ラブライブ! ー果実の鎧武者ー   作:春巻(生)

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それでは今回もどうぞ。


第30話 傷ついて見えるもの

 絵里が去った後のドルーパーズの一席で、俺は立ち尽くしたまま動く気にはなれなかった。今彼女を追いかけたところで何をしていいのかが分からなかったからだ。

 

 ──俺は一体絵里に何をしてしまったのだろうか……。

 

 それが分からずに意識の中に沈みながら随分と考え込んでいた時だった。

 

 

「……コウガ?」

 

 

 俺を呼ぶ声にようやく意識を外へ向ける。俺の目の前で、ツバサが物珍しそうな顔をしてこちらを見つめていた。

 

 

「っ……ツバサか、いらっしゃい。どうした?」

 

「どうしたって、それはこっちの台詞よ。偶々顔を見せにきたら、アナタが立ったままずっとだんまりしてるものだから……」

 

「ああ、ごめん」

 

 

 申し訳なさげに頬を指でかきながら言葉を返す。ツバサは「仕方ないわね」と言いたげに息を吐きながら、テーブルの俺の向かい側の席に座った。

 

 

「さっき店から飛び出していった人と何かあった?」

 

「っ……ツバサ、そいつの顔って……見たか?」

 

「? いいえ。それがどうしたの?」

 

「あ、いや、何でもない」

 

 

 絵里の──亮ちゃんと瓜二つの顔の件はとりあえずはいいか。多分ツバサは俺ほどのトラウマを持っているわけでもないだろうし。ずっと立っていても仕方ないので、俺も再びテーブル席についてツバサと向かい合わせの状態になる。

 

 

「まあ結論から言うとだな、さっきのその子でちょっといろいろあってな──」

 

 

 そして俺は先程の件だけでなく、俺が知りうる限りの絢瀬絵里という人物に関わる事象をツバサに説明した。音ノ木坂の廃校を阻止しようとしている事、μ'sと対立していること、義務や使命に囚われて窮屈していること、そしてここ何日かの俺との関わり。それらをツバサに教えたのも、彼女からヒントを得たかったからだ。俺は彼女に何かしてしまったのか。どう接するべきだったのか。それを同じ女性であるツバサの視点から教えてほしかったからである。

 

 

「──そしたら急に激情的になった……と」

 

「うん。どうしてだと思う?」

 

「……なるほど……ね」

 

 

 先程の会話の内容までツバサに伝え終わると、ツバサは腕を組み込んで特に考えるそぶりも見せず、むしろ呆れた、といった表情を浮かべてこちらを見据えていた。

 

 

「全部コウガの所為ってわけじゃないけど…………なんていうか……らしくないわ」

 

「らしくない……?」

 

 

 一体どこが? と俺はツバサに問う。ツバサは困ったような顔を浮かべながらもゆっくりと説明してくれた。

 

 

「ねえコウガ。アナタ、絢瀬さんからの誤解が解けるまではどういう風に彼女に接していたっけ? 少なくとも一週間前は」

 

「え? そんなの……ただ絵里が笑ってくれたらいいな、って」

 

「そこに他意は?」

 

「ない」

 

 

 そこはきっぱりと言っておく。確かに元々はμ'sに降りかかる火の子を払う意図もあったかも知れないが、少なくとも海未ちゃんや希から絵里の事を聞いてからは「彼女を笑顔にしたい」という思いがあった。希からは「お節介」とも言われたが、それだけ絵里を中心とした接し方を取ってきたはず…………っ。

 

 

「じゃあその後は? 逃げだす直前にどんな話をしていたっけ? どんな意図を含んで接していたの?」

 

「……絵里のため……」

 

「それと、μ'sのため……よね」

 

「……そうだ」

 

 

 そこで軽く溜息を吐くツバサ。しかしそこまで話が運んだら俺も気付くしかなくなっていた。

 

 

「なんか打算的なのよ。コウガのその接し方」

 

「打算的……」

 

「女の子って意外とそういうの気付くのよ? 知らなかった?」

 

 

