ラブライブ! ー果実の鎧武者ー   作:春巻(生)

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「真夏のフルーツガール決定戦」ですか……。
この作品的にもどうなるか気になりますね。
ってか凛ちゃんもだけど、なんでにこがリンゴなん。桃と違うんかそこ……。

それと……のんたん誕生日おめでとうっ!

それでは今回もどうぞ。
今回ちょっとオリジナル……と言うより名称変更が入ります。


第46話 嵐の前に

「ふぅ……」

 

 

 静かに息を吐きながら、片手にソニックアローを携えて立ち尽くす俺こと鎧武。そして手元に握られた二つのスイカロックシードを勢いよく上空へと投げ上げると、既に黒色のロックシードを装填しているソニックアローを構え、天に向かって撃ち放った。

 

 

「ふっ!」

 

『コネクティング』

 

 

 ソニックアローから放たれた矢は二つのスイカロックシードを貫く。その瞬間、軽い衝撃音と共に巨大なスイカアームズが空中に出現した。スイカアームズは出現と同時に滞空形態のジャイロモードに変化し、そのまま空中で静止した状態になる。

 

 

「頼むからちゃんと仕事してくれよ?」

 

 

 無人の兵器に俺の言葉が通じるとは思わないが、少なくとも俺の意思は、ソニックアローに装填された「S」の字が刻まれた黒いロックシード──シグナルロックシードによってスイカアームズに伝達される。

 このシグナルロックシードはその名の通り、使用者の意思をシグナルとして無人スイカアームズへと送信し、思うがままに動かせる言わばリモコンのような機能を持つロックシードだ。

 

 まあ、一番大きいのは無人スイカアームズを召喚できる点だがな。今までμ'sのみんなが危ない時に飛んできたスイカアームズには実はこういう事情があったのだ。

 

 

 そして俺は今召喚したスイカアームズ達に一つの指令を送る。

 

 ──μ'sを守れ、と。

 

 実を言えば今現在、彼女たちはこの街にはいない。何故なら、みんな今頃は真姫の家の別荘で合宿を行っているからだ。

 

 事の発端は秋葉の路上ライブの約一週間前に遡る。真夏の太陽の日の元で毎日同じように練習するという日々に、流石にμ's内でも退屈を感じるメンバーが現れ出したそうだ(暑さの所為もあるだろうし、それは確かに仕方無いとは思うが)。そこでふと穂乃果が零したのが「合宿」という意見だ。それにはいろいろと意見が出たようだが、結局はμ's全員、真姫の家の別荘へ1泊2日の泊りがけで行く事になった……というわけだ。

 

 実際のところ、俺もそういう機会があってもいいのではないかと考えていたところだし、この間も絵里から相談を受けたばかりだった。絵里が俺に話してくれた考え、それはメンバー間での呼び名についてだ。絵里が言うには、これから同じステージに立って踊る人同士で遠慮があるようなことがあってはならない。だから、この合宿を機にメンバー全員が互いを名前で呼び合うようにしたい、とのことだ。所謂「先輩禁止」ってところか。μ'sの皆が互いに壁を作らず、共に並んで前に進めるようになるにはこれが一番いい方法だと絵里は考えたわけだ。

 

 もちろん俺もその意見には賛成した。絵里の言う事は正しいし、何より……真姫だ。

 自らアイドル活動を始めると決意したはいいが、未だに他メンバーとの付き合い方が分かっていないように感じる。きっと本人はもっと近づきたいと考えているはずなのに、どうも恥ずかしくてそれができない。そんな真姫の可愛らしい部分が、今では絆を深めることの阻害になってしまっている。

 

 だからこの合宿はμ'sのためではあるが、特に真姫の為である部分が大きいかもしれない。

 

 

 ともかく、今日は彼女達はこの街にいない。クラックの出現しないであろう遠方へと出向いているのだから。そして俺だが、残念な事にクラックという懸念事項があるためにこの街から離れるわけにはいかないので、彼女たちの合宿には不参加である。まあ、クラックが無かったところで、女子の花園に一人で行けるかと聞かれると閉口してしまうけどな……ははは……。

 μ'sの合宿ということで、気を効かせて俺のドルーパーズのシフトを外してくれたおやっさんに申し訳ないけど……。

 

 

「(一応大丈夫だとは思うけど……)」

 

 

 俺の上空を飛び去っていく無人スイカアームズを見つめながら、軽く物思いに耽る。クラックが開くのは今も昔もこの街の周辺だ。だから彼女たちのいる合宿場にクラック出現の危険性はないはずだ。だが……もし因子の影響によってその例外が起こってしまったら……? 俺のいないところで彼女たちの周りでクラックが開いてしまったら……? そんな不安から、俺は今のようにスイカアームズを起動させ、彼女たちの護衛に当たらせたのだ。

