これは盛り上がらないわけないでしょ!
戒斗さんと主任と言えば鎧武の中でもトップクラスで好きなキャラなので非っ常に楽しみです。
あ、それでは今回もどうぞ。
平和なひと時というものはいつも突然崩れるものだ──ま、俺の場合はしょっちゅうなんだけどな。ともかく、俺はこうしていつも通りドルーパーズで真面目に仕事していたわけだ。現在は放課後。ちらほらと店内にも学生の姿が見え始めた頃、アイツは勢いよくドアを開けてズカズカとこちらへ歩いてきた。
「……マスターは?」
「あっち」
もしこれが客なら互いに失礼すぎる態度だが、幸か不幸か今の彼女──綺羅ツバサは客ではないようだ。その表情からやや不機嫌であることが想像できる。とりあえずおやっさんのいる厨房を指さして、足幅の大きくなっているツバサを横目にいつも通り仕事に戻ろうとする。テーブルに座る女子学生からは『ねぇ、あれって』『え? 嘘っ。綺羅ツバサ!?』『まさか本物っ!?』等と聞こえてくるが……無視無視。仕事に集中だ。
「マスター、コウガ借りるわよ。いい?」
「え? ああ、どうぞお好きに」
「ありがとう」
「……ゑ?」
だが厨房から何やら無視できない会話が聞こえてくる。俺の時間が止まっている間にこちらへ戻ってきたツバサは、俺の腕を掴み店の外まで連れ出した。
「えっ、ちょちょちょっ、何!?」
「いいからっ。少し離れたところで……やっぱコウガの家で話をしましょ」
「話って──」
「いいから早くサクラハリケーン出す!」
「……はい」
いつになく苛立っているツバサに急かされてサクラハリケーンを召喚する。何故かご丁寧に二つ用意されたヘルメットの内、片方をツバサに渡してバイクに跨る。俺がメットを被ると同じくメットを被ったツバサも俺の後ろに乗り、俺の腰に腕を回す。その確認を終えた俺はサクラハリケーンのエンジンを吹かし、心情的に妙に重い帰路を走りだした。
……はあ、何を言われるのかねぇ。ま、大体予想は出来てるけど……。
────────────────
「単刀直入に言うわ。ゲネシスドライバーを渡して」
「断る」
俺の部屋に入るまで互いに終始無言で、なのにいざ二人座って話が始まったかと思えばこれである。
「コウガ!」
俺の否定の言葉に珍しく激情的になるツバサ。まあ、そうなった経緯は大体予想は着くがな。二日前のインベスとの空中大決戦(誇張表現あり)……きっとアレを目撃したのだろう。そらアレだけ派手にやらかせば見られるわな。更に言うなら、昨日はSNSでもメールでもツバサから一切の連絡が無かった。相当キてるな、とは予想していたが……。
「ハンッ、どうせアレだろ。一昨日、俺が戦ってるのを見て『居ても立っても居られなくなった』ってヤツだろ」
「……そうよ。別に悪いことじゃないでしょ」
「悪いね。何の為に俺が独りで戦ってると思ってるんだ」
「だからそれが恩着せがましいって言ってるの!」
「お前なぁ……」
ここまでキてるとは予想外だった。人に言えた義理じゃないがツバサも意外と頑固な一面があるようだ。というより、俺とツバサが関わり合うとお互い子供っぽくなるといった方が正しいか。まだ会話は始まったばかりだが、これではいつまでたっても終わる気がしそうにない。互いが互いに意地を張って主張を曲げないんだもの。
「これがどんだけ危険なものか分かって言ってんのか?」
そう言いながら俺は、戦極ドライバーとはまた違う外装をした赤い機器──ゲネシスドライバーを机の上に乗せる。ツバサも一応分かってるとは思うが確認は取っておく必要がある。このドライバーの力は相当なものだ。正しく『創世』にふさわしい力を秘めている。
だが先に俺の持つ『戦極ドライバー』について軽く説明しよう。
戦極ドライバーとは、ロックシードの力を引き出して装着者を『アーマードライダー』へと変身させるベルトのことだ。
