早く出したかった…。
瞬間、二人の背筋に怖気が走る。戦闘中であるにもかかわらず、急激に空腹感が襲う。黒い馬蹄の音と共にきたれ、赤い影。
「我が名は"J-65 ブラックライダー"。我が天秤に従え。ーー私の食事の邪魔をする奴は、許さない!」
ただそこにあるだけで影響を及ぼす、そのような人物も実際に存在する。これがそのような手合いであるかは定かならずとも、似たような結果が出ていることは確か。
彼女がもたらしたものはけっして周囲の人間を気絶させたり、発狂させたりするほどのものではない。しかしそれは確かな苦痛であり、人が普遍的に感じる空腹であると形容するにはあまりにも悲観的で絶望的な感覚であった。
キヴォトスにこのような感覚を感じたことのある存在がどれほどいるだろう?たとえすでに経験したことのある人物であろうともどちらにせよ身体的・精神的不調をなかったことにはできない。
戦場に対する心構えと十分な精神力が無いものであれば、大いに集中力を乱されることになり、侮れない範囲で能力の低下を招くことは避けられなかっただろう。
しかし地鎮祭はクマクマコンビに限らず、戦いと真摯に向き合っているものが多い。地鎮祭では常に驚くことがあっても冷静さは維持するように教えるし、体と同時に心もまた鍛えている。
称賛されるべき精神力を持つ彼女達クマクマコンビは気合と根性によって見事に集中力を維持し、今までとは余裕のあった認識を一転、最大限の警戒と自らを挑戦者として困難に挑む気概を胸にすぐさま次の手を打った。
「イアウルス・
「イアウルス!イアウルス!!
アサルトライフルを持った生徒"クマ"が地鎮祭本部に反転生徒との遭遇を知らせる祈祷を行い、グレネードランチャーを持った生徒"クマノ"がお互いに近寄った二人を覆う球形のバリアを張った。外界からの干渉を遮断するこの黒紫色のバリアが二人の飢餓感のほとんどを軽減する。
そのまま二人で一つのバリアを共有しながら後退すれば、ダーラデイと反転生徒はまるで最初からそれが目的であったかのように戦い始める。
「やっべー、バッドアンコールだクマ」
「J-65というと、古株でしょうか」
「その辺はわからないけど、四騎士が単体で世界番号を名乗ってるのは不穏すぎるクマ」
「連鎖反応で出現するイレギュラーですから、確かに変ですわね」
二人が観察と考察を続ける間にも戦いは続く。爆発物を使うダーラデイは見た瞬間に展開してうた爆弾をすべて新手に向けた。ブラックライダーもまた迷うことなくダーラデイを狙う。
地鎮祭の二人は良くも悪くも蚊帳の外に置かれることになる。新手が現れて以降明確に出力が上昇したダーラデイと、単純に強力なブラックライダーの戦いが、暴威となって吹き荒れた。
しかし戦況は明らかにブラックライダーの方が有利。片手に持った自動小銃から発射されるのは褪せた赤色の衝撃。一度火を噴けば周囲にあるものすべてを引き飛ばし、ダーラデイが展開した爆弾も、そしてもたらされた爆発すらもちり芥のごとく吹き飛ばされていく。その様はまるで戦艦の主砲や副砲が手のひらサイズに収まって、しかも連射しているかのようだ。
ダーラデイにとってはあまりにも酷な相手である。
ただでさえ基礎性能で大きな差があるというのに、相性すら非常に悪かった。
ブラックライダーがもたらす飢餓感は、イレギュラーであるダーラデイをも襲っている。ダーラデイは爆弾を形成するために、必ず口で噛まなければいけない。作品の形成のためには少なからず集中力が必要となるというのに、襲い来る飢餓感によってさらに口の技が乱される。
戦いは完全に一方的なものとなっていた。
「今日は厄日?いいえ、新たな発見のある幸運の日ですわ!!」
「その意気だクマ!星上なら絶対楽しんでるクマ!!」
戦闘の余波だけで大きなスタジアムががれきに変わるような戦いのすぐ横で、それでも二人は逃げずに情報収集を続けていた。ドリームオーラを全力で保持し、吹き荒れる衝撃波と引き飛ばされてきた木々岩々をはじく。
まさに根性である。
そしてクマクマコンビはついにダーラデイが最後の奥の手を切ろうとしているところを目にする。ダーラデイが服を脱ぎ捨てて上半身裸になれば、その胸にあるのはまた口であった。その口で粘土を食っているさまを見て、元ネタを知っているクマが戦慄する。
