それほどまでに忙しい……です。
それでは今回もどうぞ。
「──っと……まあとりあえずはいいか。一旦休憩しよっか」
「はぁ……やっと……ね。疲れるわ本当……」
そう盛大に息を吐きながらニコ先輩は机に突っ伏す。その手から零れ落ちたシャーペンがコロコロと机の上を転がっていく。その横では鉱芽さんが柔らかい笑みを浮かべながら彼女に労いの言葉をかけ、ゆっくり立ちあがるとそのまま部屋を出ていってしまった。多分、冷蔵庫に飲み物でも取りに行ったんだと思う。
そんな鉱芽さんを尻目に、私も隣で机に向かっている穂乃果ちゃんに声をかける。
「うん、穂乃果ちゃんもそろそろ休憩かな? いいよね、海未ちゃん」
「他人に流されるのはよろしくはないのですが……まあ、丁度キリもいいのでそうしましょう」
「あぁ~……やっと休憩だぁ~……」
「お疲れ様、穂乃果ちゃん」
私と海未ちゃんのお許しが出てようやく勉強から解放される穂乃果ちゃん。でもあくまで休憩だからね、穂乃果ちゃん。またこの後続きがあるんだよ。
この状況から分かると思うけど、今私達は鉱芽さんの家で勉強会を開いている最中なの。音ノ木坂学院の理事長を務めているお母さんから、期末試験の成績でラブライブ!への出場の未来が決まるという話を聞いてから三日目。今日は鉱芽さんも勉強会に加わってくれて、その上勉強のための環境も与えてくれたの。ここなら広いし誰にも迷惑がかからないものね。今は鉱芽さんとニコ先輩の組と私達二年生組、そして別の部屋にいる一年生組に分かれて勉強を見ている感じかな。……人数的に仕方がないとはいえ、鉱芽さんと別れた班なのは少し残念だけど。ただ、部屋が違う真姫ちゃんよりはマシかな、えへへっ。
そうそう、鉱芽さんの家って相当広いの。リビングなんて鉱芽さんと私達μ'sの7人が全員入っているのにまだスペースがいっぱい余ってるくらい。それに今私達が勉強しているこの部屋も、8人が入っても何とかなるレベルの広さを持ってる。流石に勉強する分には少し狭いから部屋を分けたけどね。
こんな大きい家に一人暮らし、って思ったけど、元々鉱芽さんは家族と一緒にこの家に住んでたんだよね。それも大アイドルと有名科学者の両親と一緒に。だから、こんなに大きい家なのにも納得できる。
あ、そうだ。その親の件でさっきは少し大変だったの。鉱芽さんのお母さんってほら、『伝説のアイドル』って言われてた程の人じゃない。それにニコ先輩と花陽ちゃんが食いつかないわけないよね。それで案の定、鉱芽さんが自身の両親の事を打ち明けた時は凄かったの、いろんな意味で。確か、リビングであの二人が鉱芽さんの両親の写真を見た時だったかな……。
────────────―
「あ……ああああ、ああんた……こ、この人、いや、お方ってまさか……」
ニコ先輩の写真立てを持つ手が震える。よく見ればその横の花陽ちゃんまで身体が震えていて今にも叫びそうな雰囲気を醸し出していた。そんな二人に対して鉱芽さんはありのままに、淡々と事実を告げる。
「葛木舞衣。俺の母親で、昔アイドルやってた人だな」
最後に「言っとくけど、コラじゃないからなその写真」と付け加えるけど、多分二人には聞こえていないと思う。ニコ先輩も花陽ちゃんもその衝撃からとてもおっかない表情を浮かべ、身体中をわなわなと震えさせ、悲鳴にも近い声をあげている。それに興奮のあまり目が血走っているようだった。
「ひ、ひええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! か、葛木さんって……あ、あの、ま、ままま舞衣ちゃんのご、ご子息様っ!?」
「なんだよご子息様って……」
「こ、この写真……確かに本物の……っ。そ、そうよっ! 何で黙ってたのよ!?」
「そんな率先して伝える程のもんでもないだろう」
「伝えることよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
リアクション芸人のごとく大げさに叫ぶニコ先輩。それに花陽ちゃんも、なんだか今にも鉱芽さんに掴みかかりそうだ。そんな光景に、鉱芽さん含め皆が汗をかいたそうな。
だけど二人して顔を抱えてうずくまって悶絶してる中、ふと花陽ちゃんが顔をある事に気付いた。
「はっ!? じゃ、じゃあ、もしかしてあの家具にこの家具も!?」
「……多分両親のチョイス」
「あの可愛らしいグラスも!?」
「母さんの私物」
「た、宝の山ですぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
