ラブライブ! ー果実の鎧武者ー   作:春巻(生)

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てなわけで早速15話です。今回はややギャグより……かな?

それではどうぞ。


第15話 潜入……音ノ木坂?

「ふぃ~……」

 

 

 ああ、平和だ……。

 

 軽く息を吐き、店内に掛けられた時計を確認する。もう三時過ぎだ。そろそろ彼女達の授業も終わるころだろうか。ツバサといろいろ話し合ってからもう一週間経つが、なんとあの日以降、クラックは一度も出現していないのだ。最後に開いたのは九日前の希とお茶をした日……ああ、本当に平和だ。

 矢澤……いや、ニコも無事μ'sに加入することになり、μ'sは七人となった。ニコとの最初の指導がどうなるか少し不安だったが、殊の外俺に付いてきてくれてすごくやりやすかったし、同時に嬉しくも思った。そして、やはりニコから感じられるアイドルへの本気も見れて満足できた。まあ、"あの”変なキャラづくりがなければもっとよかったんだけどな……。

 

 さて、本来ならドルーパーズはこの時間帯から忙しくなり始めるところだ。放課後といえば生徒たちが勉学から解放され、部活やら帰宅やら寄り道やら、好き事ができる至福の時間である。このドルーパーズはその寄り道の対象となる場だ。以前も説明したがここはパフェ専門のパーラー。それもおやっさん特製の超美味なパフェが味わえる知る人ぞ知る名店なのだ。最近では、甘いものが大好きな女子高生にとって通うことがステータスに繋がるとも言われ出すほどの人気がある。更に言うなら、先週ツバサが来店(というには語弊がありすぎるが)したのを機に、その噂が広まって更に客が増えたようだ。

 余談だが、ツバサが来た翌日にニコと花陽も来店した。聞きつけるのが早い奴らだなホント。二人とも俺がここで働いているのを見て驚いていたが……俺、ちゃんと自己紹介の時に説明したからな、「『ドルーパーズ』で働いている」って。やっぱ聞き流されちゃってたのかな……グスン、悲しい。

 

 なんて馬鹿やってる場合じゃない。本来ならこの忙しい時間に俺も働かなくてはならないわけだが、今日は別だ。なんと俺以外のドルーパーズのバイト二人の内、一人が夕方以降のシフトを変わってくれるようなのだ! 本人的には「金がそろそろヤバいので入れる時に入りたい」との事らしいのだが、俺的にはナイスシフトチェンジ(まあ、使い方が違うが)といったところだ。

 ま、そもそも月曜から土曜まで俺一人がフルで入ってる状況の方がおかしいんだけどな……。

 

 そう心の中で一人ごちりながら椅子に座って軽く身体を休ませていると、店のドアが開く音が聞こえてきた。

 

 

「おっす、お疲れ鉱芽」

 

「おつ、ザック」

 

 

 笑顔を見せてこちらへ手を振る男が一人。

 彼の名は尾崎(おざき) 勇次(ゆうじ)。俺は「ザック」と呼んでいるが、それは彼のあだ名だ。元々「ザキ」だの「ザキユー」など呼ばれていたらしいが、いつしか簡略されて「ザキュー」「ザッキュー」と変化し、そして「ザック」となったわけだ。俺はともかく彼自身もその名が気に入っているため、名乗る時は常に「ザック」と名乗っていたりする。

 

 

「おやっさん、お疲れ様です。すぐに用意して入ります」

 

「おお、頼むよ」

 

 

 店に入って早々おやっさんに一言入れてスタッフルームに入っていくザック。彼も俺と同じくドルーパーズのマスタ──―板東又三郎を「おやっさん」と呼び慕っており、おやっさんが雇った「訳あり」な人間だ。まあ、今は触れることでもないだろうよ。

 俺もザックの後に続きスタッフルームへ入り、帰りの支度を始めようとする。

 

 

「最近の夕方は忙しいぞ?」

 

「そっか? 日曜も割とバカになんねぇぞ」

 

「あ、そっか()()()休日出勤だったな、そういや」

 

「いやいや、週六日働いてるお前よりかはマシだよ」

 

「アッハハッ、そっかそっか」

 

 

 互いに反対の動作を行いながら、何気ない会話を楽しそうに進める。実際、彼との会話も楽しめて好きだったりする。気持ちの良いほどいいヤツだしなコイツ。訳ありとは言え、ザックは普通の人間だ。ヘルヘイムと関わったことも無いし知る由もない。それでも妙に気が合うのは──同じ匂いを感じるのは──その屈託ない笑顔の下に深い憂いを感じたからかもしれない。