 ツバサにそう言われて、思わず打算的に絵里と接していた自分に気付く。表面上は義務や使命に縛れている絵里を助けたいと、しかしその内面ではどう彼女をμ'sの味方に付けるかを模索していた。もはや絵里のためというよりは、どうすれば全部丸く収まるかを目的にしていただけかも知れない。絵里を助けてμ'sも無事で一石二鳥、そんな打算的な考えが頭の中に浮かんでしまっていたのかもしれない。

 

 しかし絵里も絵里だ。あんな言葉の断片から俺のそんな心理まで感じ取れるものなのか……? ツバサの言う通り、そういう感情というのは女の子はすぐに察するものなのだろうか。

 

 

「多分、傷ついたんじゃないかな? 今まで親身に接してきてくれた人が、急に下心を持って話しかけてきたから」

 

「……」

 

 

 ツバサが言うとまた妙に説得力を感じる。そしてその憶測は恐らく間違っていないだろう。彼女を傷つけてしまった。笑顔を見たかったはずの彼女の目に涙を浮かび上がらせてしまった。それが今になって分かり、気分が重く沈んでしまう。

 

 そしてツバサはゆっくり口を開く。

 

 

「人との関わりってさ……打算的になったら負けだと思うのよね……」

 

 

 そのツバサの言葉を俺は心に刻んでおくことにした。そうだ、俺はいつだって誰かのために何とかしたい。そう思って行動してきた筈だった。なのに今回、それを忘れてしまった。彼女と仲良くなれてそのまま功を急いでしまった結果だろう。ならばもう二度と忘れまい。今までのように自分が信じたように行動する。それでいいんだと。

 

 だから今回、それを気付かせてくれたツバサには感謝しかない。そう思ってうつぶせていた顔を上げ、ツバサの顔を見ようとする。

 

 

 しかし──

 

 

「……(ツバサ……?)」

 

「…………」

 

 

 ──その言葉を言ったはずのツバサの表情が、どこか憂いを帯びたものへと変わっていたのだ。

 

 俺から視線を逸らしてどこか別の場所を見つめ、心ここにあらずといった様子である。

 

 まるで何かを思い出して、それについて延々と考えているような……。

 

 

「ツバサ……?」

 

「えっ? あ、うん。何?」

 

「ああ、いや……ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

「……」

 

 

 俺の呼びかけにすぐに笑顔を作って言葉を返すツバサ。そこに先ほどまでの憂いは見当たらない。

 

 しかし俺はしっかりと見た。ツバサの憂いに満ちたその表情。

 

 憂いと……後悔の色を……。

 

 

 ──ツバサにも何かあったのだろうか……打算的になって、何かをしでかしたことが……。

 

 

『──ピピッ──ピピッ──』

 

 

「っ」

 

 

 そんな中、突然鳴り響く俺の端末。全く、こんな時に出ないでほしいものだ。俺はすぐに立ち上がり、店を出ようとする。

 

 

「──っとと。ありがとなツバサ。とりあえず何とかしてみる」

 

「ええ。気を付けて、コウガ」

 

「おう、いってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

 

 ツバサに見送られながら俺はドルーパーズを飛び出して、いつものようにサクラハリケーンを出す。そしていつものようにバイクを走らせ、いつものように変身する。

 そしていつものように誰かを助けにいく。

 そんないつもの工程でも、俺はこの気持ちを──人の為にという気持ちを絶対に忘れることはしない。

 

 ──忘れてなるものか!

 

 そんな決意を胸に秘めた戦士は、今日もコンクリートのジャングルを走り抜けていく。

 

 

 

 ────────────―

 

 

 

「最低ね……私……」

 

 

 公園のベンチに一人腰を掛けながら、私は自己嫌悪に陥っていた。つい葛木さんに怒鳴って逃げ出してしまったけど、別に彼が悪いわけじゃない。ただ、私が彼に勝手な理想を押し付けていただけ。自分の思い通りじゃない彼を見て幻滅しただけ。そんなの、身勝手もいいところよ。今更ながら、彼に迷惑をかけた事を後悔していた。

 

 でも、私が今こんなにも感情的になっているのは彼の態度だけが原因ではない。

 

 

