しばらく後、ゼレーナとカイリはしっかりと見つかることなく偵察をやり遂げ、敵はやってきた。位置を調整して強引に二隻の駆逐艦マローダーを同時に狙う。
チームの分割は戦力的にギリギリだけどカイリとゼレーナの二人、そしてそれ以外全員の二チームだ。
指揮官としてカイリとゼレーナの動きにもしっかりと注意を払いつつ、指示はこちらに集中。百メートル程の距離を全速力で駆ける。建物と敵陣形、そして位置関係から迎撃できる機銃は正面の一隻からのみ。
豊富とは言えないまでも全員で持ってきた対バリア手榴弾を投げつける。下から急に敵が出てくる「謀ったな、シャア!」状態である。
奇襲の優位を生かせる時間はそう長くない。敵は生物じゃない以上精神的動揺がないが、処理判断速度の限界という意味では生物における動揺のような反応が出ることもある。だから大事な初撃でできるだけの戦果を得る。
次に手榴弾とは思えない大きさと重さをした対装甲爆弾を投擲!爆発!装甲に穴が開いた。何たることか!あからさまに過剰威力なのだ!
これはミレニアム生が利用方法も考えずノリと勢いで作ったら案の定火力が高すぎてまともに使えず、ギャグコメみたいな経緯ののちに対艦用の爆弾兵器として生まれ直したバカ爆弾だ。正確に当てれば無人戦艦の最外郭装甲を一発で抜けるというヤバい火力を聞いて見に来た客たちが、あまりの値段の高さと使い勝手の悪さに絶句したという。
実際使いこなせるのなら火力は大したものなのだが、これを使いこなすためには最上位生徒並みのパワーと技術を要求される。使えるかこんなもん。良い子のみんなは素手で投擲するんじゃなくて発射装置を用意しようね。そこまで行ったら普通にミサイルの方がずっと良いって?せやな。
ちなみにこの爆弾でバリアを破壊することはできない。いや、不可能とまではいかないが現実的じゃない。コスパも悪いを通り越してクソだ、素直にバリア特攻兵器を使おう。
こちらは敵艦船の構造も知っているしどの武装でどこをどう狙うのか、あらかじめすべて計画してきているのだ。おかげさまで防衛ドローンとまともに撃ち合うことすらせずにコアまで直通だ。あんな兵器何個も持ってこれないので、これができるのはこの一回きりだが。
そんな感じでマローダー一隻撃沈するだけで持ち込んだリソース…といか重量の多くを消耗しながらも、初撃を爆速で処理できた。重くて仕方がなかったので使い捨てられてホッとしつつも次へ向かう。
この段階だと敵はまだ退避行動をとっていないので、今はまだ自力でダッシュだ。私は十数歩後ろをついていきながら自力で回避するとして、セリナとハナエに向かう攻撃はすべてミネに防御してもらう。
当然ミネの負担がかなり大きいため、移動経路は完全にこちらが指示してそれに従ってもらい、ミネには移動と防御に集中してもらう。地形と建造物、敵艦の向きと銃座の向き、周囲の艦隊の位置、反対方向に向かったB班の動き、それらを考慮して最も被害が少なくなるように部隊を動かす。
とにかく視野を広くして情報を集め、それを処理するために頭を働かせる。今はまだ敵の攻撃がぬるい、飛んでくるのは機銃だけでミサイルも対空砲もまだコチラを向いていない。位置取りも良い、二隻目までの道中は問題なさそうだ。
敵もこの距離で小さな人間相手に大口径主砲は撃てない。そもそも数人の小人が走ってくるくらいだとデプスフリートの脅威度判定で大した脅威度とみなされないから、飛んでくるのは機銃だけ。
これは油断ではなく正常な判断だ。巨大な艦船にとって優先的に対処すべきなのは自身を撃沈しうる大口径砲弾や大型ミサイルや爆撃などであり、ひいてはそれを撃ちだすことのできる艦船や航空機などだ。
纏わりついてウザいからと言ってチビどもに気をとられてそれらへの警戒を疎かにするなど愚の骨頂。ぶっちゃけ正しいのは奴らの方で、生身で何とかしようとする方がマイナーだ。
重くて運びづらい装備は一隻目で使い切っているので、二隻目は普通に内部に侵入する。
内部に侵入してからはセリナとハナエも火力として運用する。防衛ドローンが押し寄せてくるので火力がないと進むのに時間がかかるのだ。
「セリナカバー!ハナエはそのまま撃て!ミネはゆっくり前進!」
指示に従って遮蔽に引っ込んだセリナから通信が飛ぶ。
「ヤチトさん、左通路が開きました!」
「左からは後で敵が来る。挟まれる前に次の通路を抜けるぞ、ハナエはリロード、タイミングミネに任せる!」
この軽装の少人数で防衛線を突破するのはそれなりに厳しいが、私の指揮パワーで素早く怪我無く突破。コアに到達して破壊するまでの区間タイムは中々だった。
