鎧武といえば馬ですが、果たして今作では……?
それでは今回もどうぞ。
真っ暗な闇の中だ。その闇の中で俺は謎の浮遊感に身を委ねている。何をしていいのかも分からず、ただ流れに任せるままその時間を過ごすのみだった。
『──っ!』
しかしそんな中でも聞こえてくるものがあった。それは悲鳴だ。
『──っ!』
やがて漆黒に包まれた空間が彩りを付けるようになる。
具体的には橙色に。
それは夕日が沈もうとするどこかの場所だった。
そしてそこにいるのは……俺──鎧武と真姫と……一体のインベスだった。
『グギィギュゥウゥ……』
見ればインベスは既にボロボロで、今に鎧武がその手に握った
『ぐ……ぐぅぅ、ぁぁ……ああぁぁぁ……っ!』
『もうっ……やめてよ……っ』
鎧武は手にした銃の銃口をインベスに向けたままそこから動くことが出来なかった。いや、動きたくないのだ。葛藤している。必死になって、自分の迷いを断ち切ろうとしている。だからなのだろう。その様子を見ている真姫の顔が、酷く哀しみに満ちているのは……。
『グ……グワァォォォォォォ!!』
だがインベスはそんなものお構いなしに立ちあがり、腕を振り上げて再び鎧武に向けて歩きだそうとする。
『ぐっ……っぁ……』
そして鎧武はようやくドライバーのカッティングブレードに手を伸ばし、一回倒して必殺技を発動させる。
『ブドウスカッシュ!』
葡萄型の銃のスライドを引いて弾薬を充填し、その銃口をインベスへ向ける鎧武。銃口には葡萄型のエネルギーが龍と共に纏わりつき、今にも暴発しそうなほどの力を溜めこんでいた。
そして……
「鉱芽ぁぁぁ!!」
「ギュァァァアアァア!!」
「あああああああああああああぁぁ!!」
鎧武は──―過去の俺は、その引き金を引いた。
その瞬間景色が暗転し、俺は再び闇の中へと落ちていった。
──────────────―
「……ぁ」
……最悪の目覚めだ。未だに頭がじんじんと疼く。
しかし同時に後頭部にかかる妙に柔らかい感触……なんだ?
「鉱芽……」
「……や、真姫」
なるほど、今現在俺はどうやらソファーの上で横になっており、その頭は真姫の膝の上に乗せられているようだ。一々口に出すのも恥ずかしいが、これはその、あれだ、所謂膝枕ってやつだ。
俺が目を覚ました事に気付いた真姫は、その手を優しく俺の額に添える。もしかして真姫はずっとこうしていてくれたのか?俺が起きるまでずっと膝枕を……?
「俺、どんだけ寝てた?」
「大体3時間くらい。もう9時を過ぎてるわ」
「そっか。その間ずっと……えっと……その、なんだ……膝枕を?」
俺がそう聞くと真姫はその顔をみるみると赤らめさせて俺から目線を逸らす。ああ、やっぱりずっと俺の傍にいてくれたんだな、真姫は。そう思うと嬉しく思う反面、面倒をかけて申し訳ない気持ちにもなる。
だが、俺の思考はすぐに先程の光景──
「……すっげぇ似てた……
未だ真姫の膝の上で仰向きになりながら、深くため息をつく。あの生徒会長、確かに髪の色も目の色も、俺の記憶の中の彼女──亮ちゃんとは違う。でもそれだけの差だ。色を除いたら殆ど亮ちゃんと差異が無い。それ程までにあの二人は酷似している。
毎日彼女の絵を描き続けている俺が言うのだ。間違いない。
「ええ、そうね。私も入学式で初めて見た時は驚いたわ。心臓が飛び出すかと思った……」
「……俺に会わせたくない理由ってこういう事だったのか」
「……うん」
現に会った結果がこのザマだ。あの子と瓜二つの顔を見ただけでぶっ倒れるだなんて。なんて情けない。
「なあ、真姫……」
「何? 鉱芽」
先程の生徒会長ではない、記憶の中のあの子の面影を今一度思いだしてしまう。すると、途端にどうしようもなく辛い感情に押し潰されそうになる。涙は出さないが、とても人に見せられない情けない表情を浮かべそうになってしまう。弱い自分が内から溢れそうになってしまう。
