度が激減する。

もう自分の体に呪いをもらったから、ゆっくり解析して対抗手段を見つければそれでおおよそ問題解決なんだ。

 

それならいっそ手札を伏せておこう。この場を離れればこいつらは追ってこない。そこまで自由に動き回れる存在でないことは見抜けている。

もともと救援に来ただけなので救助が最優先だ、それさえできれば他は捨て置いても構わない。おまけでこいつらの存在と戦闘力、監視する複数勢力の存在まで知ることができたし、そのうえでこちらの手札を秘匿することまでできれば大勝利だ。

 

相手の戦闘力自体はかなり高いのだ。恐ろしく広範囲を焼ける火炎放射器と、軽快なアサルトライフルとショットガン、そして第二のメインウェポンと言っても過言でないほど巧みにハンドガンを使う。

やっぱりこいつらは三人そろえば戦力としてキヴォトス最強格の生徒個人を上回るな。最強格の一員にして、大幅なハンデを背負った私が一見互角にやりあえているのは、ひとえに相性の良さ故!

殺害云々は抜きにしても、生徒の防御力を事実上無視できる呪弾は脅威の一言。

機動力の高さで無理やり回避可能な上に、呪いの浸食を技術的に遅延、相殺可能な私だからこその拮抗。

 

これ殺害抜きにできるなら、ヒナとかだったらすごい戦いを楽しめそうな気がする。何せ物理攻撃ノーダメってことは攻撃に一切の遠慮をする必要がないってことだし。

 

なんにせよ敵にダメージを負った様子がなく、倒すことが難しい以上ミネを背負ったこちらがとるべき行動は撤退一択!しかしこちらが離脱するためには、短時間でもいいから多対一の状況から脱しなければならない。つまり最低二人はZOC*1外にはじき出す必要がある!

 

ならば、次に狙うべきはあそこだ。地形を生かし、息き付く暇のない高速立体起動で翻弄し、リロードのタイミングを誘導し、被弾を許容した。そこまでやってようやく、丹精込めて作り出した瞬間に一撃を差し込み、火炎放射器自体を粉砕した。

 

やはり、本体はよくても武器自体は物理ダメージを無効化できない。生徒の愛銃なんて壊せたものじゃないが、こいつらは生徒でもなければ愛銃でもない!

感覚的に武器自体もその辺の戦車などより遥かに頑丈だったが、どのみちこのレベルの相手の武器破壊を狙えるのはキヴォトス最強格の実力者だけなので、つり合いはとれている。

 

この攻防において明確に、火炎放射器の存在が飛び向けて厄介だった。異常な効果範囲とバカ早い弾速、火炎放射という内容のくせに呪いが乗るという仕様。

あの異常な火炎放射器で攻撃されると背負っているミネを守るのが滅茶苦茶難しいんだよ!おかげでかなり戦いづらかった。

 

そして私には、既に勝利までの道筋が見えているぞ。これまでの焼き直しのようなやり取りを続けたのは少しの時間のみ。

 

ショットガン持ちの目の前に、無防備をさらした状態で立つことを代償に、アサルトライフル持ちに直撃弾を当てて遠くまで吹き飛ばした。当然私には敵のショットガンが撃ち込まれるだろう。強力な近接攻撃力を持つショットガンの一撃を受けることを対価とするには、全く割に合っていない成果。勝負の結果を決しかねないほどの悪手だ。

 

戦っているのが、俺一人だったならな!

 

「ミネ!!」

 

ミネの手から、手榴弾が零れ落ちる。

ミネは体は動かなくても、その目が虚ろになろうとも、決して諦めても戦意を捨ててもいなかった。

照準することはできなくても引き金を引くことならできる。投げることはできなくても、手榴弾を持っていることと落とすことならできる。

それでも今の体の状態を考えれば、たったそれだけのことをすることにすら常人には持ちえない精神的強さが必要になる。その強さが、青森ミネには確かにあった。

 

戦闘中の合間を縫って、ミネはしがみついた様な体制で指だけを動かし、弱く首元を撫でるだけの操作で自分の意思を伝えていた。こうして指を動かすことだけが自分にできる精一杯であり、そしてそれをする意思があるのだということを。

意識を保っていることすら困難なほどの状態にあって、自分にできることなどほとんど存在しないと分かっていて、それでもミネは動いた。別に意識を手放していてもよかったはずなのに。

 

そんなの、感動するに決まってるだろ!

 

だから私は、自分だけじゃなくて二人で戦うこの方法を選択した。

ミネさえその奇襲を成功させられるのなら、手札を隠したうえで素早く確実な方法だ。戦闘の様子なんてまともに把握できていない、私の合図の言葉だけが頼りの一発勝負を、ミネなら必ず成し遂げると信じた。

 

炸裂した手榴弾がもたらしたのは先ほど一度使った"鈍光衝撃弾"と同じで、それより遥かに広範囲の光球。当然直撃した私とショットガン持ちは同時に反対方向に吹き飛ばされる。

実際のところ"鈍光衝撃弾"の直撃は相応に危険なんだけど、当然私は事前に対策してあるから大けがする心配もなく吹っ飛ばされるだけだ。敵の技に対策をするんだから、自分で使う技にも対策をしていて当然である。

そもそもこの"鈍光衝撃手榴弾"は敵ごと自分を巻き込んで不意を突いたり離脱に利用することも前提に考えられている。要するにこれは仕様通りの正しい使い方の内だった。

 

アサルトライフル持ちとショットガン持ちは吹き飛ばし、自分も離脱のための初速を得た。フリーだった火炎放射器に焼かれる危険は事前に排除済み!ハンドガン一丁で止められるはずもなく、外側の結界をぶち破って無事に脱出に成功したのだった。

 

*1
Zone of Controlの略。ここでは相手の動きを阻害できる範囲の意味

主人公以外のオリキャラ(主に地鎮祭の)について、どのくらい詳細に描写するかのアンケートです。あまり前面にオリキャラを出しても…と思いつつ、物語を厚くするならある程度はするべきでもあり。

  • 全体的にガッツリ詳細まで記載
  • しっかり
  • そこそこ
  • 少なめ
  • どれでもヨシ!
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