ラブライブ! ー果実の鎧武者ー   作:春巻(生)

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この小説を執筆し始めてからちょうど3ヶ月経ちました。
その節目にようやく終わらせることができました……今回の1期6話編。

それではどうぞ。


第22話 これからもよろしく

「ここからは俺のステージだ」

 

 

 変身直後に右手に現れる大橙丸を落とさないように堅く握りしめ、左手は腰に備えられた無双セイバーを支えるように添えて、俺はゆっくりとすり足でインベスへと近づいていく。先程空へと逃げたコウモリインベスは無人スイカアームズが片づけてくれるだろう。あれは並のインベスでは手も足もでない程の代物だ。ならば俺は目の前の敵に集中するのみ。心を落ち着かせ、冷静に、確実に敵を捕らえるように洗練された立ち回りを熟すが、それに対してインベスはただ考えなしに突っ込んでくるだけだ。これが自我を持つ者持たない者の差なのだろう。やはりこいつ等は(けだもの)だ。ここで始末すべきだ。いくら生き物と言えど、俺のセカイに土足で踏み込んでくる以上は容赦しない。今までもそうだったし、これからもそうだ。俺は人間界に現れるインベスに慈悲をかけることはない。いや──

 

 

 ──今更かけることなんてできないっ!

 

 

「ふんっ!」

 

 

 二体のインベスがほぼ同時に眼前に飛び込んできたが、俺は冷静に大橙丸を横に一閃するだけ。しかし、その一度の振りで二体のインベスの身体は切り裂かれ、耳をつんざくような悲鳴と共に吹っ飛ばされる。

 

 

「ギィュゥワァァァ!」

 

「ひっ!」

 

 

 後方から穂乃果の小さな悲鳴が届く。やはりその光景は穂乃果には刺激が強すぎるようだ。いや、穂乃果だけでない。ことりもその生々しい光景に慣れていないはずだ。それでも穂乃果のように動じない、動じようとしないというのは……きっと耐えているのだろう。本当はことりだって目を背けたいはずだ。俺が戦うところなんか、生き物が傷つく瞬間なんか見たくないと。それでも目を背けようとしないのは、きっと……。

 

『鉱芽さんの……生き方を』

 

 その言葉の通り、ことり自身が俺の生き様を目に焼き付けようとしてくれているからだ。穂乃果にそう言っておきながら、自分が目を背けることなんてできない。だから、ことりも俺の戦いを見守ってくれているのだろう。

 ならば、もう迷うこと無かれ。

 

 

「「ギシュゥゥゥゥァア」」

 

 

 インベスは再び立ち上がり、馬鹿の二つ覚えみたいに再度俺に向かって突っ込んでくる。だがその身体の傷は例のごとく、外骨格の驚異的な再生力により既に塞がっている。面倒だと思いながらも、俺は大橙丸を左手に持ちかえて右手で腰のホルスターに添えられている無双セイバーを引き抜く。これでいつもの二刀流の型だ。

 

 

「ふっ、はあぁっ!」

 

 

 次のインベスの攻撃は同時でなく、起き上がり次第こちらへ襲い掛かってきたために少しのラグがあったが、それに臆することなく無双セイバーと大橙丸を交互に振りはらって着実に一体一体ダメージを与えていく。

 

 

「ッグギャァ!」

 

「っ、ぅらあっ!」

 

「キィュウゥゥゥ!」

 

 

 一撃、また一撃と斬り裂いていく。俺がしているのはただそれの繰り返しだ。まるで次々とベルトコンベヤーで流れてくる荷物を順に下す作業をしているようだ。今もまた、無双セイバーの刃がカミキリ型のインベス(カミキリインベス)を斬り裂く。だが、そのループも終わりだ。俺はすぐさま意識を初級インベスへと向け、そして戦極ドライバーのカッティングブレードを下して必殺技を発動させる。

 

 

『オレンジスカッシュ!』

 

「セイハァァァァァァ!!」

 

「ギュァァァァァァァアア!!」

 

 

 大橙丸に蓄積されたパワーを斬撃に変えて発生させる強烈な一撃──大橙一刀が初級インベスの身体を横一閃に切り裂き、インベスは悲鳴を上げながら爆散した。しかしその瞬間、いつの間にか立ちあがっていたカミキリインベスが俺の背後から跳びかかってきた。

