外界からの侵略、時の流れによる住人の忘却、楽園の様な世界であるキヴォトスが平和であることの、いわばツケだな。
危機を乗り越えた次の日の朝。
予定通りにセリナは家に帰ってこなかった。昨日の件はトリニティとしても結構な大事だろうし、ミネがダウンした穴を埋めるためにも忙しくしていることだろう。
私がするべきことは傷を癒すこと以外にはないのでベッドに潜り込んでいるのだが、外からは戦闘音が響いている。どうやら昨日の今日でまたイレギュラー事件が起こっているようだった。
"イレギュラー"と呼ばれる存在がいる。
多種多様であり、生徒ではなく、被害を出し、よくわからないモノであることが多く、大抵の場合会話ができない。
キヴォトス中で多大な被害をもたらしており、イレギュラー被害が全くない学区というのは一つも存在しないといえる。これに如何にして対処するかというのは、すべての学校と企業、及び連邦生徒会にとって常に向き合わなければならない課題である。
一言に多種多様であるとはいってもこれは非常に大きな範囲の言葉であり、生物や物質にすらとらわれない。
例えば人造改造植物である"アイビーデーモン"、生徒疑惑のある"カメノ男爵"、軟体生物"オリジムシ"などは明確に生物であると言える。
人に制御されないAI、自立兵器である"量産型ビナー"や"ライトニングシリーズ"、"無名の軍隊"は機械だ、ここまではまだ常識の内。
有名な"スケルトンパイレーツ"やアビドス砂漠にのみ出現する"ガンズマミー"などは生物でもなければ機械でもない。
ノイズそのものであると疑われている"マックスメガヘルツ"や、"吹雪の山"、"エーテルの風"のような天候に関するもの。旧"陽の入り"や"星の最接近"などは物質でもないし分類すら困難だ。
これらは基本的に「被害規模」、「戦力評価」、「対応難易度」、「好戦性・活発性」によって1~6の数値で評価される。数字が大きいほど危険度が大きいということで、おおよそ1なら数人の問題、キヴォトスの危機以上なら6だ。
これらの基本値をもとに"総合危険度"や"P(ポテンシャル)リスク"*1などが決定され、連邦生徒会が常に情報を公開している。
地鎮祭でも独自に収集した情報からイレギュラーwikiのようなものを公開しており、広く活用されている。実のところ地鎮祭は正式にかなりの情報提供を行っており、連邦生徒会が公開する公式イレギュラー情報には地鎮祭が収集した情報も多分に含まれている。
基本的に各校に直接的な干渉力を持たないのが連邦生徒会であるが、非常に評価の高いものが指定される大厄災に対してだけは、連邦生徒会が直接的に介入して軍を差し向ける権限を持っている。
大厄災はそもそも単独校で対処できるような災厄ではないうえ、キヴォトスの崩壊すら予想されるもの。これに連邦生徒会が介入できないようなら、キヴォトスはとっくに滅んでる。
大厄災案件の場合SRTが果たす役割は大きいのだが、連邦生徒会長が失踪(まだ公表されてないが)して以来連邦生徒会は完全に機能停止しているから、情報の更新も途絶えている。今厄災クラスが現れたら、普通に学区がいくつか無くなる程度ではすまない危険な状態だ。
唯一状況を理解できている地鎮祭は現在一時的に警戒レベルを引き上げている。それでもなんでも救おうとしている訳ではない以上、事態が改善されるまでに崩壊する学校は二桁に上るだろうという予想だ。
とはいえ厄災級なんてそこまでポンポン発生するものじゃない。
今も外では事件が発生しているけど私は特に出撃せず。地鎮祭が飛ばしたドローンのリアルタイム映像を流してBGM代わりにしながら、タブレットで地鎮祭のイレギュラー情報サイトを観覧している。
地鎮祭が独自に運営しているこのサイトは、地鎮祭メンバーであればより詳しい情報が色々確認できる優れたデータベースだ。
最近あった話題で言うと…オデュッセイア海洋高等学校が"ガメシエル"の撃退に成功、代わりに駆逐艦が一隻大破。海上でガメシエル相手とかオデュッセイアも大変だ。
次は…カイザーPMCが新型対艦ミサイルで"バラクーダ"を攻撃、あえなく撃墜されて反撃で基地が壊滅。む、無謀な…。"特殊飛行空母バラクーダ"は戦力評価3、つまり学区内総力級だ。最低でも一学区の全生徒敵に回して勝てるだけの戦力集めてから出直してこい。しかもこのバラクーダ、ゴースト随伴個体じゃん、無理ゲーすぎる。マコトでも多分呆れるレベル。
次は"J-166フロストパンク"で快晴高校*2陥落。本体のヨークトルが目覚めてもいないのに落ちたのか。フロストパンクは他所に被害拡大するタイプじゃないから、多分周辺校からも見捨てられたんだろうな…連邦生徒会停止の影響さっそく出てるじゃん。
それで次はゲヘナか。空崎ヒナが強化クレリックビーストを単独撃破。わぁ…。クレリックビーストの戦力評価は2(学兵総力規模)だから、一般的な学校の全兵力と比較したらそりゃヒナの方が上だけど。この強化版は戦力評価3じゃん。バランス感覚が壊れるな。
世の中はそんな状況にあるわけだが、トリニティは前からイレギュラー被害が少ない学区だ。イレギュラー対策として巨額の資産を投じており、その金額たるや他の三大校ですら驚くほど。他と比べてイレギュラーの発生頻度が少ないことも相まって、トリニティは平和だった。
