大会の実地会場は大きなスタジアム。スタジアム中央では飛行ドローンなどによって撮影されている映像がいくつもでかでかと中空に映し出され、多くの観客が客席から観戦している。
直接見てられないのは仕方がないことだ。何せこんなスタジアムの内部で戦闘が完結するような相手は、今回用意されている中では半数にも満たない。参加者のプライバシーもあるから何でもかんでも映像に撮っているという訳でもないし。
映像は放映されるので誰でも視聴可能だが、同じステージに挑むほかの選手は試合が終わるまで見ない決まりとなっている。公平を期すためではなく、敵が分からない状態で始めての対応を条件にしているからだ。経験豊富で極めて活動範囲の広い地鎮祭でもなければ、イレギュラーなんていくらでも初見の相手が出てくるからね。
低難易度の戦いは複数一遍に行われるので、実況と解説も複数人が同時に行っている。
現在行われているのはチーム戦部門のステージ1。特に突破チーム数に制限などはないので、勝ったチームはすべてがステージ2に進むことができる。
今回のチーム戦部門ではイレギュラーは機械系で統一されている様子。最初のステージだから最も簡単で、敵はスパークライフ変異体第二段階。場所は都市部で、建造物がごちゃごちゃしていて射線が通りずらい感じだ。
スパークライフというイレギュラーはキューブ状の不明物体で、普通の生物ではない金属の様な物体だ。
周囲にある機械を変異変形させて暴走ロボットを作り出してしまう。生み出されるロボットも元となる物体や与えられるエネルギーによって、別のものへと変位するためバリエーション豊かだ。
ランダムに転移を繰り返しているらしいスパークライフはキヴォトス全域に複数存在しており、変異体はどこでも現れる雑魚敵要員として大活躍している*1。
これによって作り出されたロボットをスパークライフ変異体と呼び、個体ごとに戦力によって段階別に分けて考えられている。
小動物程度の大きさの第一段階、人間並の大きさの第二段階、装甲兵器並みの第三段階、大型兵器並みの第四段階、それ以上の第五段階と五つに分類され、今回の相手は一番よく見かける第二段階だ。
強さはまあ普通。カイザーPMCとどっちの方が強いだろうか?どちらも集団としては上の下くらいかな。
今回の相手集団は戦力評価的には1ということになっているものの、五十体ほどいるこの集団は1の中でも1.5に近い方だろう。最初のステージから一般人には厳しい難易度だが、これが腕に覚えのある者たちが集まる競技大会であることを考えれば、このくらいは妥当であると言える。
別に参加者がみんな腕に覚えがある訳じゃないから一概には言えないのだが、そういう人達には救済要素もある。勝ってもステージ2の甲種に進めない代わりに、事前に攻略法を教えてもらえたりするのだ。甲種、乙種についてはまた後程。
挑戦者側の人数は1~8人で挑むので、総数で比較すれば大体十倍差がある。かなり数に差があるものの、腕に覚えのある奴なら、このくらいは一チームで何とかすることだろう。
ところで戦力評価というやつは1の差がかなり大きく出てくる。評価1は部活規模というが、部活といっても数人の少数から数百人の大規模部活まで様々。普通は範囲が広すぎると考えるところだけど、評価2が治安維持戦力規模であることを考えると急にそうでもなくなってくる。
何せ治安維持部隊ともなれば普通はそれなりに訓練を積んでいる訳で、一般人とは一人一人の強さに大分差が出てくる。そのうえ規模も数百人から数千人にのぼり、戦車やヘリコプターといった兵器もある程度所持していることだろう。つまり評価1よりも遥かに規模の範囲が広いのだ。
そのまま3:学区総戦力、4:多数校戦力、5:半数戦力、6:総戦力と続いていくのでインフレがすごい。この評価値自体が非常にざっくりとした区分で分けられていることが分かると同時に、後になるほど評価1~2の範囲なんて本当に誤差でしかないことが伺える。
何が言いたいかというと、ステージ1を戦えることが最低限なのだ。これが最初の敵で、ステージ2では戦力評価2が、ステージ3では戦力評価3が控えている。