そんな俺が真姫へかける声はとても弱弱しいものだった。そこに戦士の面影なんてない。あるのは唯の一人の
「……ごめん……もう少し……このまま……」
弱さに押し負けてやけに感傷的になってしまい、右手で目元を抑えながら真姫にそう懇願してしまう。もう少しこのまま、真姫の膝の上で横になっていたかった。彼女の温もりを感じていたかった。彼女から安堵を得たかった。
「ええ」
そんな俺を真姫は快く受け入れてくれる。
「……ありがと」
だから、もうしばらく……ほんの少しだけ……真姫に甘えさせてもらう事にした。
────────────────
すっかり安心しきって私の膝の上で静かに瞼を閉じる鉱芽。私はゆっくりと彼の前髪をかき分ける。
「……んん」
「……(鉱芽)」
いつになく弱弱しい素振りを見せる鉱芽。それは普段の彼とは全く異なる姿。
……ううん。本当は逆。多分、いや、きっとこれが本当の鉱芽なのよ。
弱い自分を必死で抑え込んで、無理して強い振りをしている。そんな健気で儚い……愛しい存在。
それが葛木鉱芽。私の大好きな人。
「……(馬鹿ね)」
私の膝の上で安堵の表情に包まれている鉱芽を見てると、途端に普段以上の強い想いにかられてしまう。
鉱芽が私を頼ってくれている。
私に甘えている。
私を必要としてくれている。
それだけで私は途方もない満足感に包まれる。
そんな中、ふと鉱芽は静かに私の名前を呼んだ。
「まーき」
「何?」
「ううん、呼んだだけ」
「何それ。恋人じゃないんだから」
全く、本当に人の心を揺さぶるのが得意な人ね。でも鉱芽はこうやって私の存在を確認しているんだ。今、自分は一人じゃない。誰かが傍にいる。そう感じていたかったんだと思う。それが今回、偶々私だっただけ。
でも構わない。鉱芽が安心できるなら、私はいくらだって彼の傍にいて上げる。彼が望むなら、何だってしてあげられる。
それが鉱芽を支えてあげるって誓った私の決意。
「そうだな」
「全く……(ほんっと馬鹿)」
だけど……どうしても彼を愛しいと想う心はそれ以上の事まで望んでしまう。
この締め付けられるような苦しい気持ちが、彼を……求めてしまう。
「鉱芽……」
「何?」
「何でも」
我慢できる気がしない。
彼が欲しくなる。
どうしても彼に今より進んだ関係を望んでしまう。
きっと鉱芽はそんなの期待していない。
私はそれを知っていながらも、目の前の欲望に負けようとしていた。
鉱芽は……そんな私を許してくれるのかな……?
────────────────
「……はぁ……余計ミッチに会えなくなったよ」
真姫の膝の上でゆっくりした分、大分落ち着きを取り戻したが、同時にちょっとした羞恥に見舞われる。意識を取り戻してからもかれこれ10分程彼女の膝の感覚を堪能(温もりを感じるという意味では間違えた表現ではない)していたのだ。自ら膝枕を頼むだなんていう、そんなありきたりな願望を抱いた自分に対して今更ながら恥ずかしく感じてしまう。まあ、真姫が耐えられるんならもう少しこのままでいるつもりだけどな。
そんな安心感に包まれているからだろうか、つい口から弱音が出てしまう。
「別にいいわよ。すぐに会おうとしなくても」
だけど真姫はそんな俺を優しく包み込んでくれる。俺の髪を優しく手でかき分けながら甘い声で俺を励ましてくれる。
「それに、鉱芽ももっと甘えなさいよ……」
「今甘えてるよ」
「そうじゃないわ。アナタ、本当はいつも一杯一杯なのに……それなのにいつも無理して余裕を作って、強い自分を見せようとするもの……。危なっかしくて目が離せないわ」
「真姫……」
俺は静かに真姫の名を呼ぶ。だがそのトーンは、やっと迷子から抜け出せた子供のように静かな喜びを含むものだった。実は図星を言い当てられて少しショックだったりするのだが、そんな事よりも真姫が俺の事をよく分かってくれていた事がとても嬉しかった。俺の弱さを知られる羞恥心よりも、その弱さを見つけてくれた事による安心感の方が大きかった。
