ラブライブ! ー果実の鎧武者ー   作:春巻(生)

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それでは今回もどうぞ。


第10話 最強の言霊

「ここからは、俺のステージだ」

 

 

 俺はそう宣言し、目の前の異形へと立ち向かう。格好では平然を振る舞っているが、内心ではこれ以上ない安堵に包まれていた。

 

 

「(よかった……間に合って本当によかった。もし……真姫に何かあれば俺は──っ)」

 

 

 何を大げさなと言うが、正直なところ本当に危なかったのだ。俺がクラック発生の連絡を受信した場所からここまでそれ程距離はなく、スイカ兵が耐えてくれればそれで何とかなった筈だった。しかしあの巨大インベス──シカインベス強化体を前にしてスイカ兵は散り、真姫は巨大インベスの前に野ざらしになってしまった。

 もし俺があと数秒遅れていたら……それを考えると恐ろしくて堪らない。真姫だって俺の大切な仲間だから……今まで辛い時を共に歩んできた大切な人だから……。だから──

 

 

 ──真姫の命を脅かすコイツは……この場で倒すっ!

 

 

「ハァアア!!」

 

 

 右手の無双セイバーがインベスの足を斬り裂き、同時に左手の大橙丸が倒れてくるインベスの身体を縦に一刀する。

 

「ッググォオォ……ッ!」

 

 膝を付きつつも大樹のごとき右腕で俺を薙ぎ払おうとする。俺はそれを驚異的な跳躍で躱しつつヤツの頭上を超えていく。そして着地までの間、両手の大橙丸と無双セイバーの乱舞がインベスの背中を切り刻む。それに堪らず、巨大インベスはうつ伏せに倒れてしまう。

 

「グ……グゴゴグッ……ゴォワオァァァァァァア!!」

 

 しかし致命傷とまではいかず、咆哮を轟かせ更なる闘争心を俺に見せつける。ヤツは未だ余力を残しているな。やはりこの手の巨大な相手には決定的な攻撃力が必要となるようだ。ならば──。

 

 

『パイン!』

 

 

 俺は腰のホルダーからパインアップルの浮彫が施されたロックシード──パインロックシードを取り出し、解錠する。俺の頭上に現れたクラックから、パインの果実が現れる。

 

 

『ロックオン!』

 

 

 オレンジロックシードをドライブベイから取り外し、そこへパインロックシードをセット、施錠する。

 そして辺りに響き渡る法螺貝の音とロックの合奏。そして俺はいつもやるようにカッティングブレードを下ろし、ロックシードを切り開く!

 

 

『ソイヤ! パインアームズ! 粉砕・デストロイ!』

 

 

 俺の頭部へと降下したパインは展開し、俺の──鎧武の新たな鎧へと変化する。

 上半身を城壁のごとく黄色(おうしょく)の鎧が包み込むその姿こそ、正しく動く城。

 これこそ高い攻撃力と防御力を兼ね備えた、鎧武の姿の一つ──

 

 

 仮面ライダー鎧武 パインアームズ

 

 

「さぁて、たっぷり食わしてやるぜ」

 

 

 俺は右手に現出したパイン状の鉄球のついた鎖付きハンマ──―パインアイアンを振りかぶり、上段から強くインベスへと叩き付ける。

 

 

「ゥラッシャァア!」

 

「ギュォオオォォオ!!」

 

 

 この凄まじい衝撃には怯まずにいられず、インベスは堪らず再び地に臥すことになる。しかしインベスもやられっぱなしという訳にもいかず、その腕をこちらへと伸ばしてくる。

 ならば、と俺はパインアイアンのチェーンをインベスの腕に巻き付け、()()()()チェーンを振り回してヤツの巨体を振り回し、再度インベスを地面に叩き付ける。その衝撃で地面に小さいクレーターが出来上がる。

 

 

「め、滅茶苦茶よ……」

 

 

 その凄まじい光景に真姫は半ば呆れているが気にしない。それにこれで終わりじゃない。

 

 

「まだまだァッ!」

 

 

 俺はパインアイアンのチェーンを手繰り寄せ、更なるハンマーによる殴打の連打を頭、身体、脚と五体全体に浴びせる。勿論その手は一切休めない。それはまるで、敵に情を抱かないようにと無理矢理自分で自分を言い聞かせるように……。

 

「グ……グアァオォ……」

 

 流石にここまでのラッシュにより、インベスは既に虫の息だ。

 なら、これで終わらせる。

 

 

『ソイヤ! パインスカッシュ!』

 

 

 ドライバーのカッティングブレードを一回下して必殺技を発動させる。眩しく金色に発光するパインアイアンをハンマー投げの要領で振り回し、敵に向かって一直線に投げ飛ばす。瞬く間に巨大なエネルギーの塊と化したパインはインベスを拘束し、その視界をも奪う。あとは最後の一撃を入れるだけだ。

 

 

 そして……俺はその名を呟く。

 

 幾多の英雄(おとこ)が叫んだその名を。

 

 戦士に終戦をもたらす、最強の言霊を……っ。

 

 

「ライダーキック……ッ!」

 

 

 その呟きは祈るように虚空へと消えていき、そして自分の中へと満ちていくようだった。

 今なら分かる、その名の意味を。戦士たちの想いが……っ!

