人生満喫上位者in鬼門方面キヴォトスK-3   作:バージ

35 / 56

ヒナが出てきたので書きますが、一応↓の奴が作者の前作となります。ジャンルから違うので誘導はしてなかったと思いますが、一応ストーリー的にはかなりつながりがあります。(読まなくても大丈夫です。だから今まで話してなかった訳ですし)

お前のことだよ、相棒(空崎ヒナ)!!



2-X1-空崎ヒナは星を追う

 

 人知れずに連邦生徒会長が消え、逆にいなくなっていたゲヘナの星が帰還するまでの期間のとある日。

 ゲヘナ学園校区の街中で、一体のイレギュラーとの激しい戦闘が行われていた。どちらも傷だらけな両者。戦っているのはゲヘナ学園における最高戦力であり、キヴォトス最強とも呼ばれる空崎ヒナ。

 

 周囲はまさに激しい戦闘の後という様子で、破壊され穴の開いたビルや元は建造物であった瓦礫が散乱している。

 事前に戦闘していた風紀委員の部隊はすでに退避済みであり、破壊された戦車や装甲車両が打ち捨てられていた。しかし風紀委員達もただ一方的に敗北したわけではない。空崎ヒナという最大戦力が到着するまでの時間稼ぎを確かに果たし、そして誰一人取り残すことなく見事に撤退してのけたのだ。

 

 一人立つキヴォトス最強の風紀委員長と対峙するのは体長5メートル以上はあろうかという巨躯の獣。鹿のような形の大きな角を頭から生やしており、全身は不揃いの長さの体毛に覆われ、左腕は異常に肥大化している。

 手足の数は四本で二足歩行する、体の形こそ人型ではあれど、ゴリラのナックルウォークにも似た移動を行う。自分よりもずっと小さいものを相手にするためか、足をまげて体を低くして立っている。筋肉質な体に獣のような形の頭部は到底人間らしからぬ、まさに怪物というべき様相であった。

 

 その獣の周囲数百メートルはまるで別世界に侵食されたかのようになっており、空は昼間だというのに赤らみ、中にいる生物を狂気にいざなっていく。

 

 それこそはクレリックビーストと呼ばれる比較的珍しいイレギュラー。しかし通常のそれよりも明らかに強力で、体は一回り以上大きく体色も本来の暗い色に追加で赤い斑点が浮かんでいる。

 戦闘に巻き込まれない程度に離れているが、比較的近くで戦いの様子を観察していたとある一人の研究者は、このイレギュラーの異常に見覚えがあった。それは"赤融菌虫症候群"と呼ばれる、イレギュラーを強化し変質させる謎の症状であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

warning _ warning _ warning _ warning _ warning _ warning _ warning _ warning _ warning

 

irregular has appeared

 

"赤融菌虫症候群"

"聖職者の獣"

 

戦力評価:3 Pリスク:3 危険度:55.0

総合:厄災

 

warning _ warning _ warning _ warning _ warning _ warning _ warning _ warning _ warning

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このイレギュラーの戦力評価は3、すなわち一校区総戦力以上であるとされており、風紀委員会は委員長の出動が必須であると判断した。そんなクレリックビーストとたった一人で数時間も戦い続け、追い込んでいるのが空崎ヒナ風紀委員長である。

 

 ヒナの愛銃であるデストロイヤーが火を噴く。放たれた弾丸の威力は完全に群を抜いており、他者の使用する真っ当な爆発物や砲弾のそれを明らかに上回っていた。建造物を簡単に瓦礫に変換できるその弾丸はクレリックビーストの体の周囲に展開されていた何らかのフィールドを貫通し、確かなダメージを与える。

 

 クレリックビーストは人ならざる巨人の膂力と攻撃を防ぐフィールド、戦闘中に傷を修復する回復力に、巨体のくせに鈍重でない機敏さ。移動しながら腕を振り回しているだけで、半ば敵なしの存在。

 単独で一つの学区を陥落させることが可能というが、正面からすべての兵を倒し、兵器を撃破し、拠点を打ち崩す、それができるからこその戦力評価3。

 

 純粋に大きくて強い、頑強で強靭、実にステレオタイプな怪物であると言える。それが攻撃を防ぐフィールドのようなものを周囲に展開していて、しかも広範囲の空間まで侵食するというおまけ付き。

 この怪物は大勢で囲んだところで、そこにいるだけで全員が精神にダメージを負うことになるのだ。空間外からミサイルなどで攻撃しようとしても、この怪物は普通に避けるし撃ち落とすし何なら防御する。対峙する側は少数精鋭で直接戦闘を挑むか、大勢で短期決戦を挑まざるを得ないのである。

 最大戦力が必要とされるのも当然であり、同時にこんな怪物を相手にしても有利に戦えるのだから、空崎ヒナという個人もまたすさまじい。

 