 

 

「っ、鉱芽さん」

 

「ふんっ」

 

 

 だが無意味だ。俺は右手の無双セイバーを逆手持ちに変え、右腰から左肩へと向けて刃を立てて背を防御する。所謂、背面受けというやつだ。案の定、カミキリインベスの振るった腕は無双セイバーに阻まれ、俺の身体に届くことはなかった。俺はすぐに身体を翻して大橙丸と無双セイバーの鋭い連撃を浴びせる。

 

 

「ギュォォォォ……ッ!」

 

「っ!?」

 

 

 しかしカミキリインベスは本能的に危険を悟ったのだろうか、俺の頭上を高く跳び超えて逃走を図ろうとしたのだ。それには一瞬目を見開いたが、俺は即座に無双セイバーに備え付けられているバレットスライドと呼ばれる引き手を引く。すると無双セイバーの刀身の(しのぎ)──エナジーチャンバーに幾つかの光が灯る。そして俺は無双セイバーの柄に付けられた「引き金」を引いた。

 

 

「ふんっ!」ズダダダダダダダッ

 

「ングュァァァ!?」

 

 

 無双セイバーの鍔──ムソウマズルからいくつもの弾丸が発射され、空中のカミキリインベスに容赦なく襲い掛かる。実はこの無双セイバー、刀と銃の両方の機能を兼ね備えた武器なのだ。今の銃弾を発射できる形態──ガンモードが搭載されているお蔭で、鎧武は中距離までならある程度の敵を相手取る事ができる。

 

 

「……」ズダダダダダッ

 

 

 そして地面に墜落したインベスに対しても、俺は無双セイバーが弾切れを起こすまでその弾幕を浴びせ続ける。そこには「情け」の一文字すら入らない。

 

 

「……グッ……グガッ……」

 

「……ちっ」

 

 

 その無惨な光景に引き起こした俺自身が嫌な気分に陥ってしまうが、無理矢理抑え込む。それに、どうせもう終わりだ。俺は無双セイバーと大橙丸の鍔頭(つばがしら)同士を合わせ、それらを連結させる。そうすることで俺の持つ二つの刀は、まるで薙刀のような姿に生まれ変わる。正確に言うと、鎬を境に片や無双セイバーの刃、片や大橙丸の刃を備えた諸刃造りの刀だけどな。これが無双セイバーの第3の形態「ナギナタモード」だ。

 

『ロックオフ』

 

 戦極ドライバーからオレンジロックシードを取り外し、無双セイバーのドライブランチに装填して施錠する。

 

『ロックオン! イチ! ジュウ! ヒャク! セン! マン!』

 

 無双セイバーから流れる電子音と共に、ロックシードの有り余るエネルギーが無双セイバーの刃へと伝わっていき、やがてその刃は目を覆う程の煌めきを見せる。

 

 

「ふんっ、はっ!」

 

 

 そして俺は無双セイバーを離れたインベスに向けて振り放った。すると無双セイバーから橙色のエネルギー波がインベスに向かって飛んでいき、エネルギー波はインベスの身体をオレンジを模した球体に閉じ込めてその身体を拘束した。インベスは必死に振りほどこうと悶えるが、そもそもヤツにそんな力などない。オレンジ状のエネルギー体に囚われた標的に待ち受けるのは、確かな終わりだ。

 

 

「御免」

 

『オレンジチャージ!』

 

 

 その音声と共に俺はインベス目がけて走り出す。そして奴と交える最後の一瞬、俺はこの得物でインベスの身体を横一文字に一閃した。

 

 

「セイハアアァァァァァ!!」

 

「グギャォォァァァアッ!!」

 

 

 ナギナタ無双スライサ──―無双セイバーが放つ中で最高威力の技を食らったカマキリインベスは、俺の斬撃によって身体が上半身と下半身に綺麗に別れた後、やがて爆散した。

 

 

 そしてそれと同時に空中から聞こえてくるもう一つの爆音。きっとスイカアームズがコウモリインベスを倒したのだろう。幸いにもその予想は当たりで、それから程なくして無人スイカアームズはこの場へ戻ってきた。

