人生満喫上位者in鬼門方面キヴォトスK-3   作:バージ

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1-C7-地鎮祭のセクター主任達

 

ミネの呪いの折半ははつつがなく終了し、一息つくことができた。これでもう命に別条はないし、あとはシスターフッドにお任せだ。もしシスターフッドの解呪がうまくいかなかったとしても、そのころにはら地鎮祭が解呪できるようになっている予定だ。

 

帰り道は個人的には何かあってもおかしくないと思っていたのけど何事もなく。

例えば犯人や監視者がちょっかいをかけてくるとか、転生トラックやらアンプリファイドみたいな面倒な相手に邪魔されてシスターフッドの下にたどり着けないとか、半裸でミネとくっ付いているところを誰かに見られて白い目で見られるとか。

 

やるべきことは終わったのでセリナに一声かけてから救護車を途中下車し、瞬間移動で家の玄関まで移動する。知らない場所に飛ぶのは気を遣うけど拠点なら準備してあるから壁の中に埋まったりする心配もないし、妨害や調査をされても簡単に対処できる。*1

 

一言に瞬間移動と言っても色々あるものだ。今使ったのは自分のいる空間を切り取って送り先の空間と交換するみたいなことをやっているから、シンプルでスタンダードだ。一方ライゼンデはポータル、ワームホール、どこでもドア、呼び方は色々あるけどその場に設置して長時間開いておけるし、大きささえ大丈夫なら色んなものを運ぶことができる。

どちらも自分自身だけを移動させる訳じゃないから、小さな虫とか植物とかを巻き込むと外来種が発生してしまうリスクがある…ほとんど気にしても仕方がない程度のものだからあまり気にしてないけどね。ここキヴォトスだし。

 

後は肉体を一度別の何かに変換してから、別の場所に再構成するタイプの瞬間移動もあるよね。あれは自己の連続性だとか、それは本当に同じ人間なのかとかそういう問題があるけど…私の視点からすれば問題ない。

そうでなくともキヴォトスなら分かりやすく問題ないという話でもある。何せヘイローがあるから。厳密にはヘイローは単なる映りこんだ影に過ぎず、本体のいわゆる魂とは別物なんだけどね。肉体がどれだけ物理的距離を移動したところで魂に影響はないから問題はないわけだ。

 

だからこの世界におけるスワンプマンの思考実験…つまり物質的に完全に同一の肉体があった場合どうなるかって話だけど。それは宿る魂が同じなら同一人物だし、別ならそれは別人ということになる。

それはそれで記憶も人格も完全に同一なのに明確に別人っていう、激烈にヤバい事態だけど…もしそんなのがいたら消し飛ばしたくなること請け合いだな。

下手に考えると気分悪くなるからやめよう、閑話休題。

 

家に着いたらベッドで横になって早速呪いの解析を始める。何せミネの許容量を超える量の呪いを半分受け持ったのだ、ダメージは結構なもの。それに中まで含めた全身ダメージなんて受ける機会も少ないから気持ち悪い。

とはいえ対処自体は自分の体だし拠点内だし煮るなり焼くなり好きにできる。まずは呪いをいくつかの個所に隔離して無害化してからそのあとじっくり解析。一時間もしたら大体内容は理解できていた。

 

これで最低限必要なことは完了…あとは地鎮祭のみんなが使えるように、ウルスの祈禱として術式を作って登録する…のは別の人にやってもらおう。術式開発班に情報を送れば作ってくれる。開発のためのフレームワークと開発環境を用意してあるから、私以外でも術の開発ができるのは強みだ。

 

あとは…今回私は地鎮祭の一メンバーとして事件に参加したから、地鎮祭にはしっかり話を通しておかないと面倒なだ。

きちんとした報告書は後で作るとして、内心結構テンション上がってるからとりあえず誰かと話したいな。手空きのやつ雑談しようぜ、と。

そんな感じで適当に幹部連中とその他にメッセージを送って会議予約をしたのが今から約30分前である。まともな会社だったら許されないだろうけどウチは趣味のサークルだから。幹部だろうが何だろうが雑談する暇くらい普通にあるように調整している。

 

スマートフォンの如く多用途に使える高性能な術用ガラスキューブを置いて会議を始めれば、四人分の画面が中空に表示された。ちなみに美人が二人、小さな少女が一人、ようじょが一人である。