 

 

「じゃあ俺はそろそろ動くか。お疲れさん」

 

「おう、お疲れ。頑張れ~」

 

 

 そう言って店内へ戻っていくザック。俺も支度ができたし、そろそろ帰ろうか──。

 

 

『♪~~~♩~~~♬~~~』

 

「ん?」

 

 

 そう思っていたとき、俺の端末から着信音が聞こえてきた。相手は……希だ。しかもただの着信ではない。テレビ電話だ。今時珍しい……。とりあえず出ない訳にはいかないだろう。俺は通話ボタンをタッチして通話に出た。

 

 

「っと……はいもしも~し。え~こちら葛木~葛木~、葛木でございま~す」

 

『……え、え~っと……?』

 

 

 どこからそんな声が出るのか自分自身疑問だったが、それはまるで選挙運動中の政治家のような声だった。何故か分からないけど、思い切りふざけたくなった。相手が希だからかな?とりあえず何しても許される気がした。うん、スマン。案の定希は困惑の表情を浮かべ、なんて答えたらいいか迷っているようだった。

 

 

「アハハハッ、ゴメンゴメン。ちょっとふざけたくなっちゃって。テレビ電話なんて珍しいし」

 

『んもうっ、違う意味でビックリしたわぁ。まあいいか。鉱芽君、確か今日って放課後から暇だったよね?』

 

「ああ、今シフト代わったところだ。どうした?」

 

 

 俺が返すと希は「よしっ」と可愛く腕を後ろに引く。

 

 

『あんね、生徒会の活動の一環で部活動を紹介するビデオを製作することになったんや。でな、μ'sの活動の様子を鉱芽君にも見てもらおうかなと思って』

 

 

 まあ、なんて魅力的なお誘い。っていうかいいのか? カメラ越しでも男の俺が女子の秘密の花園の様子を覗いても……。まあ、副会長自ら言ってるしバレなきゃいいか。俺だって下心もな……そんなに無いし。

 ただ、どんなビデオになるのかは気になるな。

 

 

「部活動のビデオね……具体的には?」

 

『「ありのままのμ's」ってところやね?タイトルは。で? 今大丈夫よな?』

 

「あ~、ここ職場だしな一応。うん、一旦帰って家でその様子見るわ。ちょっと待っててくれ」

 

『了~解。じゃ、また掛けなおすわ』

 

 

 という訳だ。これはとっても楽しみだ。んじゃ、家まで速攻で帰りますか。

 

 

 

 ──────────────────

 

 

 

 という訳でサクラハリケーンに乗って急いで帰ってきましたよ。そりゃあやっぱ気になるし、楽しみだし、早く見たいっていう欲望もあったしな。何より、いつも自分が指導しているあいつ等の普段の姿というものが一体どういうものか非常に気になっている。とりあえず希からの着信を──

 

 

『♪~~~♩~~~♬~~~』

 

 

 ──タイミング良すぎだろ……。どっかで見てんじゃねぇか、実は。ともかく、画面に映る着信ボタンをタッチする。

 

 

「もしも~し。大丈夫だぞ~。ってかナイスタイミング過ぎて怖ぇ-よ」

 

『そか、それはよかった』

 

 

 画面に映る希の背後を見る限り、今は外に出ているようだ。

 

 ん?

 

 ふと画面から希が消える。どうやら端末を持ってカメラを別方向に向けているのだろう。やがて俺の端末の画面には見知った顔が幾つか見えた。

 

 ──ははっ、こんな時間にこんな形で会うのも珍しいかもな。

 

 

『ああ~っ! さっきの声やっぱコーガさんだにゃ~』

 

『えぇ!? ってホントだ! 鉱芽さんだ! お~い!』

 

『え、鉱芽さん!?』アタフタ

 

『あの、希先輩。これって……』

 

 

 大体分かると思うが、上から凛ちゃん、穂乃果、ことり、海未ちゃんだ。っていうか凛ちゃんと穂乃果が二人して手を振ってると姉妹にしか見えないな。ことりなんかすっげぇ動揺してるし。冷静なのは海未ちゃんだけかよ。

 

 

『いやぁな、折角やから鉱芽君にも見てもらおうと思って』

 

『? 何をです?』

 

 

 海未ちゃんが質問するのと同時に画面が揺れ動き、やがて希の全身像がはっきり見えるようになる。きっと誰かの──恐らく凛ちゃんの手に希の端末が渡されたんだろう。希は鞄からマイクとビデオカメラを取り出し、再び凛ちゃんから端末を受け取り、凛ちゃんにカメラを預けた。そして今度は端末の画面にカメラを抱えた凛ちゃんが映る。カメラを受け取った凛ちゃんは早速穂乃果にレンズを向けて録画を開始した。

 

 ……っていきなりかい!