「だから、その……少しくらい……私の前くらいは……その……ずっと、甘えてなさいよ……っ」
「……ふっ」
結局自分で恥ずかしくなって声が途切れ途切れになってしまう真姫。だが俺の弱さを知り、なおも受け止めてくれる彼女が俺にはとても魅力的に映った。
そして俺はようやく真姫に対して笑顔を見せる事ができた。そりゃあよ、こんな可愛い子前にして何時までもいじけてられるかっての。
「あちゃあ~、じゃあ真姫の前でカッコつけても意味無いかぁ」
「カッコなんてつけなくても……鉱芽は……カッコいいわ。充分」
「ふふっ。ありがと、真姫」
「……ぅん…………ぁ……」
──本当にありがとう。
俺は真姫の顔へと手を伸ばし、その頬に優しく手を添える。真姫もそんな俺の動作に嫌な顔一つせず、真っ直ぐ俺の顔を見降ろしてくる。そして俺もまた、真姫の目をじっと見つめる。
互いに他のものは全く視界に入らない、そんな二人だけの空間が出来上がっていた。
「……鉱芽」
ああ、真姫の顔がすごく近い。それにいい匂いも感じる。
膝枕という体制だから当たり前かも知れないが、それでも今は彼女という存在がこの上なく近くに感じ取れた。
真姫は依然目を逸らせることなく俺の目を見つめ続ける。
「……鉱、芽……」
もう一度、今度は消え入りそうな声で俺の名を呼ぶ真姫。
その目は微かに揺れ動いており、頬もやや桃色に染まってとても官能的な表情へと変わっていく。
「……」
そしてゆっくりと近づいてくる真姫の顔。
その顔があまりにも魅力的で色っぽく、そして切なくて、俺は真姫から目を離すことができなかった。
真姫の心臓の音が物凄く早く躍動しているのが感じる。
俺はそんな真姫に対して、逃げることも拒否することもしようとは思わなかった。
そのまま流れに身を任せてしまおうと考えてしまった。
俺には真姫の気持ちに答えられる感情なんて持っていないのに、その先に進もうと思ってしまった。
「……」
「……」
やがて真姫の柔らかそうな唇が俺のそれと触れ合おうとする──
「……」
しかし唇同士が重なり合おうとする寸前、真姫の顔はその動きを止めた。
「……(真姫?)」
「……っ」
そして眉を顰め、一瞬泣きそうな表情を浮かべる。
一体何を想ったのかと疑問に思ったが次の瞬間、俺の鼻先に柔らかい体験が訪れた。
「ぇ……?」
「……ふんっ」
一瞬どうなったのか分からなかったが、どうやら真姫は俺の鼻先に唇を落としたようだ。俺から離れた真姫の顔はいつものようにツンとしており、そこに先程までの大人の色気はなかった。
「真姫……?」
「……別に。今するような事でもなかったわけだし……」
「……そっか。
「っ……馬鹿……」
恐らく俺の気持ちが定まっていない事を知っていたからこそ、真姫はあそこで思い留まったのだろう。真姫は本心ではその先を望んでいたのかもしれない。それでも自分を必死で抑えて、俺の気持ちを考えようとして踏みとどまった。
──別に思い留まる必要なんてなかったのに。
そう思ったものの口には出せなかった。真姫はこれでとても純情な子だ。互いの気持ちが重ならない限りは行為に移すことをできない子だ。まあ……今はちょっと危なかったけどな。
だから、止めるに至るまでにはいろんな葛藤があったのかもしれない。その葛藤の末の止めるという結論故にあんなに泣きそうな顔を浮かべたんだ。人の為に無理矢理自分を押し込めたから辛い思いをしたんだ。
──そうなんだろ? 真姫……。
しかし結局その本心を知るのは真姫本人だけだ。誰も真姫の心を完璧に推し測るなんてできないのに、どうしてそう決めつけられようか。俺もこれ以上彼女の心を詮索するのは止めておこう……。
「はぁ……」