 クレリックビーストは散乱した瓦礫によって不安定な足場をものともせず、機敏かつ一般的な二輪車よりも速い速度で移動し、ヒナに肉薄。そのまま肥大した腕に秘められた尋常ならざる膂力を無駄なく生かした、必殺のこぶしを叩き込む。

 ヒナはその一撃を銃で受けるのではなく、むしろ銃をかばうようにして腕で防ぎ、当然のように吹き飛ばされた。下手に銃で受けて故障したら困るからだ。弾丸のように飛ばされたヒナはコンクリートを突き破りながらビルを二つ貫通し、その先の広場まで到達してやっと停止した。

 ほとんどの生徒であれば一撃で意識を刈り取られていただろう、力だけでなく技術すら感じられたその一撃をまともにくらい、戦闘を続行できるできる者などほんの一握り。しかしヒナがその一握りの存在であることをこれまでの戦闘で理解しているクレリックビーストは、決して追撃の手を緩めたりはしない。

 

 ヒナは自分が突き抜けたせいで今まさに音を響かせて倒壊しているビルの粉塵の中から、突き出す槍の穂先のごとく突っ込んでくる獣を見た。分かっていたとばかりにカウンター気味に火を噴いたデストロイヤーは、ビームのごとく獣の体中に食い込んでいき、しかし気圧されることなく勢いを緩めない獣の剛腕が再びヒナにたたきつけられる。

 まさに怪物同士の戦い。しかし決定的に違うことが一つある。ヒナはあえて不利になることを飲み込んで、戦場が拡大しすぎないように立ち回っているのだ。

 

 クレリックビーストはパワーも移動力も、到底一か所にくぎ付けにするにはあまりに高い。無作為に戦えば相当な範囲が戦闘に巻き込まれ、人的物的被害は拡大の一途を辿るだろう。それを防ぐため、ヒナは攻撃で自分が吹き飛ばされる方向を調整しているのだ。

 強敵が出るたびに必ずと言っていいほど最前線で戦う負担は大きく、さらには難敵を前にして自分が不利になる戦術をいとわない。そんな戦い方を続けて、果たして空崎ヒナは無事で済むのだろうか?

 相手は比喩表現ではないそのものずばりな怪物。いくら最強と呼ばれる空崎ヒナであっても、できることには限界がある。数時間ぶっ続けで戦い続けているのだ、一般的な戦闘者に可能な領域はとっくに過ぎ去っている。

 

 しかし、だがしかしだ。ヒナが膝をつくことは無い。

 確かに不利だ、このまま戦い続ければヒナの不利は拡大していくだろう。しかし最初からそれを分かったうえで自ら戦術を決定したのであればどうだ。

 実のところヒナは周りの被害を軽減するというのとは全く別に、自分の都合もあって不利なままで戦い続けることを選んだ。

 

 ヒナはこの戦いに決着をつけるために、ずっと肌身離さず持っているそれを使うことを決意した。自分が持つ愛銃ではなく、今や何よりも大切にしていると言ってもいい、もう一つの銃…緑色のアサルトライフルを取り出す。それはかつて、ゲヘナの星と呼ばれたヒナの先輩が持っていた愛銃。その名を、"トゥルースソーロウィング"という。

 ヒナは残された先輩の銃を胸に、祈りの如く思いを胸に秘めた。

 

 (私に残された……許された絆…。私に…証明させてほしい……思い出させてほしい…感じさせてほしい)

 

 右手に持ったデストロイヤーを肩にかけ、先輩の銃を大事そうに両手で逆に持ち、その銃口を自らの体の中心に向けた。それは祭壇に捧げられた生贄が、両手で持ったナイフを真っ直ぐに自らの胸に突き刺すかのように。

 ヒナは意識を集中させれば、世界が止まったように引き延ばされていく中で自分たちだけがここにいるように感じられた。心臓が早鐘を打ち、体が熱くなり、血が沸騰したように感じる。

 

 (ああ、星の輝きが見える)

 

 そして、引き金を引いた。

 

 空崎ヒナと対峙している獣は、相手の様子が変わったことも異様な雰囲気も明確に感じ取っていた。

 

 理性でも本能でもない、不純物の介在することのない感覚。だからこそ目の前の相手が自分自身を傷つけたことに戸惑うこともなく、膨れ上がった相手の圧力を混じりっけなしの感覚でとらえて。

 

 最大の一撃が来る。ならば自分も最大で。クレリックビーストは怪物そのものの強大な力を、さらに最大まで引き出して走る。

 そして今までずっと使っていた銃から放たれ、今までとは全く別物の、たった一発の弾丸が、確かに自らを完璧に殺害したことを、その獣は最後に知覚した。

 




大分正気度が低いヒナちゃん。これも全部キヴォトスってやつが悪いんだ!()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。