ニコ先輩はともかく、花陽ちゃんって本当にアイドルの事になると性格変わるんだね。この間、部室でラブライブ!の説明をしている時の花陽ちゃんもとても凄みがあったもの。
そんな風に息を荒げていた花陽ちゃんは急に畏まったかと思うと、割と真剣な表情でもって鉱芽さんに問いかけた。
「──はぁ、はぁ……っ……か、葛木さん……いや……鉱芽様……っ」
「やらないからな。あと何だよ、鉱芽様って……」
だけど質問の内容を先読みされたようで、鉱芽さんに拒絶されて膝を付く花陽ちゃん。多分、何かしら譲ってほしいなんて言おうしたのかも。そうよね、鉱芽さんも普通に考えて親のものを簡単に人に上げたりしないよね。
それが行方の知れない人なら当然。
鉱芽さんはこの家に一人暮らしって言ってたけど、それは両親が突然消えてしまったからみたいなの。それが大体12年前で、鉱芽さんはまだ小学二年生の頃の話。その後はしばらく遠く離れた親戚の家でずっと過ごしていたみたいだけど、その間もこの家を売り払おうとはせず、それどころか人を雇って定期的に掃除までさせていたらしいの(一応そのくらいのお金は余裕であるって言ってたけど)。
そして鉱芽さんはこの家に戻ってきた。両親と長く共に過ごしたこの家に。当時の姿のままの、思い出の続きの状態で。だから今このだだっ広い空間に存在するのは、彼の家族と過ごした記憶そのもの。
そんな大事なものを鉱芽さんが簡単に手放すはずがないよね。
「アンタねぇ、いくらなんでもそれは欲張りすぎっていうもんでしょ。謝った方がいいんじゃない?」
「は、はい……あの……ごめんなさい……」
ニコ先輩に促されて鉱芽さんに謝る花陽ちゃん。何だかんだ言ってニコ先輩は割としっかりしている人だから、鉱芽さんの気持ちもある程度は理解出来ているんだろうなぁ。だから、それらが鉱芽さんにとても大事なものだとすぐに気付いて、自分の気持ちを弁えたんだと思う。さっきからチラチラと棚の上の小物とか気になっているような素振りを見せるけど、気のせいだよね。うん。
「まぁ、なんだ……そんなに畏まらないでくれよ」
──────────────―
そこで一旦騒動は収まり、私達は部屋を移動して勉強会を始めたの。それからは特に問題も起こらず、平和に試験勉強を進めていた。一年組がどうなっているのかは分からないけどね。
「ほれ、ジュースとコップ。こっちの机に置いとくぞ」
「あ、ありがとう」
と、丁度鉱芽さんが紙パック2つと紙コップを持って部屋に戻ってきた。流石に勉強机に置くわけにはいかないから、離れた別のテーブルに静かにそれらを置く。
その時、また部屋の扉が開いたと思うと今度は真姫ちゃん達一年組が部屋に入り込んできた。予想通りと言うべきなのか凛ちゃんは相当干されて参ったようで、まるで生気を失っているかのような顔をしていた。今も花陽ちゃんに担がれている状態だ。
「私達も休憩。いいわよね別に」
「まあな。穂乃果達も、な」
「うんっ」
結局、今の時間は皆が休憩することになったみたい。鉱芽さんがジュースを置いたテーブルに集まる皆。でも流石にこの部屋に8人は多すぎるかも。やっぱリビングで休憩したほうが良かったんじゃないかなぁ……。
「にゃ、にゃ~……じゅ、ジュースだ、にゃあ~……」
「り、凛ちゃん、しっかり」
「どっちがいい? オレンジ? レモンティー?」
「っていうかどういうチョイスよ、ソレ」
「ん~……気分?」
「はぁ……」
「お、オレンジにゃあ」
そうして鉱芽さんは凛ちゃんのために紙コップにオレンジジュースを注いであげる。それに対してまるでオアシスに辿り着いたかのような反応で返す凛ちゃん。本当に何があったんだろう、向こうの部屋で……。それに真姫ちゃんのツッコミ通り、オレンジジュースとレモンティーってどんな組み合わせなんだろう? お茶とかは無いのかなぁ? 紅茶じゃなくて麦茶や緑茶とか。
「あの、すいません鉱芽さん。お茶とかは……?」
「ああっと、お茶ねお茶。はいはい、ちょいと待ってね、今持ってくるから。緑茶でいい?」
「はい、大丈夫です。ごめんなさい、お手数お掛けして」
「いいっていいって。じゃあ、ついでにお菓子でも持ってくるかな」
「あっ、じゃあ私も。手伝うわ」
どうやらお茶もちゃんとあるみたい。海未ちゃんの容貌に答えるべく再び部屋を後にする鉱芽さんと、それにちゃっかり着いていく真姫ちゃん。あぁ、ちょっと出遅れたかも……私も付いていきたかったかな。