これだけのイベントを企画するなんて、地鎮祭でもなければ到底不可能…だからこそ唯一無二のイベントとして注目を集めているところもある。
私たちのチームホワイト&ホワイトも一戦目はウォーミングアップに使った。
戦術は簡単、チームを正面班と側面班の二つに分けて、正面班が前で耐えているうちに側面班が横から攻撃するという方法を常に維持しただけだ。シンプルな戦術とはいえ、いつでもこれを維持できるなら苦労はないが。
ミネだけは常に正面であまり攻撃せずに盾を構えてもらう。ミネが突っ込んで攻撃するとそれだけで終わってしまって練習にならない。あくまで競技で演習で楽しみに来てるんだから、ミネにはまっとうなタンクに徹してもらう。
あとはセリナとカイリ、ハナエとゼレーナをそれぞれバディとして分ける。戦力バランスを考えた結果だ。この二つの分隊をいい感じにぐりぐり動かして、常に片方が側面をとれるようにする。
一度に会敵する変異体の数は数体から十数体。撃ち合う場所が複雑で狭いこともあり、大人数が運用しずらい場所だ。人数差が出にくい、挑戦者に有利な地形なこともあって、十字砲火が決まれば十分押し切れる。ミネが落ちようがない硬さなこともあって、危なげなく戦えた。
位置取りの関係上側面攻撃班はミネの盾で守れないので、場合によっては気を付ける必要がある。ただカイリととゼレーナは単独でも問題ないため、その時側面を担当するセリナとハナエのどちらか一人を、気を付けて密に指示すれば問題ない。
地形や敵味方の把握、戦場のコントロールが重要になる戦い方だ。シンプルな形だけど、タンクがミネ一枚なこともあって指揮にはそれなりの練度を要求される。まあ各分隊を手慣れた二人が先導していることや、ミネをただの盾として動かさないでいることで簡略化して補強しているから、慣れないメンバーでも十分問題なく動けるが。
セリナとハナエはこういう経験が少ないはずだから、動作を簡略化してバッファも持たせておかないと。普通の人は治安維持部隊の人たちがやるような秩序だった隊行動何てできるわけがないからね。
局地的な各個撃破を繰り返すことで、ステージ1はサクッとクリアすることができた。まあ私たちはステージ2からが本番だと思っていいだろう。
全ての参加者が第一ステージを終了した。
結果としてやはり半数以上の参加チームが危なげなくこれを撃破し、残りは割といい勝負をしつつ、多くのチームが第一ステージを突破した。
単純にエンジョイしに来た勢や安全にできる訓練として参加した者たちなど、全員が全員強いわけではないが、大体いつも通りの結果である。
初見の敵と戦うことも取り決めのうちなので、他のチームの戦闘内容は後からしか確認できないようになっている。それでもどのチームが勝ち進んだかというのは発表されるので確認可能だ。
何と言っても突破したチームが多いので、現時点だと特に気になるところはない。
ヒナやツルギの様な勝って当然な人たちに言うことはないし。あえてというなら…アビドスチームだな。去年の後期開催ではホシノ、シロコ、ノノミの三人だけでの参加だったところ、今年は五人での参加となっている。
おそらく新入生が二人入ったのだろう。めでたいことだと言えるのではなかろうか。
去年は危なっかしいところもあったけど、今年は危なげなく勝利したらしい。とはいえぎこちないところもあったそうだが。
こう言ってはなんだが、私はアビドスにあまり直接関わる気がない。アビドス校区には地鎮祭企業であるマテリアルクラフト社が既に入っていることだし、私の出番は特にない。
地鎮祭が何でもやっちゃうのはレギュレーション違反、もとい本末転倒だからね。生徒の自主性に任せてこそってやつだ。
カイザーPMCって完全にやられ役ですが、作中でプロの兵隊みたいに言われていた通り、戦力は平均を大分超えてるはずです。
上澄みの奴らが強すぎるだけで。アビドス勢は全員上澄みですしね。
ついでに言うとサポート最上位の先生が指揮すると、平均程度の生徒ですら上澄み並みになってしまうという。