人生満喫上位者in鬼門方面キヴォトスK-3   作:バージ

42 / 56
2-B6-ミレニアムとトリニティの場合

 

 キヴォトス三大校の一つ、ミレニアムサイレンススクール。その所属である天才的なエンジニアである白石ウタハは目の前のパワードスーツを眺めた。その名をハリファイバーM(ミレニアム)、ミレニアムサイレンススクールが発売もしている高性能機だ。

 元々イレギュラーであるハリファイバーを基にして生み出されたこの機体は、数十年以上も前にミレニアムから最初の正式量産型が発売されて以降も、長らく研究が続けられている。

 

 ハリファイバーはもともとひとりでに動くパワードスーツのようなイレギュラーだ。人が入っていない全身鎧が勝手に動き出すというのはファンタジーではよくある話だが、それがパワードスーツで起こるとなるといくらか珍しいかもしれない。

 何であれ、ハリファイバーはそもそもの性能が高く正式な治安維持部隊であっても数倍以上の人数でかからなければ対処できない相手である。複数体のハリファイバーが現れれば、シンプルかつ真っ当に強敵であった。

 

 それが実際に使えるかはおいておいて、パワードスーツであることに目を付けた当時のミレニアム生がこれを研究し、リバースエンジニアリングすることによって生み出したのがハリファイバーMシリーズだ。

 これは単純に総合的な性能だけを比べるのならオリジナルよりだいぶ低性能であるが、実際の有用性という意味ではかなり有益なものであった。

 なので事情は様々だが、戦車やヘリ、あるいはミサイルなどを買うよりこちらの方が有用だと判断し、ハリファイバーMを購入する組織がそれなりの数存在している訳だ。

 

 オリジナルの解析が進むにつれて何度もアップデートが繰り返されてきたこの機体だが、今はいくつか重大な問題があり、それがボトルネックとなって性能が頭打ち状態で止まっているという現状がある。それでも未だに最高のパワードスーツとして使われているし、マイナーチェンジも多く行われているが。

 ウタハが見ているこれが、問題のいくつかを解決するために採算度外視で作った研究用機体なのだ。イレギュラー対策競技大会にて実践テストが行われる時を、今か今かと待ちわびているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三大校はイレギュラー対策競技大会において、晄輪大祭にてそうであるように、他の二校あるいはその他の学校に負けるものかと考えているものが少なからず存在する。特にトリニティとゲヘナの間ではその傾向が他よりも強い。というのも大会が有名になるまでにあったとある経緯が関係している。

 競技大会自体は明確にイレギュラー対策を主目的として打ち出しており、運営もNPOによって行われている。そのため晄輪大祭などよりも各校における競争意識は少なくなっている。

 一方で大会の黎明期から毎回参加していた星の存在が一部の人間を意識させた歴史もある。トリニティの中に、星が大会を大いに盛り上げたことに着目し、対抗意識を燃やしたものがいたのだ。

 

 それらは端的に言ってしまえば小物であった。自分は一切傷つくことなく、自分より少人数で自分より弱い相手を一方的にいたぶって悦に浸る、そんな典型的なトリカスの中でも最低の部類であった。

 しかし相手が悪かった。当時は大会自体がまだそこまで有名でもなく、星もまた名の売れていない状態だ。しかし知名度がなかったところで星は星である。小さな舞台で自分より少人数の確実に勝てる相手に勝って自尊心を満たそうなんていう小物も小物が何人集まろうが戦いにならない。

 そうして相手にもされなかった小物が陳腐な敵役の典型みたいな行動で親分に泣きつき、虎の威を借りたつもりで再戦を挑むも結果は何も変わらず。しかし人数が増えた結果ゲヘナ側にも察知され、問題が大きくなる。

 なんやかんやで無数にある操夜伝説の一つになって問題は終息したのだが、結果的に競技大会の知名度が上がり、トリニティからすると積極的には触れたくないものの無視もできない微妙な扱いとなった。

 

 ナギサはそんな経緯と、そして星に対して年々好意的な解釈が増えていくトリニティの記録を読んでいて、無意識に笑みを浮かべていた。競技大会について大事無く、準備も終えたナギサは自分でも知らず知らずのうちに星のいたころの記録に手を伸ばしていたのだ。

 今回の大会では正義実現委員会が主に参加するものの、これは大会の理念と同じくイレギュラー対策を主眼に置いたもの。今回、トリニティとして特別政治的なアクションはないことを、ナギサはしっかりと把握している。

 

 何かするとしたらミカが首長であるパテル派であったが、特に動きはない。ミカも乗り気でなく本人も出場しないという。

 ミカを首長とするパテル派は他と比べて武力を重んじる気風が強く、今までの競技大会にも積極的に参加している。しかしミカは本人の戦闘力は置いておくとして、そこまで暴力的な性格ではなく、参加しないことも何らおかしなことではなかった。

 

 もともとナギサとミカとセイアの三人は幼馴染で関係が深いとはいえ、すごく仲良しでいつも一緒にいるかというとそういうわけではない。お互いに対立する派閥の首長同士であることもあり、そこまで表立って一緒にいることも多くなかった。

 だからこそ三人はお互いに、少し様子がおかしい程度のことを、気づくこともなければ気にすることもない。

 競技大会の最中は普段よりも学区を守る戦力が少なくなるが、それが問題になることもそうそうないはずだった。

 

 だからこれは、あまりにも必然的に訪れる未来だったのだろう。

 

 ナギサは淡い想いを抱いていた相手の突然の失踪により負った傷が癒えてはおらず、また持ち前の責任感から会長という役職に打ち込み、前よりも私事をないがしろにしていた。

 ミカはナギサが傷ついていることを知っており、何かしたいという思いがむしろ視野を狭めていた。

 セイアは不透明な視界を前にして、より良い未来を選び取ろうと自ら行動する意思など未だ持ち合わせていなかった。

 

 ティーパーティーの人数が一人減り、さらにはミネが失踪する事件が起こることなど、予想できていたのはセイアだけだった。

 

 

 




 意味深な話をしていますが、単純にエデン条約編の話です。セイアが襲撃を受けるのは先生着任前みたいなので、時期的にちょうど良いかなと。
 ミネが失踪してもこれから連邦生徒会うんぬんとか先生着任とかアビドス編とかが始まって星上が気づくタイミングがないというちょうどいい時期。
 イレギュラー対策競技大会が終わった辺りで、ひっそりと裏でセイア襲撃が発生します。ここに星上は全く関わりません。

ミカ「操夜先輩がいなくなってからナギちゃん元気ないなぁ・・・せや!(アリウスの件は私の方で解決しちゃおう!)」

ミカ、逃れえぬ運命。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。