 穂乃果を一人残してコウモリインベスを追っていったのは、まあ「森の脅威を広げない」という指令をプログラムされた以上仕方ないとしても少し危険だよな。ある程度改善の余地はあるのかもしれない。

 

 

「ありがと。クラックは……」

 

 

 スイカさんに感謝しながら、戦闘前にクラックが見えた場所を確認する。しかしそこにはもうクラックは存在せず、ただ虚空があるだけだった。

 つまり、今回の件はこれで終わりというわけだ。

 

 

「……ふぅ」

 

 

 スイカアームズが再び夜空へと飛び去った後、俺は変身を解除する。

 

 

「あ、あの……鉱芽……さん」

 

「おう、どした?」

 

 

 変身を解いた俺にゆっくりと遠慮しがちに近づいてくる穂乃果。ずっと口をもごもごさせて、言葉を発したいけど言い出しにくいといった様子を見せている。ならば、と俺は穂乃果が話しやすいようこちらから話題をふることにした。

 

 

「悪い、少し怖い思いさせたかな」

 

「そ、それは……確かにちょっと怖かったけど、でも、そんな事より!」

 

「ん?」

 

「鉱芽さんって今までずっとこうして……戦ってきた……んだよね?」

 

「まあ、そうなるな」

 

 

 先程よりも更に遠慮しがちな話し方になる穂乃果。俺の肯定の言葉に「そう……だよね」とシュンとして小さくなってしまう。そうして暫く沈黙が続き、俺がまた何か話そうとした時、急に背筋を伸ばした穂乃果は行動に移した。

 

 

「あのっ、ごめんなさい!」

 

「……え? どしたよ急に」

 

 

 腰を綺麗に90度曲げて謝りだす穂乃果。一瞬戸惑ったがその行動の意味も分からなくはない。それでも俺はひとまず穂乃果に喋らせることにした。

 

 

「鉱芽さんこんなに大変なのに、なのに私っ、μ'sの指導とか、そんな事まで頼んじゃって……えっと、その……」

 

「迷惑をかけた……って?」

 

「うん……あの、だから……もし大変なら、私達……鉱芽さんに頼るようなことは、もう……」

 

 

 穂乃果はそこまで言ってだんだんと言葉が出なくなっていった。そしてその顔も酷く哀愁を帯びたものになっていく。だが穂乃果の言いたいことは分かる。何も知らずに今まで俺に付き合ってもらったことに罪悪感を覚え、だから今こうして関係を絶っても構わないと提案してくれているのだ。しかしその表情を見るにとても辛そうに見える。

 

 

「俺の指導はもう懲り懲りってか?」

 

 

 だから少し勘違いじみた台詞で挑発してみることにする。大丈夫、きっと穂乃果はそんな事思う子じゃないよな。

 

 

「違うっ! そんな事無いよ! 本当は私だってもっと鉱芽さんと一緒に練習してたい! もっといろんなこと分かりあいたいって思ってる! でも──」

 

「一つ! お前は勘違いしているぞ」

 

「──ふぇっ?」

 

 

 穂乃果は俺が思ったよりもあっさりと感情を露呈した。そして彼女の発するそれは正しく心からの叫びだった。正直、穂乃果がそこまで真剣に俺との繋がりを絶ちたくないと思ってくれていることを聞いて非常に感動してしまった。今でも胸が熱いくらいだ。でも今はその喜びを表現するよりも先に彼女に伝えたいことがあった。

 

 

「俺はお前に頼まれてμ'sの指導をしてるんじゃない。俺がしたいからやってるんだ」

 

「えっ? でも、だってあの時……」

 

 

 穂乃果が思い出しているのは恐らく、俺がμ'sの指導をすると決めた日。穂乃果達三人が神田明神で俺にダンスを見せてくれた日の事だ。あの時の俺は素直になれずに上から目線で彼女達を判定していたが、実際は言葉にした以上の感情が込み上げていたのだ。

 

 

「俺はな、あの時のお前らの舞台(ステージ)を見て本気で感動したんだよ。心動かされたんだよ!お前達は俺が求めていたもの──誰かを励まし勇気を与える力──を持ってる。本当にずっと見ていたいと思ったんだ、穂乃果達を。それ程までに俺はお前達μ'sに惚れこんでるんだよ」

