話がとっ散らかってしまいました、説明へたくそか。よくわからなくてもフィーリングで大丈夫です。
へたに凝って時間をかけるなら次を書いた方が良いと思いますが、気になって結局いくらか丸めました。
セリナの言葉とその意思を感じて感動した星上は当初の予定よりも遥かに突っ込んだ内容を、何ならほかの人にはあまり話さないような闇に触れた話までする気になっていた。
「最初はあまり隠していないような、誰に話してもいい内容だけを語るつもりだったけど…でも今の話を聞いて気が変わった。…もしも望むのならば、明かしていない、もう少し突っ込んだ内容を話す。ただしそれなりのリスクがあるよ。今でもだけど…もしかしたら闇の組織に狙われたりするようなこともあるかもしれない」
「聞きたいです。ぜひ、聞かせてください」
「…分かった」
セリナは自分の心情のことを置いておいたとしても、一緒にいようという目的の為であれば、相手のことをより知っておくべきだと思った。最初は治療の間だけでもと思っていたセリナであるが、だんだん内心のその期間が伸びていっていることを本人も自覚している。
「私は秘密結社"地鎮祭"重役にして、最も秘密の多い部門・ポラリスセクター所属、ポラリスの怪人が一人。…地鎮祭とポラリスについては、聞いたことある?」
「イレギュラー事件の現場で地鎮祭の方とは何度か会っているはずですけど…ポラリスセクターというのは初耳ですし、ちゃんとした情報として聞いたのは初めてです。秘密結社ということは、やっぱり秘密の組織ですよね?」
「そうだね。隠された非公認の組織…なんだけど、これが今やずいぶん大きな組織になっててね。活動範囲はキヴォトス全土に及ぶし、フロント企業をいくつも持ってるんだ。セリナと関係ありそうなところでいうと…雪耳製薬って知ってる?」
「雪耳製薬ですか?新薬をいくつも出している会社ですよね。それなら、救護騎士団でも雪耳製薬の薬はいくつか扱ってます。花粉症を抑える新薬はすごく効果がありましたし…もしかして」
「うん、そこの新薬開発の研究所、ガッツリ地鎮祭でやってるんだよね」
「知らなかったです……すごい、そんな高度なことまで」
雪耳製薬と言えば、比較的最近登場した新薬の研究製造を行う会社だ。未だ数は少ないものの作られた新薬はいずれも有用なもので、医療業界では密かに話題になっている。
そんな企業を表にもてるのも、地鎮祭が持つ人材が非常に多岐にわたり、そして地鎮祭が持つ一番の武器である"ウルスシステム"の加護を受けているからだ。
ウルスの祈祷は戦闘にしか使えないような単純な術ではなく、極めて汎用性の高い多用途の術システムだ。これは様々な分野において多くの恩恵をもたらしており、また特別能力の高い訳ではない人材の能力を底上げし、豊富で代替可能な人材の厚い層を生み出している。
「やってることはメンバーがそれぞれ学区を超えて活動し、人助けしたりイレギュラー対処をしたり…って感じ」
ざっくりと地鎮祭についての説明が行われる。
有志による良いこと楽しいことをする団体。戦力は飛びぬけて世界一。
表裏問わずいくつかの企業・団体を傘下に収めており、その規模はかなり大きい。主な活動は対イレギュラー対応で、活動範囲はキヴォトス全域。
構成員の出身は全くバラバラでありながらまとまりが強く、組織の情報に対しては極めて強力な情報統制を行っている。そのため立場あるものや裏社会の者にばその存在と功績が広く知れ渡っているものの、詳しい情報はほとんど流れていない。
地鎮祭はいくつかのセクターに部署分けされており、そのうちの一つポラリスセクターは、個人で異常な戦力を持ち顔も名前も人数も不明。その有様からポラリスの怪人と呼ばれ恐れられている。実際、ポラリス基幹メンバーは全員がキヴォトスを崩壊させうる力を持っている。
「末端の企業は色々あるけど、中核にして本体である地鎮祭は個々人の意思によって成り立っているところが大きい。それこそ趣味のサークルとか有志のボタンティアともいえる。楽しく良いことをしようぜとか、善行よ報われてあれとか、そんなモットーをすべて満たす組織。でも大事なのは、いい加減にやってる訳じゃなくて、みんな真剣に地鎮祭という趣味に打ち込んでるということ」
星上がタブレットで地鎮祭のメンバー専用アプリを立ち上げ、そして新人用の心得集でも表示しようかと思ってから思いとどまった。
中にはやりたい奴だけやれとか、楽しめないならやるなとか書かれていたりする。
「自らその道を選んだ者が、自らが望むがままに楽しく戦う、それが根幹にある。そして今地鎮祭が掲げる目標はキヴォトスの崩壊阻止であり、そのためにイレギュラーの対処を主要プロジェクトに位置づけてる。