「そっか……私は……」

 

 

 私はここでようやく気付くことができた。今までどうして彼にこんなに苛立っていたのかを。彼の何が不満だったのかを。先程いきなり感情を爆発させてしまった理由も“それ”なんだと、ようやく納得できる“答え”を見つけることができた。

 

 皮肉なものよね。考えても分からなかった答えが、誰かに傷つけられて見えたりするなんて……。

 

 でもこの“答え”じゃ、結局悪いのは私だ。彼じゃない。

 何故ならそれは、あまりにも自分勝手で、偏屈で、幼稚な理由だったから。

 

 

「(本当、情けないわね……嫉妬なんて……)」

 

 

 昔から賢いだの、利口だの、何かと周囲から期待されながら育ってきた私。もちろんそう言われる分には悪く感じなかったし、私もその期待には答えようと努力してきた。しかしいつからか、周りから頼られることも多くなり、義務を背負わざるをいけない立場に立つことも増えてきた。

 そんな日々が続いたからだろうか。いつしか自分でも気付かないうちに一人でそういった義務を背負うことに慣れてしまい、それが当たり前になっていた。それがおかしいことだとも思わず、正しいことだと信じて。だから今回も同じで、私は一人気付かないうちに、自分の力で何とかしようと躍起になってしまっていた。自分が義務を果たすべきだと思いこんでいた。

 だから、葛木さんという存在に軽く衝撃を覚えてしまった。彼も私と同じく、どうしようもない状況を独り戦うことで解決しようとしていた。それは今も同じで、私から言わせれば力を持ったものとしての義務にしか思えなかった。そう、彼は私と同じで、義務を果たそうとする身だったはず。

 そんな似たような境遇であるにも関わらず、彼は私と違っていろんな人から支えられているではないか。独りで背負いこむはずのものに多くの人が集まっている。独りで背負いこむのが当たり前になっていた私にとって、それは衝撃で、そして……つい羨ましく感じてしまった。

 ──私だって一人で頑張っているのにどうして彼に……っ。そんな些細な嫉妬が、最初に出会った日から私の中で蠢いていた。それを彼が戦っている事を知る前から心のどこかで感じとっていて、真実を知ったことでその嫉妬心は表面化してしまった。

 だから私が彼にキツく当たってしまったのは彼の心変わりの所為なんかじゃない。ただ、自分の中の未熟な劣等感故に起きてしまった、子供みたいな癇癪よ。だから本当、情けない……。

 

 

 もしかすると今の私を変えてくれるかもしれない。こんなガチガチに固まった性根を変えてくれるかもしれない。彼に対して密かにそんな期待を抱いていたりした。でも、こんなんじゃ……もう彼に会わせる顔なんてない。彼に親身に接してもらう資格なんてないわ。

 

 そうやって、抱いた悔恨の情はどんどんと大きくなっていく。

 

 

 ──そんな時だった。

 

 

 ギュィィィィィィィィン

 

 

「え……?」

 

 

 私のすぐ近くでファスナーが開くような音が聞こえた。

 

 私は立ちあがり、音がした方を確認する。

 

 

「っ……これってもしかして……」

 

 

 そこにあったのは小さな裂け目。しかも空中に浮いており、その淵がファスナーのようにギザギザになっている。そしてその裂け目の向こう側、そこには見た事もない植物が生い茂る、薄暗い森が広がっていた。

 間違いない。これがさっき葛木さんが話してくれたヘルヘイムの森。そしてこの裂け目が恐らくクラックと呼ばれる門だ。私の近くで開いたということは、やっぱり私の中の因子に反応した……というところかしら……?