軽く一息ついて気持ちを入れ替える。さてと、俺もいつまでも横になってるわけにはいかないな。
そう思い身体を起こそうとした時、突如として俺の耳元に異様な音が鳴り響いた。
「……」グゥゥゥゥゥ
「……真姫?」
「……何も言わないで」
そう言って顔を真っ赤に染める真姫。腹の音を聞かれてこれ以上ないという程恥ずかしい思いをしているのか、手を顔の前に持ってきて俺から顔が見えないようにする。そりゃあ、こんな至近距離で腹の音を聞かれることもまあ無いだろうよ。うん、俺だって同じことしたら恥ずかしいわ。
それにしても、こんな時間に腹がすくというのはやはり──
「──食べてないんだろ? 真姫」
「……うん」
「ごめんな。俺のために」
「謝らないで……」
もう夕食の時間はとうに過ぎている。それなのに真姫はずっと俺のために傍に居てくれた。それはすごく嬉しいが、俺のために倒れられるのも申し訳が立たない。
もう9時を過ぎてるようだしここはさっさと家に帰ろう。そう思い再度起き上がろうとするが……。
「じゃあ……ん?」
「何……あっ」
起き上がる寸前にこちらへ向ける視線を感じとったので、身体を起こすと同時にその方へと目を向ける。
「……あっ、ごめんなさいね。どうぞそのまま続けて」
真姫によく似た大人の女性──―真姫の母が物凄く温かい目でこちらの様子を見守って……もとい見物していた。
いつもなら直ぐに気付いた気配ではあるが、今の俺は病み上がり同然で神経が鈍くなっていたようだ。だから今まで気付かなかった。全く、一体いつから覗いていたのやら……。
「もうっ、ママったら」
「あっはは。あの、すいません。なんか、色々とご迷惑をお掛けして」
「別に大丈夫よ。トイレだってもう匂いはとれてるはずだし」
「あはは……本当にすいません」
そう言えばトイレで戻していたんだったな、俺。今更ながら羞恥心が芽生えてくる。
「あの──」
──俺、そろそろ帰ります。そう続こうとした言葉の前に、それを遮るかのように真姫の母が口を挟んできた。
「鉱芽君。まだ食べてないんでしょ? だったら今日はここで食べていって」
「え? そんな、悪いですよ」
「あらあら、全然そんな事無いわ。寧ろ久しぶりに鉱芽君見れて嬉しいもの。もう少しゆっくりしていってもいいのよ」
「え、えぇ……と……」
「あ、そうだ。何だったら泊まっていっても──」
「ママっ!」
はぁ。何だかなぁ……。
「あの、じゃあ、お言葉に甘えて……夕食だけでもいただきます」
「うふふ。もう用意できてるから二人とも食卓に来てね」
「はい。ありがとうございます」
なんだ、既に俺の分も作ってくれていたのか。と真姫の母に感謝を入れつつ、俺はソファーから立ち上がる。ずっと横になっていたせいか、足の裏が床に付くという感覚が随分と久しぶりに感じた。
「ふぃ~……行くか…………って真姫?」
「……」
しかし真姫の様子がおかしい。一向にソファーから立ちあがろうとしなかったのだ。いや、立ちあがらないというよりこれは……。
「……立てないのか?」
「うん……思ったより足が……痺れてて……」
「なんか……ごめん」
三時間近くも俺の頭を乗せていたのだ。そりゃあ膝も痺れるというものだ。
……仕方ない。
「ふぅ……どれ」
「っ、鉱芽!?」
俺は真姫の肩を担いで彼女が立ちあがれるように補助する体勢に入る。急に俺が肩を担いだことに驚いた真姫は、未だ狼狽しつつも一応は立ちあがる事に成功する。その後も俺が真姫の肩を担ぎながら食卓を目指していたわけだが、その間中ずっと顔が近くにあるもんだから真姫はずっと顔が赤くなりっぱなしだった。
「……もう。これじゃあどっちが介護してるか分からないじゃない」
「立場の逆転とは早いもんですねぇ~」
「もぉ」
──おんぶやお姫様抱っこじゃないだけマシだろ。