 

 俺はインベス目がけて跳躍し、最後の跳び蹴りをかました。

 

 

「ッ……セイハアアアアァァァァァア!!」

 

 

 無頼キック──超高密度のエネルギーを纏った脚がインベスの身体へと吸い込まれるようにして入っていき、その脚を食らった巨大インベスは大きな衝撃と共に爆散した。

 

 

 ギュイィィィイン

 

 

「ふぅ……」

 

 

 クラックも閉じ、脅威が去ったことを確認した俺は変身を解除し、真っ先に真姫の元へと駆け寄った。

 

 

「真姫っ、大丈夫だったか?」

 

「だ、大丈夫よっ、そんなに心配しなくても。ほら、どこも怪我してないでしょ?」

 

「そ、そっか。よかった……」

 

 

 そんな真姫に俺は安堵し、息を吐きながらその場へ軽くしゃがみ込む。「大げさよっ」と真姫から言葉が飛んでくるが、こちらとしては精一杯だったのだ。少しくらいのオーバーな姿勢くらい見逃してほしい。

 俺が立ち上がると真姫は呆れるような視線を止め、すぐに眼を真剣なものに変えてをこちらに向ける。真剣な眼の中には、言い知れぬもの悲しげな気持ちが入り混じっていた。

 

 

「やっぱり……まだ終わってなかったのね……」

 

「ああ……ごめん……」

 

「謝らないで……」

 

「……」

 

 

 話題が話題だけにその場の空気がしんと静まり返る。互いに目線を逸らし合って余計に気まずい。まるで空気が澱むようだ。

 

 

「……ねぇ。さっきの、何? 前まであんな事言わなかったじゃない」

 

 

 そんな空気に耐えかねたのか、真姫はそんな事を俺に尋ねてきた。さっき? あんな事? ……『ライダーキック』の事か?

 

 

 

「もしかして『ライダーキック』の事?」

 

「そうよ。鉱芽、技の名前なんて言ったことなかったじゃない」

 

「……アレは、まあなんていうか……『言霊』ってヤツだよ」

 

 

「言霊?」そう続ける真姫に俺は説明をする。ま、全部話すと長くなるから細かい説明は省かせてもらうけどな。

 

 

「ある奴からの受けよりなんだけどな。俺は『あれ』に祈りを込めているんだ」

 

「どんな?」

 

「『これで終わってくれ』ってな。そうするといつもより強くなる……気がするんだ」

 

「何よそれ、意味わかんない」

 

「かもな。でもそれだけじゃないさ。俺はあの言葉に強い力があるように感じる。きっと、多くの英雄が使い続けてきた重みと想いが込められていると思うんだ」

 

 

 俺は真姫に力説するが、きっと真姫には何のことか分かっていないのだろう。今だって顔を傾げて怪訝な表情を浮かべている。う~ん、流石にその反応は傷つくなぁ。

 

 

「で、その“ある奴”って誰よ?」

 

(つかさ)。真姫も会ったことあるだろ?」

 

 

 “士”。その名を聞いた瞬間、彼女の顔が明らかに嫌そうなものに変わる。苦虫でも噛み潰したような苦い表情を浮かべる真姫。オイオイ、そんなに嫌なのかよアイツの事。

 

 

「……あの似非(えせ)カメラマンね」

 

「ブフォッ!!」

 

 

『似非カメラマン』。真姫のその辛辣な感想に思わず吹き出してしまう。似非……似非って、おまっ……ッ。

 

 

「……何よ、何がそんなにおかしいのよ?」

 

「い、いや……真姫って……士の事、相当……嫌ってたんだな……て……プフッ!」

 

 

 だ、ダメだ。思い出しただけで笑いが止まらなくなる。あのムカつく顔が『似非』って評価を受けている事がこんなに愉快……じゃなくて面白いとは……っ……ッ。悪い士、少しだけ(ざま)ぁ見ろって思っちまった。いや、本当にすまん。

 ……──

 

 

 ──……ふう、やっと収まった。軽く一分はかかったかもな。俺には笑いのツボなんてないはずなのに。

 

 

「悪い。で、真姫は士の何処が嫌いなんだ?」

 

「別に。あの鼻にかけた態度が気に食わなかっただけよ」

 

「ああ~、お前そういうの嫌いそうだもんなぁ」

 

「皆が皆嫌いって訳じゃないわ。ただアレとは折合いがつかないだけ」

 

 

 ……お前ら相当相性悪いな。まあいいや。どうせもう会うこともないんだし。

 

 会話を一旦そこで切り、俺は先程の戦場へと踵を返す。すると……あったあった。インベスにやられたスイカ兵の元──スイカロックシードがそこに転がっていた。俺はロックシードを拾い上げ、その状態を確認する。確かにスイカ兵は大破したが、ロックシード自体が壊れたわけじゃない。俺の手の内のそれは未だしっかり原型を保っていた。

 もっとも、錆びていて今すぐ使える状況ではないが。

 

 ──真姫を守ってくれてありがとな。

 

 心の内でスイカに感謝して懐に入れ、真姫の元へ戻る。

 しかし真姫の周りでもクラックが開くとは……やはり真姫にもことりと同じ“因子”があるのではないか?