 

 でも、そんな風にじっくりとクラックを観察している暇なんてなかった。

 

 

「ギュォォォォォォォ!」

 

「きゃっ!?」

 

 

 森の中から突然、赤い何かがこちらへ向かって走ってきた。私は驚いて急いでクラックから離れるけど、ソイツはそのクラックを通過してこの公園内に降り立った。

 

 

「ひっ……」

 

 

 そのインベスは以前見たものと同じく赤い身体をしていたけど、そのフォルムは全然違う。頭部にはまるで悪魔のように捻じれた二本の角を持っていて、まるでヤギのような風貌をなしていた。

 そしてそのヤギのようなインベスはこちらへと視線を向けると、得物を見つけたと言わんばかりにゆっくりと歩み寄ってきた。

 

 

「──っ!」

 

「ッ!? グガァァァァア!」

 

 

 このままではどうなるか分かりきっている。だから急いで目の前の脅威から逃げようとした。だけど──

 

 

「グゥゥゥン!」

 

「──っ、きゃああっ!」

 

 

 その瞬間、何かが猛スピードで私の右肩を掠め取った。その衝撃で思わず前のめりに倒れ込んでしまう。

 

 

「……ぁっ……っ……(一体……何が……)」

 

 

 遅れてきた肩の痛みに耐えながらも、私は上半身だけ起こしてインベスへ見返る。すると、なんとインベスの角がうねうねと蠢いているのが見えた。きっとあの角は伸縮自在なんだ。だからあの距離から私に攻撃が届いたんだ。そう思うも、それでも今の一撃が肩を掠めただけで本当によかったと安心してしまう。あともう少し動くのが遅れていれば、あの鋭い角で身体を貫かれていたかもしれないから。

 

 そんな楽観的に事を考えながら、肩に手を置いて再び立ち上がろうとした時だった。

 

 

「……っ!? あっ、ぅ……ぁ、あああああぁぁぁっ!!」

 

 

 想像を絶する痛みが、私の右肩に襲い掛かってきた。何が起こったのか分からない。少なくとも今は、目の前の敵は何もしていない。となると、考えられるのは先程負ったこの傷だ。先程、掠っただけの右肩の傷を。

 

 そして私は、恐る恐る抑えてる左手を退かせる。

 

 

「──―はぁ──―はぁ、ぅっ……え……っ!?」

 

 

 

 

 怪我を負っているだけ。だから私の肩からは血が流れているだけよ。そう思っていた。

 

 でも私の肩に見えたのは血の赤ではなく、得体の知れない緑色。

 

 血濡れになっている肩からうねうねと湧き出る緑色の物体。

 

 明らかに私の一部ではない、異形の種が私の身体から──

 

 

 

 

 ──私の負ったその傷口から、じわじわと植物の蔦が生えてきていた!

 

 

 

 

「な、何これ……っ!」

 

 

 何本も細い蔦がゆっくりと私の肩の傷口から伸びてくる。

 

 じわりじわりと鈍足に、そして確実に私の身体を侵していく。

 

 それがあまりにも気持ち悪く、悍ましくて、その現実から目を背けたくなってしまう。

 

 

「い……嫌っ……っ、ああっ! ……っ……ぅぅ……」

 

 

 もう目の前のインベスの事なんか頭の中から抜けていた。とにかく今は自分の身体に起こっている異変が悍ましくて仕方がなかった。しかしそんな事を考える間もなく、そのまま激痛で上体を保ってられなくなり、再び地に臥してしまう。

 

 

「グゥルルルルルルゥ……」

 

「……ぁ……」

 

 

 インベスの近づいてくる声が聞こえてようやく自分の置かれている状況を思いだすも、やがて意識が朦朧としてきて自分ではどうしようもなくなる。ダメ、身体が全然動かない。声も上げられない……っ。

 

 

「(亜里沙……希……っ)」

 

 

 それはもう諦めてしまったからだろうか。自分にとって大事な人達の面影が脳裏にチラついてしまうのは。いや、違う。むしろ逆。この命を諦めきれないからこそ、会いたいと思う人達をどうしても思い描いてしまう。

 そして意外にも、それはあの人も同じだった。

 

 

「(ごめんなさい……葛木さん……っ)」

 

 

 申し訳ないと言う気持ちになりながらも、彼を想わずにはいられなかった。いくら嫌われていようとも私と仲良くなろうとしてくれた彼を。こんな私でさえ、守る対象として見てくれた彼を。私の殻を破ろうとしてくれた彼を。

 

 だからこそ、こんな場所で終わりそうになる事が悔しくて仕方なかった。

 