 

「鉱芽さん……」

 

「俺はお前に巻き込まれたなんて思っちゃいない。むしろ戦いばっかの俺にとっては大切な時間なんだ、μ'sとの練習の日々ってのは。だからさ──」

 

「ふぇ!?」

 

 

 俺は中腰になって、夕方ドルーパーズでやったように穂乃果の頭を撫でる。その時と同じように優しく、髪の毛を乱さないよう軽やかに包みながら。

 

 

「──穂乃果達が迷惑じゃない限りはさ、俺の方こそ頼むよ。皆と一緒に歩ませてくれ、ってな」

 

「……いいの?」

 

「ああ、もちろん」

 

「本当に、本当にいいんだよね?」

 

「男に二言はない、ってな」

 

「……うんっ!」

 

 

 俺が穂乃果の頭から手を放すと、穂乃果はいつものように輝かしい笑顔を俺に振り向けてくれた。ああ、この笑顔だよ、穂乃果と言えば。とりあえずはこの笑顔が見れただけでも満足だよ、本当に。

 

 

「んじゃ、改めて。よろしくな、穂乃果」

 

「うん! よろしく! えっへへ……」

 

 

 そして最後は互いに笑顔で締めることが出来た。

 

 

「ことりも。よろしくなっ」

 

「はいっ。よろしくお願いします」

 

 

 もちろんことりにもしっかりと声をかけておくのを忘れない。俺と穂乃果が話している間、ことりは口を挟まずにずっと見守っていてくれていた。会話中、彼女を蚊帳の外にしてしまっていたことに気兼ねしていたので、やっとことりを会話に加えることが出来て内心ほっとしているところだ。

 ま、何はともあれ、これで穂乃果の抱いていた悩みは全部解決したって事でいいんだよな。なんて考えていたところに再び穂乃果から疑問の声が上がった。

 

 

「ん? そういえば鉱芽さん、そのパーカーって……?」

 

 

 そう言って穂乃果は俺の着ている武将パーカーを指さす。ああ、そういえばドルーパーズでは着ていなかったからな。俺の見慣れない格好が気になったのだろう。

 

 

「おう、いいだろこれ。ことりが作ってくれたんだよ。いやぁ、本当カッコいいな、これ」

 

 

 特に隠す理由もないので正直に話しながら、俺はパーカーの背面の武将のイラストを穂乃果に見せつける。うん、やっぱカッコいいわこのデザイン。早速明日からでも着てみようか? 夏だけど。

 

 

「えっ? 本当にっ? ことりちゃん」

 

「うん。前から作ってたんだけどね、ようやく完成したからさっきプレゼントしたところなの」

 

「へぇ~、そうなんだぁ……はっ」

 

 

 ことりの説明を受けた穂乃果はしばらく黙り込んだかと思うと、急に何かを思いついたような表情を浮かべて目を輝かせた。

 

 

「鉱芽さん! ちょっと待っててね!」

 

「えっ? 穂乃果!?」

 

「すぐ戻るからっ!」

 

 

 そして俺たちの前からそそくさと走り去っていってしまった。まあ、すぐ戻ってくるって言ってたし、少し待つか。そう決めた俺だが、やはり気になるものは気になる。なので穂乃果が走り去って消えた方向に向けて意識を集中させる。そうすると……聞こえてくるんだよなぁ、これが。遮蔽物込で50m先の話し声が聞こえるって相当ヤバイよな。自分でも思うけど……。

 

 

『あ、お姉ちゃんおかえりぃ。ねぇ、さっきの大きい音って何?』

 

『えっ!? さ、さぁ~? 花火じゃないかな~……こんな街中で迷惑だよね~……アハハ……』

 

 

「……悪かったな」

 

「はい? どうしました? 鉱芽さん」

 

 

 穂乃果ともう一人の人物の会話に思わず返してしまう。まあ、誤魔化してくれただけありがたいか。しかし、「お姉ちゃん」という事は穂乃果の妹……なんだろうか?