でも、そうなれば後のこの部屋は完全に女子の花園だ。穂乃果ちゃんに花陽ちゃんもみんな色々話し出すんだけど……鉱芽さんって確か異常に耳が冴えてたんだよね……。ここの会話も鉱芽さんに筒抜けになるんじゃ……。
「はぁぁぁ……生き返るにゃぁー!」
「よかったね凛ちゃん」
「(けど、極力聞かないようにするって言ってたから大丈夫……かな?)」
脇で凛ちゃんがジュースを一気に飲み干しながらどこかのCMみたいに叫び出す。って、これじゃあ耳の良し悪しとか関係なしに聞こえちゃうよぉ。案外、心配するだけ意味無いかもね。
それに続くように他の皆もコップにジュースを注いでいくけど、海未ちゃんだけは未だコップに手を付けずに座り込んでいた。多分お茶の方を待っているんだろうな。
「あれ?」
私もコップにジュースを注ごうと膝で立ちあがろうとするけど、その瞬間、先程の勉強会で使われなかった机──多分鉱芽さんの作業机──の上に立てかけられているノートの束が目に入った。それが妙に気になってしまい、私は立ちあがってその机に近づいていく。するとそれはノートじゃなくてスケッチブックであることが分かる。24枚挿しのスケッチブックが十数冊もその机の上に立てかけられていた。
「なんでこんなに……?」
取り敢えずそのうちの一冊を手にとり、表紙を捲る。そこには──。
「……? 松ぼっくり……?」
何故かA3画用紙にはでかでかと一つの松ぼっくりが描かれていた。
──うん、確かに凄く上手……なんだけど……何で松ぼっくり?
何のことか分からないのでそのまま用紙を捲って次のページへと進める。すると──
「今度は……タンポポ……?」
次の用紙に描かれていたのはタンポポだった。
えぇっと、これは……植物のスケッチ……なのかな? ほら、あの森──―ヘルヘイムも植物だし、何か関係してるんじゃ……。
そう思い、更にページを捲って次の絵を確認するけど……。
「……え?」
次も植物関係かと思えばそうではない。次の絵は槍。ただの槍が一本、そこに描かれているだけだった。
「……っ……っ……っ(これって)」
次々と用紙を捲っていくけど、どれもこれも全く統一性のないものばかりだった。
犬、銅像、城、風景画、カーテン、骨、羽、帽子、揚句にはそこらのCDディスクや電気スタンド、10円玉まで……本当に種類がバラバラで、何を描きたかったのかがまるで分からない。全部が鉛筆で描かれたものだから、もしかすると単なる練習かもしれないけど……。
「……」
すぐさま2冊目へと手を伸ばしてその絵を調べていく。けどそこも同じだった。本、机、猫、木々、歯車と、さっきと同じでまるで統一感のない画集だった。
そして、これはやっぱりただの練習画じゃない。断言できる。
何故なら、私はこれと同じものを知ってるから。
鉱芽さんのために作ったパーカーの絵を描く時に、何度も味わったそれ。
ヘルヘイムに関わる絵画の改変。
あの時も私が絵にした鉱芽さん──鎧武が、日をまたいだ途端に全く関係のないものに変わってしまっていたの。ある時は鳥、ある時は包丁、またある時は靴、という風に。
だから、きっとこのスケッチブックも同じ。鉱芽さんはここに何かしらのものを描いたんだと思う。それもこんなに大量に……。
「(一体何を描こうとしたの……鉱芽さん……)」
「あんまり勝手に見ないでほしいなぁ」
「っ!? こ、鉱芽さん……」
意識を更にスケッチブックへ向けていた時、急に背後から声をかけられて驚いてしまう。その声の主はいつの間にか部屋に戻っていた鉱芽さんだった。その声に思わずスケッチブックを手放してしまうけど、その前に鉱芽さんは私の手からスケッチブックを奪い取って机の上のスタンドに掛け直す。
「あ、あの……鉱芽さん……この絵って……?」
「ああ、練習でなんとなくだよ。なんとなく。気にすんな」
「なんと……なく?」
“なんとなく”鉱芽さんはそう説明してくれた。
もしかして鉱芽さんは、私がこれをただのスケッチブックと認識していると思ってるのかな? だったらいいんだけど……。
だけど私は見てしまった。そう言った鉱芽さんの、どこか煮え切らない、それでいてやりきれない想いを含んだような渇いた笑みを。気のせいかと思う程の一瞬の表情だったけど、私の脳裏にはその顔が未だに刻まれたままで、気になって仕方がなかった。
やっぱり何かあるの? そう思い、鉱芽さんではなくチラっと真姫ちゃんの方を覗いてみる。すると彼女もどこか複雑そうな表情を浮かべていて、そこに何かがある事を物語っているようだった。
「鉱芽さん……」
でもこれって……まだ私が踏み込んじゃいけない領域……なのかな?