 せめて最期に、彼に謝りたかった。

 

 私の心底を知ってほしかった。

 

 

「……ングォ?」

 

 

 しかしそんな祈りにも似た想いが届いたのだろうか。

 

 

「──―ぅらぁあっ!!」

 

「ギュゥォオォッ!?」

 

 

 何かが脱兎のごとくの速さでインベスに突撃していき、その身体を十数mくらい突き飛ばした。なけなしの意識の中、私はその物体を確認する。突っ込んできたのは、桜のように白と桃色の混ざり合ったようなバイクだった。

 そして私はそのバイクの運転手を見た事がある。紺碧の下地に橙色の鎧。間違いない──―。

 

 

「……か……つ……っ(葛木さん……)」

 

「絵里っ!」

 

 

 彼の名を呼ぼうにも激痛によって力が入らない。彼はバイクから降りるとすぐにこちらへと駆け寄ってきてくれた。

 

 

 ──きて……くれた……。よかった……本当に……よかった……。

 

 

 

 ────────────―

 

 

 

「絵里っ!」

 

 

 意識が朦朧とする彼女を支えながら、俺は彼女の身体に起こっている異変に気付く。

 

 

「お前……インベスに……」

 

「──はぁ、はぁ……っぁ──」

 

 

 絵里の右肩からじわじわと浸食を始めている植物。インベスによって傷つけられた人間界の生物は、皆こうしてインベスの組織──ヘルヘイムの種子が体内に入り込み、その身体を侵されてしまう。

 

 これが所謂『ヘルヘイム病』と呼ばれる症状だ。

 

 こうなった生物は放っておけばそのまま植物にとり込まれてしまい、身体そのものがヘルヘイムの植物になってしまう。つまりその命は枯れ果て、やがては森の植物と同様に果実を実らせるだけの存在へと変貌してしまう。

 

 にしても進行が早すぎるっ。普通インベスに傷つけられたとしても発症するまでもう少し潜伏期間があるはずなのに……やはりこれも因子持ちであることの弊害なのだろうか。何にせよ、一刻を争う事態なのは間違いない。

 

 

「グォォォォォ!」

 

「ちっ。絵里、少し待ってろ。すぐ戻るっ」

 

「──はぁ……か……ぅあっ──」

 

 

 しかし今はこの害獣を処理しなくては。そう判断し、絵里に一言言い残して俺はヤギインベスに対峙する。ごめん絵里。辛いだろうが少し我慢してくれ。

 そして懐からまた新たなロックシード──メロンロックシードを取り出して施錠した。

 

 

『メロン!』カシャ

 

 ギュィィィィィィィィン

 

 

 ロックシードから放出されるエネルギーが時空間に干渉することで人為的にクラックを発生させる。そして開いたクラックから、メロンのような緑色の球体が姿を現す。

 

 

『ロックオン!』

 

『ソイヤ!』

 

 

 俺はロックシードをドライバーにセットするとすぐにカッティングブレードを下し、ロックシードを切り倒す。メロン型の球体はオレンジアームズの消えた鎧武の身体へと降下していき、やがて四方に展開して新たな鎧を形成する。

 

 

『メロンアームズ! 天・下・御・免!』

 

 

 それはオレンジアームズと同じ和風の鎧。戦国武将のごとく力強く、しかしそれでいて佳容な姿は、敵味方問わず崇敬と畏怖の念を抱かせる。

 アームズの展開と共に左腕に現れる、メロンと三日月を意匠とした巨大な盾──メロンディフェンダーを強く構えながら、懐の無双セイバーをゆっくりと引き抜く。傍から見ればその動きの一つ一つが優雅に見えることだろう。それほどまでに、今の鎧武は悠然とした立住まいを見せていた。

 

 これこそ攻撃、防御共にバランスよく強化された、鎧武の白兵戦向けの形態。

 

 仮面ライダー鎧武 メロンアームズ

 

 

「悪いが早々に退場してもらうぞ」

 

 

 そして静かに怒りを燃やしながら、俺は目の前の敵に挑みかかった。




長くなったので次回に。お楽しみください。
感想・評価お待ちしております。
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