今日もにぎやかなイレギュラー事情、ドローンの映像に目を向ければ、そこでは"スケルトンパイレーツ"を相手に実力差を見せつけているハスミ率いる正義実現委員会がいた。
スケルトンパイレーツはどこにでも現れる一般的イレギュラー。空に浮いた船に乗船した骸骨の海賊たちだ。海賊の癖にマナーを守って銃で武装しており、ピストルだけではなくライフルも使うし腰のカトラスを使うのには消極的。
奴らの空飛ぶ海賊船は厄介だが、船員の戦闘力はその辺の不良よりいくらか強い程度。今回は二隻だけみたいだし、ハスミからすれば御しやすい相手だろう。
こちらとしても走って向かえる位置なのに、気楽に見ていられるくらいの相手だ。懸念点はドローンを破壊されないかというところだが、その心配もない。
ドローンを操作しているのは、イレギュラーの偵察のため何度も出撃してる熟練の操作手だ。今更この程度の戦闘で撃墜されることなんてまずない。所詮、海賊は敗北者じゃけぇ。
唯一厄介なのがあの船だ。図体の大きさがそのままタフネスにつながっているせいでとにかく撃沈までが遠い。木造帆船であるためエンジンや燃料などは積んでおらず、爆発するようなものはせいぜい大砲の火薬くらいで大して爆発することもなく、空を飛んでいる関係上浸水することもない。マストが折れたところで動きを止めないし、ボロボロになっても飛び続けるのは感心する。
手榴弾や榴弾は普通にやっても届かないし、それこそミサイルでも持ち出さないと撃沈できないのだが、あの普通に大きいフリゲート艦を丸ごと吹っ飛ばすようなミサイルを撃ち込んだら、周りの建造物ももれなく吹っ飛ぶことになる。全く割に合わない。
中身は骨と大砲と木材くらいしかないから撃沈したところで何がもらえるわけでもなく、次の襲撃には平然と新品を持ち出してくるから骨折り損のくたびれ儲けである。骨だけに。*3
ハスミの実力からすれば問題なく船体を貫通可能だろうが、貫通したところで落とせないから困りものだろう。実際ハスミは大砲だけ撃ち抜いたあと、船には攻撃していない。
大して高度をとれずに意外と攻撃が当たる位置に留まってるけどそれも良し悪しなんだよな。母艦運用じゃなくて前に出てくるってことだし。
空に浮いてる船だから常に上を取られる形になるうえに移動もできるので、状況的にはそれなりの不利を強いられることになる。
しかし今対応しているのは正義実現委員会、トリニティ総合学園の強力な正規兵だ。これがもしその辺のスケバンやヘルメット団であったなら、多少の数的有利があっても押し切られてしまうだろう。
正義実現委員会の一般兵に雑兵みたいなイメージを抱いている人もいるだろうけど、間違いなく上位の戦力をもつしイレギュラー対策として回される資金も至極潤沢。その部員は一人一人がキヴォトスでも中の上から上の下くらいの実力がある。
さらにイレギュラーにおける最強勢は例外として除外しておくとして、ハスミの立ち位置はそれこそ上の上、トップクラスだ。
もちろん正義実現委員会に入ったばかりの部員がみんな強いかといえばそんなことはないけど、トリニティ生であれば大体金をかけて贅沢に訓練している。整った環境で訓練していればそれだけでも影響は大きく、同年代の他の学校の生徒と比べて基礎的な技量が高い。
もちろんケンカ慣れしていない生徒も多いので、そういう人はいくら基礎力が高くても実戦では多分戦い慣れている方が勝つだろうけど。ナギサなんて、成績良くて実践弱いの筆頭じゃない?
閑話休題。
病院で見る映像としてはなかなか見応えのがある映像もそろそろ終わり。正義実現委員会が状況の不利を見事に跳ね返してスケルトンパイレーツを撃退した。骸骨の骨と戦闘で破壊された瓦礫を残して、海賊船が消えていく。
実際ほぼ同数でスケルトンパイレーツを撃退したのは自慢してもいい戦果だと思う、お疲れ様です。
戦場は大して時間もかからずに解放されるだろうから、明日にでも散歩に行こうかな。リハビリもかねてゆっくり歩きまわるとしよう。
次の日。散歩に出かけた私は、淫魔もニッコリな顔した清楚で可憐な全裸の金髪ケモ耳シスターにベッドに押し倒されていた。矛盾!
マリーかわいそう(一回目)開始
主人公以外のオリキャラ(主に地鎮祭の)について、どのくらい詳細に描写するかのアンケートです。あまり前面にオリキャラを出しても…と思いつつ、物語を厚くするならある程度はするべきでもあり。
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全体的にガッツリ詳細まで記載
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しっかり
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そこそこ
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少なめ
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どれでもヨシ!