 

「星が出たぞっと」

 

私がそう言うと、重なることなく全員が一人ずつ挨拶を始めた。

 

「スピカ主任のナプスタブルーク、今日もお星様が見られるのね」

「ポーラスター、アレッシア。分身じゃ」

「ポラリスフィーア、カイリ。静かに聞いてるね」

「リギル長アンダイン、御身が下に」

 

あんないい加減で急な通知なのに四人も集まった。内セクターの主任、つまり地鎮祭の大幹部が三人もいる。言ってはなんだけど良く集まったな。

まずは話が通っているかを確認から。

 

「トリニティであったさっきの事件、誰か報告受けてる?」

「私が把握していますので、説明しますね」

「頼んだ」

 

そう答えたのはリギルセクターの主任にして地鎮祭でもトップクラスのやべー奴。コードネームはアンダインだけど、ほぼこじつけだから原作要素が見つからない。名前繋がりだけでコードネームを付けられたアズリエルとどっちがマシだろうか?

外見はバランスよく整った美人で、文武両道で不屈の闘志を持つスーパーウーマン、どこか恐ろしい目をしているものの優しく正義感があり、まっすぐ伸びた金髪とそれを結ぶ赤いリボンがよく映える…という多くのプラス要素を持ちながら、生粋のサイコレズからジョブチェンジして真性の変態狂信者になったという実態がすべてを台無しにしている危ない女だ。

怖いよね、狂信者たちを集めたのがリギルセクターだけど、「楽しんでやろうぜ」っていう理念を楽しんで狂信者やることによって満たしてるとかいうおかしい奴らの巣窟、その主任だからね。

崇める対象が冗談になってないよ?地鎮祭は納骨堂と違ってカルトじゃないからマジで*2。これだけは真実を伝えたかった。

 

などと思っている間にもアンダインが今回の事件の推移を説明している。大体以下のような感じだ。

 

1,とある富豪の家に怪盗から犯行予告が届くも、正義実現委員会には通報せず、自力で防御を固める。

2,予告の時間に前後して、付近でヘルメット団によるそこそこ規模の大きい戦闘が発生、正義実現委員会と救護騎士団が出動する。

3,両者の騒動が混成し、正義実現委員会の一部隊が不明な窃盗犯を追跡、さらにミネがこれを追跡する。

4,とあるスタジアムにて追撃部隊が壊滅し、ミネが殿に残って部隊を撤収させる。

5,星上に救助要請がきて出陣、救助にに成功。撤退中に地鎮祭が連絡を受けて、以降監視と調査を実施。

 

「星上から連絡を受けて五分で第一陣が到着しましたが、既に結界は残っておらず、もぬけの殻でした。調査班が到着したのはさらに十五分後、報告されていた監視者の警戒・追跡も行いましたが見つかりませんでした」

 

監視者が見つからなかったのは別に構わない、むしろ自体が悪くならなくてよかった。どうも嫌な感じがしていたから、ポラリスも誰かしら出撃できるように待機させていたし。

 

「結界内は古代の空気で満たされていたようです。現れたという三人のイレギュラーの名前はトリニティの影…古代のトリニティにゆかりのものであり、これらのことから空間内に過去の力を再現する術であると推察されました。屋敷から盗まれたのは由緒あるオーパーツで、盗んだ仕立て人は二輪車で逃走。痕跡を辿り追跡しましたが、途中で二輪車は乗り捨てられており以降見失いました」

 

わざわざ乗り捨てたのか、慎重だな。監視者のこともあって安全第一で進めさせたので、こちらを取り逃がしたのも仕方がない。

アンダインが報告を終えると、ナプスタブルークが優雅な所作を見せながらも口を開いた。

 

「人殺しの呪いだなんて、物騒な時代もあったということね」

 

あまり深刻な様子は見えないが、実際に物騒だとは思っているのだろう。あんず色のふわふわした髪のようじょ、アレッシアもまたその小さな見た目の通りの幼い声で続く。

 

「黒幕は手掛かりを残さずか、慎重じゃのう。慈愛の怪盗の仕業に見せかけて本命を盗み出し、おそらくはヘルメット団の戦闘もそ奴の仕込みか」

 

その後もいくつか話をするが、特に新しい発見があるわけでもなく話は雑談の比重が増していく。

 