 先日の秋葉ライブの時、現れなかったスイカアームズについては未だ詳細が不明な分、その不安は更に大きいものとなってしまう。そう言えば、結局海未ちゃんも因子持ちだったし、恐らく残る花ちゃんも因子持ちと見ていいだろう。

 

 だからではあるが、俺は彼女たちが合宿へ出発する直前に真姫にロックシードを一つ託した。最悪の場合を考えて、真姫にも防衛手段を備えてほしかったからだ。そして当の真姫だが、以前は受け取るのを渋っていたロックシードを今回は意外とあっさり受け入れた。そうなるまでに何かしらの心の変化があったということだろうが、とにかくこれでμ's内にある俺の託したロックシードは3つということになる。これだけあれば最悪何かが起こっても俺が着くまでに耐えしのげるはずだ。

 

 

「お見事。相変わらず見事な射撃ね」

 

「どうも」

 

 

 鎧武の変身を解除しながら、俺は背後に立つ少女──―ツバサへと振り返る。

 

 

「少し心配しすぎなんじゃない?」

 

「さあ? でも用心しとくに越したことはないさ」

 

 

 こうして互いにまるで遠慮の無い掛け合いを見せるのも、今までの付き合いの長さ故だろう。その聞こえだとμ'sには悪いが、まだ現時点では彼女達よりもツバサとの方が絆が深いだろう。そしてツバサだが、彼女の通うUTX学院も今は夏休みで、今日は練習も終わって暇だということで俺の家に遊びに来た次第である。全く、相変わらず自由人な奴だ。

 

 

「けど、ただ遊びに来たってわけじゃないでしょ?」

 

「そうね。いろいろと言いたいこともあるし」

 

「おお、それは怖っ」

 

 

 なんて軽い口を叩きながら二人して俺の家へと上がり込み、彼女を俺の部屋に案内する。そして二人してパソコンの画面へと向かい合うと、俺はマウスを操作してページをラブライブ!公式サイトのμ'sの頁へと切り替える。

 

 

「μ's。9人に増えたのね」

 

「そうだな。ようやく名前通りの人数になった、ってとこか」

 

「それで新しく増えた子だけど……私の言いたいこと、分かる?」

 

「……」

 

 

 静かに言葉を続けながらも、その視線は俺の目を捕らえて離さない。あくまでもこの話題から逃げるな、と言っているようだ。ああ、ね。やはりその話題になっちゃうか……。

 

 

「亮ちゃん……な」

 

「ええ。この人……絢瀬絵里さん……ね。凄くそっくりじゃない、亮子ちゃんに」

 

「驚いた?」

 

「もちろん。けど……多分アナタほどじゃないと思う」

 

「……だろうな。ははっ」

 

 

 ああ、そりゃあもう驚いたよ。ぶっ倒れましたもん。そんな俺の醜態を知ってか知らずか、ツバサは不安げな表情を浮かべると、少し遠慮しがちに質してきた。

 

 

「コウガは大丈夫なの? その……絢瀬さんと一緒にいて」

 

「ああ、あくまでもあいつ等は別人だ。俺は絵里を亮ちゃんだと思ったことは一度も無い」

 

「そう……それならいいの」

 

「ありがとな。心配してくれて」

 

 

「当然よ」と何故か得意げに胸を張るツバサにほほ笑みながら、俺はマウスを動かしてμ'sの最新曲『Wonder zone』の動画の再生を始める。ツバサも曲が始まると同時に真剣な眼差しでパソコンの画面へと目をやる。

 

 

「いい歌だろ?」

 

「そうね。でもこれじゃまだ──」

 

「届かないってか」

 

「──そうね」

 

 

 あくまでも冷静に彼女達をそう分析するツバサ。流石ランキング1位のセンターの言う事は厳しいな。でも彼女はそう言いきれるだけの努力も実績も残してきている。俺もそれを知っているだけに、彼女の言い分に対して反論は出来ないでいた。でも──

 

 

「でもな、直にお前らに追いつく。確実に」

 

「ええ。そうかも知れないわね」

 

「首洗って待ってろ……なんてな」

 

「ぅふっ……待ってるわ」

 

 

 そして相変わらずの挑戦的な眼を向けてくるツバサ。そんな彼女の態度にこちらも軽く武者震いを起こす。かつては仲間だったが今は敵同士。今の俺はμ'sと共にこの壁──A-RISEを超えていかなければならない。改めて感じるその壁の大きさに、俺は何とも言えないやりがいを感じていた。

 

 そんな時だった。

 

 