 

 

『あ、あの~……?』

 

『はい、笑って』

 

『えっ? ……あっへぇ~……』

 

 

 希からのいきなりの指示に戸惑い、非常にぎこちない笑みを浮かべる穂乃果。

 ……オイ待て、希。お前、まだ何にも説明していないだろ。

 

 

『じゃあ決めポーズ』

 

 

 と思ったけど、すぐに凛ちゃんから指示を出す声が聞こえてくる。なんだ、全員知らないわけじゃないのか。だが穂乃果は何やらヘンテコなポーズを決めようとしているし、横からは希のナレーション(相変わらずの似非関西弁)が聞こえてくる。

 

 ……μ'sの紹介動画だよな……。

 

 ああ……のっけから穂乃果のイメージがおかしなことに……。

 

 

『ハイOK!』

 

「なあ、希。これは……なんか……違うんじゃないか?」

 

 

 とりあえずツッコまずにはいられなかった。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 場所は変わってアイドル研究部の部室。そこで希に見せられたのは穂乃果のずぼらな授業態度を収めた盗撮動画だった。ってオイオイ……寝て、食べて、また寝るって……動物じゃないんだからさ……。いくら隠し撮りだからと言ってもこれは……穂乃果……。

 

 

『こっそり撮るのドキドキしちゃった~』

 

「ことり……お前まで……」

 

『そうだよ、酷いよ~』

 

 

 授業中に居眠りしてしまう穂乃果も穂乃果だが、同じ授業中に隠し撮りを実行したのはことりだ。なんか、もう泣きそうだ。いや、これも一つの平和だ。平和なのはいい事だ。いい事なんだけど……ぅぅ……。

 

 

『さっすが海未ちゃん!』

 

 

 今度は海未ちゃんの動画が再生される。真面目に弓道の練習に励んでいる姿だ。そう言えば海未ちゃんは弓道部との掛け持ちだって言ってたな。ほお、なかなか凛として引き締まっているね。これはカッコいい……けどこれだと弓道部の宣伝だよな。

 

 ……ん? 鏡を見て……っ、笑顔の練習をしてるッ。

 

 

「……プフッ」

 

『わ、笑わないでください鉱芽さん!』

 

 

 それには流石に我慢できなくなり、画面に映らないよう屈んで吹き出していたが、どうやら聞こえてしまったようだ。端末の画面には顔が耳まで茹蛸のように赤くなった海未ちゃんが映る。ゴメン、海未ちゃん。その、可愛かったよ。うん。

 

 さて、これで穂乃果と海未ちゃんが盗撮により撃沈したわけだが……ことりには何も無いのか?

 

 

『こうなったらぁ~ことりちゃんのプライバシーも……』

 

 

 隠し撮りはないようだが、穂乃果はことりの鞄を勝手に開いて秘密を暴こうとする。何だろ。画面越しとはいえ、男の俺が居るというのに恥も糞もないなお前ら。穂乃果の手によってことりの鞄のファスナーが開く音がする。すると目にも止まらぬ早業で鞄のファスナーを閉め、穂乃果から鞄を取り戻すことりの姿が映った。

 

 

「……ことり?」

 

『何でもないですよ』

 

『ことりちゃん?』

 

「何でもないのよ。何でも」

 

 

 滅茶苦茶早口で否定しまくることり。一体何が入ってたんだろう……。

 

 ……そうだ。

 

 

「なあ、希。一応気を付けてるけど、これインタビュー中に俺の声とか入っちゃう可能性とか無い?」

 

『大丈夫や。万が一そうなったら編集で消してもらうから』

 

「あ、さいですか」

 

 

 ま、特に俺が気にする程のことでもないか。

 

 

『でも、その前に生徒会長が見たら』

 

「そういやお前ら、生徒会長に邪険がられてるんだってな」

 

『あっ……』

 

 

 俺の言葉にまるで隠し事がバレた子供のように固まり、目だけがあちこち動いている状態になる穂乃果。

 

 

『穂乃果ちゃん……』

 

『いや、どうやら知っていたみたいですよ』

 