船が崩壊を始めるまでには少しだけ時間があるので、この時間で今度は甲板にでて、持ってきていた900mlペットボトルくらいの大きさの兵器を投げ上げる。それは上空で爆発すると、キラキラと光を反射する小さな破片を大量にばらまいた。
ざっくり言えばチャフだ。デプスフリートの観測機器を妨害することに特化している。これで包囲砲撃を防ぐのが目的だ。ただしピルファラー巡洋艦がいると効果が薄れるので、次はそこを狙う。
現在、崩壊を始めるまであとわずかという状態のマローダーの甲板上にいる。メンバーはハナエと別れてセリナ、ミネと一緒だ。ハナエには別の役割があるので、どさくさに紛れて一人で潜伏してもらうことになる。
正直言うとハナエの役割もかなり重要で、一人に任せるのは不安だったのだが。事前に準備と計画を詰め、そのうえでセリナからの大丈夫のお言葉を頂いたので、信じて任せることにしたという背景がある。
背負っていた大きなバックから中身を取り出し、空になったバックを投げ捨てる。取り出したのは秘密兵器その一だ。
出てきたパーツを素早く組み立てると、それはスペースシャトルを平べったくしたもののような見た目をしていた。これが何かというと、ずばりジェットとホバーのついたサーフボードだ。いつだかロボットアニメで空中サーフィンするやつがあっただろう、あんな感じだ。
そして左手にはメカニカルな籠手のようなものを装着。これで左手だけでジェットサーフィンの操作ができる。
これは流星グループが発売しているとあるパワードスーツのオプションパーツの一つ。これだけ単体での運用は想定されていないのだが、今回はこれだけを持ってきた形だ。
もちろんこれ単体でもチャチなものではなく、デプスフリートの弾幕の中を走るだけの性能がある。(だから生身で使うことを想定してない訳だが)
ヒナが推進器のみを使用していたのと同じ理由で、できるだけ最低限の装備で移動力を確保するための選択だ。全身を覆ったパワードスーツや、戦闘車両とは運用思想が異なっている。
ただヒナの場合は本人が強いなら余計な装備は邪魔になるという、割と身も蓋もない考え方が土台にあるから少しちがうのだが。移動手段だけはどうにもならないからそれを用意している、ということには変わらない。
ともかく手早く準備を終えて浮き上がったボードの横に立つと、セリナに背を向ける。
「よし、セリナ」
「はい!」
何をするかというと、まずセリナをおんぶして、前にミネを救助したときにも使った装備で固定する。これなら私とセリナ、両方の両手をフリーにできる。
そしてそのままジャンプしてサーフボードへ。
「ミネ」
「よろしくお願いいたします」
そして今度はミネに前から抱き着かせる形をとる。そう、まさかのサーフィン三人乗りである。絵面はコメディそのものだ。
水平線追跡団の時も、ヒナの時もそうだったように、大抵の物事はスピードが早ければ早いほど制御が難しくなる。そしてこんな装備の練習なんてしたことがあるはずのない二人は当然操縦ができない。別の装備も検討したのだが、時間がなかったこともあり、背負えば行けるじゃんというおかしなノリでそのまま採用されてしまったのだ。
こうして大きいとはいえ一つのサーフボードに三人乗るというおかしな格好に。すっごいトンチキ。まあ、あれだ。私の操縦さえ大丈夫なら、全員が安全になるやり方だから。
マローダーが完全に崩壊するのとタイミングを合わせ、ジェットサーフィンで飛び出す。案の定タイミングを合わせて撃ち込まれた砲弾を躱しながらだ。
後ろに一人を背負い、前に一人に抱き着かれながらも、狂うことなくサーフボードを走らせる。こんな状況でも操作は十全だ。
次の目標であるピルファラーに向かっていると、ついに敵が本気を出してきた。
巡洋艦プラウラーから射出されたのはコンテナミサイル。三角柱の様な形で、一面に4*9で36発の小型ミサイルが搭載されている。三面あるので、全部で108発だ。これが放たれて空中を飛ぶコンテナミサイルから連続して撃ちだされてくる。*1
同時に周りの船からも榴弾主砲とミサイルが飛んできた。
さあ、ここはゲヘナの星の迎撃能力を見せてやるとするか。自慢じゃないが、私の迎撃能力はヒナのそれを上回る、キヴォトストップクラスだ。私が乗って迎撃に入ったヘリは落ちたことがない。つまり高速で飛びながら飛んでくる攻撃を撃ち落すのは慣れているのだ。
一つのサーフィンに三人乗りは確実におかしいだろと思い当初はミネは自分のボードに乗る予定でした。しかしブルアカはルール無用だろ、自分の壁を突き破れ!!と思い直して星上が一人で二人抱えてサーフィンすることになりました。
なおミネは、実は頑張れば一人で乗れるのに、あえて相乗りさせてもらうことを選んだことになりました。かーっ!見んねコハル!卑しか女ばい!