「ヤバい!あいつ自爆する気だクマ!!」
「自爆するとどうなるんですの!?」
「原作だと大爆発で十キロ吹き飛んでたクマ!」
ブラックライダーを見やる。しかし暴虐を振りまくばかりで止めようという気は全く見られない。
「……不確定要素は多いですが。それでも止めるべきですわね。緊急防壁を出します、同調してください」
「しょうがない、ドリームオーラの制御はクマに任せるクマ」
クマが一歩前に立って仁王立ちし、自らの祈祷をクマノに同調する。これによってクマノは一人の時よりもより強力に祈祷が使えるようになる。
クマノは目を閉じて両掌を合わせ、精神を集中させた。これから使う切り札は、地鎮祭であれば緊急事態に限り誰でも使うことができる大祈祷。苦難に立ち向かうため、偉大なる星上より賜りし光の盾。
しかしそれは何の条件もなく人を助けるものに非ず。どれだけ道具がよくとも使うものの意思なくばその力は生かされぬ。だからこそクマノはそれだけに没頭する。ここが山奥でももし十キロ先まで消し飛ぶような爆発であれば、少なからず人に被害が出ることになる。
クマノは守り切ってみせると宣誓した。たとえ敵が強大であろうと困難であろうと、必ず我らは打ち勝たん。
「イアウルス イアウルス ちのかひい むいたねだにい せょきうりの つつてももりり はおらいりのか」
「見上げた空に、星が瞬いたから!イアウルス・インビジブルオーラ!!」
現れたのは一つ一つがビルのように大きい巨大な光の盾であった。それがダーラデイを中心に円を描くように取り囲み、ずらっと並んだ透明な光の盾が爆発を逃がさぬための壁となった。
光の壁が展開を終えた後、大きな間を空けることなくダーラデイの自爆プロセスが完了し、同時にブラックライダーが銃を真上に掲げて強大な一撃を放った。褪せた赤色の衝撃と爆発がぶつかり合い、相殺しながらも上へ上へと昇っていく。
ブラックライダーがいない方向の爆発もまた、光の盾に防がれて上空へと押し出されていく。クマクマコンビが展開したインビジブルオーラは角度をつけて周囲を取り囲み、力を上方向に逃がすよう配置されていたからだ。
ダーラデイの爆発はとにかく範囲が広く、一方それを平然と押し返しているブラックライダーの一撃は上方向に立ち昇るように放たれていこともあり、衝撃は押し合ってかなり高いところまで届いていた。
詳しいことはともかく何かしらの爆発が起こったことは、視線が通る場所からなら50キロ離れたところからも視認できたことだろう。遠目に見てそれが何かは分からなくても何かが空に立ち昇っていることが分かっただろうし、その後時間差でちょっとした突風も吹き抜けていた。
この一撃でもって勝敗は決した。ダーラデイは自爆によって跡形もなく消し飛び、ブラックライダーは無傷。インビジブルオーラもまた健在で、内部はクレーターと化しているものの外への被害は防ぎきっている。
もしクマクマコンビがいなければ周囲数キロは荒地と化していたことだろう。二人が周囲を守るという目的を達成したことは確かである。集中力を使って消耗したクマノが息を整えている前でクマが爆発跡地を注視している。爆発によってできたクレーターの中から、ブラックライダーが歩いてくるのが分かっていたからだ。
警戒を解いていないクマの前まで歩いてきたブラックライダーはしかし、銃をしまっており戦おうという雰囲気でもなかった。
「…その。よくやったんじゃない?」
どこかばつが悪そうに、あるいは少し恥ずかしそうにブラックライダーが言うその言葉に主語がなかったが、それでもそれが守り切ったことを褒めているのだと二人には理解できた。
「地鎮祭としては、ちゃんと意地のあるところを見せられて何よりだクマ」
そういってクマもまた、構えはせずともいつでも撃てるようにしていた銃を持つ右手から力を抜いた。
「あんた達が地鎮祭なのね。うわさに聞くポラリスの怪人ってやつ?」
「まさか。クマたちは基本部門アルタイルセクター所属。ポラリスはクマたちより比較にならないくらい強いクマ」
「ふうん。だからK-3だけ残ってるのね。地鎮祭、か…」
ブラックライダーがどこか物憂げな表情を見せる中、息を整えたクマノが提案する。
