ラブライブ! ー果実の鎧武者ー   作:春巻(生)

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通算10000UAを記念して、「活動報告」の方に"鉱芽のプロフィール”を公開致しました。気になる方は是非ご覧ください。
それでは今回もどうぞ。

挿入歌:E-X-A Exciting×Attitude


第13話 大空彩るビッグバン

 龍を追って天を昇りゆく鎧武者が一人。その背景は夕焼けに染まり、さながら一つの神秘的な絵画のようだ。だが実際はそんな美しい表現で収まるようなものではない。そこにあるのは、一匹の理由なき悪意とそれに必死で抗う一人の人間だ。今でこそ皆が皆空を見上げ、この異常な光景に口々に声を漏らしているが、明日になれば皆忘れてしまう。彼の勇姿も、努力も、犠牲も全部。それはきっと彼にとってとても辛いことのはず。

 ならば私はしっかり見ておこう。彼のやること成すことその全てをこの眼に刻みつけよう。皆が忘れてしまうなら、私が……いや、私達が、彼を覚えておかなくちゃいけない。

 

 彼が独りにならないように……。

 

 彼が泣かないように……。

 

 彼が消えてしまわないように……。

 

 

 

 ───────────

 

 

 

「ぅぉらぁあ!」

 

 

 俺はダンデライナーに跨りながら、インベスの背後からすれ違いざまに大橙丸で斬りつける。確かに手ごたえはあった。しかし、斬撃を食らったはずのインベスは対してダメージを負った素振りも見せず、仕返しとばかりにこちらへと突っ込んできた。

 

 

「グウォォォォォォォォ!!」

 

「ちっ」

 

 

 悪態をつきながらもダンデライナーを操作してインベスの突進をかわす。やはりヤツの身体は硬い。強化体となる以前のセイリュウインベスも中々強固な皮膚を持っていたのだ。その強化体ともなれば、やはり一筋縄ではいくものではない。

 

 ……ならば。

 

 

『パイン!』カシャ

 

 

 更に上の力で押し切る!

 

 

『ソイヤ! パインアームズ! 粉砕・デストロイ!』

 

 

 俺こと鎧武はパインアームズへとアームズチェンジし、再びインベスと対峙した。インベスはその長い尾を振りかざしてくるが、俺はそれにパインアイアンを振りかざして対抗する。ガシャン、とまるで金属同士がぶつかり合うような音が空中で響き渡り、辺りにこだます。流石にこの攻撃は効いたのか、セイリュウインベスはその長い身体をくねらせて悶えているようだった。

 

 

「まだまだいくぞっ!」

 

 

 すぐさまダンデライナーを操ってインベスに近づき、次は頭部を狙い撃つ。今度は先程の打ち合いのようなものではない。鎧武の腕力、パインアイアンの強度、それにダンデライナーの加速が加わったとなれば──

 

 

「おらぁあ!」

 

「イギュゥォォォッォアァァ!!」

 

 

 ──どんな頑強な皮膚を持っていようと堪ったものではないだろう。頭を思い切り殴られたインベスはまともに正面を見る事ができなくなったのか、暴れまわりながらがむしゃらに尾を振るい続けていた。無駄だ。そんな距離じゃ到底当たらない。悪いがもう少し付き合ってもらうぞ──っ!?

 

 

「ギュオォォォォォオ!!」

 

 

 インベスに更なる追撃を行おうとした時、暴れ狂うだけのインベスの行動に変化が現れた。なんと、四方八方に向けて火球を打ち出してきたのだ。

 

 

「っちぃ!」

 

 

 このままでは町全体がヤツによって火の海と化してしまう。水平方向より上に向かっていく火球をすべて無視し、それより下に向かっていく火球を迎撃すべく俺はダンデライナーを全速力で走らせた。ここからはダンデライナーを動かしつつパインアイアンでその火球を相殺するという作業だ。

 

 

「グアオ!……ゴォア! ……ギャォ!」

 

「らぁ! ……おら! ……はっ! …………くそっ」

 

 

 だがはっきり言って、このままだとジリ貧だ……なら。

 

 

「っ! 少し大人しくしてろ!」

 

 

 火球のペースが少し大人しくなった隙を狙い、俺はパインアイアンをインベス向けて投げつける。だがそれは打撃を加えるものではない。俺の投げたパインアイアンはヤツの身体の横を通り過ぎる。これも別にミスじゃない。やがて投げたパインアイアンが戻ってくる──チェーンがインベスを巻き込む形でな。

