地鎮祭本部にて念入りな検査が行われた結果、マリーの状態が明らかになった。
結論から言って、マリーの精神は一定段階まで何者かと融合しているような状態にある。完全に混ざってしまったわけではないものの、素の状態でマリー本人ですら自分ともう一人の区別がつかなくなっている。
単に操られているのとは全く違う、これは相当な異常事態だ。ふつうは他人の精神と融合なんて言うのは拒絶反応が出るからできるわけがないことだし、どちらかがどちらかをくってしまうのがオチだ。特別マリーがその手の素養に優れているという訳でもないし、私だって初めて見たくらいだ。
これがあり得るとしたらよほど親和性の高い二人でなければならない。双子やクローンなどが長いこと一緒に生活してようやく条件を満たせるかどうか、というところ。それを前提としたうえで、精神系術の高い技量と力を必要とし、さらには相手の精神自体もある程度の強度が要求されるだろう。
今までに得られた情報を合わせれば、このマリーと融合した何者かこそが、あの最強の精神攻撃力を持つ敵と同一人物であると考えて間違いない。あの相手を呼ぶ名も私が決めた…"シスター服の恐怖"、だ。
この状態を直接的に解除しよそ者を追い出すことは現状不可能だ。敵は強く、深度も深い。マリーを傷つけずにこの問題を切除することはできない。逆に言えば、マリーを犠牲にするのなら敵を討ち取ることも可能だろう。
この事実は地鎮祭の外には隠匿する必要がある。何せ"シスター服の恐怖"は極めて危険なイレギュラーだ、現状の恐ろしさなら現四大厄災をも上回る。たった一人の犠牲でこれを排除できるとなれば、個人や大衆が凶行に及ばないとは言い切れない。さらに言えば、本人にも明かす情報は考えた方が良いだろう。本人の心にすら大きな悪影響を与えかねないことだ。
ちなみにこれらの事実は検査を行った当人たちによる独自判断によって、ほかの誰にも知られない形で私に報告されることとなった。さすがの判断力と行動力である。
地鎮祭がマリーを犠牲にすることはあり得ない。
上に立つ者であれば時に大のために小を犠牲にすることもあるだろうが、地鎮祭はむしろ大によって犠牲にされようとしている小を助ける側の組織だ。それが世の中のためにマリーを犠牲にするのではあべこべである。
ポラリス基幹メンバー…すなわち私とポラリスアインから始まる4人のナンバーの持ち主は、キヴォトスK-3において全員が最強格といえるだけの戦力を持っている。検査を主導したのはそんなポラリス基幹メンバーの一人。
自らが座った車椅子を玉雪の一人に押されて移動する、ウエディングドレスを着た様な姿のどこか儚げな少女。彼女こそが地鎮祭が最強たる"ポラリスの怪人"の一人、ポラリスドライ・"
地鎮祭でも特に精神関係に優れた技量を持つ彼女は、高い声と一部変な発音でいくつかの報告を行った。
「マリーが良い子だったから、大体のことは
「こんなに早く終わったのは、マリーがすっごく優しくて清廉だからなの。すべきことのため、自分以外の誰かのために心をつまびらかにしてくれた。マリーと"シスター服の恐怖"の状態がどういうものかよくわかったし、それがキヴォトス次元に何と呼ばれているかも分かった」
「"キヴォトス次元名J-912"、付けられし送り名は"残された恐怖を守る家"。
大きな花の飾られたベールを揺らしながら、割と陽気な口調でヘレニュエルはそう言った。
かつてトルヤは、キヴォトスを三つに分類して呼んだ。自らが観測を始めて後、遠星操夜が誕生するまでの間に滅び去ってしまったキヴォトスをI。遠星操夜が誕生し、キヴォトスK-3で生活を始めてから後に滅び去ったキヴォトスJ。そして現行で生存し、前に進み続けているキヴォトスK。
ある意味でBCとADの様な分け方である*1。これ自体はトルヤが個人的に使っているだけの分類に過ぎなかったのだが、今となってはこのあたりの世界では正式に使われている命名基準となっている。トルヤほどの存在が使いだしたがために、世界の方がそれに倣ったのである。