「さ、席に着いた着いた。折角みんな休憩してんだからさ、ことりも来いって」
ことりはまだ……そこに達してないの……?
────────────―
結局、あの絵に関しては分からずじまいのまま皆の輪の中に戻る事になってしまった。その後は鉱芽さんも真姫ちゃんも何事もなかったかのようにみんなと談笑を続けている。もうこうなってしまったら聞くに聞けなくなってしまう。残念ながら、今回はあのスケッチブックについて彼に問いただすことはできないみたい。
「そういえばニコ先輩、結構勉強が捗ってましたよね」
私がそんな失意に浸っている中、穂乃果ちゃんは先程の勉強会の事でニコ先輩に話しかけていた。その時は私達も穂乃果ちゃんの勉強を見ていたけど、確かにニコ先輩の──というより鉱芽さんが勉強を進めるスピードが少し早かったように思える。
「ふふ~ん、まあね。このニコにかかれば勉強なんてちょちょいのちょい──」
「ほおぉ~う?」
「──な~んてのは嘘で、本当は葛木が教えるのが上手だった、から……よ。癪だけど」
鉱芽さんに笑顔(目が笑っていない)で迫られたニコ先輩は敢え無く真実を口に漏らす。やっぱり鉱芽さんの教え方がよかったみたい。真姫ちゃんは「ま、そうでしょうね」なんて一人呟いているけど、鉱芽さんってどのくらい頭がいいのかな?
「あの、ごめんなさい。鉱芽さんってどこの大学に通ってたんですか?」
だからつい気になって聞いてしまった。けど、本当に何をやっているんだろう私は。鉱芽さんはかつて不本意ながら大学を中退した身。なのに何でわざわざそんな鉱芽さんの傷口を抉りかねないようなことを聞きだしてるんだろう? 今頃そんな大学の名前なんて出したら、過去の想いに浸って後ろめたくなるかもしれないのに。
今更ながら、私は激しい後悔に襲われた。
「
だけど鉱芽さんは特に気遅れすることなくあっさり答えてくれた。その顔を見るに特に何にも感じていないみたい。よかった、鉱芽さんはそんな事でへこたれる人じゃなかったみたいね。
それにしても城南大学かぁ……城南大……城……南………………え?
「えええええぇっ!? 城南大学!?」
急に穂乃果ちゃんが大声で叫び出す。それにつられて思わず軽く飛び跳ねてしまう鉱芽さん(それと真姫ちゃんも)。それくらいの大声だったけど、他のみんなも同じくらい驚愕していてそれどころじゃなかった。
「すごいじゃないですか、城南大学って。まともに受けたら音ノ木坂でも毎年三、四人しか受かりませんよ」
「AOです、イェイ」
「それでもスゴイですぅ」
海未ちゃんの解説にVサインを出して得意げに答える鉱芽さん。それに花陽ちゃんまで感嘆の声を上げている。
でも、それほど凄いんだよ城南大学って……と言っても私はレベルが高い以外の事はよく分かっていないんだけどね、えへへっ。それでも、関東圏に住んでる学生なら誰でも一度は目標にした事があるくらいに、人気がある大学なのは間違いないみたいだけど。
「ビックリしたわぁ。本当にサラブレッドじゃない……」
ふとニコ先輩がそう漏らす。一瞬「サラブレッド」の意味が分からなかったけど、そう言えば鉱芽さんのお父さんって天才物理学者だったっけ。ああ、なるほど。そういう意味で言ったのなら確かに理解できるな。
だけどその言葉を聞いた鉱芽さんは、さっきみたいな黒い笑みを浮かべてニコ先輩の頭を右手でガシッと掴み、強く締め付けながら机に押し倒し出した。
「そういう話は無しなぁ、ニコぉぉ……」
「いやぁぁぁぁ!? ごめん、ごめんって! 分かった! 悪かったわよぉ!」
うわぁ……痛そう……。多分10秒くらいしか食らっていないみたいだけど、それでも相当のダメージを負ったみたいで、ニコ先輩は解放されてからもしばらく「う~ん……」と呻きながらその場ずっとクラクラしていた。
というより、さっきからニコ先輩がいいように鉱芽さんの弄り相手にされているのが……なんだろう、代わりたいとは思わないけど……ちょっと羨ましいかな。