 

 

「グゥェァァ!?」

 

 

 パインアイアン、そのチェーンがインベスの身体に巻き付き、ヤツの身体を拘束した。それと同時にヤツの動きが一瞬大人しくなる。

 

 

「っし、捕まえたっ」

 

「グァォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 

 流石にインベスとてそのまま大人しく捕まっていたりなどしない。俺を振りほどこうと必死に飛び回って空中で乱舞する。だが俺とてこのまま逃がす気は無い。ダンデライナーの上で立ちながら、インベスの周りを円を描くように飛び回りヤツを拘束し続ける。

 

 せっかく捕まえたんだ。このまま終わりにしよう。

 

 チェーンでインベスを拘束した状態のまま、俺はパインアイアンと無双セイバーを連結させる。この状態で使うのは初めてだが……まあ何とかなるだろう。俺はパインロックシードを解錠して無双セイバーに取り付け、そして施錠する。

 

 

『ロックオン! イチ! ジュウ! ヒャク! セン! マン!』

 

 

 無双セイバーに黄金の輝きが収束していき、それはやがてパインアイアンのチェーンを伝っていく。ロックシードのエネルギーがチェーン全体に伝わった時、パインアイアンは高密度のエネルギーを内包した爆弾へと変わる。エネルギーの高まりが最高潮に達した瞬間、俺はチェーンを思い切り引っ張り、インベスの身体を圧縮する。同時にパインアイアンに込められた全エネルギーが外側へと向けて放出された。

 

 

「御免」

 

『パインチャージ!』

 

「ギュゥォァォォォォォォ!!」

 

 

 アイアンブラスト──初めて使ってみた技だが、なんとか上手くいったようだ。インベスは空中で爆発四散し、俺はロックシードを再びドライバーにセットした。

 

 

「……ま、これで一件落tぐおぉあ!?」ドォン!

 

 

 迂闊……完全に気を抜いていた。俺の気が完全に緩んだ頃に、背後からデカい一撃──恐らく火球──を食らってしまった。同時にダンデライナーからも身を投げ出されてしまった。というよりもダンデライナー自体も今の攻撃でおじゃんになってしまった。だが落下中のほんの一瞬の時間でも反省と状況判断をしていられるだけの余裕はあった。

 確かに目の前のセイリュウインベスは倒した。しかし今の攻撃は……俺の真上で勝ち誇ってるようにこちらを見下している()()()()のセイリュウインベスによるものだ。

 

 

「グルルルルルルルゥゥ……」

 

「くっそぉ……」

 

 

 もうダンデライナーは無い。無情にも俺はそのまま地上へ向けて落下していった。

 

 

 

 ──────────────―

 

 

 

「っ!? 鉱芽君!」

 

 

 終わったと思った瞬間、別の敵からの不意打ち。っ、そんなの卑怯よ! でも相手はそんなの通じるような相手じゃない。そもそも、これは互いの命を懸けた殺し合い。ルールなんてない。

 でも、それでも……っ!

 

 

「大丈夫だと思います。希先輩」

 

「!? ……君は」

 

 

 不安に押しつぶされそうになる私の背後から聞こえてきた、とろけるような甘い声。振り向くとそこにいたのはμ'sの一人、南ことりだった。

 確か彼女は鉱芽君が言ってた因子持ちの一人。でも大丈夫なんて……。

 

 

「鉱芽さんは私達が思っている以上に強い人です。あんな怪物に負けたりしません。だから、きっと無事に帰ってきてくれます」

 

「……信じてるんやな」

 

「はい、もちろんです」

 

 

 眩しいぐらいの笑顔で私に答える彼女。そこまで自信満々に断言できるなんて……。すごいな、この子。ちょっと……ううん、思ってた以上に芯の強い子だったみたい。人は見た目によらないってこの事かな。

 

 ──信じる……かぁ。

 

 

「うん、そうやな。じゃあ、ウチも信じてみる」

 

「はい!」

 

「ふふっ……だから、鉱芽君…………待ってるからね」

 

 

 今一度、私は鉱芽君の無事を祈る事にした。

 

 

 

 ──────────────―

 

 

 

「くっそぉ……」

 

 

 因みに今の言葉にはいろんな意味が込められている。

 

 一つは油断していた愚かな自分への侮蔑。

 

 一つはこちらを見下すインベスへの悔しさ。

 

 一つは今絶賛落下中な事。

 

 そして何より──

 

 

「ダ……ダンデライナァァァァァ!!」

 

 

 ──ヤツにダンデライナーが破壊された事への怒りだ。

 ふざけんなっ! これ割と貴重なんだぞ! 森に行っても中々手に入らないんだぞ! 俺のお気に入りだったんだぞ! ……ぅぅ……ダンデライナァぁぁ……っ!