「…ふう。良ければよろしければこの後夕食をご一緒しませんか。支払いはこちらで持ちますわ」
「えっいいの!?…じゃなかった。あんた達は平気でも、他の人は私のそばにいると辛いわよ」
ブラックライダーは意図して飢餓をまき散らしている訳ではない。彼女が望まずともデフォルトでそれは起こっており、また止めることもできないのだ。
「それなら、地鎮祭所有の敷地へ。そこであれば結界を張りますから、外に漏れる心配はありませんわ」
クマノがそういっている横でクマがしれっとドリームオーラから外に出る。「おお、近いだけあってキツイクマ。単なる空腹感じゃなくて、お腹が空きすぎて辛いとき苦痛だクマ」などとのんきなことを言っている。わざと不要な苦しみをあえて味わっておこうとする当たり、あまりにも星上みたいなムーブである。
「それじゃ、省エネバージョンを張るクマ。イアウルス・ドリームオーラ。…うん、ちゃんと防げてるクマ」
「では、わたくしも張りなおしますわ。イアウルス・ドリームオーラ!」
人を二人すっぽりと覆える大きさの球状のオーラが、薄く体の周りを覆うような形へと変形する。ドリームオーラは戦闘用の高コストのバリアであるため、戦闘外でも張り続けるには燃費が悪い。省エネ化してもそれなりの消費ではあったが、これだけ強力な相手からの干渉をそう簡単に防げるとは二人とも思っていないからこそドリームオーラを選択した。
一方ブラックライダーは二人の気楽な様子に若干面食らう。今まで一般の生徒がこの飢餓感を解決できたことなどい一度もなかったのだから。同時に地鎮祭を一般人に含めるべきではないのかもしれないとも思っていたが。
「まあいいや。悪いけど、私はパスするわ。どうせ食べてもだし。それじゃあね」
そういって止める間もなく飛び去って行ったブラックライダーを見て、今度は二人の方が面食らう。
「…止める間もなかったクマ」
「食事に誘ったのは失敗でしたでしょうか」
「…多分、多分この飢餓感、本人も受けてるクマ。それもずっと。だとしたら気がふれてておかしくない、よく無事でいられるクマ」
クマが先ほどまでそこにいた生徒のことを思う。もはや反転しているのだろうあの生徒が今をどう感じているのか、自分には想像できないと。
「飢餓感が止まらないのなら…食べても辛いだけ、なのでしょうか……放っておけませんわね」
「レコーダーの情報を解析して、うまく対策できるといいのですが」
そういって二人はもまた地鎮祭の施設へと帰還するのであった。
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★ダーラデイ
被害規模:3
戦力:2
対応難易度:3
活発性:3.5
特記:0
危険度:31.5
ポテンシャルリスク:2.5
"モル×××イ×××"の"無邪気な図書館の恐怖"が生み出した"沈黙の騎士団"の一員。
"かまぼこ突風伝"のキャラクターで、爆弾使いの忍者。全く忍ばない。あまり特殊な能力を使わず、爆発という攻撃手段がキヴォトスのルールとも合致しているため、かなり精度が高く生成されている。しかし生物ではない。
一応解説しておくと、かまぼこ突風伝はブルーアーカイブで出てきますが、ダーラデイはブルーアーカイブに出てきません。
主人公以外のオリキャラ(主に地鎮祭の)について、どのくらい詳細に描写するかのアンケートです。あまり前面にオリキャラを出しても…と思いつつ、物語を厚くするならある程度はするべきでもあり。
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全体的にガッツリ詳細まで記載
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しっかり
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そこそこ
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少なめ
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どれでもヨシ!