何も考えないでいると世界側から忖度を受けてしまったりする当たり、トルヤが人として生きるためのハードルの高さがうかがえる。
今では一つのキヴォトスを滅ぼしたのちに他のキヴォトスへと移った"
"シスター服の恐怖"はすでに自らの故郷のキヴォトスJ-912を失い、それでも生き残った彼女には"残された恐怖を守る家"という名前をキヴォトスから贈られたのだ。
一定の真実が明らかになった。一度世界を滅ぼした実績のある
状況が整理できたのなら、次は対策を考える。シスター服の恐怖がマリーを通していつでも暗躍できる以上、何らかの対応策が必要だ。ただでさえ相手は強大である上に、マリーを守る必要もあるとなれば、それが並大抵のことでは達成できない。
幸い"シスター服の恐怖"は今のところ普段から問題を起こす気はないらしい様子なので、何かあった時に対応できればひとまずよさそうだ。なのでセリナに贈ったアクセサリーの様に術を内蔵したマジックアイテムを作り、それをマリーに身に着けてもらう。
これで何かあればすぐに分かるので、あとは分かった後に問題を解決できる体制を整えておく。そもそも"シスター服の恐怖"の行動自体を抑制できるなら楽だが、あれだけの力を持つ存在をそうそう都合よく抑制できるなら苦労はない。
能力的に考えて、安心して任せられる人物は少ない。真っ先に思い浮かぶのはポラリスアイン・"陽の入のアレッシア"だが、彼女は忙しすぎる。
あまりに手数が多くオールマイティに能力が高いものだから、アレッシアの功績はおかしなことになっている。アバドンワーム追跡、デカグラマトン調査、瘴気界探索、境界面監視…。もちろん地鎮祭の社訓に従って無理しない範囲でやってるわけだけど、仕事量の多さは変わらない。…こんどねぎらいも兼ねて本体とどこかに遊びに行くか。
やはり適任はヘレニュエルだろう。車いすを使う関係でヘレニュエルは地鎮祭本部からあまり動かない。だから常に本部防衛戦力にしてポラリスの待機戦力になっていて、何かあった時に対応しやすい。
自分のせいで犠牲が出ることを、マリーは望まないだろう。融合した"シスター服の恐怖"と自分自身を区別できるように精神修行をしてもらう。
彼女が危険で強大な隣人とうまく付き合って行けるように、地鎮祭はサポートを惜しまない。マリーの身に降りかかった脅威を、マリー自身の手で乗り越えるのだ。
それまではマリーは影響を受け続けることになるから多分私がそばにいるだけで辛いかもしれない。ただ修行するなら自らそのような環境に身を置くことが重要だから…がんばれ、マリー!
マリーかわいそう要素の二つ目は、問題が全く解決していない上に後遺症というか影響がバリバリにあること。
マリーは本作におけるお色気担当かつ不憫枠なので、この問題はずっと付きまといます。かわいそう…あれ、そう考えるとかわいそうなの三つじゃ足りない…。
次回はセリナと外出する話か、ミネと遭難する話をやると思います。そのあとは二章に入ってアビドス廃校対策委員会編をやるか、ループものをやるか、まだ未定です。
良ければ感想・高評価・アンケート回答などをお願いします。感想は別に最新話に限らないので、過去話の途中とかでもぜひ感想ほしいです!
主人公以外のオリキャラ(主に地鎮祭の)について、どのくらい詳細に描写するかのアンケートです。あまり前面にオリキャラを出しても…と思いつつ、物語を厚くするならある程度はするべきでもあり。
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全体的にガッツリ詳細まで記載
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しっかり
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そこそこ
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少なめ
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どれでもヨシ!