俺を見れば分かるが、変身したアーマードライダーは常人を遥かに超える力を有している。というより異常だ。そのスペックは最早『歩く核シェルター』とも言えるもので、理論上は核弾頭すらも無傷で耐え切るレベル……らしい。ヘルヘイムの果実の力は相当な不思議パワーが宿っているようで、あらゆる現代兵器を無力化してしまうのだ。現に拳銃で撃たれた事もあったが全く痛くなかった(心の傷は負ったが)。
防御力程ではないがその攻撃力も異常だ。殴った拳でクレーターが出来上がるのはいいとして、軽いはずみで掴んだ直径10cmの鉄柱が簡単に拉げてしまうこともある程だ。もしこれを纏って人にじゃれつこうものなら……その後は考えるだけでも恐ろしい。
そのスペックから考えるに、恐らく何の戦闘経験もない小学生低学年が最も出力が低いロックシード──マツボックリロックシードで変身したとしても、『幾多の戦場を潜り抜けてきた英雄レベルの傭兵』を10人纏めて相手取っても一方的に蹂躪できると考えた方がいいだろう。成人男性が同じアームズに変身すれば、軍自国の一師団を壊滅までもっていける。
それがゲネシスドライバーだとどうなるか……。『ゲネシスドライバー』は戦極ドライバーを上回るパワーを内蔵した、いわば正規品ドライバーのようなものだ。ただ、変身には通常のロックシードとは違う特別なロックシードが必要になってくるが・・・まあこれは次の機会に話そう。どうせツバサはまだ持ってるはずだし。
話に戻ろう。成人男性がゲネシスを使用した場合……数字上の話となるが、恐らく国の軍そのもの──というより国家を単独で壊滅してしまうほどの力を秘めていると考えられる。また、ドライバーの力は変身者が鍛えれば鍛える程出力が上がっていくため、場合によっては今話した事以上の戦果も期待できるだろう。
……自分で話してて相当危ないもの使ってるんだと改めて感じ、思わず身震いする。もし俺が今持つ最大戦力を投下するとすれば……いや、それ以上は考えないでおこう。頭がおかしくなりそうだ。この世界で所持しているのが俺一人だけで本当によかった。
ともかく、そんな訳でこの危険なドライバーの事情をツバサに確認していたのだ。
「そのくらい分かってるわ。子ども扱いしないで」
「その反応が子どもっぽいよ」
「~っ!!」
ま、たとえゲネシスの危険さが分かっていても渡す気は無いんだけどね。結局、俺自身がドライバーの危険性を振り返っただけでした。
しかし焦りとは凄いものだな。あの強者オーラプンプンのツバサでさえこんなに追い込まれてしまうとは。ツバサ、本当に言い分はそれだけか? もっとマシな、俺を動かすだけの言い分とか……。
何度も言うがツバサは強い女だ。それだけに彼女が次に俺に何を言うのかを期待している節もある。
その後しばらく沈黙が続くが、ようやく落ち着きを取り戻したツバサが再び口を開いた。
「……もし、離れたところで同時にクラックが開いたらコウガだけで対応できるの? 無理でしょ」
「一応スイカさんが頑張ってくれる」
「スイカアームズだって完璧じゃない。強化体のインベスにやられちゃうこともあるかもしれない」
「……ま、現にあったしな」
「ほら見なさい。コウガ一人じゃ無理があるの」
「むぅ……」
今度は俺が黙り込む番のようだ。ツバサの言う事は一理ある。いや、一理どころかほぼ全面的に正しいかもしれない。ツバサがゲネシスでアーマードライダーに変身してくれれば、それだけで俺の負担が一気に……とまではいかないが、ある程度は減るだろう。人の安全面、俺の身体的負担、効率、どの面を見てもいい点が目立つ。それでも、俺は──
「──俺は、お前には戦ってほしくない」
「……それってコウガのわがままよね?」
