ラブライブ! ―果実の鎧武者― 開幕です。
プロローグ
俺はあの時、アイツの夢を守り切った。
その為に犠牲にしたものもあったけど、後悔なんてしていない。
むしろ、アイツの夢を守るためにこの“力”を得たことが嬉しかった。
だけどそれももう終わり。
もう俺は戦わなくていい。
そう思った。思いたかった。
だけど現実はそう甘くはなかった。
俺はもう一度、戦乱へと巻き込まれることになる。
今度は新たに出会った、9人の女神の夢を守るために……。
今度こそ、本当に大事なものを失うことになるとは知らずに……。
──────────────―
「……ん……ふぅ、ぅわぁ……」
窓から指す朝の陽ざしに当てられ、俺こと
仕方なく起きざるを得なくなったわけであるが、しかしこの空間に置いて一つ奇妙な点があった。昨晩、俺は確かにカーテンを閉めてから就寝したはずなのに、今もこうして陽の光が俺の顔を照らし続けている。遮るものがなくなった日光は、容赦なく俺に襲い掛かっていた。
何故カーテンが? そんな不可解な現象に疑問を抱きながらベッドから身体を起こし、ゆっくりと瞼を開ける。すると間もなくその原因となる存在が俺の目に映った。
「んっふふ」
「……(あぁ……)」
俺のベッドのすぐ真横で満面の笑みを浮かべている“ソイツ”が犯人だ。
「おはよう、コウガ」
「おはようさん……ツバサ」
眩しい笑顔を見せる彼女の名は
スクールアイドルってのは説明すると少し長くなるのだが……言うなれば、文字通り学生主体によるアイドル活動だ。アイドルといっても、あくまで彼女らは学生である。プロみたいな本格的な人たちとは違い、学業や家庭などの合間を縫って活動している。言ってしまえば部活、趣味としての側面が強いと言えよう。
だからこそ人気No.1スクールアイドルだとしても、こうして自由に人の家に押しかけることも可能なのだ──って、
「(まあ、ある程度自由なのは確かだろうけどさ)はぁ……どうした今日は? 学校もライブもないよな?」
ここ数日はツバサと会うことはあっても彼女が家に上がり込むということはなく、故に今日見たいな訪問は久しぶりだった。いや、訪問じゃない。侵入だ。この家の住民は俺だけ。つまり一人暮らしだ。誰それに許可を得て入れるものじゃない……いや。
──俺じゃん。万一のときのためにツバサに合鍵渡したの俺じゃん……。
などと己の記憶力のなさに内心苦笑しながらツバサの返答を待つ。
「ごめんなさい急に。でもコウガに直接言いたいことがあって」
「へえ。それはそれは」
「もう、真面目に聞いてっ。でね、本題だけど……大会があるのよ! 大会!」
いや、大会といわれてもよく分からんぞツバサよ。とばかりに少し疑問の混じった表情を浮かべる。それに気付いたツバサは熱を冷ますと、ベッドに腰掛ける俺に視線を合わせ、強い眼差しに固い意思と共に俺に向けて語り出した。
「ごめん、熱くなっちゃって。でね、大会っていうのは、スクールアイドルの大会。全国各地のスクールアイドルたちが己の魅力、ダンス、歌唱力を披露して、それら全てを競い合うスクールアイドルの祭典。その名も『ラブライブ!』……ま、まだ企画の段階なんだけどね」
「ほ、ほぉ~……」
前言撤回。やっぱり冷めてないわコイツ。珍しく少し圧倒されたわ。けど大会──ラブライブ!──か……。
よかったじゃないか、ツバサ。お前がやりたいって言ってたアイドルをやれて、それでそんなに熱くなれるイベントまでできて、そんなに幸せそうで……。本当、お前を見てると頑張ってきた甲斐があると思うよ。俺も……
……大事なものを捨てて、罪を背負ってきた甲斐があるというものだ。
「それでね、お願いがあるの」
「ん?」
なんだ? ツバサが改まってお願いだなんて。もう俺が手伝うようなことはないと思うけど。
そういう趣旨の言葉で問うとツバサは「そうじゃないの」と否定する。じゃあなんだ?
