連れ込まれたセリナハウスにて、なぜか常備されているらしい病人用ベッドで目覚めた。キヴォトスに帰還してから三日が経過したものの、それまではほぼ気絶状態で眠っていたままだった。
セリナも多分寮暮らしのはずなのに、わざわざこんな時もあろうかとってノリで病人用のセーフハウスを持ってるのはかなり極まってると思う。いやセーフハウスというか、自宅ではあるみたいだけど。
もしかしてミネとかあんまりそういうの気にしなさそうな人も持ってるんだろうか。*1
セーフハウスくらいは複数持っている人もいるだろうし、地鎮祭なんて実はバカみたいにたくさん物件隠し持ってたりするけど、完全に異色の存在だと思う。まさかとは思うけどセナも似たようなもの持ってるんだろうか?否定しきれない。
何にせよありがたいことなのは確かだ、一人だったら色々苦労しただろうところをセリナにかなり助けられてる。
しかし今回は絶妙にひどい目にあった気がする。
普段なら"致命防止ルール"、"肉体自体の防御力"、"その他パワーの防御力"の三重の防壁によって、人が致命傷を負うことがない。一方私はぎりぎりまでリソースを消費してすっからかんな状態だから、三つ目の見えない防御力がほぼゼロの状態だった。
おかげで受けた傷は私なら治せるとはいえ、適切な処置がなければそのまま死ぬレベルにまで達していた。
あの戦いでくらった弾丸の数は数百じゃきかない…重要部分は全部無事だが、逆に言えば重要じゃない部分で受けたから体の外側はズタズタのズタになっていて、無事に残った皮膚面積は半分以下、肉が四散して体積が減ったから同時に体重も減少、たった一日で脅威の減量に成功!
最初の時見ただけで悲痛に歪んで泣きそうになっていたセリナの顔が思い起こされる。でも私は肉体の細かい指令を制御できるから、こんなオートだと傷跡だらけブラックジャックになりそうな傷でもスッキリ元通りに治せる。
本気を出せば亡くした腕を生やしたり血を増産したりもできるけど…最初期つまり子供の頃はできるやつはできる程度の技術だと勘違いしてた。だからそのころは地鎮祭メンバーに教えたりもしていて、後になってから間違いに気づいた。
教えたら程度はともかくできるやつはできるようになったから間違いでもなかったのが質が悪い…閑話休題。
私の性能は…フェイズ1なら客観的に判断して上の上の上澄みな程度ではあるけれど、決してその枠を突き破ってはいない。ここまで消耗していたら負けるのも当然である。リソース全損なんてよっぽどのレアケースだから初めての経験だしふつうは起こらない…同時に"ウルスシステム"との接続に問題が出るのも初めてだ。
ウルスシステムは私が地鎮祭のために作ったシステムで、ざっくりいうと信仰や感謝を貯めて、それをリソースにして術…"ウルスの祈祷"を発動できるというシステムだ。これがあるから地鎮祭は最強なのである。…実際にはトルヤの化身の一つみたいなものだから、これももう一人の私みたいなものだけど。
ある種の神を新たに作り出してしまったことに気付いたのは、例によって後になってからだった。まあでも感謝したり、祈りを捧げたりすればしただけ力を貸してくれる…そういう俗っぽい神の方が、人が信仰する対象としては上等だと思う。何せ平等に報いてくれるのだ、こんないいやつそうそういない。
人の信仰がなければ存続できないとかどんな劣等種だよプークスクスとか言ってくる奴もいるかもしれないが、気にしないのが正解だ。
問題はキヴォトス関連空間だけ過去の状態になってるせいで、巻き戻り範囲外につながってるシステムがキヴォトスの外側と内側で時間がずれておかしなことになってること。稼働に問題はなくてもキヴォトス側の端末に横から再接続が必要で、そこを解決するまでウルスの祈祷が使えなかった……無遠慮に外側のシステムを使うのはマナー違反もいいとこだし。
今はもう再接続したから私自身の内部リソースがなくてもウルスシステムという外部リソースで戦える。体がある程度治る頃には、先の敵が大群で襲い掛かってきても問題なく撃退できるだろう。逆に言えばそれまでの一週間くらいはまじめに潜伏している必要がある。
地鎮祭の上層部とも連絡がついたから何かあってもいつでも援軍は出せるんだけど…あんまり地鎮祭に頼り切りはよくないというか、いつもと違う行動をさせたくないというか…まあ、見栄かもしれない。
私を本気で襲撃するとなれば相応の戦力を用意してくるだろうし、そうなるとここら一帯ががれきの山に変わってもおかしくない。あるいは搦め手で来られてセリナがつけ狙われたりしたら目も当てられない…つまり結局見つかったらまずいわけで。
潜伏するための工作つまり痕跡を消したり結界を張ったりはガチでやったから安心だ。フェイズ1相当の相手に発見できるレベルじゃないし、フェイズ2以降の敵が相手ならフェイズを上げればいいだけだ。
ただ結界についてはまだまだやるべきことがある。回復優先で寝てたから隠蔽系の機能しか作れてないし、しばらくこの場所にとどまるならしっかり拠点化としてガッチリしたものにに作り直さないと。
そうなるとそれ用のアイテムがほしくなるな…今は手持ちがないからセリナに私のセーフハウスから持ってきてもらおうか?それならついでに替えの服とか装備とかも…早めに頼んだ方がいいな。
どのみち着てきたものはボロボロの血まみれで廃棄だ、今は用意された病衣を着ているけど服は必要になる。地鎮祭の誰かに頼むのが普通な気もするが…セリナに頼もう、その方がいい。
ちなみに結界用のアイテムといっても盛り塩をしたりお札を貼ったりするわけじゃなく、主に特殊なガラスを使っている。機能性だけを考えたキューブ状のものもあるし、カモフラージュのために動物の形に成形したガラス細工の小物もある。いずれにせよガラスを精製する段階から術の補助器として使うことを想定して作った特殊なガラスだ。
今後しばらくセリナの自宅に置いてもらうことを考えると、ちゃんと見た目の良い小物としても置いておける物の方が良いな…お礼もかねて。
アビドス砂漠でウチの会社が砂岩と一緒にガラスも作ってて、そこで一緒にガラス細工も作ってるから今度良いものを送ろうかな。怪我が治ったら工房の直売所に招待するのもいいかもしれない。
とりあえず補助具がなくても作れるところから先に作っておこう。家を建てるのと同じである程度の設計図は頭の中にあるし使いまわせるけど、実際には家の立地や形状によって細部は異なってくる。仮設テントって訳でもないから作るのにはそれなりに技術力が必要になる。手作業と言うか実作業が必要だし時間もかかる。
中身はそうだな。結界24層、魔力炉3基、中略、廊下の一部はイカイカさせている空間もある…冗談だ。そんな負けフラグの塊みたいな拠点は作らない。
そんなこんなで襲撃されたらかなり困る最初の二日間を何事もなく終え、安堵のため息をついのが私です。その間は意識を抜いて回復に専念していたから一度も起きていない。
今の感じだと多少は戦えるようになるまで五日くらい、ある程度無茶が効くようになるまで十日くらい、完治までは二十日以上といったところだろうか。多分治りきるまではセリナも放してくれないと思うし、それまではここで大人しくしつつ情報収集に充てよう。
もちろん働いてばかりじゃなくて遊びにも行くぞ、久しぶりのキヴォトスだしトリニティ観光を楽しみたいところだ。
それまで世界が平和であることを信じて!
・星上不在世界線だとミネが死亡するまであと数日。
・セイアの被襲撃タイミングは原作よりも遅い。