 

 

「真姫」

 

 

 そうなら話は早い。今ここで分かっていることを真姫に話してしまおう。

 

 

「今からお前に起こっているであろう事態を説明するけど、いいか?」

 

「何よ今更。そんな事とっくに覚悟できてるわ」

 

「そっか、ありがと」

 

 

 真姫の気持ちは昔も今も変わらず、ってか。そういうところは心強いしありがたいけど、やっぱ巻き込みたくはなかったなぁ……。

 

 かつて俺と士はとある敵の討伐に向かった。ソイツはヘルヘイムを活動拠点とし、インベスを引き連れる主のような存在だった。正しくヘルヘイム浸食の元凶(──と俺が信じていた存在)だ。結果としてソイツの討伐には成功した。しかし、ソイツが爆散すると共に空中に幾つかに光が舞っていったのを俺達は見逃さなかった。士曰く『ヤツと同じ、インベスを呼び寄せる因子』だそうだ。もしそれが正しければ、その因子が体内に入り込んだ人間の周りではクラックの活動が活性化してしまう。しかし俺達はその元凶を倒した。ならば俺達はクラックの心配をしなくてもいい筈だった。

 しかし士は俺に問うた。

 

「本当にヤツが元凶なのか?お前の戦いはまだこれからじゃないのか?」と。

 

 その言葉は俺の心の中に一つの重りを付けることになった。いつか再び起こる乱世の予感を俺に与えた。

 確実にヘルヘイムの脅威を無くすにはどうすればいいか。その解決策も俺に教えることなく、士は俺の前から去っていった。その答えは俺自身が見つけ出しべきだと感じたのか、または本当に分からなかったのか、俺には判断できない。

 

 

 しかし結果としてクラックは再び活動を始めた。それを意味するものは何か。

 因子を得た人間に常にインベスの脅威がついて回るということだ。

 ならば俺のする事は決まっている。因子を持つ人間をインベスから守りきる事。そして、完全なクラックの閉鎖だ。

 

 

「……なる程ね。それでことり先輩がその因子を持っている、と」

 

「そういう事」

 

「……で、私もそう……と?」

 

「……うん」

 

 

 真姫の最後の質問には言葉が詰まってしまう。確信がないからではない。真姫を再びインベスの脅威にさらし続ける事への申し訳なさからだ。いつぞやか俺は真姫に「森のことで悩む必要はない」と言ってしまった。その言葉が今回、嘘になってしまったのが……一番辛い。

 

 

「いいわ、言いたいことは分かったわ。でもこれで少しスッキリした……かな?」

 

「……は?」

 

 

 真姫の発言につい間抜けな声を出してしまう。スッキリした? 一体何のことだ?これからインベスに付きまとわれるんだぞ?割と大変な事なんだと思うんだが。

 

 

「なあ、スッキリしたって一体何がだ?」

 

「内緒よ。それより、これからは私の事もしっかり見守ってくれるんでしょうね? ことり先輩みたいに」

 

「ああ、勿論。誓うよ。けど──」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

「──んっ……」

 

 

 よく分からないうちに話が完結してしまった。事の詳細が知りたくなって口を出そうとするが、真姫の嬉しそうな表情の前に俺は何も言えなくなってしまう。ああ、女の子のこういうとこってズルいよなぁ……。ま、別に真姫が幸せならそれでいいか。

 

 

「ねぇ、鉱芽」

 

「なんだ?」

 

「助けてくれて……ありがとう」

 

 

 そして彼女が俺にくれたのは、眩しく輝く笑顔とその言葉だった。若干頬を赤らめるその姿がとても愛おしく、俺に掛け替えのない人なんだと感じさせる。

 

 ああ、本当に守れてよかった。この綺麗な女神を俺は今日守りきることができた。

 

 この笑顔を護れるなら、俺はどんな犠牲でも厭わない。だからこれからも、俺は絶対に守ってみせる。

 皆の幸せを。皆の笑顔を。

 

 

「どういたしまして」




実は一番鉱芽に近いのは真姫ちゃんだよ、って話。

どこかおかしい点や原作とは違う点等に気付いた方は、是非感想欄にて指摘ください。それがミスか仕様かどうかの確認もしますので。
次回も遅くなる予定ですが、どうか応援よろしくお願いします。
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