「希に教えられてな」

 

 

 何故か穂乃果の所為でバレた空気になってるが、別に穂乃果の所為じゃないからな。

 

 

『こういう事は早い目に言っておいた方がいいと思ってな』

 

『そうですか。せっかく鉱芽さんに余計な心配を掛けさせないように言わずにいたのですが……。ごめんなさい』

 

「いいや、いいよ。そういう気遣いは嬉しいしな。ただ、以降はちゃんと報告すること。いいな」

 

『『『『はい!』』』』

 

 

 そして希を除く四人は元気よく答えてくれた。そういうところは可愛いし本当に嬉しく思う。

 

 

「……ん?」

 

 

 そこで俺はふと、壁に貼られている一枚のポスターに目が惹かれた。ここはニコが入り浸っていたアイドル研究部室。アイドルオタクのニコが集めたポスターが張られていたりするのは当たり前なのだが──。

 

 

「なあ、ちょっとそのポスター見せてくれ。ちょうど凛ちゃんの後ろのやつ」

 

『ん? 別にええけど』

 

 

 俺は希に頼んでそのポスターをじっくり見せてもらう。

 

 ──やっぱりこの人は……。

 

 

「これってニコが張ったんだよな」

 

 

 そこに写っていたのは一人のアイドルの姿。俺が生まれる以前、一世を風靡したとされる伝説のアイドルのポスターだ。

 

 

『多分そうやけど……鉱芽君知ってるの? このアイドル』

 

「ん、まあな。それでニコだけど……」

 

 

 俺がニコについて問いただそうとした時、部室の扉が開く音がした。俺の端末はポスターを写し続けているので誰が来たのか分からないが、その荒い息遣いから息切れしているのがわかる。

 

 

『ああ、ニコ先輩』

 

『ハァ……ハァ……っ、取材が来るって本当?』

 

 

 どうやら来たのはニコのようだ。うん、ちょうどいいし聞いてみるか。

 

 

「よっ、ニコ。元気か?」

 

『ぅえっ!? 葛木!? 何でっ?』

 

「まあまあ、いーじゃんそんな事はどうでも」

 

『ウチが取材に同行させてるんや』

 

『えっ? ああ、そうなの』

 

 

 案の定、端末に映る俺の顔を見たニコは驚いているものの、すぐに落ち着きを取り戻す。う~ん、もう少し疑問をもっていいんだけどな。ここ女子校だし。

 

 

「それよりニコ、あのアイドルのポスターだが……」

 

 

 そう言って俺は例のポスターを指さす。ニコはそれがどうしたの? と言わんばかりに首を傾げる。

 

 

「……いい趣味だな」

 

 

 俺のその言葉にニコは頬が緩み、やがて目じりに皺を寄せて明るい笑顔を見せる。同意を得られたことが相当嬉しいようだな。

 

 

『アンタ中々見る目があるじゃない』

 

『ニコ先輩。誰なんです? このポスターの女性は』

 

 

 と、海未ちゃんがニコに問いただす。ま、知らなくても仕方ないだろうよ。何せ俺が生まれる前に活躍していたアイドルなのだから。海未ちゃんのその発言にニコは一瞬不満そうな顔をするが、すぐに得意げな表情になり腕を組んで自慢げに説明を始めだした。

 

 

『全くこれだから素人は。いい? このアイドルこそ、私達が目指すべき境地といっても過言ではないお方。かつて数々の賞を総なめにし、伝説のアイドルと言われた地球が生んだ奇跡──神の巫女とも言えるトップアイドル』

 

「それはちょっと言いすぎじゃないか?」

 

『うるさいわね。私にとってはそのくらい輝かしい存在なのよ、彼女は』

 

 

 そこまで褒め称えられるとこちらまで恥ずかしくなるのだが……まあ、いいだろう。今でもそこまで思ってもらえるとは、あの人はなんて幸せ者なんだろう。

 

 

『それで、その人の名前は?』

 

 

 ことりの質問にニコは得意げな表情を崩さず、その言葉を溜めて、溜めて、溜めこんでから、その名を口に出した。

 

 

 

 

『彼女の名は──葛木(かつらぎ) 舞衣(まい)。もう一度言うけど、伝説のアイドルよ』

 

 

 

 

 ──そして俺の母さんでもある。




珍しくアニメ準拠(1期6話)で進んだ今回のお話。
とりあえず長くなりそうなので次回へ。
しかし2話連続で名前オチにしてしまった……反省です。

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