そう、結局は俺のわがままだ。ツバサは今やスクールアイドルとして全国にその名が知れ渡る程の超有名人。しかし同時に、青春を謳歌している一人の女子高生でもある。更に言うならツバサは三年生。卒業後はプロ入りの道を進むことになるため、今年が彼女の最後の学生生活になるのだ。そんな彼女の楽しい生活を、戦いなんかで壊したくない。彼女はもう散々苦しんだ。だからもう戦う必要はないのに……。
「だからって、他の誰かならいいって訳でもないのよね?」
「ああ」
「だから私がやる」
「お前はもう──」
「アナタの方がよっぽど傷付いてるわ! 私よりなんかよりもずっと……!」
「……」
一度冷めたと思ったツバサは、また熱を取り戻して声が大きくなる。しかし今度は先程までの焦燥に駆られた姿ではなく、その瞳に確かな意志を灯した力強い姿だった。
「また私が苦しむのは嫌って? 馬鹿言わないでっ! 目の前で大切な人が苦しんでいるのに、何もできないなんてそっちの方が苦痛よ!」
「……ツバサ」
「きっと、英玲奈やあんじゅも同じことを言うわ。ねぇコウガ……」
するとツバサは、向かい合わせになってるテーブルの上を乗り超えてこちらへと迫ってきた。そしてその綺麗な顔をゆっくりと俺の顔に近づけてくる。
「私は、苦しむのならアナタと共に苦しみたい」
「……お前、別れてから相当病んでねぇか?」
「フフッ、そうかもね。だからね……」
そう言いながらも、ツバサは顔を真っ赤に染めながら更に俺の顔に近づいてくる。誰かが軽く背中を押せばそれだけで唇同士が触れ合ってしまいそうな距離だ。その距離故に、ツバサの匂いが、息が、瞳の揺れが、鼓動が、想いが一身に感じられた。
そして、まるで何かを覚悟したような顔つきで次の言葉を進めた。
「……フった身で言うのもアレだけど…………私は今もコウガが好き。それはもう、どうしようもないくらいに──別れを切り出した時の事を思い出す度に死ぬほどの後悔が追ってくるぐらいに! だからね、アナタが他のスクールアイドルを指導しているって話を聞く度に……胸が張り裂けそうなほど辛いのよ」
「そ、それはそれは……」
「今までの軽率な発言を反省なさい。フフッ……けどね、そんな辛さに比べたらまたヘルヘイムの騒動に巻き込まれる辛さなんて、ほんの小さいものなのよ」
「小さいって……ハ、ハハッ……言うなぁ、お前」
これは……また何とも強い言葉だことで。嘘でもヘルヘイムより辛いなんて言うか普通?言わないよな。ってことはツバサの覚悟もまた本物という訳か。
いやぁ、強いなコイツは。本当、参るな。何故俺の周りにはこんなに強い女がたくさん集まりよるのだろうか。
「ハァ……お前は強いねぇ。おまけに頑固だ。
「あら、アナタに言われたくないわ。
「えらい自身だなぁ。頑張れ~」
「アナタの事よ……」
「ハハッ──」
「ウッフフッ──」
いつしか俺達の顔からは笑みがこぼれ出した。先ほどまでは互いに顔にこべりついていた皺も綺麗になくなっていた。いや、ホント、俺って周りに恵まれてんだろうな。今回の件で特に実感したよ。
「……ドライバーの件だけど……考えておくよ。今日は渡せないけど」
だから俺はツバサを信じてみようと思った。今すぐ渡さないのは俺の最後の意地みたいなもんだ。負けっぱなしってのは嫌いだし、ここですぐ渡すのも節操がないだろう。だが、いつか……は渡す時が来るだろう。
俺の言葉を聞いたツバサは一瞬目を見開いたが、すぐに目を横長にし、頬の筋肉を緩ませながら答えてくれた。
「あら? 今すぐって訳にはいかないの?」
「どうしようも無くなってきたらお前に渡すよ。それまでは俺一人で頑張る。あぁ~、だーいじょうぶだって、なんかあったらすぐ頼るから」
「本当に?」
ツバサはそう言いながらジト目でこちらを睨んでくるが、その口元は若干にやけているのが分かる。つまりは、信用してくれてるという事だ。
「ああ、もちろん。で、今回だけどドライバーの代わりにコイツを渡しておくよ」