「それにしても帰ってきたばかりで二つも初見の勢力と交戦するなんて、さすがご主人様ね」

 

舞台女優のような美しく良く通る声が耳に心地よく響く。地鎮祭における内政面の重鎮ナプスタブルークは、実際に会えば声だけでなくビジュアル的にもかなりの美人であると分かる。派手でお洒落好きなナプスタブルークの着せ替えは自分だけでは収まらず、かつてはホシノの私服コーディネートをしたこともある。

ちなみにナプスタブルークというのもアンダインやアズリエルと同じ名前のネタな訳だが、例によって共通点は少なかった。

 

一方美人は美人でも全くベクトルの異なるアンダインは、自らが持つ二面性の内、正の方である生真面目さを発揮してナプスタブルークの言葉を訂正した。

 

「気楽な問題ではありません。生徒を容易く殺せる存在などあっていいものではなく、しかもキヴォトス土着の存在などと…ルール違反が過ぎる。それに今になって出てくるのはいかにも時期が悪い」

 

これから一年程度でキヴォトスが崩壊するって状況なのだからそりゃ時期が悪い。元史…つまり前週における崩壊と何か関係があるのかと疑わざるを得ないし。

地鎮祭では連邦生徒会長が時間を戻す前を元史(もとし)と呼ぶことにしている。このあたりの事情は地鎮祭上層部には真っ先に説明している。私が不在で連邦生徒会長が健在だったのが元史であり、その逆になっているのが今だ。

 

「古代のルールが今と同じとは限らないけど。まあ違反には違いないわね」

 

そこまで言って口を閉じ、お茶などを飲み始めたナプスタブルークを見て、アレッシアが静かに一言をこぼした。

 

「元史ではここで蒼森ミネが死亡していた、か」

 

アレッシアの見た目の通りに幼さを感じるような声。身長こそホシノを大きく下回る程に小さな少女は、その実ポラリスセクターの怪人たちの長であるポラリスアインその人。ごくわずかな例外を除けばアレッシアこそがキヴォトス最強であると言っていいだろう。

反転した生徒が新たに出現しない限り、この立ち位置が変動することはまずない。

 

アレッシアの言葉に全員…といっても私を入れて三人だが、が同意する。

小さな白い狼でもあるカイリはしばらくの間は私の顔を見ていることにしたらしく、時おり獣耳をピコピコさせるだけでそれ以外の反応を示していない。

 

私と連邦生徒会長の二人のいずれもかかわっていない事態であれば、元史と同じように推移することになる。今回私がいたから生き残ったということは、つまりいなければ死んでいたということだ。

 

「百合園セイアはあきらめていたのかもしれんの。シスターフッドにも働きかけて調べてはいたが、結局解決できないと知った。地鎮祭に要請も来ておらんしな…これから世界が滅びに向かっていきますとでも言いたげなタイミングの良さじゃな」

 

アレッシアの言う通りなんだよね。そこにナプスタブルークが続く。

 

「無法者の周りには無法者が集まる。ごみが捨てられた場所には、ごみのポイ捨てが起こりやすくなる。ルール違反を見逃せばルール自体が軽くなる。ルールによる加護が減るから人が死にやすくなって、どんどんルールが弱っていく負のスパイラル。だから私たちは一人の死を軽く扱ってはならない」

 

軽々な雰囲気を引っ込めてそう言ったナプスタブルークが、アズリエルのことを言っているのだと私たちにはわかる。

彼女たちの掛け合いは聞いているだけでも耳に心地よい。かつてゲヘナ風紀委員長であった時もそうだったけど、声を聴くこともまた一つの楽しみだった。

 

*1
結界24層、魔力炉3基(ry)

*2
納骨堂も別にカルトではないかもしれない。祀り神が目覚めたからって巻き込まれて人間が大量死したりするとは限らないし。銀の黄昏教団とかインスマス村の方がよっぽど危険では?

主人公以外のオリキャラ(主に地鎮祭の)について、どのくらい詳細に描写するかのアンケートです。あまり前面にオリキャラを出しても…と思いつつ、物語を厚くするならある程度はするべきでもあり。

  • 全体的にガッツリ詳細まで記載
  • しっかり
  • そこそこ
  • 少なめ
  • どれでもヨシ!
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