地鎮祭は今やキヴォトス中でイレギュラーと戦ってるし、見逃せないようなことをしている相手は組織・個人・立場・戦力のくくりを無視して叩き潰してきた。今や裏社会で最大戦力を持っているし、逆らうものはいないくらいの組織…だから各学園の首脳部は多分みんな存在は認知してるだろうね」
トリニティで言えばナギサやサクラコは言うまでもないとして、比較的そういった情報に明るくないミカやミネでも存在自体は認知している。
「それだけの戦力が、学区のしがらみにとらわれることなく活動している。だからこそその功績は膨大なものになっている。
ただ、最近は闇の正義の組織とか思ってる人もいるみたいだけど、別にそういうわけじゃない。地鎮祭は自らを正義であるとは認めていない。非公認の集団が好き勝手暴れてる、そう考えれば危険な組織そのものだね。
さらに言えば、トップである教主にして主を崇めてる狂信者どもが一定数存在するやべー組織でもある。…これは冗談でもなんでもない事実。突飛なことじゃなくて、故も理由もあることだけど…話がそれるから今はいいか。
だから趣味のサークルだって言うし、正義の組織というよりもは宗教法人に近いかもね」
そこまで言って、星上はいったん言葉を切った。
非公式の宗教組織なんて言われたら、普通は闇しか感じないだろう。地鎮祭は言い方次第では簡単に、ものすごく危険な組織であるように言えてしまうのだ。
セリナは感情で瞳を曇らせることなく、まじめに、冷静に話に聞き入っていた。だからこそ情報が足らないうちに早合点して印象を決めてしまわないようにと、あえて問題点について聞いた。
「危険な組織とも言いましたけど、それはどのくらい……問題があるのでしょうか」
セリナはなんと聞くべきか悩んだ。セリナが地鎮祭を目にするのはいつもイレギュラー事件であり、そこで会う地鎮祭はいつでも味方側にいた。
今の話を聞いただけではどうしても危うさに目が行くだろう。ヤチトがなぜそのような言い方をしたのかはともかく、ワザとそういう風に話していることはセリナにも分かった。
「正直、私からすると結構複雑な心情なんだ。大切だし誇らしいことは確かで、危険性も、抱えた闇もよく知っている。…だからこそ、今は事実を話す。
地鎮祭はかなり高いレベルで統制されている…というか一人一人の意思がしっかりしていて一枚岩になってる。地鎮祭の活動履歴はたかだか数年では収まらないし、活動範囲はキヴォトス全土に及ぶ。そんな中秘匿されてきた活動実績は、多分想像を絶すると思う。
それだけのことをしておいて、裏社会にすら実情をほとんど知られていない。つまりそれほどまでに統制されていて、情報を隠しきれている、ということ」
星上が話したことは、大分衝撃的な内容だった。
完璧と言っていいくらいに統制されているのであれば、一見危険はないように思える。しかしセリナが素直に安心しきれなかったのは、それを話す星上の表情がどうにも微妙なものだったからだ。
セリナは普段、物事の悪い側面をあえて探そうとはしない。人の悪いところ探しをして、積極的にあげつらうような人物は、決していい人物は言えないだろう。それでも今回これを聞いたのは、それだけ相手のことを知りたいと思い、隣に立ちたいと思っているからだ。
ヤチトの微妙な雰囲気の真意を探ろうとして、星上の言葉を反芻する。そしてふと一つの可能性に思い当たった。
それはたった一人が崇拝され、たった一人がすべてを意のままに操っていて、その人の善性によってのみ安全が担保されているというもの。裏社会では最大戦力とまでいうほどの、大変な戦力が。
であればその人が決めたなら、その組織は一瞬にして世界に牙をむく。その人に何かあれば、もたらされる混乱はいかほどのものになるのか。
そしてそこまで考えて、同時に結びつけてしまうことができた。一人でたくさんの人をまとめて、組織を立ち上げ実績を上げる。それだけのことを成し得る人物に、二人だけ心当たりがあった。セリナが思い浮かべたのはそのうちの一人、ゲヘナにおいては知らない人などおらず、ゲヘナから多少離れた校区においても名の通った人物。
とある著名な評論家に曰く、キヴォトスに二人の超人在り。
片や完全無欠なる連邦生徒会長。キヴォトス全体に堂々と介入できる立場を持ち、最も自由な権力を行使する。キヴォトスの天の頂点。
片や最強無敵のゲヘナ風紀委員長。"ゲヘナの星"の異名を持ち、近世において最も多くの生徒を救済した人物。キヴォトスの地の頂点。
何を隠そう今目の前で語る裏月ヤチトと名乗る人こそが、"ゲヘナの星"遠星操夜星上その人であり、そして地鎮祭のトップなのではないかと、そうセリナは思ったのだ。
星上は数か月前に身を隠した(死亡説をまるで信じていない)。もしこの超人が単身身を隠さざるを得ない程の何かと戦っているのだとしたら。驚くほどに筋が通る。
…そう、出会って僅か数日で正体がバレかけているのである!