「その『ラブライブ!』で私たちA-RISEは優勝する。コウガにはその姿を見ていてほしいの」
「……ほぉ」
「私、真剣なんだけど」
いや、そんなの顔見りゃ分かる。ただ──
「……返事に困っただけ。理由とか聞いても?」
そんな俺にツバサは真っ直ぐ立ち上がると、凛とした姿勢を崩さず、真っ直ぐ真摯に俺を見つめる。その瞳には一切の曇りもなく、ただ俺の目を真剣に、外さないようにまっすぐに見据えている。やはり強い。それがツバサの
「そんなの決まってる。私たちはコウガのおかげでここまでこれた。そんな私たちの
自信満々にそう言いきったツバサ。その姿が眩しくて俺は目を瞬かせた。
──ああ……なんて言えばいいのかな……うん。
「おじさんうれしい!」
なんか、感無量ですわ。思わず照れ隠しちゃったけど。
「もう、素直に喜んでもいいじゃない。しかもおじさんって、私と二つしか違わないじゃない」
「
ケラケラと笑い飛ばしながら軽く返すが、言わなくても分かってると思うなツバサは。もう数年来の付き合いだしな。なんだろ、うん。色恋とかじゃなくてアレだな、戦友同士の友情に近いかな? 少なくとも、つい最近はそうだった筈だ。
「大丈夫。もちろん見に行くよ。絶対に」
俺がそう答えると、ツバサの真剣な眼が更に輝いた。そして俺に見せたのはここ最近で一番眩しい、一人の少女の笑顔だった。
「うん!」
そう幸せそうにほほ笑むツバサに少しドキッと胸が高鳴ってしまった。いや、卑怯だろこれは。こんなのにときめかない男子はいないだろ。いやはや、流石スクールアイドルのトップ。こりゃ優勝確実かも知れないな。
「とりあえずだ。朝飯食いたいからちょっとどいて」
「あ、ごめん。近すぎたかな」
そういいながら立ち上がるツバサ……ちょい待ち、何名残惜しそうな顔してんだよ。ほんのちょっと遠くなっただけだろ。ほんの1メートルくらい。大丈夫かオイ……。
「あぁ、えぇっと……ついでに言うなら着替えるから出てってほしい……かな」
「ふふっ、了解っ」
ってそこは素直に応じるんかい。
Uターンして部屋の扉に向かおうとしたツバサ。
しかしそれと同時に目に入ってしまった。
俺の机に置かれてあった"それら"を。
彼女が今一番目にしたくなかった"それら"を。
「……ねえ……」
俺に問いかける時のツバサの声は震えていた。
「アレ……まだ……使うの……?」
小刻みに震えながら、静かに息を呑むツバサの口から零れる“アレ”。
一つは黒い機器。正面から見て左側にナイフみたいなものが取り付けれた、ベルトのバックルのような物体。
もう一つは錠前。オレンジの浮彫が施され、真ん中に『L.S.-07』のロゴが入った南京錠。
「ねえ、コウガ……」
「……大丈夫」
声の震えは身体へと伝染し、震えはいつしか恐怖へと変わる。ツバサは平気そうに振る舞おうとしているが、今の彼女はきっと不安で心が押しつぶされそうになっている。俺にできるのは、不安に駆られたツバサを後ろから抱きしめてやることだけだった。
大丈夫。もうツバサは関係ない。
俺ももう関係ない……はずだ……。
後になって考えれば、よくもまああんな楽天的な考えを持てたものだと思う。
今更無関係でいられるはずがなかったというのに。
俺はもう、あの頃には戻れない。
この錠前──ロックシードを手に入れた時から、俺は運命を選んでしまったようなものだったのだから。
戦いの術を得たものは、戦いを降りることは出来ない。
最後に勝ち残るまで……。
鎧武が好きすぎてどうしようもなく、ついに書き始めてしまった次第。
もう完全に鎧武難民です(未だにドライブに
さて、この物語の行く先とは……?
彼らの活躍を、是非ともその目で見届けてください。
感想や評価、お待ちしております。