 

 

「ああ、いや、何でも。それよりことり、穂乃果って妹とかいるのか?」

 

「はい、雪穂(ゆきほ)ちゃんって言う2つ下の子がいますよ。でもどうして?」

 

「別に。聞こえたからな、店の話し声」

 

「え“っ?」

 

 

 その瞬間、ことりの周りの空気が固まったような気がした。ことりの目は驚愕から一転、真剣なものに変わるが、その瞳にはどこか羞恥心を宿しているようにも感じる。

 

 

「鉱芽さんって……耳いいんですか……?」

 

「ああ、というより五感全てが優れているって感じかな。生まれつきだけど」

 

「ぇ、じゃあ私達の内緒話って……」

 

「割と聞こえてる。ま、大抵は聞かないようにしてるけど」

 

「っ、はぁ……。それならよかったです……」

 

 

 緊張が解け、全身から力が抜けることり。大方、自分たちの内緒話が聞かれてたらどうしよう、って思ったんだろうよ。でも俺だってそこんとこ弁えてらぁ。デリカシーの無い男になるつもりはないからな。

 ……なんて、穂乃果の動向探ってる時点で説得力無いよな、ハハハ……。

 

 

「……おっ」

 

 

 そうこうしているうちに何かが駆け寄ってくる音が聞こえてきた。言うまでもなく穂乃果だ。そしてその手には何やら紙袋が握られていた。……あれ? デジャヴ?

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……ッ、鉱芽さんっ!」

 

 

 全力で走ってきたのだろう、割と息を荒げながら穂乃果は俺に紙袋を差し出した。

 

 

「これ、私からプレゼントだよ!」

 

「これって……」

 

「穂むら名物、穂むらまんじゅう。略してほむまん!」

 

 

 だそうです。ハイ。とりあえず受け取らない訳にはいかないので穂乃果から紙袋を手渡してもらった。

 

 

「えっと、因みにどういう意図がおありで?」

 

「今日のお礼に決まってるよっ。今日はありがとう! 何から何まで。それと、これからもよろしく!」

 

「……クッ、アッハハッ──」

 

「っふぇっ!? ど、どうしたの!? 何で笑うの~?」

 

 

 穂乃果から受け取った言葉に俺は思わず笑い出してしまう。当たり前だが、穂乃果はいきなり笑いだした俺に困惑しているようだ。焦りだしてあたふたしている。うん、可愛いな。プレゼントを渡されてるってのに笑うのは確かに酷いとは思うが、どうも我慢できなかった。

 何せ──

 

 

「──ことりと同じこと言うもんだからさぁ。っ、おかしくって……」

 

「……え?」

 

「『ありがとう、これからもよろしく』って、このパーカーくれた時のことりとまんま同じこと言ってるんだよ。似すぎだってお前ら」

 

「な、なんだ……。そうだったんだ」

 

「ああ。ごめんな、急に笑っちまって。でも本っ当、嬉しいから」

 

 

 そこでようやく穂乃果の瞳に安堵の色が灯る。馬鹿にされたわけじゃなかったんだ、と小さく呟いて胸を撫で下ろす穂乃果。でもこれ、あともう少しで穂乃果を泣かすところだったんじゃないかな? そう思うと少し背筋が凍ってしまう。うむ、反省しないとな。

 

 

「まあ、なんだ。ありがとう、穂乃果。これ今日何度目か分からないけど改めて言うよ。これからもよろしく。なっ」

 

「……うんっ!」

 

 

 その時浮かべた穂乃果の表情は、ことりや真姫の見せる官能的なソレとは違う、ただひたすら純粋で明るい、子供のように煌めく笑顔だった。

 この笑顔を見れただけでも明日からまた頑張れそうな気がした。きっと俺にとって、この笑顔こそが戦いにおける最高の応酬なんだ。穂乃果の眩しい笑みを前にして、そう思わざるを得なかった。




和菓子屋穂むらのモデルになっているのは「竹むら」という老舗の甘味処なのですが、個人的に「竹むら」と聞くと、「穂むら」よりも「たちばな」(仮面ライダー響鬼に登場する甘味処。響鬼たち『猛士』の集いの場)を思い浮かべます。実は同じ建造物を使っていたんですよね、この二作品(内装が全く違うので少し気付き辛いですが)。
こういうところで特撮作品との思わぬ共通点を見つけたりすると結構楽しかったりします。

それではまた次回。
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