それと前にも思ったけど、やはり鉱芽さんの前でお父さんの話は基本的にNGみたい。そう言えば、それもどうしてなのか聞いてなかったなぁ……。さっきのスケッチブックといい、お父さんの事といい、鉱芽さんにはまだまだ分からないことがたくさんある。
でも、いつか……いつか全部話してくれる時がくるのかな? 私はそんな日が来ることを期待せずにはいられなかった。
「──はぁぁぁ……痛かったぁ……」
「ちょっとやりすぎた。悪い」
「本当よ、全く……そんなに嫌なの? その、比べられるのが……」
比べられる──きっとニコ先輩は鉱芽さんとお父さんの関係についてそう考えたんだろう。そして軽く反撃のつもりで口に出したんだろうけど、少し罪悪感も感じてるのか少しくぐもり声になっていた。
またさっきみたいにアイアンクローをお見舞いされるんじゃないかと思ったけど、流石にそんな事は無く、鉱芽さんは一旦ため息をついてから話してくれた。
「はぁ……別に勉強してたのは親父の影響じゃないよ。ちゃんとした目的があったのは確かだけど」
「じゃあ、一体何のためよ」
ニコ先輩の質問に、この部屋にいるほぼ全員の視線が集まる。私と真姫ちゃんは知っているからいいんだけど、皆は知らなかったんだよね、鉱芽さんが昔やりたかったことを。
諦めざるをえなかった夢を……。
「別にレベルの高いところに行く必要もなかったんだけど、実はな──」
──────────────―
「あの、鉱芽さん。少しお話が……」
勉強会も取り敢えず一段落ついたため、今日のところは解散し、みんなが部屋から出ていく時だった。最後に部屋に残った海未ちゃんが俺にそう言ってきたのは。
因みにこの子、最後までこの家に来るの渋ってたんだよな。「男の人の家にあがりこむなんてそんなっ」って箱入り娘みたいな事言ってさ。ま、結局穂乃果やことりに言いくるめられてここまで来ちゃったんだけど。
そんな海未ちゃんがわざわざ呼び止めてまで俺に話したいこと……恐らくμ'sの活動に関連しているもの。そう思っていたのだが、どうやら少し違ったようだ。
「あの……件の生徒会長の事で少し……」
「絢瀬のか?」
「知ってるんですか? 彼女を」
「昨日少しだけ会って話した。でも特に何も分からなかったよ。少し頭が固いこと以外は」
「そうですか」
海未ちゃんは俯いたまま、どこか言いだし辛そうな顔を浮かべて何かを考えていた。一体何を話そうとしているんだろう。そんなに説明の難しいことなのかね?
「俺、何か変なこと言った?」
「いえ、そうではありません……あの、実は私も、一昨日生徒会長と会って話をしたんです」
「ふぅん……で、なんて言ってたの?」
一昨日──確か俺が初めて絢瀬を見て倒れた日だな。てことはその直前に絢瀬は海未ちゃんと話をしていたのか。ま、どうせ碌なことじゃないんだろうよ。そんな予想をして次の言葉を待つ。
「なんでスクールアイドルが人気なのか理解できない。スクールアイドルなんてみんな素人にしか見えない。μ'sも……A-RISEも……。そう言っていました」
「……」
そして予想通り、というより予想以上に上から目線の言葉が飛んできた。オイオイ……μ'sはともかくA-RISEまで素人に見えるって……一体どういう目で見てんだアイツは。
「でも、彼女にはそう言える理由もあるんです」
「え? どゆこと?」
しかし、海未ちゃんからもたらされた更なる情報に興味をそそられ、彼女へ問いただす。
そこで俺はようやく彼女の過去、そして抱えている想いの一端を知ることとなる。
続くんじゃ。
ドライブの次のライダーの脚本はまた靖子にゃんがいいなぁ。
そろそろ靖子ライダーが見たい(現在、トッキュウ、牙狼で絶賛主人公ボッコ中だけど)。
次の更新も遅くなりますが、応援よろしくお願いします。
それではまた次回。