まあ地鎮祭は直接的でないだけでセリナのことを一度調べているし、セリナは星上のことを前から意識していたある意味ファンみたいなものなので、単なる出会って数日とは異なるわけだが。
一方で星上も別に言わなくてもよかったことまで行ってしまっていることを自覚していた。
こんなこと言わなくても別にいくらでも言い方があったのに、わざわざ不安にさせるようなことを話している。どうしてかといえば話したくなったからであり、それだけセリナのことを好きになっていたからだ。
(この感覚には実に覚えがある)
かつて空崎ヒナのことを好きになった結果、それまではやる気のなかった風紀委員長に就任、強い活動で大改革をした結果、ウイキに単独記事まで作られることになった。
出会ってからたった数日でそこまで好きになるって、チョロインだろうか、チョロゴンクエストか。しかし星上は人を好きになることをいいことだと思っている。それは人生の豊かさを構成する一要素でもあると考えているからだ。誰かを好きになることも、誰かに好かれることも肯定する。
「わざわざ不安になるようないい方したけど、、実際のところは安定してうまくいってるから心配ないよ。実際、トップ不在でもこゆるぎもしないからね」
「本当ですか…?」
「冷静に考えると正直セリナのことが好きになったからちょっと脅かしちゃってただけだし」
「…ふえっ!?」
あまりにも唐突な不意打ちををくらったセリナの顔が赤くなる。一緒に思考もストップして空転したので、先ほどまで抱えていた微妙な不安もまた吹っ飛んでいた。
この男は自分が人を好きになることに対してポジティブだからって、誰かに好き好き光線を浴びせることに戸惑いがない。いわれた側も大抵喜ぶだけだしそういう相手くらいにしか言わないので、この事実を知っている者はあきれてこれを放置している。
実際のところ星上に対して熱視線を送る者はたくさんいるのだが、それよりも狂信者がたくさんいることの方が問題なので、あえて取りだたされず深刻化もしていない。
ちなみに地鎮祭の幹部たちは星上なら全員抱えてもどうとでもなるだろうと信頼している一方、闇がより深い闇によって隠されている現状を認識しており、ここぞとばかりにキヴォトスに責任を押し付けていた。キヴォトスが悪い、大体キヴォトスのせい。地鎮祭のメンバーがおおよそ抱いている共通認識だった。
ちなみに最初に星上が感じていたやらかす予感というのは、実は話す前からヤチトが遠星操夜ではないかと疑っていたセリナに地鎮祭であることを話してしまうと、星上=地鎮祭=ポラリスという式が成立してしまうことに対するものだ。この事実を知っているのは地鎮祭以外だと連邦生徒会長を筆頭にごくごくわずかな人だけなので、結構危なかった。
セリナのことを好きになった今となってはそこまで本気で隠さなくてもいいかと思っているので、結果的にやらかしでは無くなっている。
「人を好きになるのは良いことだし、好きなものが増えるのもいいことだ。ただ、誰かを好きになると私はやりすぎるきらいがある…今は最優先の目標があるのだから、加減は気を付けないといけないな」
温度が急上昇している自分を知ってか知らずか続ける彼を見て、セリナは一時的に熱くなった顔をどうにか冷まし、重要事項の方に意識を戻した。
「地鎮祭の今の目的はキヴォトスの崩壊の阻止、とおっしゃいましたよね。最優先事項と言うのは、それのことなのでしょうか。……でしたら、キヴォトスが崩壊するような事態が起こる、あるいは起きているということですか?」
「その通り…事件自体がこれから起こるにせよ起きているにせよ、物事には何事にも理由があって土台がある。その予兆を、私たちですら見つけられていない。分かっているのは何もしなければおそらく、あと一年もたたずにそれは起こるということだけ」
迂遠な物言いに、セリナは予言者と言われるティーパーティー、百合園セイアのことを思い出した。