 

 

「ぜってぇ許さねぇ!」カチャ

 

 

『スイカ!』

 

 

 懐からスイカの浮彫が施されたロックシード──スイカロックシードを取り出し、解錠する。

 

 

 ギュウィィィィィィィイィィィィン

 

 

 特大サイズのクラックから現れる、これまた特大サイズのスイカの果実。これを今から被るのだ。下で見てる希なんてさぞ驚いてるだろうよ。そう考えると、仮面の下で微かに笑みがこぼれる。

 俺はすぐにロックシードをドライバーへとセットし、カッティングブレードを下した。

 

 

『ロックオン! ソイヤ! スイカアームズ! 大玉・ビッグバン!』

 

 

 巨大なスイカが俺を包み込んだかと思うと次の瞬間、その大玉は変形し始める。

 

 

『ジャイロモード!』

 

 

 俺を包み込んでいたスイカの前方が大きく展開し、素のライドウェアの状態の鎧武が外部に晒される。そして俺が纏うスイカは、あるいは翼、あるいは照準、あるいは銃口へと各々パーツが変形し出す。やがて変形が完了したと同時にスイカアームズが下方向へ向けて動力の噴出を開始し、俺の落下も治まる。そして現在、鎧武は空中で待機する状態になっていた。

 非常に奇妙な格好をしているが、これが鎧武の持つ唯一の飛行能力を持つ形態。

 

 仮面ライダー鎧武 スイカアームズ

 

 今は飛行形態の『ジャイロモード』といったところだ。

 

 

「ングルルルルルルゥ……」

 

「じゃあ改めて……ここからは俺のステージだ!」

 

 

 俺はジャイロモードの能力で勢いよくセイリュウインベスへ向けて上昇していく。インベスの方もこちらが落ちるのを止めて向かってきている事に気付いたのか、首をこちらへ向けて自ら打って出た。互いに猛スピードで近づき、正にぶつかると思われた瞬間──

 

 

『大玉モード!』

 

「っらぁ!」

 

「ギュェァァァァァァ!!」

 

 

 スイカアームズを展開する前の状態──所謂『大玉モード』へと変形させ、その圧倒的な質量差、重量差をもってインベスに体当たりをかました。インベスはその衝撃であらぬ方向へと吹っ飛ばされる。俺はすぐさまジャイロモードへと変形し、再度インベスへと近づいていく。

 

 

「グオォォォォォォォォ!!」

 

 

 インベスは怒り任せに火球をこちらへ連発してくる。奴との位置関係では俺の方がやや上方にいるため、地上の人達が被害を受けることは無い。俺はその炎の弾幕を冷静に回避しながらヤツの周りを飛び回る。そして炎を掻い潜りながら、ヤツ目がけてスイカアームズの手からガトリング砲を撃ち出した。

 

 

「オラララララララァッ!」

 

「グッガガガガァォォ……」

 

 

 この攻撃には流石のインベスも火球の攻撃を止めるしかなかった。しかし弾幕の嵐にうろたえながらも、インベスは身体をくねらせて上昇して俺の上を取ろうとする。

 そして遂に俺の上方を取った瞬間、急速に下降してきて回転し、その尾で俺を叩き付けようとした。

 だけど……。

 

 

『ヨロイモード!』

 

「グァァ」

 

「甘ぇんだよ!」

 

 

 俺はスイカアームズの第三の形態、ヨロイモードへと変形する。ジャイロモードのような不定形ではなく、今度はしっかりとした鎧。今までのアームズと違いその全てが特大サイズで、鎧を纏うのではなく、俺がスイカアームズの中に乗って操縦するのだ。その凛々しく、たくましく、雄々しい相貌は、まるでかの武蔵坊弁慶を連想させる。

 右手に出現した薙刀型の武器──スイカ双刃刀(そうじんとう)を脇に占め、俺は振り下ろされるインベスの尾を両手でガッチリと掴んだ。

 

 さて、ここで問題だ。

 このスイカアームズの体重は523kgもある。そしてこのヨロイモードには滞空能力など無い。そして今、唯一飛べるセイリュウインベスの尾を掴んでいる状態だ。

 するとどうなる?