そして俺は懐からマンゴーの浮彫が施されたロックシード──マンゴーロックシードをツバサに握らせる。
ロックシードだけでは変身は出来ないが、代わりにある機能を使うことが出来る。それは「インベスの召喚」だ。召喚されたインベスはロックシードを持って居る限り、持ち主の命令通り動いてくれる。しかもマツボックリロックシードで呼び出されるのは初級インベスだが、マンゴーロックシードで呼び出されるインベスは更に上の上級インベスだ。これである程度自衛は出来るだろう。因みに元からそう言う設計にされている為か、今のところロックシードが暴走した事は無い。
「クラスAでもたった一つじゃ心許無いけど……ありがとう」
「ああ、なるべく使わないでいられることを祈るよ」
会話も一旦区切りが付いたので、俺はコーヒーを淹れようと立ち上がる。しかし、咄嗟にツバサから断りの声が聞こえた。
「あ、いいわよ別に。今日はもう帰るから」
「ん、そうか。じゃあ俺もドルーパーズに戻るか」
「ああ、そうだったわね。ごめん、いきなり連れてきちゃって」
「いやいや」
恋焦がれている割にはあっさりと帰るものだな。そう感じながらも俺は家先までツバサを見送ろうとする。
しかし、玄関先に出てきて互いに踵を返そうとした時、ツバサが何かを思い出したように叫び声を上げた。
「そうだ忘れてた! この間言ってた『ラブライブ!』、ついに開催が決定したのよ」
あぁ~……ね。確かあの時はまだ企画段階だったっけ。
「そうか! それはよかった。ってことは詳細とかもう出回ってるわけ?」
「そう! ……なんだけど」
「?」
明るい表情が一転、今度はどこか複雑そうな表情を浮かべるツバサ。何かあるのか?
「今ネットで広まってる『スクールアイドルランキング』って知ってるよね。『ラブライブ!』に出場出来るのはその上位20グループまでなのよ」
「だったらお前ら余裕で1位じゃん。このまま普通に活動してれば出場できるだろ」
「別に出場に関しては問題ないのよ。ただ、ね……」
ツバサが悩んでる事はラブライブ!の事でも、自分達のランクの事でも、果ては出場資格の事でもない。なら、一体何なんだ?
「……ランキングを発表しているサイトに新コーナーができてさ……」
「新コーナー?」
「そう。コウガ、ネットアイドルって知ってる?」
「ああ、もちろん。それで?」
「その、ね。今回スクールアイドルランキングを盛り上げるためにある一人のネットアイドルが起用されたの。元々個人で各スクールアイドル達の解説や魅力について語ってただけの一般DJだったんだけど、物凄い人気から今回急遽公式に採用されて……」
ほぇ~、それはまた思いきった事をするもんだな公式も。ただの一般人のネット配信が公式に採用だなんて滅多にあることじゃない。本当に効果的と見込んでなのか、それともただの話題性重視か……。しかし、それ程全国のスクールアイドルファンから支持を得ているということも事実なんだろう。所謂カリスマDJといったところか。今日帰ってから、一度聞いてみることにしよう。
「で、何が不満なんだ」
「不満はない……んだけど、なんでか分かんないけど、彼を見てると何処か不安な気持ちになるの」
「不安……ね。そのネットアイドルの名前は?」
彼、というからにはそのネットアイドルが男だという事がわかる。個人的に『ネットアイドル』と聞くと女の子のイメージがあったから少し違和感を感じるが、そこは目を瞑ろう。
そしてツバサはそのネットアイドルとやらの名を口にした。
「……DJサガラ」
さて、ようやく原典と同名のキャラが出てきましたが果たして・・・。
あと、他の読者様からの反応にもありましたが、今作のアーマードライダーの強さはこの小説での独自設定です。主に防御面で増し増しです。
次回もこうご期待。