『イエェーイッ! 今回出たμ'sの新たな楽曲ゥッ『Wonder zone』! ことりちゃんの甘い歌声がァ、俺たちの脳をビンッビンに刺激してッ、くるッ、ぜェッ!』

 

 

 曲が終わると同時に画面上に現れる新たなウィンドウ。そこで色々と好き放題喋りつくす、DJ風の格好をした陽気な中年。DJサガラだ。

 

 

「はーん。相変わらずだな、コイツも」

 

「……」

 

「ん? どうしたツバサ?」

 

 

 サガラが画面に映ると同時に空気が固まるツバサ。そう言えば以前もサガラを見て「不安を感じる」とか言ってたっけ。もしかしてまだ何か……?

 

 

「……やっぱり私は好きになれないわ」

 

「そっか? 俺は割と慣れたし面白いと思うけどな」

 

「やめてよ……」

 

『動画が投稿される度に着実にファンを獲得していくμ's! 天下のA-RISEを落とせる日もゥ、そう遠くないかもッ、知れないぜェ! これからも彼女達の活躍ぅおを~~~~ッ、チェケラァッ!』

 

 

 サガラの紹介が終わると同時に画面から消えるウィンドウ。そこでようやくツバサの表情も幾分か明るくなる。何だろう……これはただ単に肌に合わないと言うよりかは、一度実際に会ってる嫌がり方のような気が……。

 

 

「ごめん、なんか変な空気になっちゃって」

 

「え? あ、いや別に──」

 

「そうだコウガ。折角だし今持ってるロックシード、一旦全部出してちょうだい」

 

「──は?」

 

 

 サガラの話題も消滅したところで急に突拍子のないことを言いだすツバサ。少しツバサらしくないとは思うが、これも彼女なりの話題の転換なのだろうか?

 

 

「どうした? 急にロックシードを見たいなんて」

 

「別に。ただ、コウガって大切な事を言わないこと、結構あったじゃない」

 

「失敬な……でも否定はしません」

 

「よろしい。まあ……だからちょっと気になっちゃって。コウガのお父さんがまた新しいロックシードをアナタに届けたりしてないかなぁ~、なんてねっ」

 

「……」

 

「一応数合わせのためにも……ね」

 

 

 そう言いながら、ツバサは鞄から水色のクリアパーツでできたロックシード──エナジーロックシードを取り出す。表面にはメロンの浮彫が施され、『E.L.S.-04』のロゴが刻まれている。これは……。

 

 

「メロンエナジーロックシード。一年くらい前にアナタから託されたものだけど……コウガ、もしかしてまだ持ってるんじゃないの? これと同じものを」

 

「……」

 

「コウガ」

 

「…………はいはいはい! 分かったよ! ()しゃあいいんでしょっ? ()しゃあ!」

 

 

 ツバサからの有無を言わせない視線と雰囲気に当てられ、つい承諾してしまう。くっそ~……コイツといると何か調子出ないんだよなチクショー。しかし了解してしまった以上後には戻れないだろう。男に二言は無しってな。

 

 そして俺は懐や押し入れから、所持する()()()()ロックシードを机の上に並べた。

 

 

「ふ~ん……まあ、対して増えてないわね」

 

「だろ?」

 

 

 一応この際だから俺も整理しておこう

 

 オレンジ×1、バナナ×1、ブドウ×1、メロン×1、パイン×1、イチゴ×1、スイカ×1、マツボックリ×1、ドングリ×1、クルミ×1、レモンエナジー×1、チェリーエナジー×1、ピーチエナジー×1、メロンエナジー×1、サクラハリケーン×1、ダンデライナー×1、シグナル×1

 

 ふぅ……ま、ざっとこんなもんだろう。因みにスイカは数個所持してるが、今は全部無人兵器として飛ばしているためここにはない。

 そしてツバサはその中から目当てのロックシードを見つける。

 

 

「……ほら、やっぱりまだあるんじゃない。メロンエナジー」

 

「ま、そういうこともあるって」

 

「別にいいけど……頼むからジンバーでは使わないで。アレは身体に毒だわ」

 

「善処します」

 

「全く……」

 

 

 ツバサからの忠告にも軽く返す。仲がいい故の態度ではあるが、流石にこうも頭を抱えられると少し申し訳なくなってくるな。

 

 

「そう言えば幾つか見当たらないわね。キウイとかドリアンとか。それとウォーターメロンも」

 

「μ'sに預けてる。最悪の場合に備えてな」

 

「っ!? コウガ、アナタ何考えてっ……いや、そうね。ごめん……多分それが正しいわ……」

 

 