といった感じで何とか食卓の席へと付けた俺達。食卓の上には主菜から副菜までバランスよく整えられた食事が並んでいる。流石院長夫人だな。それにしっかりとサラダの中に真姫の好きなトマトも入っている……ってトマトは好き嫌い関係無いな、うん。因みに俺は机を挟んで真姫の反対側に座っている。
「いろいろあったみたいだけど、まあ、ゆっくりしていってね」
「はい、ありがとうございます……あの、そう言えば院長は?」
ふと俺は真姫の母に院長の在宅を尋ねる。院長というのは真姫の父のことだ。真姫の父はこの辺りに構えられている大病院を経営している人で、俺はその職業通り「院長」と呼んでいる(その上「理事長」も兼ねているんだからホント訳が分からん)。真姫の家がこんなに広いのも父親の大収入のおかげだ。
そして実はこの院長、俺が鎧武となって戦っていることを覚えている数少ない一人で、唯一の男性だったりする。かつては俺が戦いで怪我を負った時などに世話になった、所謂掛り付けの医者といえる人だ。まあ、“元”掛り付けだけどな。多分、院長は今も俺が戦っているとは知らないだろうな。真姫が言わない限りは。まあ、黙ってたことを知ったら後で物凄い怒られそうだけど……。怒ると
とりあえず折角家にお邪魔したのだから挨拶はしておこうと思い院長の影を探したのだが、少なくともこの家の中には今見えている以上の気配は感じられなかった(俺自身も気配を察知できる程には回復した)。
「ごめんなさい。ちょうど理事会で遠くまで出かけてて今日は遅くなるって。相変わらず忙しいみたい」
「そうですか」
「ふふっ、主人によろしく伝えておくわ」
「はい、よろしくお願いします」
結局院長には挨拶できなかったが、とりあえず元気そうで(ついでに忙しそうで)何よりだ。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
そしてようやく遅い夕飯にありつく俺達。時刻はもう午後九時半を過ぎている。本当、ここまで付き合わせた真姫には頭が上がらない。食事を始めた俺達を見た真姫の母はそのまま机に付くことなく、静かにこの部屋から抜けていった。大方、俺達の会話の邪魔をしたくないと思ったのだろう。
ならばありがたい話だ。俺はある一つの決意を固め、真姫に話しかけた。
「真姫」
「何?」
「俺さ、もう一度会ってみようと思う。その……生徒会長に」
そう口にする俺を見て、真姫は特に咎めることも困惑することもなく、ただ小さく「そう……」と呟くだけだった。
「もう大丈夫なのよね?」
「ああ、最初から分かっていれば問題ないよ。それに……」
「?」
「彼女とはしっかりと話し合うべきだと思う。μ'sの指導者としてな」
あのまま終わったきりではとてもではないが後味が悪すぎる。ならば希に頼んで今一度、生徒会長とちゃんと会って話をつけるべきだと思った。このままではμ'sの活動にも支障をきたしてくるだろうし、俺も無関係ではいられないからな。いずれにしろ、いつかは訪れる出来事だったのだろう。
それに何もμ'sにこだわった話ではない。俺は以前、希から生徒会長の話を聞かされていたが、そこで希は彼女に対してこう評していたのだ。
『エリチはな、使命感に囚われて自分のやりたいことが出来てないと思うんよ』
その言葉が今更ながら記憶の底から湧き上がり、頭の中で反芻する。使命、やりたいこと……そんなかつての自分によく似た境遇の彼女がどうしても気になってしまった。
ならば、ほっとけない。迷いなんてない。やはり俺はもう一度彼女に会わなくてはならない。
「鉱芽がいいなら、私は止めないわ」
「ありがと、真姫」
そうと決まれば善は急げだ。明日にでも彼女に会ってやる!
こうして、一度ひび割れた仮面と心は今再び構築された。
武者を癒し支える、可憐で一途な女神の手によって……。
真姫ちゃん、可愛く描けたかな……?
皆様の感想、評価お待ちしております。
それではまた次回、お楽しみください。