 

 セイリュウインベス強化体の体重が如何なものかは知る由もない。飛ぶ原理も知ったことではない。しかし、それがあくまでも自分が飛ぶためだけの浮力であることには違いない。そこに500kgオーバーの物体がまとわりつけばどうなるか……。

 

 

「ギュアァォォォォォォォォォ!!」

 

 

 そう、落下する!

 

 インベスの尾を両腕で固定しながら、俺とインベスは地面へ向けて急速に落下している。普段飛べるセイリュウインベスにとっては墜落など初めての経験だろう。

 本来ならこのまま地上まで落ちていって、ヤツを思い切り地面に叩き付けるところなのだが……如何せん戦っている場所が町の上空なのだ。そこへこの速度のままインベスを叩き付ければ……その被害は尋常なものじゃないだろう。だから叩き付けるという案はなし。

 

 

「だったら……ぅらぁっ!」

 

「グゥォゥウゥ!」

 

 

 地表から少し遠いが、俺は地表に向けてインベスを投げ飛ばす。インベスも地面とディープキスなんてしたくないだろう、必死に体制を建て直し、なんとか地上すれすれで浮き上がった。

 

 ──でもな、お前にそんな余裕はもう無い!

 

 

『ソイヤ! スイカスカッシュ!』

 

 

 俺はカッティングブレードを下し、スイカアームズの必殺技を発動させる。右手に握られるスイカ双刃刀にエネルギーが集まり、それをインベス目掛けて降りおろす。するとスイカ双刃刀から球体の──スイカ状のエネルギーが発生し、インベスを閉じ込めて拘束した。

 

 

「ギュゥォォォォォォ……」

 

 

 インベスはもがいて拘束から抜け出そうとするが無駄だ。

 

 もうお前のステージは終わりだ。

 

 

「セイハアアアアァァァァァ!!」

 

「ギィァァァァァァァァァァ!!」

 

 

 双刃(そうじん)割り──スイカ双刃刀による鋭い乱れ斬りがインベスに襲い掛かる。スイカ双刃刀の(やいば)はインベスをスライスチーズのように軽やかに斬り刻み、やがてインベスは爆散した。

 

 

「っと」

 

 

 それと同時に俺も地面へと着地する。下方向へのインベスの投擲による俺自身の上方向への運動と、先程のぶつかり合いによって幾らか落下速度が遅くなったため特にダメージを追うこと無く綺麗に着地することが出来た。

 

 

「ふぅ……ん?」

 

 

 今度こそ油断せずに周りを見渡し、本当に大丈夫だと判断して胸を撫で下ろしていると、視界の端に何かが写った。言うまでもない。それはずっと俺の戦いを見守ってくれていた友人、東條希だった。しかし予想外なことにもう一人、ことりもその隣にいたのだ。いつの間にこんなところまで、とは思ったものの、ことりも俺の大切な仲間だ。希と共に俺を見守ってくれたことには感謝しなくちゃな。

 

 

「……ッ」グッ

 

 

 とりあえず何か答えようと思い、俺はサムズアップを彼女達に示した。スイカアームズの手によるサムズアップは他の何よりも大きな示しになるだろうな。

 

 そんな希とことりは互いに見合って笑い合い、次に俺に向かって特大の笑顔を見せ、そして最後にサムズアップを返してくれた。

 

 

 ──おかえり。

 

 

 言葉にしたわけでもないのに、そんな言葉が俺の心の中に聞こえた気がした。

 それと同時に心の中に温かい情熱が生まれた。

 

 ああ、そうか。やっぱこれが幸せってものなのかな。

 

 

 ──ただいま。

 

 

 そしてありがとう。サムズアップにそんな気持ちを込めて再度彼女達に送る。何故だかわからないが、その気持ちも彼女達の心に伝わった気がした。その瞬間だけ俺は彼女達と繋がっていられた気がした。

 

 この心の繋がりは決して嘘じゃない。

 この幸せは決して……。

 この繋がりを──俺自身の幸せも、必ず守り抜いて見せる。俺は今日、その誓いを新たにした。




本作のオリジナル技、アイアンブラスト。
イメージとしてはサガのスネーキングデスブレイク(対イクサVer)を思い描いてくれればいいです。
ダンデの件については「絶許」したかっただけです。というより鉱芽は戦闘になると口が悪くなっちゃいます。
それでは次回もご期待ください。
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