 俺の言葉に一瞬激情に駆り立てられるツバサだが、直ぐに冷静さを取り戻すと自分の言葉に訂正を加える。だが正直な話、俺自身もこの選択が正しいのかどうか分かっていない。彼女たちの命を守るという点では正しいことだが、倫理的に正しいかと聞かれればその判断は難しいだろう。

 

 

「まあ、そういうこった」

 

 

 そうして俺は机の上に出したロックシードを各々の場所に片づける。ツバサもロックシードを一通り見れて納得してくれたのか、特に言葉を挟むこと無く見過ごしてくれる。そのことに俺は一つ安堵していた。

 

 

「(バレなくてよかった……)」

 

 

 実のところ、俺は全てのロックシードを彼女に見せたわけではない。実はあと一つ、メロンエナジーを隠れ蓑にして、本当に見せたくないものを懐に隠し持っていたのだ。

 

 ──今はまだ見せるわけにはいかない。こんな得体の知れないものを……ツバサに触らせるわけにはいかない。

 

 そう考える俺のポケットの中には、他のロックシードより一回り大きい、非常にゴツゴツしたオレンジ色の錠前が静かに眠っていた。

 

 

「……さてっ、これからどうしよっか。今日と明日ドルーパーズ休みで暇だしな」

 

 

 とりあえずは一段落着いたということで、俺はこれからの事を考えだす。いくらクラックの危険があるとはいえ、μ'sの因子の絡まない自然発生のクラックは最近発生が少ないのが現状だ。だから今日と明日は平和で暇な時間を過ごせるわけだ。と、俺がそう告げるや否や、ツバサはパァッと一瞬にして表情が明るくなる。アイドルとしてでは無く、年相応の女の子らしいキャピキャピした空気が今のツバサから感じられた。

 

 

「っ、じゃあ、一緒に街中を歩かない?」

 

「うーん……街中デート?」

 

「そうっ! っふふっ♪」

 

 

 俺の回答に実に嬉しそうに反応するツバサ。そのあまりにも眩しい笑みに、先程までの辛気臭い雰囲気が嘘のように感じられる。やっぱこうだよな、女の子は。こうして普通に楽しそうにしている姿が、彼女の自然体なんだよな。

 

 

「よし、だったら──」

 

 

 そんなに楽しそうにしている彼女の要望を見捨てるわけにはいかないな。そう思い、彼女の意見を呑んで共に街中へ繰り出そうとした、まさにその時であった。

 

 

『──ピピッ──ピピッ──』

 

「「っ!?」」

 

 

 この世に神様がいたとすれば、ソイツはとことん俺が嫌いなようである。普通こんな都合の悪いタイミングで出るものかと。しかしクラックが出現した以上仕方無い。一刻も早くその場所に向かわなければ。

 

 そう思い、端末からクラックが出現した座標を確認するが……。

 

 

「……は?」

 

 

 端末の座標を確認した俺は、一瞬固まってしまう。

 

 

「え? どうしたの……っ、ウソ。これって……」

 

「嘘だろオイ……っ」

 

 

 端末に示された、クラックの出現した座標。

 

 

 ──それは今現在、μ'sのみんながいる合宿場のすぐそばであった。

 

 

「ツバサっ!」

 

 

 既に手は打っているとは言え、実際にそれが起きてしまうとそう冷静でもいられなくなる。もう四の五の言ってられない。俺は押し入れからコンプレッサーのような赤い機器と、一つの端末を取り出し、ツバサの目の前の机に置いた。

 

 

「っ、コレって……」

 

 

 ツバサは自分の目の前に現れたソレに驚き、目を見開いている。それもそうだろう。何せ今俺がツバサに託したのは、以前彼女から要求されて俺が断ったもの、戦極ドライバーの正規品──―ゲネシスドライバーだからだ。戦極ドライバーと同じく使用者をアーマードライダーへと変身させる、非常に危険で強力な武器だからだ。

 因みにもう一つの端末とは、クラック出現を知らせる予備の端末だ。

 

 しばらく身体が硬直したまま動かなかったツバサだが、やがて意識を建て直し、俺の目を真っ直ぐと見返してくれた。

 

 

「今からこの街を離れる。もしクラックが開いたらその時は──」

 

「私がやる……それでいいんでしょ?」

 

「──スマン」

 

 

 必要最低限の会話だけを交わし、俺はツバサを部屋に残して家を飛び出した。




原作での「シドロックシード」ですが、今作では「シグナルロックシード」として扱います。彼は出てきませんのであしからず。

それと遂にツバサの手に渡ってしまったゲネシスドライバー。
彼(ゲネシス)の運命は一体どうなってしまうのか(笑)
こうご期待。

それでは次回もお楽しみに。感想待ってまーす。
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